まぁ客観的に見たらそんなもんよね……ってことで更新しました。
「呪術科……ですか?」
「そ。ヒーロー科でも普通科でも、ましてや商業科もない。雄英高校『呪術科』さ」
いまいち状況の掴めていない乙骨に対し五条は再度告げる。ここは呪術科である……と。
その言葉が更に憂太を混乱させる。雄英高校には「ヒーロー科」・「普通科」・「商業科」・「サポート科」の計4つの科が存在するが、「呪術科」などという科が存在するなど一度も耳にしたことがなかったからだ。そもそも『呪術』という名前からしてそれらに並ぶ学科とは乙骨には到底思えなかった。
(本当かな……また適当なこと言ってたり……)
「信じてない……って顔だね憂太。酷ーい先生泣いちゃう……うぅ……」
「いえ⁉ ソンナコトハ……って先生?」
わざとらしく嗚咽の声を挙げる五条の口から洩れたワードに乙骨は思わず聞き返す。
「あ、言ってなかったっけ。僕呪術科の担任だから」
「えっ」
「えっ……何か嫌そうな顔してない?」
「いっ、いやいや! 嬉しかったんですよ! まさか五条さんが先生だなんて思ってもみなくて!」
「そうだよねー! 僕みたいなクールでナイスなガイが先生を務めるだなんて嬉しくなっちゃうよねー!」
「勿論です! あは、あはははははは!」
(『まさか五条さんが先生じゃないよな……』なんて思ってたなんて言えない……)
「よし! じゃあこれからは五条先生でよろしく! 初めに呪術科自体の簡単な説明をしようか」
上機嫌に鼻歌を歌いながら教卓の上に胡坐をかいた五条はそのまま説明を続けていく。
「何故聞いたこともないような『呪術科』が雄英高校にはあるのか。その理由は大きくわけて二つある。一つはこの学科自体創設間もないから。もう一つは呪術科の存在は公にされていないからさ」
「公にされていない……? そんなことあるんですか?」
乙骨が五条の説明に対し疑問を呈する。
それもその筈である。学科が公表されていなければその学科を志願しようとする者もいないわけで、当然受験しようとする者もいないわけである。ともすれば呪術科は存在しないも同義だろう。再び首を傾げる乙骨を見て五条は説明を続ける。
「呪術科にはちょっとした事情があってね。その事情は……追々として、早い話この学科はスカウト制なんだよ」
「スカウト制……ですか?」
「そう、スカウト制。僕が良さそうだな~って子を見つけてきて育てる学科さ。こう……光る原石を探す……みたいな!?」
「な、なるほど……?」
「だから公になってなくても生徒は所属してるし、活動も行われてるのさ。ここまでは大丈夫?」
五条の問いに対し乙骨は頷くと五条は説明を続ける。
「それで呪術科の存在理由だけどヒーローの信条、というか道徳的倫理が大きく関わってるんだ」
「信条と道徳的倫理……」
「ヒーローは敵を殺さず捕まえる。いわば不殺の正義を掲げてるしそれを掲げることが当たり前だと思われてる。憂太もヒーローが敵を殺しに行ったのなんて見たことないでしょ?」
「え、ええそれは勿論……」
「でもさ、敵を殺さず捕まえられるなんて相手が大したことない奴の時だけなんだよね」
先ほどまでとは打って変わり五条の声のトーンが低くなる。
それと同時に乙骨は部屋の空気が変わったのを肌で感じた。
「大抵の敵なら問題ない。けどたまーにいるんだよ、厄介な奴らがね」
「……信条を捨てて、殺さないといけないような敵がいるんですか?」
「不殺以前の問題さ。普段から不殺を掲げて呑気してる奴らにはまず勝つことすら出来ないような奴がいるんだよ」
ま、僕やオールマイトなら別だけど
そう付け加えて語ると同時に五条の声のトーンがいつものおちゃらけへと戻る。
「そういう奴らへの抑止力、ないしより巨悪に対抗するための実力を養うことを目的とした学科がここ、『呪術科』さ。やることはほぼヒーロー科と同じ、けど目指すところが厳密には少し違うから分けたってわけ」
