呪い、呪われ   作:ベリアロク

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第11話 想い:上

戦闘訓練の舞台『市街地』。都市空間に広がるものと見分けがつかないほどに精巧につくられたその場所に位置する廃ビルを前に乙骨と真希は訓練の開始を待っていた。

 

 

 

「――――――ってのが訓練の内容だ。わかったか?」

 

「一応は……」

 

「チッ、まぁいい。それよか背負ってるやつ見せてみろ」

 

「う、うん……どうぞ――――――」

 

 

背負っていたものを「どうぞ」と言いきるよりも先に真希は乙骨から奪い取るように受け取る。どうも手口がカツアゲじみている。

 

 

「あ? 何ビビってんだよ。訓練はこれからだろうが」

 

「ハッハイ」

 

「ホント気が小せェな。んで、そんなお前に悟が渡したのがこれか」

 

 

真希が袋から取り出した得物が日光を浴びて白銀に煌めく。近代科学の技術がふんだんに使われているわけでも何か特殊なギミックがそのわっているわけでもない、古来から日本に伝わる製法で生み出された日本刀。それこそ乙骨が五条から譲渡された武器だった。

 

 

「何の変哲もない刀だが切れ味が悪いな。概ね訓練で使えるように悟が石かなんかにぶつけてたんだろう……ってなんだよ」

 

「何で五条先生から渡されたってわかったのかなって思って……」

 

「気弱そうなお前が自分から持ってきたとは考えられねぇし、十中八九悟の指示だと思った。悟以外にお前に伝手無さそうだし悟の指示だろ?」

 

「指示というかなんというか……言われた通りに部屋に行ったら置いてあったというか……」

 

「そういうのを指示って言うんだよもやし」

 

「……もやしデスカ」

 

 

乙骨と真希がそうこう話してるうちに時間は経ち開始時刻となる。訓練の始まりを告げるサイレンが市街地に鳴り響き渡った。

 

 

『両チーム準備はいいな? 戦闘訓練開始!!』

 

 

「さって……と、私の邪魔したら承知しねェからな」

 

「……もし邪魔しちゃったら?」

 

「敵ごと纏めてぶっ飛ばす」

 

 

至極当然といった風に言い切る真希。

絶対に邪魔だけはしないようにしよう……そう乙骨は自身に言い聞かせながら真希と共に暗い建物の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わってモニタールームでは動き出した両チームの動向をA組一同は眺めている。やはり初戦ということもあり彼らの盛り上がりようも相応のものだった。

 

 

「なぁ皆はどっち勝つと思うよ? 俺は常闇のいる方が勝つと思うね!」

 

「常闇把握テストの時ヤバかったもんね~。何でも高得点出してたし戦闘になるともっとヤバそう!」

 

「蛙吹君も把握テストのどの分野においてもクラス平均の上を行っていたからな……相当強いぞ敵チーム」

 

「対するヒーローチームの二人は未知数だもんなぁ。なぁパンダ、お前から見て二人はどうよ」

 

 

瀬呂から回された問いにパンダは一瞬考え込むもすぐに答えを出す。

 

 

「まず真希だがかなりのやり手だ。武具の扱いにおいてはこの学校だったら右に出る者はいないだろ」

 

「「「おぉ~」」」

 

1対1(サシ)なら余程の実力差が無い限りはまず負けんだろうな」

 

「すっげー……やっぱ真希って滅茶苦茶強いんだね」

 

「乙骨次第じゃどうなるかわからねぇなコレ……! 乙骨はどうなんだ?」

 

「憂太は……正直わからんな」

 

「しゃけ」

 

「わからない……ってどういうこと? 真希の実力がわかるなら乙骨の実力を確かめる機会もあったんでしょ?」

 

 

耳郎は純然たる疑問を投げかかるもパンダは首を横に振る。乙骨はパンダらと違い呪術科に入ったのが遂先日のことだ。その日ヒーロー科のように個性把握テストもなけれな模擬戦のようなものも当然無い。パンダたちにわかるのは乙骨の人柄だけだった。

 

 

「憂太にはちょっとした事情があってな。実力の程は俺たちも知らん」

 

「未知数ということだな……ヒーロー科に即日転入してくる君たちの一員だ。間違いなく手強い筈……」

 

「というのは建前でぶっちゃけ弱いぞ憂太は」

 

「「「「えぇぇ⁉」」」」

 

 

