すごく強い魔術師がホグワーツにやってくるので、『ハリーポッター』は賢者の石で完結します。   作:味なしコンフレーク

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–参章–『英雄邂逅篇』

 「大寺辰水ですか?」

魔工メトロ騒動から数日後。ホグワーツに戻った梟子は、大寺辰水の友人だというグリフィンドールの7年生、ユースタス・コーダーに彼について教えて欲しいと頼み込み、研究室に訪れた彼に最高の紅茶とスコーンを振る舞った。

「良いやつですよ。オレみたいにひねくれていないし、必要な努力は欠かさない男です。もっとも、留学生として彼がここで学べることは、あまりないと思いますがね」

「その口ぶりだと、貴方は彼の魔術について知っているみたいですね?」

「彼の魔術についてはあまり語れません。強力ですが、シンプルですので、バレたら当然、効果も落ちる。東洋魔術はとても強力ですが、そういうリスクもあるんです。オレみたいな和洋折衷ハイブリッドならともかく」

「・・・それは、彼が最後まで抜くことがなかった刀のことですか?」

「さぁ、どうでしょう。兎にも角にもオレが言えることは一つだけ」

紅茶をグイッと飲み干し、スコーンを掴んで教室を出ようとしたユースタスは、最後に振り向いてニッと笑った。

「魔法処の連中に余計なちょっかいをかけないように、魔法省にキツ〜く言い聞かせておいた方が良いですよ。大変な事になっても僕は助けません。あっち側につくでしょうからね」

「・・・ミスター・コーダー。貴方は『まだ』ホグワーツの生徒です。くれぐれも魔法処で失礼のないように。分かりましたね?」

「分かっていますよ。まったく、キョーコセンセーは可愛くなってもおっかないな〜。そんなんじゃあ、意中の相手に振り向いてもらえませんよ?」

「怒りますよ、ミスター」

「すいませんね。じゃあ、オレはこれで。ごちそうさまでした」

最後にひらひらと手を振って、ユースタスは研究室を後にした。

「・・・そんなんじゃない」

 

 

 「西洋の魔法使いたちは『姿くらまし』や『移動(ポート)キー』を使って、長距離の移動をするが、俺ら魔術師はそれを使わない。何でだと思う?」

ホグワーツの新学期が始まる前日。ロンドン行きの飛行機に乗り込んだ辰水は引率である魔法処の教師に質問を投げかけられた。

「・・・そういう呪いがかけられているからとか?」

「ふっ・・・ある意味、正解かもな」

「・・・先生、いじめっ子だったろ」

「おう、よく分かったな、大寺」

「『人をバカにするの、超大好き☆』って顔に書いてあるぜ」

「そうマジに怒るなよ」

クックックと押し殺したような笑いを漏らす教師は、辰水の心臓あたりを指で軽く小突いた。

「魔術師は『魔力を流出させ、何かに込めて』使うからだ。『何かに魔力を込めて、放出する』魔法使いとは、考え方が真逆なんだよ」

「・・・俺ら魔術師が下手に移動キーなんかに触れたら暴発するかもしれないってことですか?」

「例外もいる。更紗流(ウチ)なんかは良い例だな。数十年前は『リディオーズ』っていう魔術師寄りの魔法使いの家系もいたけど『広大家』に嫁入りしてしまった今じゃあ、魔法使いとしてのリディオーズは廃れてしまったからな」

「ユースタスは?」

「彼は・・・正直、ホグワーツより魔法処に行くべきだったかもしれないね。『物質変換呪文(チェインジスト)』は、元を辿れば西洋魔法なんだろうけど、『流出させた魔力』を使っている時点で、東洋魔術の領域さ。フリットウィック先生が頭を抱える姿が目に浮かぶ」

「・・・『自分のこと』は、あんまり言わないほうがいいですよ、先生」

「・・・それは、さっきの仕返しってことかな?」

「はい、よく分かりましたね、更紗流 九郎先生?」

「君も書いてあったぜ。『こう見えて根に持つタイプなんだ』ってな」

 

 

 辰水達を乗せた飛行機が離陸したのと時を同じくして、ダイアゴン横丁に、二人の魔術師が現れた。ローブ姿の理生とその隣でモバイルフォンを弄っている11歳くらいの少女だ。

