幼馴染で双子でヤンデレという概念   作:ぽぽろ

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時計が7時10分を指した時、僕の携帯がけたたましく音一つ無く静かだった部屋にアラーム音が鳴り響いた。

僕、多崎 陽(たさき はる)は寝ぼけ眼で、目を擦りながら携帯を取ってアラームを止めると、ゆっくりと布団から這い出でるように起きた。

窓から注ぎ込む太陽の光や鳥のさえずり、賑やかな外とは反対に音はなく静寂で、それによって構成されている今の時間は現実とは違う世界のように感じた。

僕はリビングへ向かい、パンを二枚ほど焼いて、その内一枚をバターを塗って齧った。

そして最後の一枚をコーヒーで流し込むように食べ、歯を磨いて玄関を開けた。

すると、二人が扉の前に居たようで、一人が腕を組みながら、もう一人が両手で鞄を持って待っていた。

腕を組んでいた少女が僕を見るやいやな「遅い」と叫んだ。

僕は「ごめんごめん」と返す。

 

僕の目の前に立つ二人の少女の顔は瓜二つ。

細かな違いは沢山あるものの、見ただけで分かるのは髪型という所でその他は全て一緒。

好物も苦手なものも、何かを始めるタイミングも。

僕はずっと二人と小さい時から一緒にいるけれど、

他の人からすると中々二人の見分けが付かない。

双子は全てが一緒なんてフィクションかと思っていたけど、どうやらそうではないらしい。

 

僕と目の前の二人の少女とは幼馴染の関係。

二人は一卵性双生児、所謂双子。

姉で気が強くショートカットの葵と妹で引っ込み思案、姉とは反対に肩甲骨の下角辺りまで伸びる髪を持つ萌。

白雪と見間違うほど綺麗な白髪(はくはつ)を青く澄み渡った朝に靡かせている。

まるでそれは季節外れの雪が降っているようにも見えた。

 

「いつ来るんだろうってソワソワしてたのはお姉さんじゃないですか?」

「うっ、うっさい!そんなこと言ってないから!」

「別にいつもの時間通りだと思うけどなぁ」

 

時計を眺めてもいつもの時間と大したズレもなかった。

学校がそれ程楽しみというのは学校が憂鬱でしかない僕にとっては、大変変わっているというか羨ましい事である。

やっぱり彼女の一人でもいればな、なんて思ってしまう。そうすれば学校に行く楽しみも分かるのだろうか。

 

「先行くからね!」

 

と言い捨てるように彼女は一人で歩き始めた。

 

「あ、姉さん!」

「それじゃ、僕達も行くか」

 

僕と萌は後ろを追いかけるように歩いていった。

 

「高校生になってもあいつは変わらないな」

「確かにそうかもしれないですね、でも結構お姉ちゃんも中身は変わっているんですよ?」

「へぇ、そうなんだ」

 

昔からずっとやんちゃで、喧嘩っぱやくて、僕と萌はとても振り回された。

それは高校二年生になった今も変わらない。

 

「変化は表面的な変化だけを言うんじゃないですよ」

「変わってるか?」

「えぇ、ここ最近は」

 

萌はにこやかに笑いながら言った。

そこには何やら含みがあるように見えた。

僕は、コップの小さなヒビを確かめる様に注意深く葵を見た。

僕たちの前を楽しそうに歩いている。

持っていたバックからは、僕が昔にあげた色あせたイルカのキーホルダーが掛かっていた。

確か萌にも同じのを上げたはずだと思ってそちらを向けると同じく色あせたイルカのキーホルダーがぶら下がっていた。

 

「まだそのイルカのキーホルダー付けてるの?もう古くなっているしなんか違うの下げればいいのにに」

 

僕は呟くように言った。

隣にいた萌は、首を傾げた。葵は、急に立ち止まって、くるりとこちらを振り向いた。

 

「結構気に入ってんのよ、これ」

「陽さんがくれたので、私はずっと大事に使っているんですよ?」

「葵は最初いらないって言ってたけどね」

 

上げた時は丁度喧嘩をしていて、仲直りのための口実として材料として持っていったのだ。

 

「陽、あんたバカね」

 

フッ、と無知な僕を嘲笑う様に彼女は鼻を鳴らした。

萌は隣で頬を可愛らしく風船の様に膨らませて僕を見つめていた。

 

