呪い、呪われ   作:ベリアロク

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第19話 お初にお目にかかります

 

その場に残っていた麗日、障子、戸芦、瀬呂は狗巻たちの下に駆け寄ると、その姿に安堵の表情を浮かべる。

 

 

「狗巻君! パンダ君!」

 

「無事だったんだな、良かった」

 

「おかか……」

 

「無事って程無事じゃないけどな。俺も棘も大分もらってる」

 

「しゃけ」

 

「ほんほん……棘は数本骨折れてるらしいしな」

 

「マジかよ! テープで補強しとくか? 意味あるかわからんけど……」

 

「おかか。すじこ」

 

「『気持ちだけ受けとっとく』ってよ。今はあの靄とゴリラみたいな奴をどうするか考えないとだ」

 

 

(手ごたえはあんまだし、やり辛い相手だしな)

 

 

パンダが黒霧を殴り飛ばした先に目を向ける。

手ごたえがないとパンダ自身が感じているように、狗巻とパンダの二段攻撃を受けた黒霧は既に立ち上がる様子を見せていた。

 

 

「やっぱピンピンしてんなアイツ」

 

「あれ食らって立てんのかよ!」

 

 

黒霧を視界に据え、パンダらは身構える。しかし当の黒霧が目を向ける先はパンダたちではなく、外からの光がやや差し込む扉の方だった。

 

 

「……応援を呼ばれる、か。ゲームオーバーだ」

 

 

自身が守るべきだった扉はぽっかりと開いている。

現実を受け止めてか飯田を止める時に発せられた激情から冷め、落ち着いた様子で黒霧は己の個性を発動させ、パンダたちの前を後にした。

 

 

「逃げ……た?」

 

 

麗日の問いに狗巻は肩をすくめる。

現状人数差等を考慮しても戦況はトントン、あっちの個性の種が分からない以上分はあちらにあることは明白だった。

 

個性の制約か、何かの予定に合わせたか。

いずれにせよ黒霧に対しパンダらが今言えることは「『わからない』がわかる」、ということだけだった。

 

 

「一先ずヤツのことは置いといて、これからのことを考えた方が良いだろう」

 

「だな。俺と棘は相澤の援護に向かう。あのまま放っておくのは流石にマズイ」

 

「しゃけ」

 

 

「わ、私たちも行くよ!」

 

「ダメだ」

 

「なんで⁉ 私たちだってヒーローの卵なんだよ⁉」

 

「戸芦……」

 

「理由はある。お前らに戦闘許可が下りてないことだ」

 

「戦闘許可……」

 

「どんな状況であれ、仮免許も持ってない奴が交戦すれば責任を問われることになる。その責任が生徒か学校か、はたまた両方なのかは知らないがな」

 

「確かに敵の手から脱出するだけなら正当防衛が認められる。だが、救出のため個性を振るえばその限りではないということになるというわけか」

 

「でも、そしたらパンダ君たちも駄目じゃないの⁉」

 

 

麗日が声を荒げて問いただす。冷静さを失ってしまうような状況である中、自分も該当するにも関わらず、例外かのように立ち振る舞っていることにおかしさを感じたのかもしれない。

だが実際の所、この場においてパンダたちは例外の存在だった。

 

 

「俺たちは呪術科だ。ヒーロー科と違って限定的な状況下かつ、緊急時には戦闘の許可が下りるようになってる」

 

「しゃけ」

 

「あとはあのゴリラ、脳無って言ったか。食らったからわかるが……アイツの力は相当だ。肉体強化の個性でも持ってなきゃ一発で死ねるぞ」

 

「しゃけ……」

 

「そんな……」

 

「だからって逃げろって言ってるわけじゃない。他にもやれることがあるだろう? ヒーローってのは何も戦うだけが仕事じゃないんだから」

 

「そう……だね」

 

「あの時の私とは違う………今の私たちに出来ることをしよう!」

 

「「「おう/うん!」」」

 

 

 

麗日らは団結し、ある者は13号の手当を、ある者は未だ合流できていないクラスメイトの把握・手助けを、各自自分が取るべきだと感じた行動を取っていく。

憧れのヒーローオールマイトの信任、先の戦闘訓練の派手な戦いから皆どこかに「ヒーローは戦わなくては」という認識が静かに生まれていた。

パンダの言葉は彼らの背中を押し、迷いを断ち切る手助けとなったのだった。

 

「おかか!」

 

「あー悪い悪い。パンダさんによる説教はここまでだ。お前らのこと案外気に入ってるからさ、死なないように頑張れよ」

 

「うん……!」

 

 

麗日らの頷きを一瞥すると、パンダと狗巻は高台から飛び降り噴水広場の方へと向かっていく。

我らがヒーロー科における担任を救い敵を倒す、そのために。

 

 

 

 

 

一方その頃、雄英高校本校舎。

USJの動乱などいざ知らず、ヒーローと教師、二足の草鞋を履く多忙な彼らのために設けられた仮眠室にてオールマイトは根津校長の教師論を説かれていた。

 

 

「……」

 

