月で死んだと思ったら異世界に召喚された 作:鮭のKan2me
「・・・。」
城塞都市エディンバラ、地下牢。・・・とは言ったものの、鎖などで繋がれておらず、見張りは出入り口に一翅のみ。ただ『掟』のある鉄格子だけが彼を閉じ込めていた。
本来の力を考えれば薄すぎる防備、だが
(手遅れになるのは、マスター譲りなのかもな。縁で召喚されたからにはそれぐらいの共通点はあるか。・・・こんなに苦しい思いを、アイツは何度も経験してたのか?)
思い起こすのは紅い妖精。他の妖精騎士とは似て非なる動機でギフトを与えられた者。そこまでする理由を彼は知っていた。彼女が救世主を名乗っていた最大の要因なのだから。
(・・・オレは、オレはどうするべきか。マスターがいなくとも
それだけではない。魔術回路・・・彼の神経、導線とも言えるそれが全く機能しない。恐らくはアルターエゴ・千子村正に、礼装ごとやられてしまった影響なのだろう。
マスター不在で魔力の貯蔵も無い以上、彼の切れる手札は著しく減っていた。
「ならば、アイツの、アイツの願いを叶えなければ。」
わかっている。自分ではなくあの望まれた女王しかできぬことだと。
わかってはいた。その最後の希望がいとも容易く摘み取られるのだと。
わかってはいるけれども。魔術師の彼にとって、無意味に終わることだけは耐えられるものではなかった。
「・・・ノクナレアめ、本当にどこまでも
彼を閉じ込めていた格子は、隠し持っていた儀式用の短剣で容易く切断された。恐らく付与された『掟』は特定の行動に対して強度を落とすものだったのだろうか。
ともあれ、数日前に投獄されたエリドールは、『王の氏族』とある妖精に扇動された者とで戦火が上がるエディンバラを抜け出した。向かう先はただ一つ、王無き玉座だ。
「コフッ・・・モース毒への耐性はあるとはいえ、あの数と量は流石にキツいか・・・。」
エディンバラからキャメロットまではそれならに距離がある。そして、『大厄災』の前兆としてブリテン各地にはモースが大量に姿を表している。
それを対処しながら、逃げながらここまで脚一つで来たエリドールへのダメージは少ないものでない。それでもまだ斃れるわけにはいかない。
「玉座・・・玉座に、行かねば・・・。オレが、オレが続けるんだ・・・この妖精國を、アイツの
玉座の間まで辿り着く。執念で
しかし、その手は遮られる。突如転移してきた無数の、無機質な兵によって。
「・・・コイ、ツらは。」
その水晶の兵士が、押収された魔晶核を素材に作られていること。モルガンが用意したこと。そして、自分を玉座へと近づけさせないためのものだということは一瞬で理解した。
ただそれよりも早く、一つの疑問が浮き出た。
(コイツらは・・・
モルガン無き今、彼女の手によって細かい動作は不可能。自動で反応するにしても、魔力は魔術回路の停止で生成出来ず、
別の線も考えれば出てくるが、やはりこのタイミング、この時点で出現するにはあまりにもピンポイント過ぎる。
しかし、考える時間が無いのは兵士の先、玉座の先に
「ど、け・・・!ぐっ・・・!」
当然、兵士に妨害され、前には進めない。短剣による斬り掛かり、礼装を砕いたことによる魔力の放出、なけなしの宝石魔術など、少ない手札を全て切っても、水晶の兵が数を減らすことはなかった。
「行かなければ、行かないと行けないんだ・・・行かせて、くれ・・・・・・。何故だ、何故なんだ、トネリコ。オレは、オマエのために戦ったのに、戦ったハズなのに・・・どうして、いなくなって。」
信頼し、全てを捧げたつもりのマスターに、決死の信念を否定された。それが彼の心を、より深い絶望に染める。
そうして、
「—ぁ。」
こうして、夢は覚めたのでした。
主人公、某アルテミット・ワン関連説が囁かれてますが全くそんなことありません。なんせこの作品の作者、それを詳しく知ったの最近ですし(型月にわか)。
さて、ケルヌンノスの呪い(触れたら一発アウト)を喰らったわけですが、まだ数話続きます<=to be continued