書きたいことは沢山。
オリ主人公の詳細とか、原神主人公の存在とか。
***
偽りこそ美しいのか、偽りでも美しいのか。
いつか本物になり得るのか。
造花は何も答えない。
***
モンドにある西風騎士団の一室、俺はどうしたものかと頭を悩ませていた。
見惚れるような屈膝礼をする彼女はメイドの極みなのだろうが、如何せん視線のやり場に困る。
「ノエルさん、俺は客人ではないので普通に呼んでいただいて大丈夫ですよ?」
「そうなのですか? ガイア様からは懇切丁寧に接してくれと言われましたが」
「それ冗談で言ってると思いますよ」
様付けで呼ばれるのはむず痒いものがあるし、何より俺はそのような敬称を付けられるほどの人間じゃない。あれやこれやと言い訳付けて普通に話してくれと言うと渋々ながら了承してくれた。
「シンラ君が戻って来られたのならお父様方も大変喜ばれますね」
「……そうかな」
「ええ、私はそう思いますよ。それに同じ西風騎士団を目指す者ですから」
「いや、俺はもう」
「もう?」
首を傾げるノエルに俺はその次の言葉を紡げないでいた。
もう諦めましたと言えば良いじゃないか。それでこの会話は終了。ただそれだけのことなのに、未練でもあるかのようで二の句が継げなかった。
「もし、困っていることがあるなら気軽に私に仰ってくださいね」
騎士団メイドですからとノエルは微笑んだ。
「何でも仰ってくださいね?」
(この人、めっちゃうずうずしてる!?)
チラチラと外が気になって仕方がない癖に尊敬するガイアの言付けを無碍にすることはしたくないという所だろう。
廊下から響くドタドタとした集団の足音を聞く度にびくりと体が停止する姿はさながらそういう玩具のようだった。スネージナヤ辺りに行けば売っているかもしれない。
「すみません。俺にはまだ口にすることなんてできないです。もし俺の悩みが打ち明けられるようになったら聞いてくれますか?」
「もちろんです。シンラ君の言葉、待ってますから」
「それでなんですが——なあ、覗いてないで入ってきたら良いんじゃないか? 」
つい先ほどから息を潜めて伺う者が一人。俺の投げかけた言葉でゆっくりと申し訳なさげにドアが開く。
「……あ、あはは。なんだか大事な話をしてたから入りづらかったんだぁ」
「アンバー様!? いらっしゃってたのですか」
たははと頭を掻くアンバーは俺を見るとキョトンとした。
「シンラ、久しぶりだね! んー、ちょっと背が低くなった?」
「アンバーがデカくなっただけだろ」
前回会った時と身長があまり変わらない俺は、昔よりさらに上を見上げなければならない少女が相も変わらず元気に満ちていることに安堵していた。
***
童話ばかり読んで引きこもりがちだった俺を外に引っ張り出してくれた少女がいる。お姉ちゃんと慕い、後ろを引っ付いて歩く過去の自分を思い出すと今でも火を吹きそうなくらい顔が熱くなるかもしれない。
騎士団の医師の一人だった俺の父さんは、璃月港からキャラバンの護衛をしていた男の命を助けたことがきっかけで友人となった。その男はその後に西風騎士団に所属し、モンドで家庭を築いた。それが後のアンバーの祖父だ。
家族間で交流があったからかアンバーは無口だった俺を所構わず面倒を見ようとしたからか、今でも弟扱いしてくる。
難儀なことにこの歳になっても俺の身長は伸びないあの頃のままなだけに、アンバーが手のかかる弟に対する扱いを改めようとしないのだ。
「ガイア先輩に帰ってきたことを知らされた時は驚いたけど。タイミングが悪いね」
故郷が恋しくなって帰ってきましたと、率直に言えば可愛がられるかもしれないので絶対に口にしたくない。
話題を逸らしてしまおうか。
「それでどうしたんだよ、アンバー。まさかサボりに来たわけじゃないだろ?」
「そりゃあね。こんな状況でこそわたしが動かないわけにはいかないよ」
アンバーが懐から一枚の封書を取り出した。
「これはジンさんからシンラ宛に渡されていた物、特別期間同行書だよ」
現在大団長不在の騎士団において実質的なトップであるジン代理団長からのお手紙。封蝋されて久しく、数年は開けられていないのは明白だった。
「同行書?」
「うん。あんたは風魔龍の一件が終わるまでわたしの管轄下に入ることになったの。つまり、部下ってこと!」
「へぇ……はあ!? 聞いてないぞ! 騎士団は一般市民を戦わせる気か!」
「前に騎士団試験受けておいてよく言うよね……まあ、安心してよ! シンラがやることは負傷者の手当だから」
「教会の人間が動いているし、騎士団の方でも手回しはされてる。実際俺一人居なくても変わらないだろ」
「またそうやって暗いこと言ってる。シンラは少し自信を持って行動すべきだとわたしは思うけどな〜。どちらにしろその手の抗議はジンさんとガイア先輩にしてね」
アンバーは「はいはい」と手を叩く。
「では最初の任務を言い渡します! シンラ及びノエルは囁きの森へと探索派遣された冒険者の捜索をお願いします!」
「捜索? あの辺りはそこまで危険な場所じゃないだろうに」
「今日そちら側を調べたの。そしたらうわあって思うほどヒルチャールの目撃数が多くて驚いたよ」
普段奥のそのまた奥に住む奴らの主な生息地はダダウパの谷と呼ばれるヒルチャールの部族が密集した場所だ。数百年前の傷跡が今でも残った跡地を巡る学者は珍しくない。
であればこそ地理的に間反対の場所に仮拠点があちこちに見つかったという。
潰して回るのは容易だが、それは懸命な判断ではないと騎士団での見解だった。外ばかりに気を配れば内側から食われる可能性もあるというのがモンドのなんともし難い現状である。
「ジンさんが言ってたんだ。このワタワタした中で愚人衆(ファデュイ)がちょっかいを掛けてきてるって」
「下手に動けば警戒されるのか」
「そうかもしれないね。その点、わたしなんかが動く分には問題ないからね」
他の国が間接的に関与してそうだ。いっそ私たちが騒ぎを大きくしましたと声高に宣言してくれた方がまだ納得がいくレベルで使節団の動きは怪しいそうだった。
ジンは龍災の件でここ数日何度も益にもならない話し合いをさせられているともアンバーは言った。
「一応シンラは冒険者の体でこの仕事を受けてもらうからね。冒険者登録は昔してたよね?」
「まあ、そこまでする必要があるかはわからないけどな」
「ガイア先輩の言葉を借りるなら『身軽な虫は羽音が大きいだろ?』」
全く似てないモノマネをするアンバーは俺が苦い笑いを浮かべるも気にすることなく、
「その辺の詳しい話は冒険者協会で聞いてくれればいいからね。じゃあノエル、この子の面倒よろしくね?」
「おい、な「はい! お任せください!」」
俺の抗議は虚しくアンバーはじゃあねと颯爽と部屋を出て行ってしまった。
「俺は虫かよ……」
呟いた声が、風でガタガタと揺れる窓の音で掻き消えていった。
次かその次くらいに戦闘書きたい。