月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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26:オークニーと水晶の騎士

 最果ての国『オークニー』、長い間廃虚となったそこに存在するのは予言の子一向と賢人グリムともう一人、長い眠りについていた初代妖精騎士ギャラハッドだ。

 

 

「マシュ、その、どこか不調はない?2000年も眠ってただろうから・・・。」

 

 

「大丈夫です先輩。マシュ・キリエライト、以前と変わらず活動できます。これまで離れてた分、精一杯マスターをお守りします!」

 

 

「おう、その意気だぜ。こっちも改めてよろしくな嬢ちゃん、それに坊主。」

 

 

「はい、グリムさん。頼りにさせていただきます。」

 

 

 『賢人グリム』としてカルデアに合流したのは、キャスターのサーヴァント『クー・フーリン』。サーヴァントの召喚が極めて困難な妖精國に存在する稀な存在である。

 

 

「はは、嬢ちゃんは初代グリムと面識あるから飲み込みはや—。」

 

 

 グリムの表情が硬くなる。その視線は、南の方向へと向けられていた。

 

 

「おぅ、どうした賢人とやら。急に難しい顔するじゃねぇか。」

 

 

「・・・察しがつくだろ。敵襲だ、構えとけ。」

 

 

 赤髪の男『千子村正』にそう返すグリム。しかしその目は逸らされることなく、その敵影を捉えていた。

 

 

「こ、ここにまで追手が!?ノクナレア(北の軍勢)だっているのに強引な・・・。」

 

 

「あぁ、たった一騎で来てやがる。無謀ってもんだぜ。」

 

 

 オークニーの領地に向かってくるのは、モルガンの持つ物と同じ配色をしたハルバード型の杖を持つ馬頭の騎士。そう、女王騎士であろうその妖精がたった一騎でオークニーにまで『予言の子』を追ってきたのだ。

 

 

「まぁなに、まずは小手調べ・・・燃えろ!」

 

 

 ルーン文字による魔術の行使。それもサーヴァントとはいえ智慧の神によるものであれば絶大な威力を誇る。距離が離れているため避けられはするが、その爆風は侵攻を妨害するのに多いに役立っていた。

 

 

「よし、クー・フーリ・・・じゃなくてグリム、ありがとう!おかげで準備できた。」

 

 

「お安い御用だが、名前しっかりな!いやマジで!」

 

 

 グリムがルーン魔術による妨害をしてる中、『異邦の魔術師』藤丸立花はサーヴァントを召喚していた。通常サーヴァントの召喚にはそれ相応のコストや条件が必要とされるが、カルデアはこれを戦闘時のみの限定的な時間に収めることで多種多様なサーヴァントの簡易的な召喚を可能とした。人類最後のマスターである彼は、ここに来るまでに沢山の出会いを経験した。その過程で契約したサーヴァントの数は、最早圧巻の一言である。

 そんな彼がこの場面で召喚したサーヴァントは—。

 

 

「・・・いざ参る!」

 

 

 杖を振るっての攻撃が来る。しかし、呼び出されたランサーはその攻撃を難なく受け流す。再度杖を振るっても、次は杖の側面を叩かれて軌道をそらす。もう一度杖による攻撃を仕掛ける・・・と同時に魔弾による波状攻撃が繰り出される。不意を突いたであろうその攻撃、だがそれすらも全て防ぎ切った。

 

 

「甘いな、貰っていこうか。」

 

 

 

 初見の相手に対しても完全に対応する槍の使い手。その英霊の真名は宝蔵院胤舜、かつて己が編み出した『朧裏月十一式(おぼろうらづきじゅういちしき)』を宝具として持つランサークラスのサーヴァントである。無論、その宝具は守りだけでなく、攻撃に転用することも可能だ。

 攻めあぐねた女王騎士に目にも止まらぬ突き、切り上げ、そして横薙ぎ。それらを喰らった女王騎士の鎧はたちまち傷つき、馬の首を模した兜はガシャリと音を立てて落ち、破片を散りばめた。

 

 

「え・・・何、アレ・・・。本当に女王騎士?」

 

 

「なるほど、そんぐらい本気(マジ)ってことか。」

 

 

