では、どうぞ!
「いらっしゃいませー、店内でお召し上がりですか?」
俺はお得意の営業スマイルを赤子と五才位の子連れの若い女性客に向ける。
すると女性客は少し顔を赤らめる。
なんだ? どうして俺の客相手は、それも女の人はいつもこういう風になるんだ?
「あ、あの…… 聞きたいのですが」
女性客はしどろもどろになりながらも俺に聞いてくる。
どうやら女性客のお子さんはアレルギー持ちらしい。
話によれば海老と蟹と、果物がダメらしい。
となれば、
「海老は法令規定で表示義務のある品目ですので、こちらのメニューに表示されている魚介がメインとなるメニュー全てに使用されています。それと果物はーーー(いや、まじ長くなるんで以下省略)」
俺の長説明に納得した女性客は俺が指摘した以外のメニューを選んだ。
そうだ、確かこんなシーンが原作であったな…… こんな風に女性客の子供のアレルギーに対応するシーンが。でもその役目って魔王なんじゃねーの?
俺はチラッと隣で働いている魔王こと佐奈江の方を見る。
しかし佐奈江は俺の事を真剣に見つめてるいるだけで何もしてこない。
つか、なんで見てんだよ。
しょうがねぇな。じゃあここは俺が、やりますか。
「ゴホンっ。よろしければ電子レンジをご利用なさいますか?」
「え? 電子レンジですか?」
「はい。レンジで調理できる離乳食等をお持ちなのであればと思いまして。お母様もお子様も昼食を召し上がるのであれば、赤ちゃんも一緒の方がと、差し出がましいこととは思いますが」
我ながら原作通り、かな? なんか転生してから原作についての記憶が曖昧なんだよな~。まあ、元々三巻分しか原作知識ねーが。
女性客ははにかみながら頷いた。
「ありがとうございます。これ、レンジで四十秒で出来上がるので……」
女性客はバックの中からレトルトパックを取りだし俺に渡してきた。
「ではお預かりします。えーとあ、ちーちゃ、じゃなくて佐々木さん」
俺はいつの間にか後ろにいた愛くるしい職場の天使、佐々木千穂、そう原作ヒロインの千穂ことちーちゃんにレトルトパックを渡す。
「は、はい」
「これレンジで二十秒暖めてくれ」
「え? でも四十秒って」
女性客の話聞いてたのな。
俺は得意気に言う。
「それは家庭用レンジの話。店のは業務用で出力が家庭用の倍以上だから二十秒で十分なんだよ」
「わ、わかりました!」
佐々木さんは俺にキラキラの尊敬の眼差しを向けてくる。
ふっ、流石俺。って原作知識のおこぼれなんすけどね。
会計を済ませると女性客から何度もありがとうとお礼を言われる。なんか照れ臭いなと思っていると、再び俺の側に佐々木さんが立っていた。
つか気配感じなかったぞ。アサシンの素質あんじゃねーの?
佐々木さんは俺に対し目を輝かせて見上げてくる。
「えと、何? 佐々木さん」
「神崎さん、やっぱり凄いですね!」
「え?」
「だってだって! アレルギーの食材とか何に何が入っているとか、全部覚えてるんですか?」
「え、ま、まあね」
相変わらず凄い眼差しを向けえくる佐々木さんを見て不覚にも俺は可愛いと、思ってしまう。
そこに佐奈江も入ってきた。
「確かに凄いわね。まさか赤ちゃんの離乳食のことまで気づくなんて」
「まあな。つーか佐奈、仕事が忙しくて言わなかったがお前よくも俺をおいて逃げたな」
「さーて仕事仕事」
「おい、話聞けよ」
ふと気づく。佐々木さんが俺に対し尊敬の眼差しから変わりムッとしような目で見てくる。
「ど、どうしたの?」
「いえ、神崎さん、真奥さんとなんか仲いいなーと思いまして」
え? そうかな…… 俺は誰だろうと変わらず接しているつもりだが……
「それに神崎さん。真央さんのことは佐奈って呼んでるのに私のことは佐々木さんだし……」
「そ、そういわれてもな……」
まあ、確かに魔王のことを佐奈江から略して佐奈と呼んでいるが…… そんな気にすることか?
俺が悩んでいると佐奈が得意気な顔で、
「当然よ。なんせ私達は一緒に「わー!わー!」」
俺は佐奈の言葉を遮り佐々木さんから背を向け佐奈と小声で話す。
「バッカ野郎! 変な誤解産むのは嫌だから住んでるのは内緒だと言ったろうが!」
「あ、ごめん」
たく…… ってうぉっ!? なんか佐々木さん、敵意の目を向けてくる。主に佐奈に。
なんか怖ーな。もしかして佐々木さんも悪魔?
「あのすいません」
「え、あ、お客様すいません! お待たせしてしまい!」
驚いた。いつの間にか新たな女性客が俺の目の前に…… ってうん? この人は確か……
「さっきはどうもありがとうございました。あのこれ傘です。もう雨は止んだようなので返します」
俺が傘を上げた人だ。別に持ってかえってもよかったのだが。
つーかこの人やっぱり見たことあるような…… あ、わかった! この人は…… って不味いじゃん!
俺は気づき佐奈を隠そうとする。しかし時既に遅し。
女性は佐奈を見て目を大きく見開いている。
「ん? な、なんでございましょうか? お、お客様」
佐奈は恐る恐る聞く。つーか気づいてねーのか。
「ど、どうして…… あ、貴方が……」
女性は肩をプルプルと震わせ大声で、
「貴方がなんでこんな所にいるのよこの魔王!」
鋭い目付きで言った。
佐奈、いや魔王はそれを見て同じく驚いた様子を見せ、
「あ、あんたまさか…… 勇者かぁ!?」
上ずった声で言った。
その光景に俺は頭を抱えたくなる。
あーやっちまった。でもまぁいつかはこうなる運命か……
睨みあう魔王と勇者。頭痛がしてくる転生者こと俺。訳が解らずポカンとする一般人佐々木さん。
さてさてどうなることやら。
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