月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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31:歪む結界と隠匿の兜

「・・・霧の魔物とは、中々に厄介なモノを押しつけてくれたな。」

 

 

 令呪の魔力による編み出された『猟奇固有結界・レッドフード』。その世界は霧に包まれ、その霧自体が生きてるように襲いくる恐るべき世界。引き込まれた瞬間から攻撃は始まっていたが、皮膚の下から押し出すように水晶を展開、鎧を形取ることで間一髪で防ぎきっていた。

 

 

(霊基はまだ維持できるが、ここから脱出した時に一撃喰らわせる程の余裕は無いか・・・?)

 

 

 令呪を使用して作り上げられた固有結界であれば、抜け出すにもそれ相応の対価を払わねば。そう意気込んだ妖精騎士モードレッドは霧の中を歩み出した。

 そう、たったそれだけで霧の様子は少しずつ変わっていった。

 

 

「■■■!?■■■■■■ーッ!!!」

 

 

(来るか!・・・いや、何もない?それどころか、これではまるで・・・。)

 

 

 まるで霧が苦しんでいるかのようだ。先程まで苛烈に攻めたてていたハズの霧の魔物『スラックスナーク』は・・・この世界そのものは、生物のように悶えてるかのような挙動と悲鳴を上げていた。

 

 

「・・・ベリル・ガットの身に何があったか?だとしてもこの世界はオレを引き離すためのもの。例え死に至ろうと解除されることはない、そのための令呪だったハズ。・・・いや、今重要なのはここから出れる算段を掴みかけているということだ。」

 

 

 原因は不明であるが、この好奇を逃す手はない。

 

 

「まずは周囲からだ!」

 

 

 右腕の大剣を膨張させ、いつかカルデアのマスターが召喚したランサー・宝蔵院胤舜を葬った腕を形取る。その膨大な魔力の質量によるものか、対象の力を削ぐ力を持った腕は霧を包み込み、想定以上(・・・・)の効果を発揮しその結界を打ち破った。

 

 

(やはり妙だ、幾ら要素があってもオレがこの固有結界を突破するには苦戦必死。ここまで簡単に抜けられはしないが・・・悪運が強いということにしよう。)

 

 

「ベリル・ガット、お前の固有結界は存外に呆気なく・・・!」

 

 

 固有結界を抜け出した妖精騎士モードレッドであったが、すでにベリル・ガットはおらず、『予言の子』もその姿を消していた。そして、もう一つ固有結界に幽閉される前と違う状況は—。

 

 

「チッ、そちらのタイムリミットも限界か!」

 

 

 ベリル・ガットにより仕掛けられた聖堂の崩壊。崩れ落ちた天井は、すでに妖精騎士モードレッドの眼前にまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ぃ、よっと!危ない危ない、危うく生き埋めになるところだった。」

 

 

 瓦礫を掻き分けて出てきたのは、水晶工エリドール。咄嗟の出来事に妖精騎士モードレッドは純粋な魔力放出で瓦礫を砕き、その被害を最小限にした。埋まった頃にはすでにエリドールとなっていたが、その力でも充分に脱出は可能であった。

 

 

「おや、そちらも無事だったか。」

 

 

「あ、エリドールさ・・・あ、あれ、エリドールさん・・・?」

 

 

 こちらに気づいたマシュがオレの名を呼ぶが、大きな違和感に戸惑う。『異邦の魔術師』も、それには疑念を抱いたようだ。

 

 

「まぁ、種明かしぐらいはいいか。妖精騎士モードレッド、その名前に聞き覚えは?」

 

 

「確か、救世主トネリコと共に旅をした初代妖精騎士だったと思うけど・・・。」

 

 

「そう、そしてそれはオレだ。・・・と言っても実感薄いだろう?まぁこれは円卓の騎士であるモードレッドの逸話が関係しているんだが・・・。」

 

 

「!もしかして、『不貞隠しの兜』でしょうか・・・?」

 

 

「・・・正解だ。モードレッドの『不貞隠しの兜』、そのスキルがオレの場合は名前(・・)に強い影響を及ぼしている。」

 

 

 汎人類史に於けるモードレッドは、その出自を隠すために兜で素顔を隠し続けた。その正体を隠すと言った逸話は、特定の条件を満たすことで発動するスキルとなってオレに付与された。

 おかげ様で、本来の名(・・・・)すら思い出せない。

 

 

「エリドールであれば妖精騎士モードレッドではない、妖精騎士モードレッドであればエリドールではない。簡単に言えば、駒がすげ変わる様なものだ。」

 

 

「・・・その話が本当なら、アナタが生きた年月は1600年ではなく。」

 

 

「まぁ、陛下と同じぐらいは生きてるさ。・・・疲れて怠惰に過ごした結果とはいえな。『予言の子』、陛下と同じ『楽園の妖精』。ハッキリ言ってオマエの存在は邪魔だ、不都合だ。それでもこのブリテンを救うなら・・・覚悟は決めろ。」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 無言で憐れみの目を向けるアルトリア。あぁ、やはりオマエはモルガンとは違う。(同じだ)

 

 

「では叛逆者の皆々様、陛下の裁きが下されるまでその余生をお過ごしください。」

 

 

 『失意の庭』の無力化は済んだ。妖精騎士モードレッドは勝手な行動を取ったが、エリドールは大人しくキャメロットに戻るだけだ。

 

 

「そういえば、崩れる前に見たあの血はペペロン伯爵のものだったか。・・・追悼作ぐらいは作るとしよう。」

 

 

 決戦の日は、近い。




 ステータスや真名に関する情報を隠す『不貞隠しの兜』。それをギフトとの併用で完全に別人とまで誤魔化せられるというヤバい設定で使用しました。まぁ、バーゲストの真名を看破できたようにアルトリアにはバレバレでしたけども()
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