呪い、呪われ   作:ベリアロク

9 / 21
第9話 戦闘10分前

「わ~た~し~が~」

 

「普通にドアから来た!!」

 

 

 

「オールマイト!!」

「すげぇ、ホンモノだぁ!」

「銀時代のコスチュームだ! 画風が違いすぎて鳥肌が…」

 

 

口上とともに勢いよく開けられた扉から現われるは身長2mを誇る巨漢。勝利のVサインを示すかの如く際立った金の前髪、青いマントに飽くなき闘志を表すかのように纏う紅蓮のコスチューム、悪に決して屈しない姿勢を表す純白の笑み。乙骨らの前に立つ者こそが日本の誇るナンバーワンヒーロー『オールマイト』。彼の登場に緑谷を始めとした面々の歓喜の声が沸き立っていた。

 

 

「わぁぁぁぁぁぁ……!! カッコイイなぁオールマイト……!」

 

「緑谷君はオールマイト本当に好きなんだね」

 

「うん! オールマイトは僕の憧れで最高のヒーローなんだ!」

 

「最高のヒーローなのは言うまでもないだろ。何せナンバーワンヒーロー様だからな。憧れってのは同意だけどな」

 

「しゃけ」

 

「そ、そっか」

 

(相変わらず狗巻君が何言ってるのかわからないや……。それにしてもまさか本物のオールマイトに会えるだなんて思わなかったなぁ)

 

 

反応に差異はあれどヒーローにさして詳しくない乙骨も心を躍らせる。ヒーローの活躍や具体的な仕事などは知らずとも今目の前に立つオールマイトの姿こそがトップオブザヒーロー……真の英雄であること。それを乙骨は実際に目にし、肌で感じて実感した。その一方でオールマイトはこのままでは収集が付かないと踏んだのか心苦しそうにしながらも壇上に立つと軽く咳ばらいをし、説明を始めた。

 

 

「皆も既に把握していると思うが私の担当はヒーロー基礎学。ヒーローの素地を作るため様々な訓練を行う授業だ。単位数も多いから張り切っていくように!早速だが……今日はコレ、戦闘訓練さ!!

 

 

オールマイトが拳に握られたカードを生徒らに示す。それは白色の背景に”BATTLE”とだけ赤く書かれたカード……文字通り戦闘を意味する語句、戦闘訓練が始まることを視覚的にも伝えてきていた。

 

 

「戦闘ッ!!」

 

「訓練……!!」

 

「そしてそいつに伴って…コチラ!入学前に送ってもらった個性届と要望に沿って誂えたコスチュームだ。」

 

「「「おおー!!」」」

 

 

オールマイトが手元のリモコンのスイッチを押すと教卓の隣の壁からコスチュームの入ったケースを乗せた棚がせり出す。自らの個性や各々の要望を基にプロの手によって作り上げられたヒーローの原点とも言えるそのコスチュームの存在に生徒らは更なる盛り上がりを見せた。

 

 

「皆これに着替えてグラウンドβに集合だ!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

「いやーいよいよだな」

 

「ヒーローっぽいやつキター!って感じするよな!」

 

「遂に戦闘訓練か。兄さんたちに恥じない活躍をしなければ……!」

 

「メガネ君硬い硬い! もっと気楽にいこうよー」

 

「ム、確かにそうだな。あと僕の名前は飯田天哉だ!」

 

 

 

「時間は有限だ! 皆迅速に行動するんだぞ! 乙骨少年たちも急ぐんだぞ」

 

「は、はい!」

 

「いい返事だ乙骨少年。色々事情があるようだが……応援しているぞ! では!」

 

 

そう乙骨に告げオールマイトが教室を後にし、それに続くように各々がコスチュームケースを手に取り更衣室へと向かっていく。ただコスチュームが用意されているのは事前に申請を出していた生徒、つまり元々ヒーロー科であった者のみである。つまり先日まで呪術科であった乙骨らに用意されたコスチュームは無く、学籍番号が書かれたケースは形だけのものだった。

 

 

「これがコスチューム……! 早速着替えに……ってどうしたの乙骨君?」

 

「あ、いや……僕らコスチューム無いみたいなんだ。この制服で十分だと思うから着替え行ってきちゃってよ」

 

