時折私は、不思議な夢を見る。今まで見た事の無いカードを使う誰かを。
ただ今回の夢はいつものとは違っていた。いつもだったらデュエルが終わると同時に強制的に意識が覚醒してしまうのに、その日だけは違っていた。
「あなたは、誰なのですか?」
デュエルが終わっても意識が覚醒せず、私の前までやって来たのだ。
そして、私は問う。
「……このデッキが君の所に行きたがっている」
私の問いには答えず、彼は持っていたデッキを私に差し出す。
デッキが彼の手から離れると同時に、私の前でクルクルと回りながら、宙に浮かんでいた。
「ちょっと待って! 私の……」
彼を引き止めようと、手を伸ばすが。
「……夢」
私は見慣れた天井に向かって手を伸ばしていた。
身体を起こして、ベットから降りようとした時だった。
何かが落ちる音がしたのだ。
「デッキケース?」
見知らぬデッキケースを拾い上げ、中身を確認しようとした時だった。
「零、遅刻するわよ」
下から母から呼ばれ、私は時計を見る。
7時30分を過ぎており……
「やば! 今日はデュエルアカデミアの受験日じゃん!!」
試験受付時間が8時までであり、後30分しか無かったのだ。
慌ててデッキケースを鞄に入れ、クローゼットから着替えを取り出して、着替えてから下に降りる。
「行って来ます!」
「行ってらしゃい」
トーストを咥えながら私は会場まで走り出す。
3/3=♀
8時55分。ギリギリ何とか到着する。
受験時間には間に合い、試験番号が呼ばれるまで待っていたのだ。
デュエルアカデミアの試験は2日間掛けて行われる。
初日に筆記試験、2日目の今日は実技試験。
これから、試験官とのデュエルが行われるのだ。
「そうだ、デッキの最終確認を……」
鞄の中を確認するが、いつも使っているデッキケースが見当たらなかったのだ。
「あ、あああ!!」
試験の為に最終調整して、そのまま机の上に置いていた事を思い出す。
鞄にあるのは見知らぬデッキケースだけであり、今から戻っても間に合わない。
「仕方ない、この謎のデッキで……」
『試験番号1224番、綾波 零さん。第一デュエルブースにお越し下さい』
またも、デッキの中身を確認する時間貰えず。
「やるだけやってやるわ!」
第一デュエルブースに立ち、デッキをデュエルディスクにセットする。
「では、試験を開始する」
「はい」
「「
シャッフルしたデッキからお互いにカードを5枚引く。
「このカードたちは……」
引いて初めてこのデッキの中身があの夢に出て来たデッキであることを知った。
「先行は受験者側からだ」
「はい。では、私のターンドローします」
引いたカードを確認し、どう動くか考える。
「(これなら……)私は《スプリガンズ・キット》を召喚」
《スプリガンズ・キット》
効果モンスター
星4/闇属性/獣族/攻1700/守1000
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分のフィールド・墓地に「アルバスの落胤」を融合素材とする融合モンスターが存在する場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分のデッキ・墓地のカード及び除外されている自分のカードの中から、「烙印」魔法・罠カード1枚を選んで手札に加える。その後、手札を1枚選んでデッキの一番下に戻す。
「デッキから《白の烙印》を手札に加え、手札を1枚デッキの下に戻します。カードを2枚伏せて、ターン終了です」
「ふむ。では、私のターン、ドロー。《神獣王バルバロス》を召喚」
《神獣王バルバロス》
効果モンスター
星8/地属性/獣戦士族/攻3000/守1200
①:このカードはリリースなしで通常召喚できる。
②:このカードの①の方法で通常召喚したこのカードの元々の攻撃力は1900になる。
③:このカードはモンスター3体をリリースして召喚する事もできる。
④:このカードがこのカードの③の方法で召喚に成功した場合に発動する。相手フィールドのカードを全て破壊する。
「《バルバロス》は生け贄無しで召喚が可能だが、その代償で攻撃力は1900になる。バトル! 行け《バルバロス》!!」
《スプリガンズ・キット》攻撃力1700 VS 《神獣王バルバロス》攻撃力1900
綾波 零 LP:4000→3800
「くっ、罠カード《戦線復帰》を発動。《スプリガンズ・キット》を守備表示で特殊召喚!」
《戦線復帰》
通常罠
①:自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
「特殊召喚に成功した事で、②の効果発動。デッキから《失烙印》を手札に加え、手札を1枚デッキの下に戻します」
「カード2枚伏せて、ターン終了」
「私のターン、ドロー。(バルバロスと言うことは、あの伏せのどちらかは《スキルドレイン》の可能性が高いはず……)」
《神獣王バルバロス》を使用したデッキの大半は《スキルドレイン》などの効果無効を使用して来る。
まあ、こればかしはどうすることはできないんだよね。
「永続魔法《失烙印》を発動。そして、《アルバスの落胤》を召喚」
《失烙印》
永続魔法
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、融合モンスターを融合召喚する効果を含む効果を自分が発動した場合、その発動は無効化されず、その融合召喚成功時に相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
②:自分が融合モンスターの融合召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「アルバスの落胤」1体またはそのカード名が記されたモンスター1体を手札に加える。
《アルバスの落胤》
効果モンスター
星4/闇属性/ドラゴン族/攻1800/守0
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札を1枚捨てて発動できる。融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを自分・相手のフィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。この効果で融合召喚する場合、このカード以外の自分フィールドのモンスターを融合素材にできない。
「《アルバスの落胤》の効果。手札を1枚をコストに発動。試験官の《神獣王バルバロス》を素材に融合召喚!」
