月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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36:魔拳侵蝕、対峙するは賢人と—

 ブリテン島上空に佇むカルデアの空飛ぶ巨大潜水艇・ストームボーダー。『炎の厄災(アルビオン)』となった妖精騎士ランスロットの強襲を防ぎ、撃破したカルデアであるが爪痕は大きく、静止状態で艦の修復に勤しんでいた。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

「ゴルドルフ所長、紅茶でも如何ですか?」

 

 

「う、うむ、頂こう・・・。」

 

 

 裁定者のサーヴァント『シャーロック・ホームズ』がカルデア新所長である『ゴルドルフ・ムジーク』の様子を見て紅茶を差し出す。名探偵にして明かす者である彼は、ゴルドルフが何に心配しているかを察して釘を刺すかのように告げる。

 

 

「これでも最大に譲歩した結果です。ミス・キリエライトらの思いを尊重しないとは言いませんが、我々の本命はあくまで『呪いの厄災(ケルヌンノス)』。その時に備えて温存しなければなりません。」

 

 

 ボーダーの修復作業の合間に『獣の厄災(バーゲスト)』を止めに行った藤丸達であったが、脅威度を考えればケルヌンノスにのみ焦点を当てても良かったのだ。

 ケルヌンノスが撒き散らす呪いは妖精國の外にまで広がる世界規模の災害。対してバーゲスト、ブラックドッグが及ぼすのは都市規模と、ケルヌンノスに比べれば小さなものであった。

 それでも彼らが向かったのは、そんな小さな被害でも出さないため・・・もあるだろうが、それによって人から恐ろしい妖精として見られることになるであろうバーゲストの尊厳を護るため。

 

 

「そんなことはわかっている!わかってはいるが・・・。」

 

 

「まぁ、ポジティブに考えようや所長サン。その分ココの防備が厚い、ってな。」

 

 

「いやいや、防備と言われても、アルビオン以外にここまで襲ってくるヤツがいるのかねキミィ?」

 

 

 心配の絶えないゴルドルフに、船に残ったサーヴァントの一人である賢人グリムが気楽に話しかける。

 ただ、ゴルドルフにしてみれば境界の龍・アルビオンの他にこの高度まで攻撃してくる相手など想像も付かない。いや、想像したくないのかもしれない。如何に戦力が少しでもあるとはいえ、今襲われては堪ったものではないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ、このタイミングでの襲撃は当然と言えよう。

 

 

「緊急事態ー!ボーダー上空50m地点に敵性サーヴァント反応確認!!落下してきます!」

 

 

「なな、なんだとぅ!?どうやってここまで!?いや、それよりまだ他にサーヴァントがいたと・・・!」

 

 

 突如として鳴り響いたアラートと共に、周囲の観測を続けていたネモ・マリーンの一人が報告する。サーヴァント、それも敵性反応を持つものなど、脅威以外のなにものでもない。

 少々パニックに陥ったゴルドルフであるが、次の報告を聞いて多少落ち着きを取り戻した。

 

 

「あ、でも魔力反応はそんなに大きくない!転移魔術を行使したと思われ、その分弱くなってるかとー!」

 

 

「そ、そうか!それなら、グリム・・・いや、ホームズでも対処できるのではないかね?」

 

 

「・・・いや、ちょっとマズイかもな。」

 

 

 苦い顔をしながらゴルドルフの希望を一蹴するグリム。それによって再び動揺した様子のゴルドルフの代わりに、ホームズがその言葉の意味を問う。

 

 

「ミスターグリム。アナタはこの襲撃者について心当たりがあるのでは?」

 

 

「まぁ、オレの不始末と言えばそうとも言えるってところだな。そういうわけでちょっくら片付けに行かせて貰う。心配せずとも、対ケルヌンノス用に余力は残しておくさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ一つ言葉にするなら・・・運が良かった。そもそもの話、転移魔術なんてものをノーリスクで使えるほど魔術に長けてはいない。