パンダの急激な手のひら返しに一同唖然とする。完全に乙骨の実力は未知数、そして手強いで進む流れだったところのコレだ。その流れを面白いと思ったのか、はたまた滑稽だと思ったのか壁際で気だるそうに立っていた爆豪が口を開いた。

 

 

「ハッ、違いねェ。メガネの方はともかくあのモヤシは間違いなく弱ェ。雑魚が出すオーラがプンプンしてるぜ」

 

「雑魚とか言うなよ爆豪! でもまぁ……ずっと真希の後ろへっぴり腰で歩いてるし、確かに漢らしいとは言えねぇな」

 

「おかか」

 

「あーそうだな……確かに一つ付け加え忘れてた。弱いのは()()()()憂太だ。ポテンシャルだけなら俺らの中でもずば抜けてる」

 

「ポテンシャルってもそれ発揮できなきゃただのお荷物だろ」

 

「確かにそうだ。ただ『殻』を破ってそれが発揮出来たなら戦局は大きく傾く。そこは間違いないな」

 

「ケッ、あんなモヤシには出来そうもないけどな」

 

 

「皆お喋りはそこまでだぞ! そろそろ両チームがぶつかりそうだ!」

 

 

オールマイトが一喝したことで生徒らは鎮まり映像の方へと集中する。複数の画面で映し出されている戦闘訓練の様子。その中でもオールマイトの眼差しは乙骨が映るものに向かっており、額には汗が滲んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真希と乙骨は何事もなく4階建てのビルの内の3階にまでたどり着いていた。1階は電灯が部屋を照らし2階は外の火の光が部屋の中を照らしていたのに対し3階は打って変わって日の光は無く光を失ったかのように薄暗い空間が広がっていた。真希と乙骨は敵を警戒しつつ進んでいたがある曲がり角の前で真希はふと足を止めた。

 

 

「止まれ」

 

「真希さん?」

 

「そこ隠れてんだろ。出てこいよ敵」

 

 

足を止めた真希は曲がり角の影をじっと睨みつける。何も無いように見える影を乙骨もじっと見ているとその影がゆらりと動きだし乙骨らの前へと躍り出る。それは漆黒のコスチュームを身に纏った常闇の姿だった。

 

 

「と、常闇君⁉」

 

「フッ、闇に紛れた俺を見破るか。まさか正面から入ってくるとは思わなかったが……裏の裏をかく戦法、それとも自信からか?」

 

「こそこそ裏口から入るような真似すんのは性に合わないだけさ。やり合っても負けねェ自信もあるがな」

 

「成程。確かに2対1ではこちらが不利だな……一旦ここは退かせてもらおう」

 

「逃がすかよ!」

 

 

背を向け逃げ出す常闇を真希は追いかけ、置いていかれないよう乙骨も駆け出す。曲がり角の先へと姿を消した二人を追い自身も曲がり角の先へと躍り出た乙骨と真希の正面には先ほどまで背を向け逃げていた常闇がこちらを向いて立っていた。

 

 

「どうした? 観念するのがやけに早ェじゃねぇか」

 

「観念はしていない。退くべき場所まで退いたから止まったんだ」

 

「退くべき場所……?」

 

 

真希は辺りを見回し警戒する。何か仕掛けがあるようにも思えないただの通路だ。常闇の言葉がハッタリである可能性も十分にある。けれどこれまで通った来た通路と何かが違っていたのは確かだった。

 

 

「退くべき場所つってもたかがさっきの場所から数メートルだ。大層な仕掛けを用意しているようにも見えないな」

 

「確かに大層な仕掛けは無い。だが我が力には暗闇こそあれば良い」

 

「暗闇だって……?」

 

 

常闇の言葉に真希は今一度辺りを見回す。何の変哲もない通路だ。ただこれまでの通路と異なる点が二つだけあった。一つは天井に備え付けられていた灯り。もう一つは窓。どちらもわずかながらもこの廃ビルの中に光をもたらしていたものだがここにはそれがなかった。

 

 

「っ乙骨走れ!!」

 

「え?」

 

「もう遅い! 出てこい『黒影(ダークシャドウ)』!」

 

『アイヨ!』

 

 

常闇の身体の中から竜のようにも見える黒い影が呼応するように現れる。出た直後は童話に出てくるようなポップな姿だったが瞬時にその姿は鋭い爪と眼光を持つ凶悪なものへと変貌した。

 

 

『シャア! ヤッテヤンゼェ!』

 

