月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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3:翅の氏族と暴れん坊

「翅の氏族の暴れん坊、ですか?」

 

 

 『厄災』を鎮めては眠りにつくサイクルを七度程繰り返した頃、そんな噂が耳に入ってきた。ブリテンの妖精はそれぞれ氏族で分類されており、風の氏族・土の氏族など計5つある。その内の一つである翅の氏族は暴れん坊と揶揄されるものが出てくるほど武闘派ではないのだが・・・。

 

 

「はい、私たち翅の氏族はともかく、他の氏族の方でも止められないほどの暴れ様で・・・。このままでは色々と困るので、救世主一行に対処してもらいたいのです。」

 

 

 オレ達に詳しい事情を述べた妖精の名はムリアン。次期翅の氏族長とも言われる彼女がそこまで頼むほど問題は深刻なのだろう。

 

 

「わかりました。救世主の名にかけて、その暴れん坊にお灸を据えてやるとしましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トネリコ、灸を据えるとはいったが、いきなり攻撃することだけはやめてくれよ?」

 

 

「むっ、そんなことするわけないじゃないですか。私のことなんだと思ってるんです?」

 

 

「魔猪の氏族。」

 

 

「まだ根に持ってるのソレ!?妖精相手だし対話から入るに決まってるじゃん!」

 

 

「・・・お前ら、もうそろそろ例の場所だぞ。」

 

 

 オレとトネリコがそんなやりとりをしている内に例の暴れん坊がいるという場所についた。

 

 

「うわぁ、木々がへし折れてますね。それに草地も所々禿げてる。」

 

 

「暴れん坊、というのは伊達じゃなさそうだな。警戒を強めて—。」

 

 

「なんだお前ら!こんなところに何の用だ!」

 

 

 急に飛び出してきた翅の氏族らしい小柄な妖精。恐らくコイツがその暴れん坊だろう。確か名は—。

 

 

「トトロットさん、ですね。私はトネリコといいます。アナタがここら一帯で暴れているというのを聞いてやってきたのでs—。」

 

 

 トネリコが言い切る前に糸による攻撃が仕掛けられた。

 

 

「あぶなっ!?何するんですかコノヤロー!」

 

 

「ゴチャゴチャうるさいんだわ!要は他の妖精達みたいにボクを倒しに来たんだろ!なら受けて立つぞー!」

 

 

「・・・なるほど、そう来ましたか。」

 

 

「まずは大人しくさせてから、か。手加減できるような相手とは思えないがやってみるとしよう。」

 

 

「あ、いえ。手助けは必要ないです。この場は私に預からせてください。」

 

 

 何を言ってるんだコイツは。確かにグリムの指南に飽き足らず自らも魔術の開拓を進めていったことでトネリコの腕前は相当なものとなっているが、それでもトトロットが強力な妖精であることは暴れた跡地と先程の糸の操り具合で測れただろう。むしろ一人でやるメリットの方が少なく思えるのだが・・・。

 

 

「こういうタイプはみんなでかかるより一騎討ちでコテンパンにした方が精神にきやすいのです。なーに、少々その自信をへし折ってやるのが身のためってものですよ!」

 

 

(なんてこというんだ!?)

 

 

 救世主とは思えぬセリフである。しかもこれを笑顔で言いのけるのだからなおタチが悪い。

 こうしてトネリコとトトロットによるタイマンが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大・勝・利!!えへへ、どうだ見たかー!」

 

 

「あぁ、頑張ったな。今下ろしてやるから大人しくしてろよ。」

 

 

 トトロットの糸によって宙吊りにされたトネリコを救助する。正直最後の逆転劇は感嘆ものだったが、それを帳消しにするぐらい格好がついてない。

 一方トトロットはというと、先程の暴れっぷりがウソかのように倒れたまま動いていない。・・・まさかとは思うが、やりすぎたか?そう思いトネリコと共に近づいてみると—。

 

 

「うっ、ひっぐ、ぐすっぐすっ・・・。」

 

 

「・・・トネリコ。仕方なかったとはいえ、やりすぎたことは反省しような?」

 

 

「善処します・・・。そ、それより!トトロットがこうも大人しくしてるのです。今のうちに色々聞いてみようではありませんか。」

 

 

 まぁ、確かにそれが本題だな。泣いているところ悪いが、何故暴れる様になったのか詳しく聞いてみることにした。

 

 

