呪い、呪われ   作:ベリアロク

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第1話 呪われた子 ※11月2日改変

 

 

 

雲が空を覆い、雫がアスファルトに降り注ぐ。日常に溢れる騒音が落ちる雫の音にかき消され、単調な音が街に響く。曇天という言葉が似合う天気はこういう日のことを言うのだろうか。

 

そんなことはどうでも良い。

ロクでもないことが起きるのは大抵、こういう日なのだから。

 

 

下校のチャイムもとうに止んだ、薄暗い教室の角隅。

乙骨憂太はそこにいた。

 

 

他には4人の学生が乙骨を取り囲んでいる。仲睦まじい放課後の光景に見えるが、和やかな雰囲気はそこにはなかった。

 

 

「なぁ~久しぶりだなァ乙骨ゥ~逢いたかったぜェ?」

 

「こっちにこないで……」

 

 

大柄の男子生徒が乙骨へと一歩、大きく歩み出る。

後退る乙骨の腕には痣が、丁度拳骨一つ分の痣がうっすら残っていた。

 

平等を謳いつつも不平等なこの世界で生じる、複数人で一人を詰る遊び────いじめ。

その一つが放課後、がらんとした校舎のとある教室にあった。

 

 

 

「おいおい……寂しいこと言うなよ。同じクラスの『友達』じゃないか、なァ?」

 

「ブフッ、そうだよ乙骨君。僕たち親友、だろう?」

 

 

 

 

 

――――――駄目だってば

 

 

 

嘲笑混じりに話す不良らしき青年らに対し、学ランを剝がれた青年は壁に背を預け顔を俯かせる。

弾け飛んだボタンが落ちて鳴った乾いた音、気弱なその姿が不良らの嗜虐心を煽り、息遣いは更に荒くなっていく。

 

 

「俺がどれだけお前のことを殴りたかったかわかるか? もっと俺の気持ちを想像してくれよ!!」

 

「ヘヘッ、気持ち悪ィ」

 

「うるせぇな……お前らだってもう我慢できねェだろォ?」

 

 

 

 

――――――やめて

 

 

 

 

「こんなに焦らされたらよ……うっかり殺しちゃうぞ?」

 

 

息を荒げ顔を異様なほど火照らせた不良はいよいよだと自らの上着を脱ぎ捨て、身軽となった不良が肩を軽く回し腕を伸ばす。

 

 

「存分に俺を楽しませてくれよォ? 乙骨ェ‼」

 

 

 

悪意に満ちたその手が青年の胸元を掴む、その時だった。

 

 

 

「来ちゃ駄目だ――――――里香ちゃん!!」

「リカ?」

 

 

 

がらんとした校舎に断末魔の如き叫びが校舎中に響き渡る。それも4度。

惨たらしくも悲惨なその叫びは

 

 

「どうした? 急に叫び声なんて挙げ……て」

 

 

その叫びにようやく現れた教師が目にしたのは何事もなかったかのように静かな教室。

窓には変わらず雨粒が絶えずぶつかっている。

 

ただ異なっていたのは無人の教室の隅で小さく震える青年、異様な鉄臭さ。そしてロッカーから溢れるように床へと流れる鮮血。

 

『キィ』

 

音を立てて開いたロッカーの中にはブロックのように折りたたまれた血肉の塊がぎっちりと詰まっていた。

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……!」

 

 

 

学生時代は青春の日々と皆は口を合わせて言う。

 

けれど乙骨憂太の青春は血みどろに、どうしようもなく呪われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――とこれが事件の一部始終だ。これで2度目の説明だが……理解しただろう、彼の危険性が」

 

「だから完全秘匿での死刑執行? あり得ないでしょ」

 

「しかし本人が了承した」

 

 

灯りの乏しい異様な空間。壁すら見えない暗闇に素顔を隠す老人が4人座している。

その老人らに囲まれるように立つ目元にアイマスクのような物を付けた男はやれやれと首を横に振った。

 

 

「とは言ってもねぇ……未成年、それも16歳の子供ですよ」

 