「なんだと!? 私のモンスターを素材に融合召喚できるだと!?」
「どうしますか?」
「させるか! ライフを1000払い、永続罠《スキルドレイン》を発動。その効果により効果モンスターの効果は全て無効となる」
《スキルドレイン》
永続罠
1000LPを払ってこのカードを発動できる。
①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、フィールドの全ての表側表示モンスターの効果は無効化される。
試験官LP:4000→3000
私の読み通り、《スキルドレイン》が伏せられていた。
効果解決により、《アルバスの落胤》の効果は無効となり、《神獣王バルバロス》の効果も無効になったことにより元の攻撃力へとなる。
「私は、フィールド魔法《融合再生機構》を発動」
《融合再生機構》
フィールド魔法
①:1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。自分のデッキ・墓地から「融合」1枚を選んで手札に加える。
②:自分・相手のエンドフェイズに、このターン融合召喚に使用した自分の墓地の融合素材モンスター1体を対象として発動できる。このモンスターを手札に加える。
「手札を1枚コストに、デッキから《置換融合》を手札に加えます。そして、発動」
《置換融合》
通常魔法
このカード名はルール上「融合」として扱う。
①:自分フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
②:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の融合モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをEXデッキに戻す。その後、自分はデッキから1枚ドローする。
「私の場の《アルバスの烙印》と闇属性の《スプリガンズ・キット》を融合! 現れなさい! 《神炎竜ルベリオン》!!」
《神炎竜ルベリオン》
融合・効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻2500/守3000
闇属性モンスター+「アルバスの烙印」
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが融合召喚に成功した場合、手札を1枚捨てて発動できる。自分のフィールド・墓地のモンスター及び除外されている自分のモンスターの中から、「神炎竜ルベリオン」を除くレベル8以下の融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを持ち主のデッキに戻し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。このターン、このカードは攻撃できず、自分は融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
「さらに、《失烙印》の②の効果。デッキのから《黒衣竜アルビオン》を手札に加えます。さらに、罠カード《烙印の裁き》を発動!」
《烙印の裁き》
通常罠
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドのレベル8以上の融合モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力以上の攻撃力を持つ相手フィールドのモンスターを全て破壊する。
②:このカードが「アルバスの落胤」の効果を発動するために墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。このカードを自分フィールドにセットする。
「《ルベリオン》を対象に発動し、《ルベリオン》の攻撃力以上の攻撃力を持つ相手フィールドのモンスターを全て破壊します!」
「な! まさか、これを狙っていたのか!」
「《バルバロス》がいる以上、効果無効系のカードが伏せられている可能性がありましたから」
無効前の《神獣王バルバロス》の攻撃力では、《烙印の裁き》では破壊出来ない。
そこで、《アルバスの烙印》の効果を使用する事で、誘い出したのだ。
《スキルドレイン》の効果を利用して、本来の攻撃力である3000にし、破壊可能にする。
「バトルフェイズ! 《ルベリオン》でダイレクトアタック!!」
「そう簡単にライフ削らせん! 罠カード《炸裂装甲》を発動」
《炸裂装甲》
通常罠
①:相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃モンスター1体を対象として発動できる。その攻撃モンスターを破壊する。
「っ! 《ルベリオン》!!」
もう一つの伏せカードは、攻撃宣言に反応する罠《炸裂装甲》だったようだ。
「(使うのはもったいないかもしれないけど、この状況では言ってられないわ)墓地の置換融合の②効果、墓地のこのカードを除外して発動。《ルベリオン》をEXデッキに戻して、カードを1枚ドロー」
引いたカードを確認する。そして……
「カードを1枚伏せ、ターン終了を宣言時、《融合再生機構》の②効果と墓地にある《烙印の絆》の②効果発動」
《烙印の絆》
通常魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の手札・墓地のモンスター及び除外されている自分のモンスターの中から、「アルバスの落胤」1体を選んで特殊召喚する。
②:このカードが「アルバスの烙印」の効果を発動するために墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。このカードを自分フィールドにセットする。
「《烙印の絆》自身をセットし、墓地から融合素材にした《アルバスの烙印》を手札に加えます」
「では、私のターン、ドロー。先程のコンボは実に素晴らしいものだったよ。だから、私の切り札で決めてやろう! 墓地の《神獣王バルバロス》と手札の《可変機獣ガンナードラゴン》をゲームから除外!!」
《可変機獣ガンナードラゴン》
効果モンスター
星7/闇属性/機械族/攻2800/守2000
①:このカードはリリースなしで通常召喚できる。
②:このカードの①の方法で通常召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。
この召喚方法は!?
