すごく強い魔術師がホグワーツにやってくるので、『ハリーポッター』は賢者の石で完結します。 作:味なしコンフレーク
「大変だったわねミネルバ・・・あぁ、いえ違ったわね。梟子ちゃんだったかしら?」
「茶化す為だけに私を呼んだのなら、もうお暇しますミセス・ムトー」
1991年の夏。ホグワーツの副校長 ミネルバ・マグゴナガルは、古い友人の葬式に参列するために日本を訪れていた。
だが彼女は、日本に来たことを少しだけ後悔していた。
「あら、浮かない顔ね。皺だって消えたし、目もよくなったんでしょう?私くらいの歳になれば誰だって一度は、若返りたいって願うものよ?」
「お生憎様。私はこれでも、自分の顔が大好きでしたので」
日本の魔法学校『魔法処』で理事長をしている知り合いのところへ訪れた彼女は、紺色のセーラー服を来た17歳くらいの日本人の少女の姿だった。
もちろん彼女は歴としたイギリス人であるし、セーラー服なんて着る歳でもない。
「それに関してはごめんなさい。ウチの生徒が本当に取り返しのつかないことをしてしまったわ・・・最も、死んでしまっては怒ることもできないのだけれど」
「やはり・・・この身体の持ち主は死んでしまったのですね」
『峰狛 梟子』。魔法処高等部の2年生。
彼女こそがミネルバの身体を道連れに自殺し、ミネルバが他人の身体でこれからの人生を生きていかなければならなくなった原因となった少女の名前である。
日本の魔法界では、いじめや偏見に苦しんで自ら命を絶つ若者が多い。しかもランダムで誰かの身体と入れ替わる魔法を使った自殺という傍迷惑な方法で。
「『入れ替わることで、痛みを感じずに死ぬことができる』なんて大嘘よ・・・だって、可愛い生徒を失った私の心はとても痛いんだもの」
「アオイ・・・」
「・・・落ち込んでばかりもいられないわ。やらないといけないことは山ほどあるんですもの。ちゃんとしないとね。『情けない顔をするな』って、あの人にも怒られちゃうわ」
「・・・ゼトならそう言うでしょうね」
最後を看取ることが出来なかった友人の怒った顔を想像して思わず苦笑い。アオイもクスクスと笑う。
「・・・ホグワーツと魔法処で交換留学を行うことになったわ。表向きの理由としてね」
「アルバスったらまた勝手に・・・ん?表向き?交換留学以外に何の意味が?」
「ヴォルデモート討伐がウチの生徒をホグワーツに向かわせる本当の目的よ」
「ブッ!?・・・・ゲホッ、ゲホッ!?」
アオイのトンデモ発言に思わず紅茶を吹き出すミネルバ。
「大丈夫?」
「え、えぇ、大丈夫です・・・はー、びっくり。死ぬかと思ったわ!!」
「・・・気のせいかしら?貴方、精神が梟子ちゃんにだんだん寄ってきていない?」
「怖いこと言わないd・・・い、いえ!気をつけていれば問題ありません!寧ろ怖いのは貴方の発言の方です!」
「ミネルバ・・・いや、もう梟子でいいわよね?ダンブルドア先生と何度もこちらに来ているんだから、私たち日本の『魔術師』の実力が高いのは知っているでしょ?」
「それは、そうですが・・・本当にできるんですか?『例のあ「ヴォルデモートよ、梟子!!」・・・いいでしょう、『ヴォルデモート』を倒すなんていくらなんでも・・・」
「必ず倒せるわ」
「彼、大寺辰水ならね」
「あ、おはようございます。峰狛先p・・・あー、いや、違った。えっと・・・マグゴナガル先生、でしたっけ?」
翌日。彼の実力を知りたいのなら見たほうが早いと言うことで、梟子は、大寺辰水の任務に同行することになった。大寺辰水は既に任務に出ているらしく、途中参加の生徒と地下鉄の入り口で集合することとなった。
「『梟子』で構いませんよ。貴方が今回、私を案内してくれると聞いています・・・えっと、名前なんだっけ?」
「わ、わたし、首天童 伸乃って言います。魔工学科専攻の1年です!よろしくお願いします、梟子さん!!」
「よろしくお願いします、ミス・シュテン・・・ところで、任務と聞いていますが、生徒が実戦に駆り出されているのですか?」
「ウチは実力重視ですから!学びたければ見て戦って学べ!というのが校訓です。まぁ、人手が足りないからというのも大きな理由なんですけどね」
「生徒でも貴重な戦力ということですか・・・」
「・・・」
ふとシュテンと目が合う梟子。シュテンは少し悲しそうな顔をしていた。
