月で死んだと思ったら異世界に召喚された 作:鮭のKan2me
「まさか郊外にこんな場所があるなんて、エリドールちゃん様々ね。」
「なに、『失意の庭』の反応を辿った結果にございますよ。さ、こちらです。」
ニュー・ダーリントンに潜入したマシュとペペロン伯爵は、エリドールの導きによって郊外にある廃れた聖堂の中に入る。
『失意の庭』の反応があったのは更に地下。そこに通ずる入り口を見つけ、階段を降りていく。
「もう、マシュちゃんにはそんな喋り方しないのに。もっと砕けた態度でもいいのよ?」
「伯爵はお得意様ですが、マシュは私の客ではありませんので。すでに先着がいますから。・・・それにしても妙だ。」
「妙、とは?」
違和感を感じたエリドールにマシュが問いを投げかける。注意深く進みながらも、それに対しての答えを述べる。
「ニュー・ダーリントンは他の街よりも監視の目が厚い。もちろんリスクを最低限に抑えたルートは選んでるが、補足されてることは間違いないはずだ。」
「それでもノーアクションってことは裏で何かしてるか、はたまた
「・・・後者については否定させていただきます。あまり戦闘は好まないので。さ、そろそろ反応のあった層に着きますよ。」
『庭』があると思しき階層に付くと、より警戒を強めて奥に進む。しばらく進むと、『失意の庭』が台座に置かれた状態で見つかった。
「あ、アレは・・・!」
「あったね。念のため罠が無いか調べる。確認したらすぐに出してあげるよ。」
「エリドールさん、お気をつけて・・・。」
「・・・・・・。」
『失意の庭』に触れるエリドールにマシュは心配の声を掛ける。それに対して、ペペロン伯爵は笑みを浮かべながらも疑いの視線を向けていた。
(『庭』を通じて精神に干渉し、『予言の子』と『異邦の魔術師』を植物状態にする。治すのは陛下の元に連れて行ってからだ。恨むなら引っかかった自分を恨め。)
『失意の庭』はその世界に閉じ込めた相手の精神をへし折る。モルガンが手掛けた以上、使用者の魔力が尽きない限りは絶対に。
そこで、その精神に干渉する特性を利用するというわけだ。最終的に『庭』を壊すことにはなってしまうが、安いものだろう。
(では早速『庭』に干渉するための穴を開け—。)
『庭』に触れ、魔力を通そうとした瞬間、『失意の庭』が強く光る。あまりの眩しさに目を覆ったエリドールが次に見たのは、『庭』から解放された『予言の子』と『異邦の魔術師』の姿だった。
「先輩!アルトリアさん!」
「ここは、現実?でも魔力切れで止まった様子は・・・っ!アナタは。」
「・・・礼なら要らない。そういう依頼だったからな。」
やったのは、穴を開けたことだけ。それは自身が干渉できるようにするためでもあったが、その逆もまた然り。今起きたように穴を通じて内部から外部への脱出もできる。
だが、まさか『失意の庭』により弱りきった精神状態でそれを可能にしたとは・・・!
「それでも助けてくれたことに変わりはないよ。ありがとう。」
「礼はいいと言ってる。確かに通路を作りはしたが、それを活かしたのはオマエ達・・・オホン、失礼。口調が乱れてしまいました。」
思いもしなかった事態になったのもあるが、やはり『予言の子』を前にするとどうにも調子が狂う。
「あら、エリドールちゃんらしくないわね。案外予想外の出来事には弱いタイプなのね。」
「・・・まぁ、そんなところです。」
ペペロン伯爵の見透かした様な物言いに肩を竦めながらその横を通る。
「エリドールさん、どこへ?」
「依頼はもう終わり。ならこれ以上肩入れする理由もないんでね。お互い生きてたらまた会えるさ。」
(・・・女王暦400年からブリテンを旅する水晶工。ううん、本当はずっと前から始まってて、今も彷徨っているのですね。)
「よっ、お勤めご苦労さん!」
「・・・これはベリル・ガット様、アナタ様が持ち出した『失意の庭』ですが、私の不手際で壊れてしまいました。深くお詫び申し上げます。」
聖堂のある階層にて、下階から登ってきたエリドールはベリルと遭遇する。少し離れたところには、留置されたモース人間の姿もある。
「いやいや、余計なヤツもいるとはいえ、マシュを連れて来てくれたのは大助かりだ。あとは出迎えの準備をするだけなんだが・・・手伝ってくれよな?」
「もちろんですとも。して、私は何をすれば?」
「そうだな・・・。何かエゲツない作品でも作ってもらおうとも思ったんだが、アンタの出番は最後の最後にしてもらおう。信用はなくても、少しぐらいの信頼はあるだろうしなぁ?」
(来たか『予言の・・・ッ!全員無事だと?あの数のモース人間を一体どう突破したのか・・・。)
聖堂の出口への通路で、『予言の子』ら全員がベリル・ガットと相対している。倒されれば呪いを移す厄介なモース人間、それを地下への通路前に大量に設置していたが、なんらかの方法で避けたようだ。
一方オレは、ベリル・ガットの指示で聖堂の出口で待機、逃げようとして脇を抜けた者がいれば引き留めて始末しろ、と言われている。まぁ、あの雰囲気からして逃げることはまずないだろうが。
「ならしょうがない。こっちも奥の手を出すしかないか。」
マシュが盾による突撃で強行突破を試みるが、それをベリルは腕を振るうだけで弾き飛ばした。強化の魔術を重ねがけしたとしても、ありえないことだ。その答えは、彼の霊基によって証明された。
(やはり、この魔術は・・・。)
ベリルの全身から毛が生えていき、体格も大きく、歪に変化していく。その姿は人狼とも呼ぶべきもの。
しかし、この妖精國にはそれとあまりにも類似する妖精がいた。
(・・・・・・ウッドワス。)
かつての
改訂の件、本当に迷惑かけました・・・。やらなければ次話の内容よりごちゃごちゃになってたとはいえ、再発しないよう気をつけていきたいです・・・!
本作での『失意の庭』はマシュが破壊したのではなく、藤丸が失意を乗り換えた強い意志に加え、エリドールが穴を開けてしまったことで逆に利用されて脱出できてしまったという感じです。