「つまりだね、ヒーローと教師の関係性というものは一言で表すにはあまりにも複雑であって……ちゃんと聞いてるかい?」

 

「すみません先生。やはり13号くんにも相澤くんにも連絡を取れないのが気掛かりでして……」

 

 

オールマイトは携帯の画面に残る履歴を見て言う。

普段なら5分前後で折り返してくる彼らからの返信はオールマイトには届いていなかった。

 

 

「今行ってもすぐに戻るハメになるんだろう? いっそ今日はもう私の教師論を聞いて今後の糧とするべきさ」

 

「確かに変身出来て30分程ですが……やはり行かせていただきます」

 

 

少し悩むもオールマイトは立ち上がる。

 

 

「教師としての責任を果たすため、少しでも生徒たちに還元しなくては」

 

「そうかい。教師論を離せないのは少し残念だが、教師としてのその想いは無下にしてはいけないね」

 

「教師論はまた別の機会に伺います。まずは教師としての役割を果たしてきます!」

 

 

根津にオールマイトは一礼し、仮眠室を後にする。

USJに向かうのは教師としての責を果たすため、生徒たちの糧になるようなことを行うためだけではない。

 

 

(何か……嫌な予感がする)

 

 

言葉に形容は出来ない。けれど、何かとても良くないことが起きている。そんな予感がオールマイトにはあった。

己が直感を信じ、自らの身体から煙を放出しつつマッスルフォームへと変身する。

 

 

「今日のラッキーアイテム、つけた来たんだがなぁ!!」

 

 

先ほどまでのやせ細った身体からは想像できないほどの脚力で、オールマイトはその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

全速力で、駆ける、駆ける、駆ける。

一秒でも、コンマ1秒でも早く駆け付けるために。雄英高校内の舗装され開けた道路を車の何倍ものスピードでオールマイトは駆けていく。

対向車何も気にすることない道路にて、オールマイトの視界に1人の少年の姿が映った。

 

 

「オールマイト!」

 

「飯田少年!!」

 

 

呼び止められたオールマイトは地を蹴り返し、飯田の下へと着地する。

飯田の表情からは不安と恐ろしさ、責任が感じ取れた。

 

 

「USJが敵に襲撃されました! 相澤先生、13号が倒れ生徒らの全員の安否も……わからない状態です」

 

(なんて端的な説明……きっと怖い想いをしただろうに)

 

 

身体を震わせながら説明する飯田に対し、オールマイトは安心させるよう肩にポンと手を置く。

 

 

「説明ありがとう飯田少年! もう大丈夫────私が、いる!!」

 

「……ッ‼」

 

「私はUSJに急行する。飯田少年は他のプロヒーローの救援を頼む!」

 

「はい‼」

 

 

飯田が聞き届けたと同時に、オールマイトは全速力でUSJへと向かう。

踏みしめた地面は隆起し、大きな足跡を残していく。それほどにオールマイトの脚力は、怒りは規格外のものだった。

 

USJまでおよそ数キロ。1分も経たずに合流できる筈。

残り変身時間を考慮しても、20分以上の余裕がある。

 

 

「ならばその余力を速度に変える!」

 

 

普段の100%から、120%へ。

この後に支障を出さず、より素早くUSJへとたどり着けるように。

オールマイトがより一層の力を込めて地を蹴ろうとした。その時だった。

 

 

「せん、せんざあざざざあい!」

 

 

一言で表すなら妖怪のような異様な存在がオールマイトの眼前に突如現れた。

咄嗟の状況でありながらも、その存在から殺気を感じ取ったオールマイトは反撃に移る。

 

 

「はぁッ!」

 

 

速度を殺し、決して致命傷にならないよう放たれた一撃はその妖怪のような何かを吹き飛ばし、道端の木々へと打ち付けた。

 

 

「………せ、せんざぁあ……」

 

「雄英の敷地内に敵か? それにしては何かが違うような……」

 

 

ぶつけた拳の違和感にオールマイトはやや戸惑う。

勿論、USJ以外の雄英の敷地内にも部外者、それも敵がいたことは驚きだ。ただそれ以上に殴り飛ばしたこの感覚が、これまで相手してきた敵とは何か異なる存在であることをオールマイトに伝えんとしていた。

 

 

「何にせよ暫くは起きれないだろう。USJに急がねば!」

 

 

気になることではあるものの、今現在渦中にある生徒たちの安全が最優先だ。

優先事項をはっきりさせたオールマイトは、再びUSJに向かおうとする。

 

 

「いやはや、流石平和の象徴と謳われることはある。実に素晴らしい」

 

「……君も侵入者か? 悪いが今急いでいるんだが」

 

「それは実に失礼した。一先ず名乗らせていただこう」

 

 

男は袈裟を翻し、深くお辞儀をする。

その礼には敬意こそあれど、謝意はない。ただ何か並みの敵とは違う、邪悪さが溢れるものだった。

 

 

「私の名は夏油傑。現状で世界唯一の────呪詛師だ

 

 

USJ編の話構成(途中まで)

  • 1話1エリア分(今回の形式)
  • 1話2エリア分(例:乙骨+緑谷パート)
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