 切り落とされた鎧・・・その破片は、まるで意志を持つかの唸り、女王騎士(?)の身体に集まっていった。しかし、落とされた馬の頭は首には戻らず胴体に吸い込まれるように混ざっていき、鎧全体がもう偽る必要はないとばかりにその形状を変え始めた。

 最早女王騎士の証である鎧は見る影もなく、その鎧は角張った形状と流線的なフォルムが溶け合った歪なものとなっていた。そして武器も杖から大剣、それも右腕と一体化したものに変わっている。それら全ての材質は鉄や木、布などは使われておらず、全てが水晶で造られていた。

 

 

「こりゃマズイな。坊主、次の手用意した方がいいぜ。」

 

 

 右腕の大剣が音を立てて肥大化していき、刀身の本数もそれにつれて増えていく。計5本の刀身が指の様に、まるで大きな手となったそれを振り下ろされては、ランサーの技・・・いや、出力ではどうにもならなかった。重圧な魔力塊が槍ごとその霊核を砕く。

 剣の形状が元に戻った頃には、すでにランサーの霊基は消失していた。

 

 

「胤舜・・・っ!」

 

 

「おいおい、冗談キツいぞ。確かにそこまでの力技じゃなければ突破できねぇかも知れねぇが、実際にやるかよ。燃費なんて気にもしねぇ、正に狂戦士(バーサーカー)だな。」

 

 

「だったら、これで!マシュ!」

 

 

「はい!前に出ます!」

 

 

 胤舜の代わりに前線に出たのはマシュ。大剣を肥大化させての攻撃はしてこないが、仮にやってきたとしても雪花の盾はそんなものを通しはしない。戦いの経験も豊富な彼女を相手に攻め崩すことは、至難の技だ。

 そうしている内に、マシュはマスターからの合図を受けて動きを見せる。

 

 

「やあぁっ!!」

 

 

 盾を正面に構えての突進。かなりの速度で迫ってきたソレを石英の騎士は避けずに受け切ることを選んだ。そして、防御姿勢を取って自ら視界を狭くした彼は、その初動に気づくことはなかった。

 

 

 一歩音超え、

 

 

 受け止められた瞬間にマシュはバックステップで後退する。そうしてようやく理解する。次の一手はもう打たれている、と。

 

 

 二歩無間、

 

 

 かろうじて視界の端に捉えられたのは、超スピードで迫る何か。ただそのハッキリとした姿や手に持つ獲物を理解するには間が足りない。

 だが、石英の騎士はまだこの速度に反応自体は出来ていたのだ。次にこちらに来るタイミングを読んで防御、あるいは捨て身でカウンターを喰らわせようと試みる。しかしそれは無意味に終わる。

 

 

 三歩絶刀、

 

 

 石英の騎士の視界からその何かが姿を消した。もしこれが更なる加速であったなら、まだ対応できたであろう。しかし、これは超人的な技が昇化された空間跳躍(・・・・)。姿など捉えようもなく—。

 

 

「『無明三段突き(むみょうさんだんづき)』!!」

 

 

 その宝具は、寸分の違いなく鎧の関節部(・・・)を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやったぁー!!どんなもんだ!」

 

 

「アルトリアさん、見事な援護でした。」

 

 

 マシュが前線で石英の騎士を抑えている間、後方ではセイバー『沖田総司』、新選組の天才剣士が必殺の機会を狙っていたのだ。それに加え、アルトリアによる魔力付与によって更に威力を増した宝具『無明三段突き』は、石英の騎士を大きく吹き飛ばすことに成功した。

 

 

「いやぁ、マシュが前張ってくれたおかげだって!ねぇ立花—。」

 

 

「アルトリア、まだ終わってない・・・!」

 

 

「え、いやでもあんな一撃喰らわせたんだし、少しは弱って・・・。」

 

 

「・・・だからこそだよ。あの太刀筋は相手を斬ることに特化している。まかり間違っても相手を消し飛ばすだとか、そんな豪快な真似するもんじゃねぇ。だからあんなに吹っ飛ぶハズがねェんだよ(・・・・・・・・・・・・・・・・)。」

 

 