「・・・どうかしました?顔色が良くないですよ?」
「あ・・・!ご、ごめんなさい!何でもありません・・・先を急ぎましょう。大寺先輩と急いで合流しないと」
「そ、そうね・・・その、地下鉄を使うということは、任務場所はここから離れた場所にあるということなのですか?」
「いいえ。地下鉄そのものが任務地です」
「???」
「『魔工メトロ』に巣食う悪魔の討伐・・・それが我々の今回の任務です。一般人に犠牲者が出始めているので、被害が大きくなる前に対処しろ、とのことです」
地下鉄は、時間通りに出発した。
「今のところは何の問題もなさそうですよ、シュテン。怪しい素振りを見せる乗客もいないし、私たち以外の魔力も感じられない・・・もう大寺辰水が倒してしまったのでは?」
「もしそうなら、大寺先輩からメッセージが届くはずです」
「メッセージ?」
「はい、メッセージ・・・私たち魔法処の生徒は通信手段として、この『モバイルフォン』を貸与されるんです」
二つ折りになっている小箱のようなものを開いて見せるシュテン。マグルの家にある『テレビジョン』のような画面の隅っこには梟がおり、スヤスヤと眠っていた。
「これは・・・生きている梟ですか?」
「これはただの絵ですよ。未読のメッセージはないという意味です。もしメッセージが来ていたら、画面の中の梟が目を覚ましますから」
「目を覚ます?それって生きていると言うことじゃあないんですか??」
「・・・やっぱり、峰狛先輩じゃないんですね」
「え?」
「あ!?す、すいませんッ!!わ、私ったら、梟子さんに失礼なことを・・・!」
「・・・いえ、構いませんよ。きっと貴方にとっても『峰狛梟子』は大切な人だったんでしょう?」
「大切っていうか・・・泣き虫でいじめられっ子だった私に声をかけてくれたのは、大寺先輩と峰狛先輩だけだったから」
「・・・彼女は、どんな子だったんですか?」
「峰狛先輩は、正義感の強い人でした。困っている人に手を差し伸べて、悪いことは『悪い!』って言える人でした・・・今でも私の憧れです」
「そうですか・・・とても優しい子だったんですね」
「はい・・・だから、そんな峰狛先輩に何もしてあげられなかった自分が悔しい」
俯いていた顔を上げたシュテンは今にも泣き出しそうだった。
「私は、守ることしかできないのにっ・・・なのに私h–––––」
「『IF YOU THINKING LIKE THAT------YOU MUST BE DIE.』」
一瞬の出来事だった。呪文の光でもなければ巨人やトロールのような巨大な一振りでもない。得体の知れない何かがミス シュテンの首を吹き飛ばしたのだ。
「!?・・・シュテン!!!!!!」
(見えなかった・・・魔力は感じなかったんだ。私とシュテン以外の魔力は・・・)
「そう思い込んでしまった時点で、貴方は、死んでいたでしょうね」
・・・一瞬だけ、地下鉄中を光が駆け巡ったように見えた。
瞬間、地下鉄は芋虫のように蠢いて壁にぶつかった。
「・・・貴方が、大寺辰水?」
「はい、そうです。遅くなって申し訳ない」
詰襟の学生服の上から外套を羽織り、帯刀している日本刀から手を離した大寺辰水は、地下鉄を指さした。
「梟子さん。地下鉄内の乗客を非難させたいのですが、どうも自分は、救助とかは苦手で・・・貴方の魔法なら、一瞬で何とか出来ます?」
「・・・やりましょう。『Wingardium Le』び・・・!?」
杖を振り乗客を浮かせて、地下鉄から外に移動させようとした瞬間、地下鉄そのものがありえない動きを取った・・・具体的には変形し、二足歩行でこちらに襲ってきたのだ。
「な、何ですか、アレ!?」
「地下鉄に偽装した人工悪魔ですよ。厄介ですよねー、アハハー」
「笑っている場合ですかッ!シュテンが殺されたんですよ!?」
「首天童が死んだ?それこそジョークにもなりませんね」
「は?」
私の目の前で転がっているシュテンの死体に近寄った大寺辰水は・・・唐突にセーラー服のスカートを捲ったのだった
「いつまで寝てんだ、起きろ、」
もう何度驚いたのか分からなくなってきたが、私は、今日一番、驚いた!!
なんと、シュルシュルという音と共に蛇のようなものがシュテンの頭を引きずって近付いてきたのだから!!
