呪い、呪われ   作:ベリアロク

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少し時間が出来たので。
読みにくかったら申し訳ない。


第5話 不安と門出

試験から時間は流れたとある日のこと。

広大な敷地と設備を誇る雄英高校、その一角にある薄暗い部屋に教員らは皆集まっていた。

 

 

 

「……」

 

「B会場の彼、中々いい動きするわね」

 

「ええ。しかしスタミナ切れか後半の動きは少ないです。惜しい子だ」

 

 

そこでは各々紙とペンを持ち、画面に映し出される受験生らの様子を眺めている。

学生一人一人の将来が左右される採点において誰もが真剣な表情で作業に取り組むその部屋の雰囲気はかなり重苦しいものだった。

 

 

「……A会場の方、終わりました」

 

「ご苦労様。そしたら次は例の会場の方を他の先生方と――――誰か来たみたいだね」

 

 

根津が相澤に指示を下そうとしたところでチャイムの音が部屋に響く。

その音はこの部屋の前に入室許可を得ていない訪問者がいることを示す呼び鈴だった。

 

 

「俺が出てきます。指示はその後改めて」

 

「助かるよ、よろしく頼むね」

 

 

 

校長に軽く会釈をし相澤は呼び鈴の鳴る扉の前に立つ。

採点中にこの部屋に人が来る予定はない。けれど警報も無くこの部屋にたどり着き呼び鈴を鳴らせている以上雄英高校関係者であるのは間違いない。

百%安全でかつ気の許せる相手の筈なのである。けれど相澤の手は開錠ボタンに触れることを躊躇う。

 

 

(この先にいる人物は何か、とても面倒くさい奴な気がする……)

 

 

相澤の直感がそう囁く。味方であるものの外道、そんな奴がこの扉を隔てた先にいると。

かと言って開けないわけにもいかないので相澤は直感が外れてくれることを願い扉を開ける。

扉を開けた先には雰囲気の破壊者(ブレイカー)ともいえる男がアホ面かまして立っていた。 

 

 

「おっ疲れさまで~す! 五条悟、出張から帰ってまいりましたー!」

 

「五条サン……」

 

 

相澤は目の前の男の登場に大きくため息を吐く。

直感通り、案の定の結果である。

 

 

「や、ひさしぶり! 元気してた?」

 

「……おかげさまで元気ですよ」

 

「? ま、いいや。それより悪いね、校舎の空部屋借りちゃって。おかげさまで憂太もぐっすりさ」

 

「いえ別に俺は何もしてません。リカバリーガールの指示の通り動いただけですから」

 

「不愛想だねー全く。……それでどうだった? 乙骨憂太、中々の逸材じゃない?」

 

 

五条はビシリと両手の人差し指で相澤を指さす。

ニヤけた面を見せる五条に相澤は顔を綻ばせることなく話を続ける。

 

 

「逸材かどうかもこっちはわかりませんよ。試験場囲ったあの黒いやつ、五条さんが出したんでしょう?」

 

「あ、うん。カッコイイでしょ!」

 

「……あれが出たタイミングでその乙骨がいる試験場の映像全部途切れたんです。おかげで採点の方、難航してますよ」

 

「マジ? いやーごめんごめん、本当に悪気はなかったんだー意図したことではなかったんだー」

 

「……アンタって人は……」

 

「はいはいそこまで」

 

 

あからさまなほら吹き顔を見せる五条とそれに静かに苛立つ相澤の間に根津が割って入る。

相澤の様子を見て意地悪く笑う五条とは相反して正に大人な対応である。

 

 

「これはこれは校長先生。今日も紅茶、キメてますね?」

 

「この時期はいつも忙しいのでね、紅茶は欠かせないのサ」

 

「あ、試験の様子撮っといたんでデータ送っときまーす。多分全員分」

 

「……あるんだったら早く送ってくださいよ」

 

「メンゴメンゴ、色々と事情があったんだよ。それより校長、最近の雄英どうです?」

 

「至って平和だよ。生徒たちの成長も目まぐるしいし、どの科の生徒も充実した時間を過ごせていると思うのサ」

 

 

根津はにこやかな顔を見せながら手に持つティーカップを口へと運ぶ。

少し口に含み紅茶の香りを、味を楽しみティーカップを顔から離した根津の表情は打って変わって真剣なものになっていた。

 

 

「さて、君と世間話に花を咲かせるのも悪くはないのだけど……それはまたの機会にしようか」

 

