すごく強い魔術師がホグワーツにやってくるので、『ハリーポッター』は賢者の石で完結します。   作:味なしコンフレーク

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–序章–『1981年10月31日』

 プリベット通り四番地の住人ダーズリー夫妻は、非常識を好まない人種らしい。

常日頃から、『おかげさまで、私どもはどこからみてもまともな人間です』と自慢して回っているのだと、近所の女性は顔を顰めてそう言った。

「顔色が悪いようですけど、風邪ですか?」

「風邪になった方がまだマシかもしれないわね」

「というと?」

「あそこの奥さんはね、垣根越しに近所の様子を詮索するのが趣味なのよ。貴方に分かる?毎日のように、人の私生活をジロジロと覗き見される気持ち?」

「俺にはさっぱり」

隣でボケーっと突っ立っていた『部下』がそう答えた。

背丈は普通の2倍、横幅は5倍。巨人と見紛うほどの『部下』の顔中を覆った髪と髭から覗く目に怯えたのか、ご近所さんは家の中に引っ込んでしまった。

「・・・見ての通りだ、ルビウス。連中は、ご近所さんの耳にタコができるほどに普通でありたいと願っている。摩訶不思議な出来事が自分たちのまわりで起きてほしくないんだ」

ダーズリー家の玄関の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。

「だからな、ルビウス、良いか!良〜く聞けよ?絶対に!変な事するなよ?特に魔法とか使うなよ?お前がホグワーツを退学になったからじゃないぞ。警戒させないようにするためだ。俺らは頭のおかしな連中じゃないって事を分かってもらうことが一番重要なんだ。だから、くれぐれも・・・おい、待て、ルビウス!その手に持っている傘をおr」

 

ドーーーーーン!!

 

小柄な青年の忠告むなしく、ルビウスと呼ばれた大男は、ダーズリー家の扉を吹き飛ばした。

「・・・お前の頭は、鶏か?」

「こいつら、ダンブルドアの手紙を無視した。ハナっから話を聞く気はねぇよ」

「お前みたいな奴がいるからな」

ズンズンと家の中に入っていくルビウスに呆れて物も言えないリセイだったが、彼を放っておくと、ダーズリー夫妻に何をしでかすか分からないので、慌てて追いかける。

「動くな!こっちには銃があるぞ!」

案の定、リビングでは夫人であるペチュニアを庇うようにルビウスの前に立ち塞がったバーノン・ダーズリーが銃を向けていた。

「だまれ、ダーズリー!太ったおおs「よせ、ルビウス」・・・リセイ!」

リセイは、菓子折を鞄から取り出した。

「部下の無礼を許して頂きたい。彼は、ハリーの事となると我慢が利かない性格なんです」

「アンタは確か、更紗流工研の・・・!」

「代表をしている更紗流 理生です。いやぁ、グランニングズ社の社長にお会いできるなんて光栄だ」

「・・・まさかアンタもそのおかしな連中のお仲間だったとはな。何のようだ?言っておくが、送られてきた手紙の件なら聞く気はないぞ」

「何だと!?お前はダンブルドアの言うことが聞けんというn「ルビウス!」」

銃は下ろしたものの、いまだ警戒しているバーノンの言葉に憤慨し、掴み掛かろうとしたルビウスを制したリセイは、鞄から書類の束を取り出した。

「タダでとは言わない。そうだなぁ・・・ウチがアンタの会社のお得意様になるっていうのはどうだ?」

「なに・・・?」

「勿論、少しは安い値段で売ってもらいたい。こっちだって無限に金が湧いて出てくるわけじゃあないからな。だが、アンタらがちゃんとハリーポッターを育ててくれる間は俺は何があっても契約を途中で切ったりしないし、魔法使いとして彼がキチンと自立できたなら、その後の契約も保証する・・・悪い話じゃあないだろ、ダーズリーさんよ?」

「そんな口約束、魔法とかでどうとでも出来るだろう?わしの記憶を消したり・・・」

「そんな魔法があるんですか!?いやはや、驚いた・・・イギリスの魔法使いというのは随分と野蛮なんですね」

「・・・なぜだ?」

「はい?」

「更紗流工研・・・建築業界でその名を知らぬ者はいないくらいの一流企業だ。わしだってお近づきになれたらと思っていた。だが、お前さんが魔法使いだというのなら、ドリルなんかいらないだろう?魔法であっという間だ、違うか?」

