鍋の庭 作:かりん
「ゲーム会社が国の援助を得て広大な昆虫園を作るぅ? なんか意味がわからねーな。本当なの?」
「大手ゲーム会社ダブルトライアングル社からFAXが来てます。昆虫学者を連れて取材に来いとかで」
「あー。まあ行って見るかぁ。美咲ちゃん達に準備するように言って」
プロデューサーの大谷は腰を上げた。
敷地は兎に角広大で、自然豊かで、塀は高かった。だが、あえていうならそれだけだ。
建物も目新しくはないし、建物だって遊園地の建物としては普通だった。自然だってごく普通だ。
こんな代物に、日本政府首相が秘書と外務大臣、防衛大臣、自衛官を連れて来ているのが信じられない。
後は、ゲーム会社の面々が、なんで呼ばれたのかわからない顔をして佇んでいる。
特別に呼ばれたというファン達に至っては、文句を言い出している。
昆虫学者ですら、退屈そうにしているではないか。
そもそも、昆虫の体調を考慮して週一オープンというのが商売をやる気がない。
「はー。すごい急ピッチで作ったの丸わかり……」
「我が社は、この一大プロジェクトに掛けております!! 売上利益の10%を人道支援に掛けるつもりであり、日本政府からもおおいに期待をかけられていて……あっ 今、この園の所長をされる亡命外国人のラビッツさんがいらっしゃいます。いやー。実は当園目玉の昆虫が今日搬入されるんですよ! しっかり写真を撮っていってください」
「はあ」
そして、ぽつんと空の車椅子が置かれる。
なんだか凄く火種の予感がする……。これはこれでスクープだが、日本が戦火に焼かれるのはゴメンである。何か妙な事をしているなら、すっぱ抜かなくては。
不安を感じながらも指差された方を見る。
ヘリでもくるのか? と空を見ると、度肝を抜かれた。
「は、はああああああああああああ!???? おい! 撮れ! 撮れぇ!!」
巨大な昆虫、いや、怪獣が空を飛んでこちらへ近づいてきた。
それはどんどん大きくなり、いや、近づいてきて、着陸すると、中から……中から蟲型のエイリアンを抱き上げた自衛官が現れた!! 自衛官はそっと車椅子にエイリアンを乗せる。
もうフラッシュは鳴りっぱなしで全員の携帯がカメラとして機能していた。
「ようこそ、日本へ。ラビッツさん」
【ようこそ、日本へ。ラビッツさん】
【お招きいただきありがとうございます】
「お招きいただきありがとうございます」
真っ黒な隈を化粧で隠した官僚が、淀みなく通訳する。
一言二言交わすのを、記者達で全力で撮った。
そして、行われる首相のテープカット。
首相は、それを終えると質問に答えることもなく、慌ただしく帰っていった。
「首相。20分前から各国から問い合わせが来ています」
「早いな。日本上空に現れて10分で把握して連絡してきたのか」
そんなことを話しながら。
明日の定例会見は間違いなく荒れる。
「さて、これが当園の目玉の飛行蟲です。ラビッツさんの部族は、飛行蟲の開発改造調教を伝統芸能としています。これから、園を一周してきますが、乗りたい人はこちらで手と靴を洗浄してください」
「危険はないんですか!?」
「今の所、問題は起きてませんね。彼らのいるところではポピュラーな移動手段だそうですよ」
「乗ります!!」
「あっ ちゃんと手足の消毒をしてから乗り込んでください!」
それから、蟲に乗り込んで離陸するという稀有な体験をする。
蟲の中からでも、半透明の膜を通じて外が伺えた。
昆虫学者大興奮である。
「今、蟲人はこの伝統芸能を目的に、沢山の人が捕まって手足を奪われて部品のように扱われています。我が社は、この状況に義憤を感じ、日本に蟲人を誘致する事を考えています。この伝統芸能を途絶えさせてはならない。そう思うのです。あ、お土産店には蟲人さんが伝統芸能で作った蜂蜜があります」
「買います!!」
「彼らの事を綴った手記が」
「書います!!」
「蟲人をモデルにしたキャラが出てくるアニメが」
「見ます!!」
「ゲームも開発してるので、発売されたら買ってくださいね。蟲人に対する寄付はこちらです」
「わかりました!!」
その瞬間、俺はわかった。
この会社、これを機にどさくさに紛れて手広くやる気だ!!
く、ならばこちらは……
「アニメは是非、当局で流させてください!」
全力でおもねるぜ!!