「・・・ぃびゃやあああああああああ!?」
シュルン!と言う音がして、シュテンの頭が死体にくっついたと思ったら、彼女がバチリと目を覚まして・・・顔を真っ赤にして悲鳴をあげたのだった。
「ええええええええええ!?」
「よし、やっぱり生きていたな」
「大寺先輩ッ!!その起こし方なんとかならないんですか!!///」
「何ともならん」
「・・・大寺辰水。日本には、死者蘇生があるのですか?」
「そんな上手い話があるわけないでしょ」
「でも、だって、シュテンは首を」
「斬られていませんよ。こいつが自分で避けたんですよ」
「よけた?」
「コイツは半妖怪なんですよ。人間とろくろ首の」
「わ、わたし、親の期待に応えたくて魔術師を目指すことにしたんですけど、死ぬの怖いし、殺すのも嫌だからって・・・守る魔術を覚えることにしたんです」
「守る魔術?」
「自動防御術式。コイツは自分の首と心臓にその魔術をかけている」
大寺辰水がシュテンの顔面を殴ろうとした瞬間、首がその攻撃をひょいっと避けた。
「!?」
「臆病ってのは武器だ。守りに関しては5本の指に入る実力を持っているんですよ、こいつは・・・まぁ自動防御術式って、魔力消費激し過ぎるから、敬遠されがちだし、コイツもその術式に魔力を全振りしているから、守る以外はてんで役に立たないんですけどね」
「ひ、ひどい言い方です・・・」
「でも、お前を殺せる人間なんて誰一人いやしないさ。少なくとも俺はそう思っていたし・・・峰狛もそう言っていたと思う」
「!」
「だから自信を持てよ、首天童・・・お前が壁になって、梟子さんを守れ」
「・・・はい!」
私を庇うようにシュテンが前に立ち、大寺辰水が悪魔の前に立ち塞がった。
「稀代の魔術師、
「『MASTER SAY THAT------HUMAN MUST BE DIE.』」
「そりゃあ、厄介な遺言を残していったもんだ。でも安心しろ・・・すぐ送ってやる。
大寺辰水が足を開き、腰を落とし左拳を構えた。その姿は『
「これは受け売りだけどさ、全てのジャンケンの『ポン!』の前振りが『グー』で始まる理由って・・・それが本当は一番、強いかららしいぞ?」
瞬間、地を震わすほどの振動に私は息が止まりそうになった。
「梟子さん、大丈夫ですか?」とシュテン「貴方だけは、私から離れないでくださいね。死んじゃいますから」
「あ、あなたたち、は、平気なのです、か?こんな魔力を垂れ流しにして、貴方も大寺辰水も無事で済むわけ・・・!?」
「まぁ、大寺先輩の魔力は底無しかっていうくらい多いんですけど・・・東洋魔術っていうのは基本、魔力ドバドバさせてなんぼですから」
「えーっと?」
「脳筋って言えば分かります?」
「・・・通りで杖を持った魔術師が少ないわけだわ」
呆れる私を余所に、大寺辰水は溢れさせた魔力の塊を一点・・・拳だけに集中させた。
「東洋魔術の極致・・・」
漸く大寺辰水の魔力の恐ろしさを理解したのだろう。悪魔も自身の体からいくつもの鎌を生やして襲いかかったが・・・既に大寺辰水は悪魔の射程圏内に到達していた。
「『魔導岩塊・拳々!!』」
頭上からまっすぐ振り下ろされた拳は、悪魔の心臓にあたる先頭車両をぶち抜いて地面に叩きつけた。
「・・・これが日本の魔法使い『魔術師』‥‥」
目の前で繰り広げられた一瞬の出来事を、私は瞬き一つせずに見入っていた。
ダンブルドアと互角、いや、それ以上の魔法使い。それが日本では、こき使われている『下っ端』。
私たちとは生きている世界が違う・・・敵に回れば私たちに勝ち目はない。
でも、だからこそ・・・
「彼なら本当に・・・ヴォルデモートに勝てるかもしれない・・・」
「この仕事・・・峰狛の最後の仕事だったんです」
乗客の救助を終え、魔法処に戻る道すがら、大寺辰水がそう話を切り出した。
「!」
「まぁ、だからなんだっていう話なんですけど・・・」
「・・・彼女は、素晴らしい魔術師だったと聞いています。どうして任務を放棄して死を選んだのでしょう?」
「分かりません。俺は、峰狛梟子じゃありませんから。俺たちにできることは、彼女の死を悼んであげることだけです・・・願わくば、今回の任務が峰狛への手向けになってくれれば良いんですけど」
「・・・きっと、なっていますよ」
「どうしてそう言えるんです?」
「どうしてでしょうね?でも、不思議な気持ちなんですよ」
「ホッとしたような・・・そんな気持ちがするんです」