 千子村正がそう言うと同時に、倒れていた石英の騎士は起き上がる。確かに宝具の一撃で吹っ飛ばされはしたし、一番脆いであろう関節部にもちゃんと攻撃は入った。

 それでもなお、その騎士の鎧、水晶にはヒビ一つ入らなかったのである。

 

 

「今逃げることは簡単だが、あのヤロウは絶対追い続けてくるだろうな。かといってこの場で倒し切るにはちょいとばかし難しい。モルガンめ、厄介なヤツ送り込んできやがったな。」

 

 

「村正は、あの鎧突破できる?」

 

 

「鎧の核がわかりゃあな。あんな出鱈目防御、タネはあるハズなんだが、どうにも右手(・・)に目がいっちまう。千子村正、刀鍛治に一生を捧げ業の目を見るに長けてると自負してんだが・・・。アイツ、まだ手の内隠してやがるな?」

 

 

「それならムリに攻めないで、囮役をやってほしい。できるだけ注意を惹きつけてほしいんだ。」

 

 

「へぇ?何か策でもあんのか。」

 

 

「・・・賭けではあるけどね。ひとまず皆にも伝えよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 水晶の騎士には少しの油断があった。モルガンの加護があるとはいえ、宝具を防いだ。英霊の誇りとも言えるソレでも破れない鎧は、彼に余裕をもたらしていた。しかし、だからこそこの場でそれを破り得る存在に注意を払っていた。

 一人は賢人グリム、もう一人はアルターエゴ『千子村正』。どちらも神霊の力(・・・・)を持つ以上、一息にやられる可能性もゼロではない。『予言の子』と違いこの二騎は捕縛対象でないため、迎撃による生死を気にしないのでいいのが救いだ。

 

 

「オオォラァッ!!」

 

 

 千子村正の刀と水晶騎士の大剣が衝突し、砕け散る。村正はすぐさま別の刀を投影し、水晶の騎士は生やす様に大剣を再構築した。しかし、グリムやダ・ヴィンチの妨害もあっては迂闊に反撃できず、新たに簡易召喚されたサーヴァント一騎を倒すのみで攻めあぐねていた。

 ので、まずは鎧に組み込まれていた礼装(水晶玉)を取り出す。広範囲殲滅の準備だ。

 

 

「させるかっ!」

 

 

 村正がいち早く反応して刀を振るうが、それと同時に周囲に水晶の柱が出現し、村正の刀はその柱共々砕けちる。その間に水晶玉は発光を始めると、鎧にも光が満ち、その光は周囲の水晶柱にも伝播していき—。

 

 

「これは、魔力がどんどん増幅して・・・!」

 

 

「ダ・ヴィンチ、後ろに来な!気休め程度だが守っ—。」

 

 

 細いものから太いものまで、反射を利用して増大された何本ものレーザーが周囲に放たれる。村正が破壊した柱の分威力も減衰されてはいたが、それでもグリムにダメージを負わせるに十分なものだった。

 

 

「・・・ちっ、これ以上はマズイかもな。」

 

 

「グリムさん、大丈夫ですか!村正さんは・・・。」

 

 

「アイツなら心配ねぇよ。今は動けないだろうがな・・・。嬢ちゃん、悪いがあと少し頼めるかい?」

 

 

「・・・はい、お任せを!」

 

 

「私もサポートするよ、二人が回復するまでは持ちそうにもないけどね・・・。」

 

 

 最後の砦はマシュとダ・ヴィンチ。そう簡単には突破できないだろうが、それは向こうとて同じ。グリムもそうだが、至近距離で受けた村正もすぐには前線に出れない。もはや向こうに己を退けられる者(・・・・・・・・)はいない(・・・・)、そう確信し—。

 

 

「—オレがいる。」

 

 

 気づかないのがおかしいレベルの膨大な魔力。それが集約された砲塔を向けるサーヴァントの姿に石英の騎士は驚く。

 ランサー、セイバーと続け様に出した藤丸であったが、今この敵を倒すことはできない。そう結論づけた藤丸は、村正、グリム、ダ・ヴィンチ、マシュ、そしてライダー『オデュッセウス』を召喚して足止めに徹した。その隙に召喚されたもう一騎のサーヴァント・アーチャーの宝具をフルパワーで放つために。