「だ、だって、どうすればいいかわからないんだよぅ・・・。何をどうすればいいかわかってるハズなのに、それができる気がしなくって・・・ううっ。」

 

 

「・・・?すまないが、もう少しだけ落ちついて喋ってくれ。その何かってのをハッキリと—。」

 

 

「無駄です。恐らく彼女の『目的』はこのブリテン(・・・・・・)に存在していないもの(・・・・・・・・・・)なのでしょう。」

 

 

「・・・そういうことか。」

 

 

 このブリテンには、オレが生きた世界では当たり前だったモノや文化が欠けている。ここで例を挙げるなら、人間の生殖だろう。このブリテンに生きる者は、体の構造上子を宿すことはない(・・・・・・・・・)。では、新しい人の子はどうするのかという話だが、そこはコウノトリ形式とでも言わせてもらおう。

 そんな違いだけでも、文化として発達しなかったものは多々ある。恐らく、糸紡ぎの妖精である彼女はそのどれかが存在しないことにより苦しみ、暴れてしまったのだろう。

 

 

「トトロット、『目的』を果たせないことの辛さは私にもわかります。ですので、代わりと言ってはなんですが私達に力を貸してくれないでしょうか?」

 

 

「と、トネリコ!?それは・・・。」

 

 

「・・・私達の旅はお世辞にも良いものとはいえない。もしかしたらアナタが感じてるよりもっと苦しいことが待ち受けているかも・・・。なので、強要はしません。これは私のほんの思いつきですので。」

 

 

「・・・ツライ旅、か。じゃあなんで仲間がいるんだ?本当にひどかったらついていこうだなんて思わないじゃないか。」

 

 

「—。」

 

 

「・・・そう、ですね。確かに彼らにかけてる迷惑は小さなものではないでしょう。それでも、彼らはついてきてくれました。だから私は今まで頑張ってこれたのです。どんなにイヤなことがあっても。」

 

 

「そっか・・・よし、決めた!ボクもついていく!」

 

 

「いいの?本当に?」

 

 

「うん!一対一で負けちゃったし、それに、女の子(・・・)を守る(・・・)ってのは悪い気がしないんだわ!!」

 

 

 こうしてすっかり元気を取り戻したトトロットは、救世主トネリコの一行に仲間入りを果たした。ちなみにオレが自己紹介した時、「妖精騎士?なんだそれ!すっごく良い響きなんだわ!ボクも妖精騎士になるぞー!」と意気込んでいた。そんなわけで、彼女は妖精騎士トトロットとして表舞台で活躍することになる。

 余談だが、トトロットがヤケに妖精騎士を強調するため、周囲では妖精騎士=トトロットのイメージが強くなった。まぁ、そこまで気にしてはいないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『じゃあなんで仲間がいるんだ?本当にひどかったらついていこうだなんて思わないじゃないか。』

 

 

 トトロットの口から放たれた言葉はオレにも響いた。これまで彼女(マスター)についてきたのはサーヴァントとしての義務だ。そう思って疑わなかった。確かに最初はサーヴァントであるから仕方なく、だったかもしれない。だが—。

 

 

『・・・ねぇ、ちょっとお願いがあるんだけどさ。その水晶玉、もっと良く見せてくれないかな?』『わっ、すごい。ツルツルでスベスベだ!こんなに綺麗なもの作れちゃうんだ、すごいねモードレッド!』『ありがとうございます、妖精騎士モードレッド。眠る前に、こんなにも素晴らしい魔術を見せてくれて。』

 

 

 ・・・魔術師失格だな。まさかこんなにも情が移るなんて。サーヴァントとしてどこまでやれるか、どれほどのことができるかはまだわからないが、それでもただ一つ、オレがこの世界でやりたいことは見つかった。

 

 彼女(トネリコ)を守り通す。いつか救いが訪れるその日まで—。




 扱う魔術は二流だとしても、魔術師としての心構えだけは失ってなかった(と思い込んでいた)妖精騎士モードレッドですが、今回のこともあって少し吹っ切れました。果たして彼の終着点はどうなることやら。
 ちなみに今回出たムリアンはBBよりも桜よりにイメージしてセリフ付けしてみました。なんせ牙の氏族に恨みを持つ前ですので。

 妖精眼差分ですが、妖精歴終了時点に執筆する予定です。ただ、軽い総集編みたいなものになるのでセリフだけに。あくまで答え合わせ的なものになると思われますのでご了承ください・・・。
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