月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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5:夢と封印

 —眠りにつくと、決まって同じ夢を見る。いつか行った鉱脈のように薄暗くもあれば、文献でしか見ることのなかったステンドグラスから漏れ出る光が部屋を照らす。そんな場所の中央にオレは立っていた。

 そして、部屋の奥にある玉座にはステンドグラスを背に一人の魔女(・・)が座している。魔女は魔術を行使する。オレの魔術を模倣する。オレの魔術が牙を剥く。対抗しようと魔術礼装を起動させるが、制御が効かない。そう思った次の瞬間には、オレの右手にあったハズの剣が喉に—。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うっ、ここは・・・?」

 

 

「あ、起きた!モードレッド起きたぞ!心配したかんなコノー!!」

 

 

「ちょっ、トトロット。叩くな、キツい・・・。」

 

 

「無事で何よりです。妖精騎士モードレッド。」

 

 

 気がつくと、ベッドに寝かされていた。天井や壁の質を見る限りどこか作りのいい建物の中だとは思うが、それよりも気になることがある。

 

 

「トネリコ、『大厄災』は・・・!?」

 

 

「安心してください。『大厄災』は選定の槍の力によって打ち倒されました。」

 

 

「・・・・・・はい?」

 

 

 間の抜けた返事が出た。確かに優勢ではあったが、それでも倒せるような相手では・・・。いやそれより、選定の槍を使ったということは—。

 

 

「トネリコ、身体の方は大丈夫か?今まで以上に選定の槍を使ったことだし、それなりに異常が・・・。」

 

 

「えっ?何言ってるのモードレッド。別に選定の槍使っても、代償とかないからね。」

 

 

「はぁっ!?いや、毎回使った後変な顔してたし、何かあるに決まってるだろ!」

 

 

「・・・あー、そういうことですか。あの、結論から言うとですね。

 

 

 

 

 —選定の槍、使えなくなっちゃいました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トネリコ曰く、選定の槍は使用者の心象によってその在り方を変化させる。減点方式のようなものなので、穢れることはあっても清められることはない。そうして長く使い続けられて行く内に選定の槍は少しずつ、少しずつ穢れていき、遂に『大厄災』を終える頃には魔槍(・・)と化してしまった。妖精への殺意に溢れた恐るべき武器に。

 

 

「なぁモードレッド、歩いて大丈夫なのか?足の調子悪いんだろ。」

 

 

「・・・霊基は軋むが、これぐらいなら問題ない。それよりトトロット、トネリコについてやってくれ。余力があるとはいえ、魔力消耗してることに変わりはないからな。」

 

 

 トネリコがソールズベリーの聖堂に選定の槍を納め、封印を施した後、オレ達はすぐに『棺』のある洞窟へと出発した。『大厄災』に加えて選定の槍の封印もしたことで魔力を大量に使ったトネリコもそうだが、今回はブラックドッグの雷撃で足をやられてしまったオレもいるため進行速度は遅めだ。

 

 

 

「今日はここで野宿だ。モードレッド、見張りはオレが行く。トネリコと共に薪の準備を頼む。」

 

 

 普段はオレが見張りについて、グリムとトネリコが焚き木ついでに授業をするのだが、オレの不調もあって役割を交代することになった。エクターやトトロットは夕食の準備をしに席を外したため、今この場にいるのはオレとトネリコだけとなった。

 

 

「さーて、パパッとやっちゃいましょうか!あ、そういえばモードレッドと二人きりになるのは洞窟以外だとこれが初めてですね!」

 

 

「・・・そうだな。」

 

 

「どうしたんです、モードレッド?まだ『大厄災』でのダメージが残ったり?そういう時は遠慮しないでドンドン言っちゃって!」

 

 

 捲し立てるように話し続けるトネリコ。明るく振る舞ってはいるが、もうその空元気(・・・)は見てられない。

 

 

「まだ選定の槍の件引きずっているのか?」

 

 

「—・・・。」

 

 

 オレの放った一言によりトネリコは無言となる。雰囲気が暗くなったのも気のせいではないだろう。

 生前の、純粋な魔術師としてのオレなら「愛着のある武器を失ったことで悲しんでいる」と解釈しただろうが・・・。

 

 

「・・・別に選定の槍が穢れたことなんて、誰も気にしちゃいないさ。」

 

 

 恐らくトネリコが気に病んでるのは、己の手によって選定の槍が穢れ切ってしまったこと。多少なら欺けるが、今回の様に完全に変質してしまっては誤魔化しようがないだろう。

 トネリコは悪しき心の持ち主だと。

 

 

「慰めてくれるのは嬉しいけど、それでも邪な思いがあったことは事実だよ。笑っちゃうよね、楽園から来た救世主がそんなヤツだなんて。」

 

 

 トネリコの口から渇いた笑いが漏れる。その笑いは、ヤケにオレの耳に残った。だから気づかぬ内にこんなことを口走ったのだろう。

 

 

「・・・お前の旅は笑って済ませられるほど楽じゃなかっただろ。全く1000年も続けやがって。」

 

 

「・・・!」

 

 

「選定の槍がそうなるほどにイヤな思いし続けてまで妖精助けてきたんだ。まぁ、その穢れが色んな解釈できる以上、特にコレと決めつけられはしないが・・・そうしてまで頑張るのなら助けないわけにもいかないさ。例えサーヴァントでなくともな。」

 

 

「—ふふ、なにそれ。でも、ありがとうモードレッド。ちょっとだけど元気はでたかな。」

 

 

「それはなによりだ。・・・さ、そろそろエクター達も戻ってくるだろ。早いとこ火をつけないとな。」

 

 

 トネリコが魔術によって火をおこす。グリム仕込みだけあってその所作は完璧なものだ。文句無しの満点をくれてやった。

 その後の夕食や就寝前のトネリコからは、ソールズベリーからの作り笑いは無くなっていた。




 事件簿コラボ没頭して筆が進まなかった・・・。ストーリーの内容が濃すぎる(褒め言葉)
 それで筆が止まっている内にも評価されたりお気に入り登録してくれる人がいるんだから感謝感激ですよ・・・!
 感想も書いてくださり嬉しい限りですが、この話の先、特に主人公が行き着くものについては言葉を濁させていただきますのでご了承願います。
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