「その違うことって一体何なんでしょう?」
「そうだね……相手にする奴とかまぁ色々違うとこはあるけど大きいのは今言ったヒーローの掲げる不殺の信条、これを場合によっては捨てて戦うことさ」
「……っ」
淡泊に告げる五条を前に乙骨は思わず息を呑む。
ヒーローは勿論この世界に生きる殆どの人が無意識の内に持っている不殺の信条を捨てること、それは場合によっては人を殺すことを意味していた。
「これも公にはされていないけど一部のヒーローや一部の状況下においては人を殺すことが認められるケースが存在してるんだ。綺麗ごとだけで成立するほど世の中甘くないからね」
「人を……殺す……」
「あーそんな心配しないでいいよ。なんせ平和の象徴がいるからデカい悪事を起こそうとする奴らはそういないしね。ただ……覚悟はしておいて欲しいんだ。無数の誰かのために人を殺す覚悟を、ね」
「五条……先生も人を殺したことがあるんですか?」
「あるよ。それも両手で数えられないくらい。それでも僕は戦い続けるさ。弱者生存……それがこの世界の理・あるべき姿……らしいからね」
「弱者生存……それって「入るぞー」」
何かを懐かしむかのように告げられた五条の言葉に聞き返そうとしたところで教室の扉が音を立てて開かれる。
扉の前に立っていたのはこちらも雄英高校の制服ではない、乙骨の白い制服の黒いバージョンのような服を着た少女と少年、乙骨と同じ白を基調とした服……ではなく毛皮を身に付けたパンダだった。
「おっ来た来た! 引っ越しの準備の方はどうだい?」
「別に。元から大した荷物もないから問題ねぇ。それより五条、今日は呼びつけて何の用だよ」
「五条って……呼び捨てって酷くない? 僕って真希より何個も年上だし、しかも先生よ」
「じゃあ悟」
「じゃあって変わってないし……そんじゃあ僕は真希のこと禪院ってよぼおっか「コロス」
「あははは……」
「んでコイツ誰?」
「あっ、その……」
「小さいころ色々あって呪われちゃった乙骨憂太君でーす! 同級生だから仲良くしてあげてねー」
「呪い……?」
「そう呪い。ちなみに攻撃するとね……」
そう言って五条は黒板から取り出したチョーク数本を乙骨に投げ飛ばす。
突然の出来事に乙骨は呆気に取られ目を瞑ろうともしないがそんな彼を守るように宙から異形の腕が現れ、チョークを弾き飛ばしたかと思えばその二腕は首をへし折らんと五条へと襲い掛かる。けれどその腕は何故か五条の手前の空を掴んで動かなくなった。
「こんな風に憂太を大好きな里香ちゃんが攻撃してくるからそこんとこ気を付けてねー」
皆が目の前の光景に絶句する中五条は淡々と語る。
しばらくして里香が消えさると「次は皆の番だね」と言って他のメンバーの紹介を始めた。
「まずは武具使いの禪院真希。武器の扱いに関してはプロレベル、何かあったら聞くと良いよ」
「……」
「個性『呪言』狗巻棘。語彙はおにぎりの具しかないから会話頑張って」
「こんぶ」
「そしてパンダ」
「パンダだ。よろしくな」
「……とまぁこんな感じ」
(一番欲しい説明がなかった……)
恐らく個性『パンダ』とかだろうと想像はつくがそれはそれとして他二人と同じくらいの説明は欲しい。
特段コミュ力があるわけでもない憂太は仲良くなるための足掛かりを欲していたがその想いは五条には届かなかった。
「そんで悟、なんで私たちを呼んだんだよ。入学説明会はこの間やったろ」
「しゃけしゃけ」
「今日皆を呼んだのは他でもない、重要事項があったからね!」
五条はそう告げると黒板にチョークを用い書きなぐるように文字を書き込んでいく。
両手に幾つものチョークを持ち緑一色だった黒板が色鮮やかになっていく様からも本気具合が伺える。
「凄い気合いの入れようだな悟。あ、カルパス食う? お返しは笹以外で頼むぞ」