「魔法であっという間、ね・・・確かに便利だ。効率面の事を考えるのなら、これほど便利な道具はない」

そう言ったリセイはポケットから写真をいくつも取り出した。真新しい家のリビングでは笑顔で写真に写っている家族の写真だ。

「これは?」

「ウチの会社が手がけた家を購入してくださったお客様の写真です。いい笑顔でしょう?私はね、この瞬間が一番好きなんです。自分たちの力だけで作り上げたものがお客様の生活の一部となる。心を落ち着けられる場所になれると確信できるからです」

「・・・!」

驚いた顔を見せたバーノンにスッと手を差し出すリセイ。

「人の手だからこそ、生み出せるモノだってある。機械に作らせた模造品には作れないものが・・・貴方もそう思いませんか、バーノンさん?」

 

 

「全く、だからお前を連れて行くのは反対だったんだ、ハグリッド」

「それはこっちのセリフだ、リセイ。俺だって、ダンブルドア先生がお前さんに『ハリーの事を任せる』と言った時は猛反対したんだ。絶対、ハリーを金儲けに利用するだろうと思っていたからな!」

「郷に入っては郷に従えだ。相手は何が好きで何が嫌いか、どういう思想を持っているのかいないのか。それを正しく理解してこそ信頼を得られて良い契約を結べるんだ。決して、家のドアを吹き飛ばしたり、似合いそうだからといってブタの尻尾を生やしたりしたらダメなんだよ、分かるか?」

「あのダンブルドアが!あいつらにハリーを育てさせるように仰られたんだぞ!ダーズリーの好き嫌いは関係n「おいおい勘弁してくれよ、ルビウス!20世紀もあと20年足らずで終わるんだぞ!?お前らが大事にしている忠誠心や義理人情なんざはな、時代遅れなんだよ!」

リセイはそう言ってポケットから薄い板のようなものを取り出した。

「これが何か分かるか、ルビウス?電話だ!電話って分かるよな?マグルが使う連絡手段だ。でもな、これはただの電話じゃない。数十年、いや・・・すぐそこで待っている未来で!みんなが持つものになるかもしれない持ち運べるスマートな電話(Phone)だ。みんなが誰かって?聞いて驚け!マグルと・・・俺ら魔法使いだ!」

「俺らがマグルの道具を使うっていうのか?」

「驚くことじゃない!普通のことなんだよ、ルビウス。お前らが知らないだけで、他の国じゃあマグルと魔法使いの交流なんて当たり前になっているんだよ。この『仮称スマートフォン』だって、アメリカの非魔法使い(ノー・マジ)と魔法使いの共同研究の成果さ。他にもあるぞ?ロシアでは魔法を科学的に解釈した理論を宇宙工学に役立てる研究を進めているし、中国や韓国ではマグルと魔法使いが手を組んで魔法を軍用化することで、アメリカに変わって世界の覇権を握ろうと画策している。日本だってそうさ。魔術師や呪術師に陰陽師。彼らにとっては、魔法の使えない一般人こそ大切なお客様さ。今も昔もこれからもな!いいか!?時代は物凄いスピードで加速し続けているんだ!枷なんかどこにも存在しない。魔法なんて特別でも何でもなくなる。俺らが陰に隠れてコソコソする必要なんかなくなるんだ!それって最高だろう?」

「・・・そうは思わん。そんなことになったら、誰もが魔法で何でも解決したがるようになる。我々は関わり合いにならない方が一番いい」

「そうやって変化を恐れて、時代に取り残されていくことの何がいいもんか!」

「俺らはきっと死ぬまでお互いの気持ちを理解できることはないさね・・・仕事は終わった。俺は帰る。お前さんともきっとこれっきりだ」

そう言ってルビウスはパツパツのビジネススーツを脱ぎ捨て、雑踏の中に消えて行った。

「時代遅れの半巨人め・・・」

 

「そう言わんでやってくれ、理生。ハグリッドはハリーがとても心配なんじゃ。」

 

