呪い、呪われ   作:ベリアロク

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第16話 ジャンブル・ヴィラン

 

 

「敵⁉ ヒーローの学校に入ってくるなんて馬鹿すぎるだろ⁉」

 

「先生。侵入者用センサーは……」

 

「もちろんありますが……!」

 

「反応しねぇってことは向こうにそういう”個性”を持った奴がいるってことだ」

 

 

噴水広場に出現した黒い渦、そしてそこから次々と現れる敵を見下ろしつつ轟は呟く。

確認出来るだけでもその人数は既にA組の人数を上回っていた。

 

 

「だとしても雄英襲ってくるなんてバカにもほどがあるだろ⁉ いやアホの方が正しいか⁉」

 

「そうでもねぇよ。校舎と離れた隔離空間。そこに僅かな人数が入る時間割を狙ってきてる」

 

「何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ。バカだがアホじゃねェ」

 

「……ッまじか」

 

 

轟と真希の言葉にA組の面々は事の恐ろしさを理解していく。

目の前にいるのは紛れもなく敵そのものなのだと。

 

 

そんなやり取りが行われる中、相澤はゴーグルを構え生徒らの前に立っていた。

 

 

「13号、学校に連絡しつつ避難開始! 禪院と轟の言う通りセンサー対策も頭にある奴らだ。電波系の個性が妨害してる可能性もある。上鳴、お前も個性で連絡試しとけ」

 

「ッス!」

 

「乙骨ら呪術科組も同様だ。五条さんに連絡取れそうなら取ってくれ」

 

「は、はい!」

 

「まぁ出ないだろうけどな。自由人だし」

 

「しゃけ」

 

「……一応だ、一応」

 

「先生は⁉ 一人で戦うんですか⁉ あの数じゃいくら個性を消すって言っても……」

 

「緑谷。一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

 

そう言い残し相澤は高台から敵のいる噴水広場へと飛び降りる。

着地点には敵が待ち構えていたが、不安に思っていた緑谷だったが相澤の操る布に捕らわれた敵同士が空中でぶつかり合い、相澤が地に降りるよりも先に倒れ伏す光景が緑谷らにも見えていた。

 

 

「凄い……! 多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

 

「分析してる場合じゃない! 早く避難を‼」

 

 

 

「させませんよ」

 

 

 

扉へと向かう生徒らの目の前が突如暗闇で包まれる。

その正体は先ほどまで広場にいた靄の敵だった。

 

 

 

「初めまして。私は黒霧、そして我々は敵連合と申します」

 

「敵連合……か。計画的なのは間違いなさそうだな」

 

「ええ。僭越ながらこの度、ヒーローの巣窟雄英高校へと入らせて頂いたのは……平和の象徴に息絶えて頂きたいと思ってのことなのです」

 

 

黒霧の言葉に生徒たちはざわめき立つ。

目的をNO1ヒーローの抹殺とする敵の計画的犯行。即ち、敵らは平和の象徴を殺せる算段を持っていることを示していた。

 

 

「平和の象徴……オールマイトのこと⁉ どどど、どうしよう真希さん⁉」

 

「落ち着け! 平和の象徴をこんなチンピラ如きが獲れるわけねェだろ」

 

「存じ上げない方もいらっしゃるようですが……私の仕事は変わりませんね」

 

 

黒霧は乙骨らを一瞥すると、不自然にゆらめくもやが何倍にも膨らましていく。

まるで乙骨らを闇の中へと引きずり込まんとするように。

 

 

「はァッ‼」

 

だがその靄は爆風と斬撃の如き一閃、爆豪と切島の攻撃によりかき消され敵もまた吹き飛ばされていた。

 

 

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったかァ⁉」

 

「ダメだ! どきなさい二人とも」

 

 

13号の言葉に二人は首をかしげる。

2人の背後には吹き飛ばしたはずのもやが再び起き上がっていた。

 

 

「危ない危ない……生徒と言えど金の卵だ。万全を期すためにも散らして、嬲り殺させて……」

 

「動くな」

 

 

危険を察知し、咄嗟に発せられた狗巻の呪言。

呪言を受け、先ほどまでゆらめいていた黒い靄がピタリと動きを止めた。

 

 

「ッ身体が……⁉」

 

「やるじゃねェかおにぎり野郎」

 

「ゴホッゴホッ……めんたいこ」

 

「狗巻君の声めっちゃ掠れてる⁉ 大丈夫⁉」

 

「棘の呪言は強力な分、相手との力量とかに差があると反動もあるんだ。待ってろ今喉薬渡すから」

 

「ああ、それなら私のポケット……に……」

 

 

ポケットを確認しようと目線をずらした真希の視界に移った何かが真希の言葉を奪う。

背景にはそぐわない黒の異形。剝き出しの脳を持った怪物──脳無が拳を構えていた。

 

 

「ッ棘‼ パンダ‼」

 

「ッゥ⁉」

 

 

誰しもが安心しきった中、唯一異形の存在に気付いた真希が叫ぶ。

その声が届いた時にはもうパンダと狗巻は吹き飛ばされ、壁際のズシンという音が鈍く響いていた。

 

 

「な、ななな何なんだこいつゥ⁉」

 

「狗巻君‼ パンダ君‼」

 

「心配は後だ乙骨! コイツは……ヤバイ‼」

 

 

真希は薙刀を取り出し臨戦態勢を取る。

目の前の異形から発せられる、これまでには無い恐怖が真希の身体を震わしていた。

 

 

「……」

 

「見かねて死柄木弔が寄こしたのでしょうか。何にせよ助かりました。後は私の役目を……」

 

「皆さん早く僕の後ろに‼」

 

「果たしましょう」

 

 

 

再度、先ほどよりも莫大な闇が生徒らを高台ごと包み込む。

爆風も斬撃も、本体までは届かない。生徒たちの姿は闇の中に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

「うわあああああッ⁉」

 

 

ゴチンと頭に鈍い痛みが走る。地に頭を打ち付けた痛みに耐えつつ乙骨が目を開けると、先ほどまでの景色も敵はない。

見覚えのない屋内に乙骨は一人居た。

 

 

「さっきの奴の個性で飛ばされたのかな。皆も近くにいると良いけど……真希さーん! 狗巻くーん!」

 

「アガッ」

 

「アガッ?」

 

 

うめき声のような声、それに何かを踏んづけた感覚に乙骨は下を向く。足元には腕に手榴弾のようなものをつけた攻撃的な薄金髪の少年の姿があった。

 

 

「あ……っと、これはですね決してわざととかではなくて……」

 

 

その姿を知る乙骨は血の気が引くのを感じながら、そっと足をどかす。少しでも丁重に、生存の余地を残すために。

 

 

「誰だ俺のこと踏んづけた奴はァァァァァァ‼」

 

「ごめんなさぁぁぁぁぁい!!」

 

 

訂正。敵はいなかったが、怖い同級生はいた。

近くにいた仲間は真希でも狗巻でもパンダでもなく、爆豪だった。

 





キリが良いのでやや短めです。
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USJ編の話構成(途中まで)

  • 1話1エリア分(今回の形式)
  • 1話2エリア分(例:乙骨+緑谷パート)
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