「ええ、僕も世間話をしにここに来たわけじゃないんで」

 

「そうかい、ならここで話すのもアレだから会議室に行こうか。相澤君も一緒に来てくれたまえ」

 

 

校長の言葉に相澤は頷くと3人はそのまま観測室を後にし、会議室へと場所を移す。

一般的な電灯・デスクが備え付けられたその部屋で3人は椅子に着くと根津が話を始めた。

 

 

「じゃあまず何故帳を下ろしたのか聞かせてもらおうか。僕の記憶が正しければあれは敵を閉じ込める結界だと認識しているのだけど、実のところどうなのかな?」

 

「あーあれね、帳を下ろしたのには色々理由があるけど結論から言うと……いたよ敵」

 

「敵が⁉ あの日雄英高校内にいたんですか⁉」

 

「うおっと凄い反応⁉ どうどう……落ち着きなよ相澤君。話はまだ途中だから」

 

「……すみません」

 

 

珍しく慌てた様子を見せる相澤に五条は驚きつつ彼をなだめ、相澤が再び席に着いたところで話を再開する。

 

 

「正直な話居たのに気づいたのは試験後憂太を拾いにいった時だ。まぁ来るだろうとは思ってたけどね」

 

「来るってわかってたなら何で予め連絡をしなかったんですか?」

 

「確証が無かったからさ。言うならばただの勘よ、勘」

 

「勘……ですか」

 

「そ、確証もナシに入試を中止にするわけにもいかんでしょ。公安のジジイ共も中止は絶対避けろってうるさかったし」

 

 

五条はやれやれと首を横に振る。

雄英高校は国内にあるヒーロー養成校としても1,2を争うほどの知名度と実績を兼ね備えていて、それに見合った設備とヒーローも在中している。雄英は言わば未来のヒーローが生まれる場であり、敵から畏怖される場でなければならないとするのが政府の考えである。そんな場所が

 

  敵くるかもしれないから試験は中止するぞ~

 

なんて言えば敵への効力はもう期待できない。いくら名の売れたヒーローが都心にいるからとはいえ痺れを切らした敵が世に解き放たれれば被害は免れないだろう。雄英は世の平和の為に強固な姿勢を見せ続けることが求められているのである。

 

 

「その為にあの結界……帳ってのを張ったんですね」

 

「正確には親玉とかやばい奴らが来ることを防ぐために帳を下ろしたんだけど……ま、大体そんなとこだよ」

 

「なるほどね。何故君が帳を下ろしたのかは納得がいったよ。けど帳が下りていたのになんで敵が中にいたんだい?」

 

「最初から試験場内に潜伏していたってことでしょうか」

 

「いや、その線は薄いだろうね。試験中に()()感じそれっぽいのもいなかったし」

 

 

五条は首を横に振り考えを否定する。

少なくとも乙骨を連れて空に居た時には試験場内に敵と思しき存在を宝石のようなその目が捉えることはなかった。

 

 

「じゃあ何で帳の中に……」

 

「恐らくだけど敵の個性が『透過』とかそこらだったんだろう。『透過』で帳を抜け、0P敵を奪ったんじゃないかな。見てないからわからないけど」

 

「0P敵には整備用のコクピットがある……そこを利用されたかもしれないね。それよりも事件の方の処理はどうしたんだい? 警察の方からは何も連絡が来てないけど」

 

「この件は公安の方が処理したから問題無いですよ。事が事だからね、この件は未公開事件になる。ただ後々警戒態勢について軽ーく指導が入るかも」

 

「了解した。敵の件は解決として……他に何か君が気になる点はあるかな?」

 

 

根津の言葉に五条は一瞬考えこむも、顔を上げ告げる。

 

 

「気になる点が一つだけ。今回の事件だけど計画的な犯行の可能性があるんだ」

 

「計画的犯行か……して何故そう思ったんだい?」

 

「まず相手の個性について。敵の持っていたであろう『透過』は強個性の類だ。警報が作動しないなら銀行強盗だってし放題だし、他にも使いようはあるだろう」

 

「それを入学試験で暴れるために使うのはおかしい……と」

 

「そ。まぁそれだけだったら愉快犯の可能性もあるんだけど……問題は敵の身柄は拘束できなかったことだ」

 

「拘束できなかった? 敵を逃がしたってことですか?」

 

「憂太が大型仮想敵を倒した後、ほんの一瞬だけど薄気味悪い姿をした敵が仮想敵から這いずるように出てきたのを見たんだ。憂太の方もやばかったからすぐに敵を拘束しようとしたんだけど一瞬でそっからいなくなっちゃった」