「本人の意思に関わらずあの個性は発動しているのだ。彼を野放しにしては世に混沌をもたらしかねない。故に、だ」

 

「予め芽を摘み取っておこうって話ですか……その過程で逆に何人殺されるか分かりませんよ」

 

 

男の投げかけた指摘に老人らは言葉を詰まらせる。タルタロス収容なども考慮した上でたどり着いた死刑執行。それが被害を最小限に抑える案であるのは間違いない。

だが人的被害が避けられないのは明らかだった。

 

 

「今のところ重傷まで至ったのは今回の4人のみ、拘束にも現状成功していますが次の瞬間にも犠牲者は増えるかもしれない。例えば……アンタらとか!」

 

「……」

 

「もー冗談ですって! 要は死刑も収容も危険が過ぎるってことですよ」

 

「……ならばやはり」

 

「えぇ、

 

 

 

   

 

      乙骨憂太は僕と雄英高校で預かります」

 

 

 

老人らが頭を抱え唸る中、男は一人不敵に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今度は無数の照明に照らされ嫌と言うほど明るい部屋に場は移る。壁面には穏やかとは口が裂けても言えないほどの銃火器が備え付けられており、その中心の椅子には乙骨と呼ばれた青年が生きる気力を失ったかのようにうずくまっていた。

 

 

「……もうこのままここに居続けよう」

 

 

もうこれ以上何かを壊したくも傷つけたくもない。このまま寝てしまえば起きているよりかは幾何か楽になるだろう。そう思い瞼をゆっくりと閉じようとした時窓もない無機質な扉をノックする音が聞こえた。

 

 

「失礼、ちょっといいかな?」

 

「……」

 

「おっけー、お邪魔するねー」

 

 

(まだ何も言ってないのに……)

 

 

乙骨が返答を告げる前に扉は開かれる。俯かせていた顔を少し上げると乙骨の前には逆立った綺麗な白髪とは対照的な黒いアイマスクのようなもので目を覆い隠した異様な男が立っていた。

その男は乙骨が顔を上げたのを見るとポケットから金属片のようなものを乙骨に見えるように取り出した。

 

 

「これは何かわかるかな? 乙骨憂太君」

 

「……ナイフだったものです」

 

「へぇ、このグニャグニャがナイフってよくわかるねぇ」

 

「……僕が使いましたから。それで死のうとしました」

 

「でも邪魔された、と」

 

 

男の言葉に乙骨は頷く。

そのナイフはねじれにねじれ最早原型をとどめていなかった。

 

 

「暗いね。今日から新しい学校だよ?」

 

「……行きません」

 

「聞いてびっくり! 入学先はあの雄英高校!」

 

「行きません!」

 

 

乙骨は顔を俯かせながらも声を荒げる。

 

 

「もう誰も傷つけたくありません。だからもう、外には出ません」

 

「そうかい。でも……一人は寂しいよ?」

 

「……」

 

 

男の言葉に乙骨は服をぎゅっと握りしめる。

 

 

「君にかかった個性……いや呪いは使い方次第で人を助けることも出来る。力の使い方を学びなさい」

 

「……」

 

「全てを投げ出すのは……それからでも遅くはないだろう」

 

 

 

男の言葉に乙骨は肯定も否定も示さない。心中にあるのはただひたすらに迷いだった。

 

 

 

 

 

 




書きたかったから書いた。けど時間とか手直しとかで消える可能性はあるのでそこんとこよろしくお願いします。試験投稿みたいなとこある。




11月2日改変
文章を一部追加しました。定期的に改変するかもしれません。ただその後のお話に影響はないようにします。感想でもメッセージでも構わないので、掴みや文章としてどうだったか教えて頂けると今後の参考になりますのでよろしければお願いいたします。

真希やパンダたちの登場について

  • 原作と同じくらい メインキャラ
  • 原作より一歩引くくらい・クラスメイト程度
  • たまーに出るくらい
  • 出久たちとの関わりを見たい
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