「・・・魔法使いで混み合っているわね。当然だけど・・・・」

「晴海。君は残念ながらハリー・ポッターさんじゃあないんだよ。魔法使いたちがジロジロ見てくるのは、君が目立っているからなんだよ、悪い意味でね」

フサフサした栗色の髪を揺らしながら、少し苛立ったような声をあげる少女を嗜める理生。

「だから、貴方もローブを着ているってこと?」

「似合うだろう?」

「全然・・・それに言っておくけど、私は、端末でネットサーフィンをしていたわけじゃないわ」

「君のモバイルフォンの用途を注意したわけじゃないんだがな」

「葵学長からのメッセージよ・・・あと3秒ってところかしらね」

「問題ないな」

そう返した理生の手には、どこから持ち出したのか、身の丈ほどの斬馬刀が握られていた。

「タイミング合わせろよ」

「それこそ問題ないわ」

瞬間、上空からトロールが飛来した。飛来、というよりは弾丸のように突っ込んできたと言った方が正しいだろうか。

「放出結界・・・『(オン)』」

飛んできたトロールでダイアゴン横丁がメチャクチャになってしまうと思った魔法使い達は、杖を抜くよりも先に死の恐怖で目を閉じた。

「・・・あれ」と魔女の一人が首を傾げた「まだ生きている・・・?」

目を開けた魔法使い達は驚いた・・・トロールが空中で何かに遮られているかのように静止していたからだ。

「上出来だ、晴海・・・獅子殺流剣術・奥義」

膨大な魔力が込められた理生の斬馬刀が見えない何かから抜け出そうとするトロールを突き刺した。

「『獅子(しし)粉塵華(ふんじんか)』・・・!」

斬馬刀に込められた膨大な魔力をわざと暴発させた結果、抑えきれない魔力がトロールの体を内側から食い破る。わかりやすく言うならば『骨も残さず爆発四散した』のだった。

「協調性を主張するくせに、戦いとなると、他人のことにはお構いなし・・・私がいなかったら、この辺りが更地になっていたかもしれないってこと、分かっている、理生?」

「君を信用しているってことさ、晴海」

「誰かれ構わず言っているの、そんなゾッとするような口説き文句?ロリコンって勘違いされるから、やめた方がいいわよ」

「厳しいねー・・・さて、どこの店だったっけ?」

「ランチタイムよ」

少女『晴海・グレンジャー・阿倍野』は疲れたような声を出した。理生の腕を掴んで「美味しい店を教えなさい」と言った。

「晴海、君はまだ小さいからね。舌が肥えてしまうのはもう少し大人になってかrってイタッ!分かった!分かったから!!脛を蹴らないでお願い!!!」

 

 次の朝、辰水は八時に目を覚ました。九郎先生は既に私服に着替えており、準備万端だった。

「遅いぞ、大寺。先生を3時間も待たせて、爆睡とはどういった了見だ?」

「5時に起きたんですか!?せっかくキングズ・クロス駅近くのホテルを取ったんだから、もう少しゆっくり寝ていてもよかったでしょうに」

「興奮と緊張で目が冴えてしまったのさ!オレは、ただの見送りだから、ホグワーツに行くわけじゃないけれど、入学した時の事を思い出しちゃったんだよ・・・こういうのって、いくつになってもワクワクするもんだろ?」

「・・・俺、もう18ですよ?」

「可愛げがないねぇ」

 

 「よーし、着いたぞ、大寺。九番線と十番線・・・お前のプラットホームは、この中間だ」

辰水たちがキングズ・クロス駅に着いたのは10時半だった。

「『九と四分の三番線』。えぇ、切符にはそう書いてありますね。でも・・・まだできていないようですが?」

「逆に聞くが、大寺。お前は魔法使いが乗る列車のプラットフォームがわかりやすいところにあると思うか?」

ニッと笑った九郎先生は改札口の柵に向かって歩きだした・・・かと思ったら先生の姿はなくなっていた。

「・・・なるほど、そういうことか」

そういって辰水も柵に向かって歩き出す。何かをすり抜けるような不思議な感覚がして・・・紅色の蒸気機関車が乗客でごったがえすプラットフォームに停車している「九と四分の三番線」にたどり着いた。

「じゃあ、オレは日本に戻る」と九郎先生は来た道を戻っていく「お前にとっては、ただの任務なんだろうが、異国の魔法文化というものに触れるのも貴重な経験だとオレは思う。だから、まぁ、なんだ・・・楽しんでこい」

辰水が振り向くと、既に九郎先生は九と四分の三番線を出て行った後だった。

「・・・そうさせてもらいますよ、ホグワーツの大先輩どの」

 

