呪い、呪われ   作:ベリアロク

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第2話 散歩

それはどこにでもあるような光景。小さな子どもが公園で仲睦まじく遊ぶさま。

ただその姿は蜃気楼のように揺らめいていた。

 

 

 

『――――――ゆびわ?』

 

『そう、婚約指輪』

 

『こんにゃく?』

 

『違うよ、婚約』

 

 

『里香と憂太は大人になったら結婚するの』

 

 

 

少女は少年を見て微笑む。

少女のそれはまるで天使のようだった。まるで世界を照らしてくれる太陽のようでもあった。

 

 

 

 

 

『ずーっとずーっと一緒にいるの……約束だよ?』

 

 

 

 

 

その笑顔が二度と見れなくなるなんて……その時は思いもしなかったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ッ

 

 

 

瞼を照り付ける光に目を窄め、少しづつ目を開ける。天井には相変わらずの過剰な照明が並び、四方の壁には無数の銃火器がこちらを静かに見ていた。用意された布団を使うまでもなく寝ていたらしい。硬い椅子に座り続けていたことで体の節々に鈍い痛みが残っていた。

軋む身体を無理やり起こし立ち上がると布団の横に衣服が畳まれて置かれているのが目に入った。

置かれていたのは柄などない無地の服、傍には災害用食品と飲料が転がっている様を見るにこれが『朝セット』らしい。

 

 

 

「着替えはあるんだ……けどここで着替えるのは気分が悪いなぁ……」

 

 

 

自身の動きに合わせ銃口が動く無数の銃火器に怯えつつ、朝食の乾パンを咥えながら衣服を新たなものにする。

そうして乙骨が身支度を整えると同時に扉をノックする音が部屋に響く。

例の如く返事をする前に扉は開かれ、その先にはアイマスクを付けた男が立っていた。

 

 

 

「おはよう、乙骨憂太君。今日もいい天気だね」

 

「……おはようございます」

 

「相変わらず暗いなぁ……ま、いいや。起きて早々悪いんだけど散歩でも行かない?」

 

「……」

 

「いつまでもこんな部屋いたら身体に悪いよ? 今日はいい天気だし……さぁ行こう!」

 

「わ、ちょ……ちょっと引っ張らないでください! 自分で歩けますから!」

 

「あー無理しないでいいよ。ここ出るまでは目隠しさせろってジジイ共がうるさいからさ。ちょいと失礼」

 

「……よろしくお願いします」

 

 

 

この人は何言ってもダメな人だと直感した乙骨はため息を吐くと男に目隠しを付けられ喧しかった照明が完全に遮断される。

そのまま連れられるがままに乙骨は男に連れられ猛獣の檻のような場所から外へと足を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何か好きなものとかないの? 食べ物とか後でおごるよ?」

 

「えっと……塩キャベツが好きです」

 

「塩キャベツ!! 最近の男子は草食系だねぇ……もっと肉食べなさいよ肉!!」

 

「あはは……にしても風強いですね。台風とか来てるんですかね?」

 

「いーや、至って快晴だし台風も竜巻もナシ。まぁ場所が場所だからね」

 

「?」

 

 

 

人々の雑多な声、小鳥のさえずりや自動車などのガス臭さ。

久しぶりに外へ踏み出し感じた空気に乙骨は変な気分を味わいながらも男と他愛も無い会話をしつつ歩いたり、身を抱えられたりしていた。

 

 

「よし、ここらでいいでしょ」

 

(着いた……のかな? 足がぶらついたまんまだけど……)

 

 

やがて男の動きは止まり、それに合わせて抱えられていた乙骨もその場で静止する。

けれど足は空を切るばかりでつま先すらかすらない状況に乙骨は疑念を抱いていると目隠しの留め具がパチリパチリと外れていく音が耳に入った。

 

 

 

「さて目隠し、取っちゃおうか。いい眺めだよ」

 

「ん、眩し……ってえ?」

 

「そういや自己紹介してなかったね。僕の名前は五条悟、これでも結構有名なんだけど……サインとかいる?」

 

「え……五条悟って……じゃなくてですね……!」

 

「ん? どしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで僕たち空飛んでるんですかァ!」

 

 

 

 

 