「クソっ、下がってろ!!」

 

「うわぁ⁉」

 

 

漆黒の影が意思を持つかのように向かってくる光景を見ると同時に乙骨の身体は後方へと突き飛ばされる。影は一直線に体勢を崩した真希の方へと向かっていく。

 

 

『隙ダゼェ!! モラッタァァ!』

 

「真希さん!」

 

 

影の爪が真希を切り裂かんとする光景を前に乙骨は覚悟する。次に目に入るのは飛び散る血しぶきだろうと。だが

 

 

 

「この程度じゃ隙にはならねェよ‼」

 

 

 

視界に入るは火花散る閃光。影の攻撃は真希の身体へと届く前に彼女の持つ鉈によって弾き返されていた。すかさず真希はのけぞった黒影の懐へと潜り込み鉈を下から振りかざす。

 

 

「おォら!!」

 

『グゥ⁉』

 

 

鉈の一撃は黒影の腕を容赦なく切り落とす。けれど切り落とされたその腕は地面へと落ちる間もなく黒影の下へと還り黒影の腕は元通りに修復された。

 

 

「ダメージなし……結構良いの入れたつもりだったんだが甘かったか」

 

「この状態の黒影に反撃するか……! 『黒影』!」

 

『ウオッシャアアア!!』

 

 

黒影の猛攻が真希へと襲い掛かる。次々と飛んでくる爪と牙で切り裂かんとし床へと叩きつけんとする黒影の攻撃を真希は鉈や身のこなしで全て受け流しつつ、カウンターの如く飛び出してきた黒影の腕や頭を切り裂いていく。その余波は壁や床に傷を生み、ヒビを作っていく。どちらかが気を抜けば倒れる……そんな攻防も黒影の身体を真希が蹴飛ばしたことで双方距離が生まれ終わりを迎えた。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「真希さん!」

 

「……チッ、人の心配するならお前も戦えっての」

 

 

真希は頬から出た血を拭いつつそう吐き捨てる。

攻撃を与えた回数では間違いなく真希の方に軍配が上がるだろう。だがその代償のように乙骨を背後に戦う真希の身体には次第に傷が増えていく。対して黒影に真希の攻撃は届くものの切り裂いた部分は水が元の形に戻るようにあっという間に修復してしまう。加えて本体の常闇にダメージを与えようにもこの狭い通路ではリーチの長い鉈が却って邪魔になっている。このままではジリ貧になることは明らかだった。

 

 

「……っごめん」

 

「いいからこっから離れるぞ乙骨! あいつの個性は恐らく――――――」

 

 

闇の中だと強くなる――――――

そう言い切る前にその場から脱しようとした真希の脚が止まる。前を常闇と黒影が塞ぐ一本道の通路、その反対側には既に()()()()の敵がいたのだ。

 

 

「逃がすか……蛙吹!

 

「ケロッ!」

 

 

反対方向にて立ちふさがる蛙吹の口から勢いよく舌が飛び出す。粘液のようなものが付与されたそれが向かった先は真希ではなく、乙骨だった。里香の出る様子は―――――無い。

 

 

「うわ、わわわわわ⁉」

 

「クソッ……乙骨!」

 

 

里香がいなければ乙骨はただの人間、防ぐ術などない。乙骨へと向けられた攻撃を真希がその身を挺して受け止める。黒影の一撃に比べれば大した威力もない一撃だが真希の気を引くには十分だった。

 

 

「これで終わりだ……ヒーロー‼」

 

「……ッ」

 

 

先ほどの攻撃のせいか身体が痺れて動かない。乙骨も真希にも成す術はない。黒影の拳が真希と乙骨を纏めて打ち砕かんとする。だが

 

 

「何だ⁉」

 

 

突然の地鳴りのような音とともにこれまでの戦闘の影響か床が崩れ始め、その衝撃で土煙が周囲に舞う。その土煙は乙骨らに味方し常闇らの視界を奪った。

 

 

「ゴホッ……ゴホッ……」

 

「常闇ちゃんヒーローは……」

 

 

崩落もすぐに収まり土煙も晴れる。常闇らの前には先ほどまで無事だった床がくり抜かれたかのように消え、乙骨らの姿も煙のように消え去っていた。




中々難産だったので反応貰えると嬉しいです……はい……

USJ編の話構成(途中まで)

  • 1話1エリア分(今回の形式)
  • 1話2エリア分(例:乙骨+緑谷パート)
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