 それでもやってのけれたのは、あの『棺』がレイシフトの技術を応用したものであったこと。電脳ダイブに特化した魔術回路を持つ魔術師(ウィザード)であったことが大きい。

 それでも不確定要素は多々あったのだが、結果として成功したのだ。やるべきことに目を向けよう。

 

 

「よぉ、どうだいここからの眺めは?ま、見える景色が景色だ。そこまで良いものじゃないだろうが。」

 

 

「・・・もう何度も見た、世界の崩壊なんて。今回のはとびきり大きいだけだ。」

 

 

 炎、雷、呪い。ブリテン全土に広がり、今もなお惨状を引き起こしている。エインセルの予言通り、ブリテンは滅びの一途を辿ろうとしている。

 

 

「そうかい。・・・で、マスターのいないオマエが今頃何しに来た。カルデアに協力する気はなさそうだが?」

 

 

「オレは、サーヴァントだ。ただの影だ。だが、敢えて言おう。オレはこの妖精國(・・・・・)を生きた(・・・・)。どれだけ惰性になっても、生き続けてきた。故にこの異聞帯の住人として、モルガンの騎士として、最後まで戦い抜く。それが、オレの答えだ。」

 

 

「・・・普段のオレなら快く受けてやったろうが、状況が状況だ。悪いが、一対一(サシ)じゃやれねぇぞ。」

 

 

「構わない、対複数になるだろうとは予想していた。それで誰が来る?カルデアのサーヴァントか、それとも千子村正か?アイツには借りがあ—。」

 

 

 そこまで言って目に入ってきたのは・・・一番ありえない(会いたくない)人物であった。

 

 

「—何故、ここにいる。聖剣の糧となったものは消える。それはモルガンとて例外ではない。何故ここにいる、『予言の子(・・・・)』!!」

 

 

「・・・まだやりたいことがあるから。そんな身勝手な願いでも、それを叶えてくれる仲間がいた。だからこそ、アナタとは正面からぶつかりたい。モルガンの願いを叶え続けたアナタと!」

 

 

「・・・注文が多すぎて、これっぽっちしか叶えられなかったけどな。」

 

 

 視線を右手に落とし、再度アルトリアを見据える。

 

 

「始めよう、前座ばかり長くても仕方ないだろう。・・・我が真名()は妖精騎士モードレッド!救世主トネリコのサーヴァントにして、女王モルガンに支えた者!!賢人グリム、そして『楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)』よ!貴様らを、我が魔剣の錆にしてくれる!」

 

 

 高らかに叫び、右手を掲げ詠唱を始める。この数千年、認知すらできなかった宝具を使うために。

 

 

星の血涙(溶岩と水)は混沌にして、万物封ず秩序の晶。その境界は紙一重、表裏一体の柔な戒め。混沌が這い出るならば、秩序もまた形を持って現出する。さぁ、見るがいい。これがオレの、このオレ(・・・・)だけの魔剣だ!『魔剣へ変ぜよ、赫き水晶(クリスタライズ・クラレント)』ッ!!」

 

 

 右手が赫く染まり、水、あるいはマグマの様に水晶が流れ出し、鋭利な両刃剣を形作る。円卓の騎士モードレッドが所持していた魔剣・クラレント。妖精騎士であるモードレッドは、水晶によってそれを再現した。

 赫く濁る魔剣を構え、妖精騎士モードレッドはグリム、そしてアルトリアに襲いかかった。これが、彼の最後の戦いである。




 ネモ、ホームズ、ゴルドルフ。この御三方初登場させる上に同時に描写しようとしたらかなりの難産になってしまった(ネモに至ってはマリーンズのみ)
 やっと宝具出ましたが、妖精騎士モードレッドのプロフはまた別の機会に纏めようと思います。ちなみに残り魔力量多くはないのに使用できたことから、燃費面はとても良い。
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