「ツナマヨ」
「棘も欲しいのか? ほらよ」
「すじこ」
「あ、ありがとう。その……パンダ君は狗巻君が何言ってるのかわかるの?」
「まぁな、棘とは知り合って時間経つし。真希もそうだぞ」
「あん? 何か言ったか? ……ったく、書くなら予め用意しとけよ」
「出来ましたっ! 今日の最大にして最重要なイベント、それは……こちら!」
時間にして数十秒。
ふーっと一息つくと黒板をバンと叩き乙骨らに黒板に書き込んだ重要事項を露わにした。
「チキチキ! 新入生の皆の親睦を深めちゃおうの会!!」
「「「「は?」」」」
前には満面の笑みを浮かべる五条、対して机が並べられている乙骨ら側の表情は完全に固まっていた。それどころか真希のこめかみには青筋が浮かんでいて笑みを浮かべる五条とのコントラストすら生まれていた。
「うんうん、我ながらナイスアイディア! 1年は皆仲良くなって僕との仲も深まる、そしてなんやかんやで地球温暖化も解決だ!」
「……なぁ悟」
「どした真希? ……アレーおかしいなーとても感激してるような顔には見えないんだけど」
「このためだけにわざわざ呼び出したんか……? ここに着くまで何時間かかるか知ってるよなぁ……お前が変なところに寮立てたせいでなぁ……!!」
「それについては悪かったって! でも良い汗かけただろ……?」
「……良いぜ、覚悟しな」
炸裂する五条のキメ顔。悪びれる様子を見せない五条に我慢の限界の来た真希は背負っていた筒から棒状の何かを取り出し、次の瞬間五条の下へと振りかざす。取り出されたそれの先についていたのは銀に輝く刀身・薙刀だった。五条はそれを冷や汗すらかかずに素手で受け止めた。……否、手に当たる直前で薙刀の動きが止まっていた。
「おー危ない危ない。尖ったものは人に向けちゃいけないってお家の人に教わらなかった?」
「家には教育のきの字もなかったんでな。それに今向けてんのは人じゃねぇ、化け物だ」
(二人とも怖すぎる……)
乙骨も目の前の光景の恐ろしさから一歩後退りする。第3者がこの状況を見れば間違いなく通報ものだろう。触れ合う真剣と素手。そんな状況で軽口を言い合う二人に恐怖しているとパンダが口を開いた。
「なぁ悟よ、本当にこの歓迎会だけなのか?」
「ツナマヨ」
「あーそれもいいけど……今はいいかな。とりあえず事務連絡が一つだけある」
「事務連絡? わざわざ口頭で伝えなくちゃいけない感じのやつ?」
「いーや別に大したことないただの連絡。明日から僕、いないからよろしくね」
「成程なーそいつは確かに大したことない――――――は?」
「「「は?」」」
「いやー、№1と№2が同じ場所にいるわけにはいかないからさ。というわけで君たち明日からヒーロー科、A組ね。そこんとこよろしく!」
「「「はぁぁぁぁぁぁぁ⁉」」」
「おかか……」
前代未聞の入学翌日には担任が消え去るという事前通達を受けその場にいる者全員言葉を失う。
A組のメンツよりもやや早く『雄英高校の校風は自由』というのを実感した4人だった。
これ以上平均評価が下がるようであればこの小説自体出直そうと思います。ブラッシュアップしないとダメってことでしょうからね。だからと言って「低評価送ってくんな!」って脅してたりするわけじゃないので低評価される方がいらっしゃったら是非その理由を感想なりメッセージなりで送っていただければ幸いです。今後の参考にします!
勿論高評価いただけたなら泣いて喜びます。
USJ編の話構成(途中まで)
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1話1エリア分(今回の形式)
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1話2エリア分(例:乙骨+緑谷パート)