男に抱えられながら発された乙骨の叫びが木霊する。

真上にあるは雲一つなく澄み切った青い空。体に吹き付けるびゅうびゅうという風と普段は建物などが邪魔して見ることも出来ないような山々が景色として広がっていることが乙骨らがとてつもない高さにいることを示してた。

 

 

 

「別にこのご時世空に浮くくらい珍しいことでもないでしょ。プロならこれくらいは出来なきゃ」

 

「いや、これはもう浮くとかいうレベルでもないと思うんですけど……」

 

「まぁそこらへんは人それぞれだからね。それより今ここにいる理由さ、ただ僕らは空に散歩しに来たわけじゃない」

 

 

 

そう告げ五条は指を地面に、正確には地上に向け指す。

 

 

「今ここにいるのはこの下に用があるからさ」

 

「……この下?」

 

 

 

唾を呑み恐る恐る下の方へ目を向ける。

そこにあったのは木々が生い茂る大自然の中にあるものとしては少々似つかわしくないコンクリートで舗装された道、無数の建造物が並ぶ都市の姿だった。

 

 

「ここは……」

 

「ここは国立雄英高等学校。都心では珍しい大自然に囲まれた空間に場に構え、国を支える人材を育成する学校さ」

 

「ここがあの天下の雄英……」

 

「流石に雄英は知ってるか。「あの」……って言う感じだと誰か知り合いがいるとか?」

 

「いえ、僕の幼馴染が来たがってた学校だったので」

 

 

 

乙骨は胸に下げた指輪を見て悲しげな表情を見せる。

雄英高校は彼女にとっての憧れであった。夢として叶えることも敗れることも最早出来ない『憧れ』である。

 

 

 

「……そっか。悪いね、気分を悪くしちゃったかな」

 

「いえ、五条さんが気にすることではないですよ」

 

「ありがとう、優しいね君は。それにしても五条さん……五条さん、かぁ……」

 

「? どうかしました?」

 

「いやなんでも! 呼び方については今はいいとして、昨日も言ったけど今日からここが君の学校……なんだけどね」

 

「?」

 

「本当は顔パスで『今日からこの子雄英生で!』っていけるはずだったんだけどちょっとばかし頭がお堅い奴がいてさぁ」

 

「はぁ……」

 

「ってなわけでこれから君には試験を受けてきてもらいます! 取り敢えず緑色の機械ぶっ壊していけばいいからさ。さーて、どこらへんがいいかな~」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

 

「へ?」

 

 

一人で話を進める五条を乙骨が静止する。

 

 

 

「僕は”無個性”なんですよ!? 里香ちゃんが出てきたら危ないし……雄英高校って言ったら優秀な人達が集まるところなのに個性も無い僕なんかが行ってどうすれば良いんですか!」

 

「あー大丈夫大丈夫、ちゃんと()()()投げるから。うーんここらへんかな~」

 

「狙ってって一体何を……」

 

「ほい、それじゃあいってらっしゃーい!」

 

 

 

 

「え……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

 

 

 

 

五条から手綱とも言うべき首根っこを離され、乙骨の身体は一瞬宙に浮く。

けれどその安堵の浮遊など一瞬で途絶え途絶えの悲鳴と涙と共に乙骨は地上に向かって真っ逆さまに落下していった。

 

その様を横目に五条は携帯を取り出し『一応職場』とディスプレイに映し出された番号に電話をかける。

 

 

「あーもしもし? 五条だけど」

 

『……五条サン。アンタ一体どこで油売って……』

 

「言われた通り乙骨会場に入れといたから採点とか諸々後はよろしくー」

 

『まだ話は終わって……』

 

 

ピッ

 

 

 

「鬼電来るだろうから留守電設定して……っと。彼色々とうるさいからなぁ」

 

 

 

 

そんなんじゃ将来大変だぞ? なんて言いつつ五条は携帯をしまい再度地上を見下ろす。

 

 

 

 

 

「そんじゃあ憂太、くれぐれも――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         ――――――死なないように

 




キリがいいのでここら辺。
ふと思ったのが五条ってヒーローたちのこと呼び捨てなんだろうか。庵歌姫呼び捨てだから呼び捨て? でも冥さんって呼んでるし……わかんねぇ

USJ編の話構成(途中まで)

  • 1話1エリア分(今回の形式)
  • 1話2エリア分(例:乙骨+緑谷パート)
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