「そっか……じゃ、また後でね!」

 

「うん、また」

 

「やっぱお前のもなかったか」

 

「真希さん」

 

 

緑谷と別れ乙骨が振り返るとそこには真希・パンダ・狗巻の呪術組が二人の会話が終わるのを待つようにそこにいた。真希たちは皆ケースを椅子代わりにしており中身が入っていないとはいえ先ほどまで目を輝かせていた緑谷らとは扱いの差が雲泥であった。真希に続くようにパンダが口を開く。

 

 

「ま、だろうな。そもそも俺らには必要ないしー」

 

「しゃけしゃけ」

 

「必要ない……ってコスチュームが?」

 

「そうだ。どうせあの馬鹿は禄に説明もしてないんだろうが今私たちが来てる服はコスチューム程とはいかなくてもそこそこ頑丈に出来てんだよ」

 

「俺と真希は武器持ってるし、棘も喉スプレーあれば問題ないしな」

 

「乙骨もあの呪いがありゃ大丈夫だろ。無害アピールしてる上受け身なお前を守るには十分だ」

 

「……でもそれじゃ誰かを……」

 

「そりゃお前に力が無いからだ。力が無いから守られて、他人が傷つく。なんで守られてるのに被害者ズラしてんだよお前」

 

「そんなこと……」

 

「そんなこと……なんだ?」

 

 

真希の問いかけに乙骨の言葉がつまる。事実、図星だった。正しいからこそ眼鏡越しに乙骨に向けられる眼光がナイフのように心を抉っていく。嫌な汗がにじんでくる。それでも真希の言葉は止まらなかった。

 

 

「どうせここに来たのも自分の意思じゃなく、誰かに言われるがままに来たんだろ? 何の目的もなくいここにいれるほど甘くねェんだよ。ヒーロー科も、呪術科も」

 

「真希!」

 

「おかか!」

 

 

追い打ちのように掛けられる真希の言葉を遮るようにパンダが二人の間に割って入る。狗巻も同じく割って入り、何を喋っているのかはわからないものの諫められた真希は乙骨に絡むのを止めた。

 

 

「ったく……わーったよ」

 

「悪いな憂太。真希は他人を理解した気になって話すことがあるんだ」

 

「たかな」

 

「いや……本当のことだから」

 

 

何も言い返せない。ただただ彼女の言うことは正しかった。

立ち止まる乙骨、先に進む真希。その差は二人の溝を示しているようにも見えた。

 

 

「憂太……」

 

「ツナマヨ」

 

 

乙骨に欠ける言葉に迷うパンダ。何かしらフォローをしようと狗巻と考えているとその思考を止めに来たかのようにピリリリリリと謎の電子音が鳴り始める。それは乙骨の携帯の着信音だった。

 

 

 

「電話だ……僕に掛けてくる人なんていたかな」

 

「さぁな、間違い電話じゃねぇの? もう他の奴らも着替え終わって向かってる頃だし俺らは先行くけど……大丈夫か?」

 

「大丈夫。僕もすぐに追いかけるから」

 

 

 

二人に一時の別れを告げ、乙骨は携帯のアプリを立ち上げる。画面に映るは見知らぬ番号、パンダの言う通り間違い電話である可能性が最も高い。

けれど何故かでなければいけない。出ないといけない気がした。そしてその気がした時には乙骨は既に携帯の受話器を取っていて、急いで聞く姿勢に入った。

 

 

「わ、わわわわ……」

 

『こんにちは憂太。クラスの皆とは仲良くなれた?』

 

「ご、五条先生⁉」

 

『驚いた? そろそろ僕の愛する生徒たちが寂しがる頃じゃないかな~って思ってさ』

 

「別に寂しくはないですけどそれよりどうやって……」

 

『え? そりゃあ……』

 

「や、やっぱり大丈夫です。それで今日はどうしたんですか?」

 

 

どうやって番号を伝えていない自身の携帯電話に掛けこれたのか……という質問に対しろくでもない解答が返ってくると予期した乙骨は本題へと移る。忙しさでもうしばらくは話すことすら出来ないだろうと思っていた五条からの電話だ。一時的に忙しくなくなったということも考えられるが……こうして電話してくるということは何かしら重要なことの伝達であることは間違いなかった。

