月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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35:目覚め

 とある錬金術師の男がいた。ある時期を境に大気中のマナが枯渇した世界に於いて、さほど影響を受けなかった人種の一人。

 アトラス院に所属する彼は『人類の保存と滅亡の先延ばし』という永代に真摯に向き合い、機械的ではあったが対策のためにあらゆる人種と交流を持った。その中には当然魔術師から魔術師へと変わった家系の者もいた。

 その内の一人・宝石魔術を扱う家系の者と、男は婚姻を結ぶことになる。互いのメリットを考えられてのものであり、その一つである後継者作りも計画的に進められた。

 男の人生に面白みのあるものは無いかもしれない。だが何もかも順風満帆に進んでいた。富・研究・人間関係、そのどれにも恵まれていたのだから。

 そうして自分達の跡継ぎ、一人の男児が産まれた時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は、その赤子を殺す事にした(・・・・・・・・・・・)

 

 

 自身の観測した未来、その破滅の根源となるモノだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!・・・・・・ッ、はぁっ、はぁ・・・夢、だったのか?」

 

 

 仰向けの体制から上半身だけを起こし、目に見えるものを一つずつ確認する。誰もいない玉座、赤く染まった空、そして沈黙している水晶の兵士達。

 先程まで見ていた夢と状況が酷似していた。そして、その最後には—。

 

 

「は、ははは・・・滑稽だな。二度も死んだ記憶を引き継ぐなんて・・・。」

 

 

 左手で顔を覆う。手袋が無ければ、爪が食い込んで出血していたかもしれない程には力が篭っていた。

 

 

「オレに、どうしろというんだ。別にコイツらがいようがいまいが、玉座が使えないのは変わらない。使えるヤツはもう何処にも存在しない。この滅びが終わったあとには何も残らない。・・・もう、続きなんてない。」

 

 

 自分が使えないことなんて最初からわかっていた。なにせ、アレは神を殺し切るための礼装だ。計12門、異聞帯の壁すら越える聖槍を同時に扱うなど、ただのサーヴァントではどう足掻いてもムリなのだ。

 

 

「ここまでやって、何も報われないなら・・・下手に希望なんて持つんじゃなかったな。」

 

 

 左手を下げ、光を無くした目で天井を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パキリ

 

 

「?」

 

 

 不意に音がした。地面についたままの右手からだ。何をしても変わりはしないのだから気遣う必要もない。

 それでも彼は、首を動かした。目線を向けた。だってその音は、飽きる程耳にした水晶の割れる音だったのだから。

 

 

「・・・・・・なん、だ?だが、赫い(・・)水晶だと?」

 

 

 右手が見たこともない赫い色の水晶で覆われていた。魔術は使えず、錬金術も使用した覚えが無いのに、何故水晶がこのような形でここにあるのか。

 その答えはすぐに出た。その水晶の形と同じく、開かれた手を握り拳を作る。赫い水晶は砂の様に崩れて消える。崩れたあとに見えたのはただの皮膚であり、いつも付けている手袋では無かった。つまり、今崩れ落ちた水晶は元々—。

 そこまできて、彼は一つの結論に辿り着いた。夢で自分を消し去ったあの厄災、かつて『大穴』で自分を蝕んだ呪いと重ねて。

 

 

「は・・・は、は・・・ふ、はははははははは!!アーッハハハハハハハハハ、ハハ・・・ハ・・・は

・・・・・・そういうことかモルガン(ルーラー)ッッ!!!」

 

 

 ひとしきり笑った後、強い怒りを顕にする。

 

 

「確かにこれなら、わざわざサーヴァントとして成立させてまで手元に置く価値がある!!オレだってそうする!例え保険(・・)であろうともな!」

 

 

 ついぞ語られなかった己の召喚された動機。宝具の正体。それらを自ら見出した彼の心境には怒り、そして嬉しさの感情が湧きあがっていたが、それ以上に清々しさがあった。

 

 

「・・・なんだよ、最初からアイツに手を貸す必要(意味)なんてなかったってことか。」

 

 

 悲しさが見えたのはほんの僅か、彼の表情は決意の色で染まっていた。

 

 

「それなら、オレの選択は一つだ。オマエの望み通り、この力を振るおう。・・・ただし、これが最初で最後だ。」

 

 

 それが彼の、最後の独り言。そこから少しして、玉座の間には彼も、無数の兵もその姿を消していた。塵となって消える赫い水晶を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 —水晶とは、地底で二酸化ケイ素がマグマによって溶かされ、急速に冷やされることで造られる。

 天然の鍛冶場によって生み出された神秘的な鉱物は、水神の宝物、空神の贈り物、水の精そのもの。あるいは、氷のまま化石となったものとして言い伝えられることがあった。

 その言い伝えの一つが真実だったのか定かではないが、水晶には『封印』の魔術的な要素が含まれている。




 なんで生きてるかって、そりゃあまぁグランドロクデナシの巻き添え喰らったから(準備の有無関係なく時間戻せるのは流石にチート)。
そしてプロローグ以降あんま出せてなかったextra要素をここで持ってくるスタイル。魔術師としてのオリ主も掘り下げていきたいけど、今回の章はあくまでモルガンのサーヴァントとしてのオリ主の話なので、それはまた別の機会に。
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