「貰った時からずっとつけていたんだもの、時間をかけて出来たものは、いいものも悪いものも捨てれないのよ」

「思い出があるからね」

 

成程と僕は頷いた。

例えばもうボロボロになったぬいぐるみ、捨てろと言われても、それには数え切れないほどに子供の頃の思い出が詰まっている。

その執着を簡単に取り払えるはずもない。

何気ないものでも、ずっと存在したならきっと気づけば人は何かに執着するのだろう。

 

隣で萌は、そのキーホルダーをぎゅっと強く握った。

 

「そんなに大事にしてくれてるなら嬉しいよ」

 

僕はそう二人に返すと、萌はにっこりと微笑んで、葵は面白くなさそうに鼻を鳴らした。

 

###

 

学校へ着いた僕たち三人は、そのまま三人一緒に同じ教室へ入った。

そして、窓際の席に座った。

僕は左を向くと、葵と萌が二人揃って座っている。

 

「本当に私達ってずっと一緒ですね」

 

萌は、思い出したように言った。

「確かに。」と僕は答えた。

小さい時から一緒で、高校生になった今も変わらない。

きっと大人になっても、死ぬ直前までも一緒かもしれないという謎の予感がある。

同じ所で生まれ育ち、同じ学校へ進学し、同じ教室で近くの席に座り同じ授業を受ける。

僕達の遺伝子に枷でも付けられたように、それが必然であるかのように僕達は一緒だった。

 

「ハルくん、宿題がまだ出てないから、出してくれないかな?」

 

感傷に浸っていると、誰かから声を掛けられたのでそちらを向くと、声の主はクラス委員長の日向 日菜(ひなた ひな)さんだった。

 

「ごめん、日菜さん。今出すよ」

 

僕は鞄を漁って目的のものを取り出すと日菜さんに渡した。

 

「ハルくん、お願いがあるのだけど」

 

僕の渡したノートを胸に抱え、こちらを伺う様に言った。

 

「出来れば一緒に運んでくれない?ちょっと量が多いから」

「うん、いいよ」

 

彼女が僕に手伝いを頼むのは珍しい事ではなかった。

一年生の時も彼女と一緒のクラスで、その時から彼女は時々僕に頼むのだった。

最初は何故僕なのだろう、彼女は友達が多いし何なら同性の方がいいのではないかと二人に言ったら、

 

『ふっ、あんたがいじめられそうで気弱そうな顔してるからじゃない?反抗してこなさそうで扱いやすいのよ、きっと』

 

いつも通りツンツンしながら葵は言った。

それと反対に萌は

 

『きっと陽さんから優しさを感じるオーラが出てるんですね、人から好かれやすいんですよ、私も誇らしいです』

 

と優しくはにかみながら言った。

あぁ、なんという言葉の両面性。

2人とも同じことを言っているのにこんなに感じ方が違うなんて。

 

「それじゃ、僕手伝ってくるね」

 

二人に伝えて、僕は向かおうとすると、僕と日菜さんの腕を引っ張る感覚があった。

 

 

「あの……日菜さん、私も手伝いましょうか……?そんなに多いのでしたら、人手は多い方が良いのではないかと思いまして」

「確かに、そうね」

 

萌はおずおずと提案した。

僕も「確かに。」と返した。

日菜さんを見ると何やらあまりいい表情をしていなかった。

僕は首を捻った。

何故だろう、暫く考えて自分の仕事なのに他人に手伝いを頼む申し訳なさがあるのではないかと僕の中で結論づけた。

 

「でもそこまでの量じゃないし、遠慮しておこうかな……、本当にありがたいのだけれどね」

 

そして僕は、机に積まれたノートやら資料やらを運んだ。

帰り道僕と日菜さんで廊下を歩いていた。

 

「ねぇ」

 

底の見えない穴を覗くように日菜さんは後ろに手を組みながら言った。

僕は、「何?」と返した。

「えっと、あの……」

 

彼女が何やら言い淀んでいた時に、丁度無理矢理中断するように予鈴が鳴り響いた。

 

「戻ろっか」と僕が提案すると、彼女は小さく頷いた。

その後、僕達は今日の授業の話や宿題、嫌いな先生の話等の他愛のない話をしながら戻った。




双子なのも幼馴染なのもヤンデレなのも白髪なのも私の性癖
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