ウマ娘と呼ばれる種族がこの世界には存在している。見た目こそ人間とほとんど変わらない種族だが、運動能力については人間をはるかに凌駕している。溝にはまったトラックを持ち上げる、我を忘れて突進する牛を真正面から受け止める、自分の体の数十倍の体積をもつタイヤを体に結び付けて引きずる、などどれもこれも人間には不可能な内容ばかりだ。それに加え、これらの内容はごく一部のウマ娘だけが可能なのではなく、年端もいかないそれこそ学校に通っているような年齢のウマ娘でも可能である。
このように圧倒的な身体能力を持つウマ娘であるが、その身体についてはほとんどが謎に包まれている。これまで数多くの専門家たちが考えられるすべての要素(骨、筋肉、内臓、血液そして細胞など)に対して検査を行ったが有効な結果は得られなかった。それどころか、ウマ娘と人間の間には生物学的な差異がほとんど見られないという結果になった。
ここからは、ウマ娘の持つ身体能力の秘密について筆者の推測を述べていく。ウマ娘の誕生にまつわる一説として、別世界の名前と魂を受け継ぎ生まれてくるという説をご存じだろうか?この魂を受け継ぐという性質に秘密があると筆者は考えた。
まず魂を受け継ぐという性質はウマ娘固有のものではなく、すべての生物が持つ性質だ。そして、魂とは種族の持つ特徴(寿命、食性、身体能力など)を決めるデータの役割を持つ。生まれた段階の生命には肉体しか存在せずそこに魂が受け継がれることにより種族が決定される。鳥の肉体には鳥の魂、人間の肉体には人間の魂のように魂が対応する肉体へ受け継がれることにより1つの生命体としてこの世に誕生することが出来る。しかし、ウマ娘の魂だけは人間の肉体に受け継がれている。つまり、人間とウマ娘は同じ肉体を共有していながら中身の魂が全く異なるのだ。これにより、検査を行っても生物学的な差異が見られないのだろう。
しかし、なぜ受け継ぐ魂が異なるだけでこんなにも差が見られるのか?これには、「別世界」から魂を受け継いだという部分が関わると予測した。本来人間の持つ性格や趣味嗜好は周りとのかかわりで形成されていく。そのため生まれたばかりの持つ生命の持つ魂はまっさらで未完成と言える。対して、ウマ娘の魂は別世界の既に天寿を全うした存在から受け継いでいると推測される。つまり、すでに完成した魂を受け継いでいるのだ。名前を受け継ぐという性質もこの完成した魂を受け継いだ影響だろう。自分の進むべき道をすでに確立している完成した魂はその方向へまっすぐに進むことが出来るため、未完成の魂よりも高いパフォーマンスを発揮できるのだ。
ここまで魂に関する考察を述べてきたがここで1つの疑問が生じた。なぜこれほどまでに優れた能力を有していながらウマ娘は支配者になっていないのだ?それどころか、歴史の中でウマ娘が人間を支配しようと行動を起こしたという記述は全く見られなかった。もとよりウマ娘は温厚な種族だが、なぜわざわざ自分たちよりも弱い種族とともに過ごしてきたのだろうか?
この理由については、ウマ娘には女しか存在しないため、人間を愛玩動物と捉えているためなど様々な説が飛び交っているが、これについても筆者は別世界から受け継いだ魂が関連していると予測した。
先程ウマ娘の魂は完成しているため高い能力を発揮できるという内容を述べた。ならばなぜ人間は完成された魂ではなく、未完成の魂を受け継ぎ生まれてくるのだろう?ここには完成されているが故の欠点が隠されている。
ウマ娘のほとんどは走ることに対して強い信念を抱いている。これは本能的なものに近く、受け継いだ魂の影響だろう。そのため、多くのウマ娘は物心つかないうちから道を走り回り、トレーニングを積み重ね、友人たちと競争を行う。そして、中央もしくは地方のトレーニングセンターへ進学しレースの世界へと身を投じていく。
一見すると幼少期から夢に向かって突き進むストイックな子供であり何も問題はないように見える。しかし、ここで問題になるのはほとんどのウマ娘が自分自身で考え選択しレースの道を志したのではなく、本能的にレースの道を選択しているという点だ。
レースの世界は残酷だ。名誉は1位をとったものが独占しそれ以外は等しく敗者として扱われる厳しい世界だ。そこで勝ち続けられれば良いが現実はそう甘くない。9割のウマ娘が未勝利のまま終わり、残りの1割も未勝利戦以外は全く勝利できない者が大半だ。そして夢破れたものは引退し別の道を模索する必要があるが、ここで完成された魂が足を引っ張る。完成されているがゆえに自分の在り方を変えることが難しく、そのまま無謀なレースに挑み大ケガをしてしまうケースも存在する。また、勝利と栄光を掴んだウマ娘もレース以外で自分を表現する方法がわからず引退後に無気力になってしまう場合がある。これらの問題はレース黎明期によく見られ、新聞でも度々取り上げられた。
つまり、完成された魂は強靭ではあるが困難にぶつかったときに柔軟な対処が難しいという欠点を抱えている。もちろん、どんな困難でも跳ね除けられるような強い魂であれば問題はないだろうが、生物は老いるため一生強者のままではいられないだろう。
この問題に対処するにはどうしたらよいのだろうか?そう、未完成の魂である。未完成の魂は完成されたもよりも脆く弱い。しかし、形を変えられるという大きな特徴を持っている。対処が困難な問題にぶつかった場合でも未完成の魂からのサポート、つまり人間からのサポートを受けることによりウマ娘たちは前に進んできたのだ。
もちろん未完成の魂にも欠点は存在する。確固たる信念が存在しないため周りの影響を受けやすく、また多くの選択肢から選択していかねばならない恐怖におびえ行動をやめてしまうこともある。そんなときはウマ娘が持ち前の信念の強さをもって力強く人間を引っ張って行くのだ。
ウマ娘の心が折れかけたときには人間が選択肢を選び取り、人間が進むべき道に迷ったときはウマ娘が手を引く。強靭だが1つの道しか選ぶことにできないウマ娘の魂、脆いが多くの選択肢を選んでいく人間の魂、これら2種の魂がそれぞれ協力することにより2つの種族はこれまで生きてきたのだ。
絶対的な強者に見えるウマ娘が人間の良き隣人としてはるか昔の時代から共に過ごしてきたのは、自分たちそして人間の持つ性質を理解していたからであろう。人間とウマ娘、この全く異なる2つの種族の友好関係が今後も続いていくことを筆者は願っている。
なお、ここに記されている内容はすべて筆者の憶測であり明確なエビデンスはどこにも存在していないことをここに明記しておく。