空いているコンパートメントを探すべく、列車に乗り込もうとした辰水だったが黒髪の眼鏡をかけた男の子が列車の戸口の階段からトランクを押し上げようとしていたが、トランクの片側さえ持ち上げられていないようだった。

「手伝おうか?」

「うん。お願い」少年はゼイゼイしていた。

辰水は、魔力を僅かに放出して身体強化の魔術をかけ、少年のトランクをヒョイっと持ち上げた。

「ありがとう・・・君、力持ちなんだね。それとも、魔法?」

「まぁ、似て非なるものかな」

「?」

「俺は大寺辰水。お前は?」

「僕はハリー。ハリー・ポッター」

「そうか。よろしくな、ハリー」

「・・・!」

軽く挨拶を返すと、ハリーは少し驚いたような顔をした。

「?・・・どうした? 新学期に頭をトイレに突っ込まれたような顔をして」

「え?あぁ、ウン。別に、たいしたことじゃないんだ。ただ、魔法使いのみんなは、僕の名前を聞くとびっくりするからさ」

「え?・・・あぁ、そうか。ハリー・ポッターって、あの『ハリー・ポッター』か。同姓同名の別人かなんかかと思っていたよ」

「でもやっぱり驚かないんだ?」

「なんだ?お前、チヤホヤされたいのか?」

「まさか!そりゃまぁ、嫌ってわけじゃないけど、知らない人にペコペコされると、何だか居心地悪いし、僕、ずっとマグルと住んでいたから、こっちのこと何も知らないのに英雄扱いされて・・・プレッシャーだよ」

「・・・ハリー」と辰水「お前が特別であることに苦しんでいるなら、お前に一つだけ、魔法界の先輩として、良いことを教えてやる」

「何だい?」

「お前は、特別でもなんでもない」

「!」

「お前みたいに幸運で有名になった奴なんて、世界にはゴロゴロいる。年寄りどもがありがたやありがたやって拝んでくるだろうが、天狗になるな?『日々精進』だ」

「『ヒビショージン』って、日本語?どういう意味?」

I keep making an effort(日々努力します)って意味だよ。少なくとも成功する秘訣はそれしかない」

「・・・分かった。僕、頑張るよ。僕の母さんが助けてくれたこの命を無駄にしないように。生き残った男の子じゃなくて『ただのハリー』として良い魔法使いになれるように」

「そうするといい。そうなったら、日本に連れていって美味い寿司を食わせてやるよ・・・回転寿司だけどな」

 

 ハリーと別れた辰水(ここに座りなよって言われたけど、行くところがあるからと言って断った)は、コンパートメントをくまなく見て回ることにした。

何故なら、任務対象が紛れ込んでいる可能性があるからだ。

「・・・少なくとも、この列車には乗っていないな。ホグワーツに潜んでいるのか、それとも時期を窺っているのか・・・一番マズいのは、教員になりすましている場合だが、ダンブルドアがそれを見破れないとは思えない・・・」

『まさかな』と思いながら、ふと足元に違和感を感じた辰水が見下ろすと、一匹のヒキガエルが靴の上に乗っかっていた。

「魔力を感じる・・・このカエル、誰かが飼っているのか?」

 

「そこのあなた。ヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの・・・って、大寺辰水!?」

 

聞き覚えのある声に振り向くと、魔法処を10歳で飛び級して卒業したはずの元クラスメイトが立っていた。

「・・・よう。中等部以来だな、グレンジャー」

「一緒だったのは半年だけだったけどね・・・あなた、もしかして、例のあの任務に関係しているの?」

「そういうお前はさしずめ、現場監督か?」

「そうよ・・・ところで、ヒキガエル見ていない?」

「コイツのことか?」と捕まえたカエルを晴海に手渡した。

「ありがとう・・・言っておくけど、私が魔術師だってことはこの学校の生徒には内緒だからね?」

「この間、魔法使いの街で理生さんと大暴れしたって聞いたけど?」

「後始末なら事後処理担当に任せたわよ。でも、ここではそういう支援も望めないの。やりとりもモバイルフォンのみで行う。ホグワーツでも使えるように作った緊急回線のパスワードは届いているわね?」

「あぁ」

「じゃあ、これ以上は話すことはないわ・・・良い1年を」

「お前もな」

二人は背を向けて歩き出す・・・暫くして、彼のモバイルフォンにメッセージが送られてきた。

「・・・その『まさか』とはな。今回の任務は、意外と骨が折れそうだ」

 

 

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