 

 

五条は握っていた拳を開きながらそう告げる。

まるで蒸発するような、消えるような感じだったと五条は付け加える。

 

 

「敵が消えた……その様子君にはどう()()()?」

 

「一瞬だったんで全部視れたわけじゃないです。けど少なくとも個性が関わってた。何らかの個性の影響で姿を消したのは間違いないですね」

 

「一瞬でそこまで……相変わらず五条さんは腕だけ「は」良いですね」

 

「腕だけ「は」って何よ! グッドルッキングガイ五条悟は腕も良いし優しいし、気が利く上に()()良いんだよ!?」

 

 

五条は子どもみたいに頬を膨らませて拗ねるも、一瞬で表情を戻し話を続ける。

 

 

「それに試験の時、雄英高校周辺にはハウンドドッグもいたでしょ? 機械系の機器は『透過』で誤魔化せても彼の鼻を誤魔化すことは出来ないはずだ。となると……」

 

「第三者の関与の可能性がある……ですね?」

 

「正っ解! なんなら裏にデカい奴がいる可能性もある」

 

「それ含めて計画的犯行の可能性があるってわけですか。ヒーロー飽和時代とは言え確かに可能性が低い話じゃない」

 

「でしょ? だから警戒態勢の強化も視野に入れた方が良いと僕は思ってる。取り越し苦労になるかもだけどさ」

 

「思い過ごしになるのが一番サ。採点終了後は警察と相談しつつ警戒態勢も見直していこう」

 

「流っ石校長! 生徒想いのイケメン……いやイケネヅミ!」

 

「僕は誰よりも生徒を愛するからね、これくらい当然さ。そう言う五条君もまさにGT(グレイトティーチャー)だね!」

 

 

「「はっはははははははははははははははははは!」」

 

 

(もう帰っていいかな)

 

 

五条と根津の笑い声が会議室中に響き渡る。

その声は部屋から漏れ廊下にも届いて事務作業をいていた職員らに恐怖を植え付けたとか、そうでもないとか。

そうして採点に追われてた日々も過ぎ去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に時は進み、桜舞う頃。

自然あふれる中にポツンと立つ建物の中は朝から賑やかだった。

 

 

「ささ、早く着替えちゃって! 新しい制服だよーん!」

 

「わわ! 自分で着替えられますってぇぇぇぇl!」

 

 

試験終了から7日後には乙骨は目を覚ましており、現在体調は万全。

公安に拘束されていた時よりも前向きになったのか性格もやや明るく、やせ細っていた肉体には同年代と比較して程よい筋肉がついていた。

そんな彼が五条の手を振りほどき身に着けたのは雄英高校の制服。

ボタン一つ止めの白い学ランに黒いズボン。一般的な制服と比べるとかなり異色な色合いだった。

 

 

「これが新しい制服……雄英高校の制服ってこんなんでしたっけ……」

 

「そんなもんさ……うん、よく似合ってるよ。 それじゃあ僕は出かけるから行先はさっき渡した紙を見るように!」

 

「え、あ、ちょっと!」

 

 

 

乙骨が声を掛けるよりもスピーディーに五条は部屋を後にする。

先ほどまで賑やかだった部屋もがらんとし、部屋には一人乙骨がポツンと立っていた。

 

 

「はぁ、やっぱり五条さんって結構自分勝手な人だよなぁ……仕方ない、僕も出かけよう」

 

 

乙骨はため息を吐きつつも身支度を整え、部屋を後にする。今日はいよいよ雄英高校の入学式だ。

廊下の窓からは日が差し込み、小鳥のさえずりが新たな門出を祝福してくれているようだ。新調した靴を履き下駄箱へと向かう。

 

 

「……行ってきます」

 

 

誰もいない校舎に出かけることを伝えると五条に渡された紙に従って歩き出す。

目的地は『ここ!』と書かれただけで名称はわからない。けれど進むべき道は地図と周りの自然が教えてくれていた。

 

木々が生い茂る中に作られた緑の道を歩いていく。暖かい風が春を感じさせてくれている。

やがて周りの緑も桜色に、自然の通り道を抜けた先に乙骨が見たのは木々を優に超えてそびえたつ城の如き建造物――――――雄英高校だった。

 

 

USJ編の話構成(途中まで)

  • 1話1エリア分(今回の形式)
  • 1話2エリア分(例:乙骨+緑谷パート)
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