 

 

『僕の予想だとそろそろ戦闘訓練が始まる頃合いだと思ってね、ちょっとしたアドバイスと餞別でもと。ほら僕先生だから』

 

「はぁ。でもアドバイスですか? 里香ちゃんがいつ出てくるかもわからないし見学にしておこうかと思ってたんですが……」

 

『いや見学は出来ないよ、多分だけど。今回の訓練の位置づけは憂太たちにとっていわば試験に近しい。他のA組メンバーは突破した試験を憂太たちは受けてないからね』

 

「A組の試験? ヒーロー科の試験なら学科もあの後ちゃんと受けましたよ?」

 

『それとはまた別にあったのさ。まぁその話は今は置いておくとして、とにかく今日の場に君は立たなくちゃいけないわけだ。文字通り戦闘訓練だしクラスメイトと戦うわけだけど……いけそう?』

 

「いや、いやいやいやいや! 無理ですよ! 僕自身個性は無いし里香ちゃんの呪いがいつ暴走するかもわからないんですよ⁉」

 

 

 

五条の問いに乙骨は全力で首を横に振る。先ほど真希に言われたように乙骨に力は無い。それ故に乙骨に向けられた力に対し里香が顕現する可能性は十分にありえる。憂太に元々あった人を傷つけたくないという思いと真希にぶつけられた言葉から今日の授業は見学することを既に決めていたのだ。そこにこれであるから乙骨も混乱するのも無理なかった。

 

 

 

『そうだね、憂太単体じゃA組のメンバーとやりあっても万に一つ勝ち目があるかどうかだろう。それに里香という爆弾もある。誰かを殺してしまえばその時点で僕も憂太もクビだ』

 

「クビ……で済むんですか……?」

 

『クビはクビでもリアル首ちょんぱの方だからね、文字通りゲームオーバーさ。でもその爆弾を君の力とすることが出来たならば戦える……そうは思わないかい?』

 

「爆弾をって……里香ちゃんをですか⁉」

 

 

電話越しにも五条の口角が上がった様が目に見えた。

 

 

『本当は雄英にいる間に力を扱えるくらいにはしてあげたかったんだけどそうもいかなくてね。まぁでも』

 

 

「僕が里香ちゃんをだなんて……今まで制御なんてろくに出来てこなかったのに今出来るわけがないですよ……」

 

『そうかな? 憂太は気づいてないかもしれないけど入試のあの日、君は里香を己の意思で呼び出したんだ。その結果君と折本里香の間にはパイプが生まれ、つながったのさ』

 

「パイプ?」

 

『電線みたいなものだよ。その電線を通して電源である里香から憂太へと電気を流す。そうすれば部分的なものではあるけど憂太も里香の力を使えるってわけ』

 

「……本当ですか? 正直信じられません……」

 

 

これまで制御できないがために様々な苦しみを味わってきたのだ。乙骨が信じられないのも無理はなかった。そんな乙骨に五条は言葉を返す。

 

 

『今の憂太には出来る筈さ。死ぬ気で頑張ればいけるいける! 実際死ぬかもしれないけど

 

「え、今なんて……」

 

『とは言え肉体そのものに力を流すのは見た感じまだ難しそうだったから僕からプレゼントを渡しておくよ。グラウンドβに行く前に呪術科の教室に寄ってね』

 

「呪術科の教室ってグラウンドと真逆なんですけど……普通に遅刻しちゃいますよ!」

 

『死ぬ気で走れば間に合うって! ほら走った走った!』

 

「死ぬ気が軽すぎますってー!!」

 

 

 

ここに居ない電話の向こう側の人間に文句を言いつつも乙骨は廊下を駆ける。

戦闘開始まであと……わずか。

 

 

 




もっと進ませたかったんですが私用が今週重なっていてこれが限界でした。恐らく次の更新は来週以降になると思われるのでモチベとなりうるものお待ちしております。


p.s.
ワールドトリガーを今更ながら見始めたんですけど凄い面白いですね。乙骨クロスならワールドトリガーのほうが適してたかもしれないなんて思い始めた今日この頃です。

USJ編の話構成(途中まで)

  • 1話1エリア分(今回の形式)
  • 1話2エリア分(例:乙骨+緑谷パート)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。