まさか、あのカードを出すつもりなの!?
「《獣神機王バルバロスUr》を特殊召喚!!」
《獣神機王バルバロスUr》
効果モンスター
星8/地属性/獣戦士族/攻3800/守1200
①:このカードは、自分の手札・フィールド・墓地から獣戦士族モンスターと機械族モンスターを1体ずつ除外して手札から特殊召喚できる。
②:このカードの戦闘で相手が受ける戦闘ダメージは0になる。
やばいわね、私のライフは残り3800。
対して《バルバロスUr》の攻撃力は3800。
この攻撃が通れば、私の敗北が確定する。
「バトル! 《バルバロスUr》でダイレクトアタック!!」
だけど!
「そう簡単に倒させない! 罠カード《烙印の剣》発動!!」
《烙印の剣》
通常罠
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①:自分の墓地から「烙印」魔法・罠カードを任意の数だけ除外して発動できる。除外した数だけ自分フィールドに「氷剣トークン」(ドラゴン族・闇・星8・攻2500/守2000)を特殊召喚する。
②:墓地のこのカードを除外し、除外されている自分の、「アルバスの落胤」1体またはそのカード名が記されたモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。
「墓地にある《烙印の裁き》を除外し、《氷剣トークン》を守備表示で特殊召喚!」
「ちっ! だが、この攻撃を防ぐ事は出来ん!」
《バルバロスUr》の攻撃力の前では、《氷剣トークン》なんてあっという間に倒されるが、何とか一撃死は間逃れた。
「ターン終了だ。さあ、君の最後のターンだ」
試験官の言う通り、これが私の最後のターンである。
この引きで全てが決まる。
「私のターーン!! 私が引いたのは……速攻魔法《サイクロン》!!」
「まさか、この土壇場で引くだと!?」
《サイクロン》
速攻魔法
①:フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
「《スキルドレイン》を破壊」
《スキルドレイン》が破壊された事で、モンスター効果が全て有効になる。
「《アルバスの落胤》を召喚。そして、①の効果で手札1枚をコストに発動! 自身と相手の場の《バルバロスUr》を融合。現れなさい、《灰塵竜バスタード》!!」
《灰塵竜バスタード》
融合・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
「アルバスの落胤」+攻撃力2500以上のモンスター
このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードの攻撃力は、このカードの融合素材としたモンスターの元々のレベルの合計×100アップする。
②:このカードが融合召喚に成功したターン、このカードはEXデッキから特殊召喚された他のモンスターが発動した効果を受けない。
③:このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。デッキから「ドラグマ」モンスターまたは「アルバスの落胤」1体を選び、手札に加えるか特殊召喚する。
「2500か、それならまだチャンスがーーー」
「チャンスなんてない! 《バスタード》の効果! 融合素材にしたモンスターの元々のレベルの合計×100攻撃力アップする!!」
「な!」
《バルバロスUr》のレベルは8、《アルバスの落胤》はレベル4。
レベルの合計は12。つまり、1200ポイント《バスタード》の攻撃力がアップする。
「攻撃力……3700だと……」
「バトル! 《バスタード》でダイレクトアタック!!」
「うがぁ!!」
試験官LP:3000→-700
私の勝利が確定すると同時に、ソリットビジョンが消える。
「勝った……」
「おめでとう。合否については後日知らせる」
そう言われて、私はデュエルブースを後にするが途中の通路で力尽き壁に背を付け、少し休む。
全く知らないカードを使ったせいで、いつも以上に体力が消費されてしまったのだ。
「このデッキは、一体何なの……」
身に覚えのカードたちに、私の問いに答える者はいない。
(◎ Д◎・
「一番ブースの子、中々面白いデッキ使っていたわね」
「あぁ、融合主体のデッキであり、素材を相手モンスターも出来るとは中々面白い」
零の試合を見ていた、青の制服を着た男女がそれぞれ感想を述べる。
「あの子と貴方が戦ったら、どちらが勝つかしら? カイザー亮」
「……」
カイザー亮と呼ばれた男子生徒は、彼女の問いには答えることはなかった。