 

 

「オデュッセウスのおかげで注意は逸らせた。あとは・・・行ってくれ、ナポレオン!!」

 

 

ウィ(了解)!『凱旋を高(アルク・ドゥ・)らかに告(トリオンフ・)げる虹弓(ドゥ・レトワール)』!!!」

 

 

 虹色の光流が放たれる。それは見事に石英の騎士に命中し、飲み込み、地面すらも抉り取った。だが、それでもなお騎士の鎧に傷はつかない。

 

 

「・・・坊主。」

 

 

「あぁ、これでいいんだ(・・・・・・・)。」

 

 

 騎士の鎧を突破することはできなかった。しかし、そうでなくとも飛ばすことはできたのだ(・・・・・・・・・・・)。ナポレオンの宝具を受ける騎士の足は少し、また少しと後ろに下がっていき、遂には地面から足が離れてしまう。

 

 

「敵、大きく3時方向へ飛んで・・・ロストしました。マスター!」

 

 

「うん、今のうちにエディンバラへ!」

 

 

 石英の騎士を退けた『予言の子』一向は王の氏族長・ノクナレアの治めるエディンバラへと向かった。そこであれば追って来れないだろうと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、見事見事。まさかここまで飛ばされるとは。『異邦の魔術師』、いやカルデアのマスター。今回はオレの負けだ、オマエを侮っていたよ。」

 

 

 鎧から水晶玉(礼装)を完全に切り離し、回収する。すると、鎧の形を構成していた水晶は、霧の様に四散した。

 

 

「この礼装を核に概念防御を形成したはいいものの、衝撃を完全に殺せはしないからな。あのセイバーの宝具でそれを見破られたのは痛かった。・・・いや物理的にもまだ痛いな。」

 

 

 関節部を抑えながらこの場を後にする・・・と試みたが、その足は縫い付けられたかのように動けなかった。

 

 

「・・・・・・引き止めてもムダだ。もう引き下がれないし前に進むこともない。それが、オレ達の選んだ道だからな。・・・オマエ達が望んだ国を作らなかったのは、悪いと思っている。」

 

 

 水晶玉を手に、石英の騎士・・・水晶工エリドールは最果ての国を去る。

 許しの声が届くことはなかった。




 カルデアサーヴァントの選出基準は半分作者の趣味で半分展開重視です。沖田さんとナポレオンちょっと役割被ったかなーと思ったので、一人以外にタゲ集中させるスキルを持ったオデュッセウスを挟むことで強引に同じ手を通しました(描写が無かったのはすまない、本当にすまない)

 ちなみに今回の展開をクエストに直すなら、
 1w:3gauge サポート:クー・フーリン(キャスター)、マシュ

 1gauge・女王騎士(バーサーカー)
 デバフ(解除不可):大振りな攻撃(クリティカル率DOWN)・無謀な進軍(防御DOWN)

 2gauge・石英の騎士(バーサーカー)
 Blake時:立ち姿変更、無謀な進軍解除、チャージMAX、無敵貫通(1ターン)付与
 バフ(解除不可):水晶鎧(特殊耐性)・尽きぬ魔力(毎ターンチャージMAX)
 デバフ(解除不可):突破口(攻撃を受ける度チャージ減少・宝具攻撃を受けた時チャージ減少)
 石英の騎士がチャージ0の状態でバトル終了


 1gauge目は楽々突破できますが、2gauge目がかなり偏屈。バーサーカーのチャージゲージは5なので、Extra attack込みでも1つ残ってしまい、ターン終了時にはすぐさまフルチャージされて振り出しに戻るクソっぷり。特殊耐性のせいでゴリ押しも効かない。
 ただし、宝具攻撃を受ければチャージ2つ分減少するので、攻撃宝具を挟んだExtra attackや攻撃宝具2連射以上で突破可能となっております(チャージ減少系スキルも有用)。相手の攻撃はチャージ含め全て単体なので、マシュで防御しつつクー・フーリンの強化されたスキル『泉にて』で宝具の準備をするのがオススメ。
 まぁ今回は『焼き尽くす炎の檻』未使用ですがね。
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