月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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33:夢の終わり

 阿鼻叫喚の声がキャメロット各所に響き渡る。玉座の間への到着を待つことなく出陣したモルガン、それに相対したのは『予言の子』・・・だけでなく、円卓軍も、王の氏族も、モルガンと戦っていた。

 もちろん、それらの正体は本体でなくただの分身。本体と同等の力を持った分身が何体も現れ、城下町に戦火を、冬の嵐を巻き起こしている。

 彼らの戦いもまた、終わりへと近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハッ!!・・・こりゃ坊主助けに行くとか考えてる場合じゃねぇな・・・!」

 

 

「心配ハ、無用だ。おマエが行っタとコろで、マスたーハ、止メらレナイ。」

 

 

 ただ水晶が積み重なっただけの様な剣でグリムを押し潰す。半ば暴走しているエリドールではあるが、その強さは今までの比ではない。神霊サーヴァントであるグリムの攻撃を物ともせず、一方的に攻撃を加える程には。

 

 

「・・・へぇ、マスターの事はちゃんと分かるんだな?」

 

 

「当タり・・・マ、えだ。ヤツ(・・)・・・トは、まチガエよウモ、なイ。」

 

 

 仮定だらけではあるが、もしかしたらモルガンに牙を剥かせられるかもしれない。そう考えたグリムであったが、軽く一蹴され、自身を潰そうとしている腕により力が入っただけに終わった。

 

 

「・・・ぐ、ぁ・・・・・・!」

 

 

「そ、ウだ。アイつ(■■■■)デは、ない。だかラ、手ヲ貸シてやっタんだ。見てルだケで、危ナっかシイやツだったカら—。」

 

 

 ふと、気づく。周囲の変化に。確かに先程まで有象無象が悲鳴を上げていた。それを引き起こしていた分身体が全て消え去っている。

 エリドールは、弾けた様にその場を離れた。

 

 

(ありえない。ありえない!ありえないッ!!あのモルガンが、敵を残したまま手を引いた?一度手を出したならば必ずと言っていいほど殲滅してきたモルガンが?・・・もし、手を引くような事態があったすれば、それは—。)

 

 

 モルガンの敗北、即ち死。負けたのであれば、どうあってもモルガンの生存はありえない。彼女はそういう者であり、またヤツらもそのようなモノだ。

 逃げることはできない、逃げさせることはできない。あの頃とは違う。であれば、こうして護りに行くしかない。

 動く城壁によって迷宮と化したキャメロットを走る。時には壁を蹴る。他の者など眼中に無く、ただ玉座の間を目指した。捨て置かれた凶刃に気付かぬまま。

 

 

「・・・イマイチ状況が飲み込めないが、助けに行かせる程甘くねぇぞ。」

 

 

 身体中傷だらけ、裂傷や部位の欠損なぞ者ともせずに振られた刀は、跳ぶサーヴァントを見事に捉え、斬り裂いた。

 

 

「千、子・・・・・村正・・・ッ!」

 

 

 鉄壁を誇った鎧が一刀両断。水晶の騎士は宙を舞い、墜落する。水晶の欠片が当たりに飛び散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで女王も王女もいなくなった。ヒドイ支配とはおさらばだ!」「でも外のヤツらはどうしよう?しっかり保護してもら、イ"ッ!?」

 

 

 細い糸の様なものが妖精達を貫く。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・。玉座から離れろ、駒風情が・・・!!」

 

 

 水晶の鎧を、その核となっていた水晶玉の礼装をも失ったエリドールが玉座の間に踏み入る。糸の様な物は水晶で構築されており、彼の身体から浮き出ている魔術回路、チカチカと点滅を繰り返すそれに沿う様に伸ばされていた。

 

 

「え、エリドール!キサマ、何を・・・か、身体が!なん—。」

 

 

「ヒ、ヒイィ!!す、水晶に変わった、赤い水晶に・・・!」

 

 

「嬉しいことに、オマエ達全員オレにタダで作品を(・・・・・・)作らせたな(・・・・・)?やれ上級妖精としての証だとか・・・。汎人類史にはこういう言葉がある。タダより高いモノは無い、とな。」

 

 

 一翅、また一翅とエリドールの手により赤い水晶へと変えられ、砕かれ、引き寄せられていく。何の抵抗も出来ずに、一方的に搾取される。

 

 

「オマエ達は陛下が奪わなかったモノを自分で売り渡したんだよ。自分自身の価値というモノをな。それがこの赤い水晶、魔晶核(・・・)の正体。素材へと成り下がったオマエ達だ。本来であれば次の代が生まれる直前で徴収するが・・・代わりは幾らでも作れる。精々オレの糧となれ・・・!」

 

 

「これは一体どういうことかしら!」

 

 

 この惨状の中、強い芯が通った声が響き渡る。キャメロットに侵攻してきた勢力の一つ『王の氏族』、その長であるノクナレアが辿り着いたのだ。

 

 

「お、おぉ!王の氏族長ノクナレア!頼むよ!アイツを殺し—。」

 

 

 ノクナレアに助けを求めた妖精に水晶の糸・・・いや、触手が突き刺さり、魔晶核へと変換される。軌道上はノクナレアへと向かっていたが、駆け寄ったことにより巻き添えを喰らった結果だ。

 

 

「・・・来たかノクナレア。玉座は、渡さない・・・!」

 

 

 十を超える魔晶核を用い、巨大な腕を形作る。ノクナレア目掛けて振るわれたその腕に上級妖精も巻き込まれ、たちまちその身を水晶とされ腕に取り込まれる。その腕をノクナレアは避けることなく、片手で構えるのみで受けた。

 

 

「この国は陛下のモノだ。この国だけが陛下の居場所だ。もうオマエ達に奪わせなど・・・っ!!」

 

 

「アナタ達、手加減はしてやりなさい。」

 

 

 ノクナレアの近衛兵がエリドールの巨腕を霜でも踏むかの様に軽く砕き、急所を外して槍を刺す。素材は最高級、礼装の形成にも問題ない。ただただ致命的な問題があった。

 魔力の精製が、できなくなっていた(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「アナタ達の支配()はもう終わりよ。・・・ゆっくり休みなさい。」

 

 

 意識を失う直前に見たものは、自分を攻撃した近衛兵でも、憐れみの目を向けるノクナレアでもない。・・・肉片しか残っていない変わり果てたマスターの姿だった。

 弱く点滅を繰り返していた魔術回路の輝きが、完全に消える。




 度重なる霊基の異常、そしてマスターの死亡。一人残された彼が行き着くとは・・・
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