耳慣れた日本語が聞こえた方を振り向くと、そこに立っていたのは一人の老人だった。

淡いブルーの眼が、半月形のメガネの奥でキラキラと輝く彼の名はアルバス・ダンブルドア。イギリスで最も偉大な魔法使いだ。

普段は、地面を引きずるほどの長いローブを身にまとう彼だが、マグルの多い街中では、年相応のスーツ姿で現れた。

「校長になってからは着なくなったが、スーツも偶にはいいものじゃのう」

「とても良くお似合いですよ、ミスター・ダンブルドア。前言を撤回するつもりはありませんけどね」

「相変わらずじゃのう、理生。電子機器が使えないはずのホグワーツのハッフルパフ寮内でファミコンが流行った時は、わしも流石に頭を抱えたぞ」

「やり過ぎたと反省しています。俺はただ、電子機器が阻害される魔法の仕組みと、それが科学技術の進歩によっていつか破られてしまうかもしれない可能性を証明したかっただけだったのですが・・・マグル生まれのルームメイトに見つかったのが運の尽きでした」

「君の時代の先を行く発想には、いつも驚かされていた。だからこそ、君にハリーの事を託したのじゃ。どちらの世界にも精通し、理解もある君をのう」

「ハリー。ハリー・ポッター・・・生き残った男の子ねぇ」

イギリス魔法界で恐れらている最低最悪の魔法使い『ヴォルデモート』の死の呪文を跳ね返し、瀕死にまで追いやった赤ん坊。

「その赤ん坊をどうなさるおつもりですか、ダンブルドア?」

「どうする?ほっほ。随分とまた引っかかる物言いをするのう」

「何を企んでいるのかは知りませんが、その赤ん坊はただの赤ん坊だ。他の魔法使いの子供と何ら変わらない、『たまたま生き残っただけ』の男の子だということをお忘れなく」

「ではわしからも一つ。心配するようなことは何もないと言っておくよ」

「・・・食えない人だ」

「ところで、そのハリーはどこに?ハグリッドに連れて来させるように頼んでおったはずじゃが?」

「あぁ、それなら・・・」

その時、雑踏から一人の青年が姿を現した。黒い着物に赤い羽織を身に纏った姿は、ロンドンの街並みとはどこまでも似合わず、だからこそ、彼がリセイにハリーを任せた人物であることをダンブルドアは一瞬で見抜いた。

「彼が?」

「えぇ。入ったばかりですが、とても優秀で、彼になら任せても良いと思ったんです・・・何か問題はありましたか、九郎さん?」

「マg・・・一般人が群がる前に連れ出せました。今はぐっすり眠っています」

赤いロングヘアーを一つ結びにした『九郎』と呼ばれた青年はそう言ってダンブルドアにハリー・ポッターを預けた。

「・・・では、私はこれで失礼します」

「ご苦労様です」

「・・・九郎、とか言ったかのう?」

そう言って立ち去ろうとする九郎だったが、それを引き止めたのはダンブルドアだった。

「どこかで会ったかのう?」

「・・・いえ。初対面ですよ、アルバス・ダンブルドア。貴方のような偉大な魔法使いにお会いできて光栄です」

「・・・そうか。ありがとう」

最後に軽く会釈して、九郎は再び雑踏の中に消えて行った。

「俺も日本に帰るとしよう・・・ミスター。約束は忘れないでくださいね」

「バーノン氏との契約で発生する金額分の仕事を紹介する、じゃったのう。では手始めに、クィディッチ競技場の補修工事をお願いするとしよう」

「また梟を飛ばす・・・インターネット回線が繋がってくれれば、そんな面倒なことはしないで済むんだがな」

理生はそう言って、その場に初めからいなかったかのように姿を消した。

「・・・では行こう、ハリー」

包まれた毛布の中に微笑みかけるダンブルドアの腕の中で、赤子はすやすやと寝息を立てていた・・・これから先、待ち受ける運命を知らずに。

 

「貴方がハリーを連れてくると願い出た時は驚きましたよ、九郎さん、いや・・・シリウス・ブラック」

高速道路を走る車を運転するリセイは隣に座る九郎に声をかけた。

「・・・本当は、オレが育ててあげたかった。でもイギリスで『シリウス・ブラック』はハリーの父親でもある友・ジェームズとリリーを殺した犯人になってしまった。これからは、顔も名前も変えて生きていかないといけない・・・叶わない夢だ」

「・・・心配するな。縁は繋がった」

 

「そう遠くない未来で、いずれ会えるさ」

 

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