ノーゲーム・ノーライフ in SAO   作:たゆな

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── 一話 ──

 目覚めた病室を出た二人は現在、病院の外……にある大きな木の影に身を隠していた。

 

「ぐわあああぁ、やはりこれはゲームなんかじゃねェ!!」

 

「……ひっ! おひさま、眩し過ぎッ……紛れもない……現実ッ!!」

 

 確かに外に出てはいるが……かなり大きな木の影であり、明かりのついた病室よりも暗い。そこに身を潜める二人は、最早中にいると言っても過言ではない。

 

「……に、にぃ! しろ……こんなとこ、知らない」

 

「奇遇だな妹よ! 兄ちゃんも全く知らん!」

 

 物陰を転々として、病院の周囲を探索するが……やはり空白の記憶にある場所ではなかった。

 

「ふむ……所沢の防衛医大病院に似てるなぁ」

 

「ん……ここ日本……地名も、()()()()同じ……でも違う」

 

「あぁ、まるで日本を元にした創作物みたいだ」

 

「にぃ……今2022年……にぃと白が、ディスボード(あっち)に行ったの、2012年……」

 

「十年でこんなに地名が変わるか……?」

 

 そして、ある一つの可能性が空の脳裏を過る……!

 

「な、なぁ、白。もしかしてここって……」

 

 限りなくゼロに近い……だがゼロではない可能性が。すると、二人の背後から女性の怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「そこのお二人! もうっこんな所まで来て! 何をしてたんですか!」

 

 声に振り向くと、両手を膝につけて肩を揺らしながら、困った様子でこちらを見ている看護師の姿があった。

 

「すすすすみませんん! 何分(なにぶん)ここに運ばれて来るまでの記憶が無くてええええ、そもそもここが何処なのかも分からない状況なんですすす!」

 

「……ご、ごめ、ん……なさい!」

 

 空は、あまりにも足りないコミュ力というステータスを活用できる最大限まで発揮し、その場しのぎの説明をする。

 

「え、嘘……記憶喪失!? ……そう言えば、門の前で気を失っている所を保護されたんでしたっけ……と、とりあえず! お二人には病室まで戻って貰います!」

 

 ……幸運なことにそこの看護師が都合の良い解釈をした為、ニヤリと笑みを浮かべた空は、それを利用しようと考えを巡らせる。

 

「分かりました……ですが、俺達兄妹なんです。一人だと心細いので、同じベッドで休んで居ても宜しいでしょうか?」

 

「え? ええ、他の方の御迷惑にならないようにして頂けるなら大丈夫ですよ!」

 

 (当分は病室で情報収集ってところか……)

 

 

 

 

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「先生を呼んで来ますので、しっかりここで大人しくしててください! い・い・で・す・ね?」

 

「「はいぃ」」

 

 そう言うと、看護師は急いで病室を出て行った。

 

「っはぁ〜……心の準備がないとリアルで人と話すのは無理だわ! いややっぱあっても無理!」

 

「ステフ、だったら……どんな、に怒って、も、怖くない、のに……あの人コワい……」

 

 ふと、二人は少し悲しい表情で窓を見つめる。

 

「ステフだったら……か、あいつら今頃どうしてんだろうな」

 

「はやく、会いた、いな……」

 

「あぁ、このままあの世界に戻れなかったら……そうか、異世界漂流モノの主人公はこんな気持ちだったんだな……」

 

 帰りたい世界がなかった昔と違って、今はたまらなくあの世界に帰りたい……そう思った空は、物思いに耽っていた。

 

「すみませぇ〜ん!」

 

「ん?」

 

 どうやら先ほどの看護師が戻ってきたようだ。

 

「今、お二人の担当の先生が別の患者さんの所にいて……もう暫く待って貰う事になりそうです! あ、それと」

 

 非常に申し訳無さそうな顔で手を合わせていた看護師が、荷台からリュックを取り出した。

 

「お二人が気を失っている時に背負っていた物だそうです! 返しておきますね!」

 

「ん? 何だこのリュック……」

 

「白も分からない」

 

「記憶喪失のお二人は思い出せないかもしれないですが……お二人が背負っていた物には間違いありませんよ! では、先生が戻り次第来ますので、大人しく待っていてくださいね!」

 

 そう言って看護師は、先ほどと同じ様に急いで病室を出て行った。

 

「ん、割と重いなコレ! ヨッッコラセイヤッッ!!」

 

「何、が入ってるんだ、ろ……」

 

 空がベッドの真ん中に置いたリュックを広げ、中身を確認する。

 

「お? おお!」

 

 そこには、ディスボードでも使っていたタブレットやゲーム機一式が入っていた。そして……

 

「これは……何だ? ヘルメットと……ゲームソフトか?」

 

「にぃ、アレ」

 

 白は病室の中に置いてあるテレビを指差す。そこには手元のヘルメットらしき物の使用方法の詳細と共に、大きく見出しが表示されていた……新世代VRMMOゲーム『Sword Art Online』と。

 

「ソードアートオンライン……ナーヴギア……あ? このヘルメット……ゲーム機なのか!?」

 

「しかも──二つ、ある」

 

 それを聞いて、先ほどまで空が抱いていた疑念が確信に変わる。

 

「なぁ白。俺ら多分また異世界転移してるっぽいな」

 

「ん……白も、そう思う」

 

「テトがゲームを途中で投げ出す様な真似するはずがねぇ……となると、この世界にもいるのか? カミさまが!」

 

「勝手、に……連れて、こられたッ! やってる、事ッ! テトと一緒ッ!」

 

 だけど、でも……と。

 

「……でも、もし、いるなら」

 

「帰れるかも知れねェ……盤上の世界(ディスボード)にッ!」

 

 空は手元のナーヴギアを見つめる。

 

「俺らの持ってきた物じゃねェのはコレだけだ……どこの誰が用意したのか知らんが、やってやるよッ!」

 

「どんなゲーム、でも、空白に敗北の二文字は、ないッ、のッ!」

 

 ……そう強く意気込んだ二人だが、

 

「……言いたくはないが一応言っておこう。それはもう使えないぞ妹よ……」

 

「ジブリール、許すまじ……」

 

 そこにあるのは悔しさ、そして……それが自分達の身体に確かに記憶されているという事に対しての嬉しさであった。

 

「さて、あいつらとの出会いは紛れもない現実と確信したところで! こっちの現実にも取り掛かりますか……っと確かリンクスタートだったか?」

 

「ん……にぃの厨二心をくすぐるセリフ」

 

「ンンンンいやさすがの兄ちゃんもこれはちょっと恥ずかしいとは思っているぞ……」

 

 そう言いながら、ナーヴギアを被った二人は初回セットアップを済ませる。そして、しっかりと手を繋いでベッドに寝転がり……

 

「よし。白、いくぞ」

 

「ん」

 

 完璧な呼吸でその世界へと足を踏みいれる。

 

「「リンクスタート!」」

 

 

 

 

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