ノーゲーム・ノーライフ in SAO   作:たゆな

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── 五•五話 ──

 

「オレっちの名前はアルゴ! まずはどうしてこんな事をしているのか教えてくれないカ?」

 

 アルゴはアスナが数時間にも及ぶ奇行に走った原因を知りたかった。既に二時間以上前からその様子を見ていたアルゴだが、周囲のプレイヤーに話を聞くと、もっと前から続いていたらしい。何故(なにゆえ)、自分を助けてくれそうなプレイヤーから尽く逃げ続けたのか……そもそもここまでしてそれを求める理由は一体何なのか……と。

 

「それは……」

 

「アー……その前に、ゆっくり話せる場所に移動するカ……お嬢さンはとりあえずオレっちに付いてきてくレ!」

 

「わ、分かりました!」

 

 そう言って歩み始めたアルゴの背後にピッタリと付いて行くアスナ。既にその動きからこのゲームにあまり慣れてはいない事が読み取れる。そんなアスナの様子にアルゴは『コレは……苦労しそうだナ』と、ため息が出そうになるのをグッと堪え、目的地へと向かう。そうしてアルゴの案内で到着した場所は……宿屋であった。

 

「ここがオレっちが借りてる部屋だゾ! ここなら誰にも聞かれずにゆっくり話せる筈ダ……まぁゆっくりシテいってくれヨ」

 

「ありがとうございます!」

 

 二人はそのままテーブルを挟んで二つある椅子へと腰掛ける。

 

「じゃあ早速、あんなにも必死に助けを求めてタ理由を聞こうじゃないカ」

 

「は、はい……えっと」

 

 アスナは事の顛末……SAOがデスゲームと化してから自分が見てきた事、そしてそれに対する自分の想いを話した。

 

「ンーなるほどナ、それでその二人に追い付く為の知識が欲しいのカ」

 

「はい……」

 

「最初はお嬢さンの事をカマって欲しいだけの厄介なコなのかと思ってタんだが……空と白か、フムフム」

 

「あ、アハハ……」

 

「ヨシッ! お嬢さンはビギナーさンの様だから、まずは何処まで知っていて何処まで知らないのカ、そして何まで出来て何まで出来ないのカを教えて貰うゾ」

 

「は、はい!」

 

「一つ一つ質問シテいくから、順番に答えてくレ!」

 

「分かりました!」

 

 そのまま始まったアルゴの質問に順番に答えていくアスナ。

 

 

「そ、想像以上のビギナーさンみたいだナ……まさかSAOどころか、その他のゲームすらやった事が無いなんテ……」

 

「うっ」

 

「そうだナ……あまり一気に教えても頭に入らないダロウから」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「エ……? で、でも、ゲーム自体の初心者なんダヨn……」

 

「大丈夫です、全部教えてください」

 

「……わ、わかっタ」

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえずオレっちの知ってる一層の情報と、戦闘に関する基礎的な技術はこれだけダ」

 

「なるほど、二層に上がるには必ず迷宮区を通らないといけないのね。それなら入口で待っていればきっと会える!」

 

「ンー、たしカに中に入らなければあまりモンスターと戦う必要はないけド……それでいいのカ?」

 

「……え?」

 

「お嬢さンはその二人に会いたいンじゃなくて、その二人に並びたいんじゃなかったカ?」

 

「そ、そうですけど……」

 

「普通のプレイヤーが迷宮区を攻略しようと考えるなんテまだまだ先ダ。それまでずっと待ってるだケじゃ、その二人が迷宮区に着く頃には途轍もない差が離れているかもナ」

 

「そんなっ」

 

「お嬢さンの言う空と白なるプレイヤーが、それ程のプレイヤーならきっと常に最前線にいる筈サ。強クなれば必ず会える」

 

「最前線……」

 

 そう静かに呟いたアスナに、アルゴはニヤリとしながら言い放つ。

 

「そりゃ、死ぬのは怖い。でも、自分の知らない所でボスが倒されるのも怖い……そういうプレイヤーが集まる場所が最前線サ。そこにいる為には強くなり続けないといけない……止まってる暇なんてないゾ?」

 

「それって……学年十位から落ちたくないとか、偏差値七十キープしたいとか、そういうのと同じモチベーション?」

 

「……ンー? ま、まぁ多分そうかもナ?」

 

「……そっか」

 

 そっか、同じなんだ……と。

 見えない何かに追い立てられているだけで、何か明確な目標があるわけじゃない。なんとなく有名進学校に受かって、なんとなくいい大学に入って、なんとなくいい就職をする──その後は? ……わからない、考えたことはなかった。本当に、ゲームバカとおんなじであったのだと。

 

「でも」

 

 今のわたしが目指すものははっきりしてる……二人に並ぶ? 違う。第一層突破、そして百層を征するその時まで……

 

 穿て。 ──誰よりも(はや)く。

 

 進め。 ──誰よりも(はや)く。

 

 あの二人を追い抜いて()け。

 

 

「……どうやら何か吹っ切れたようだナ! これから何をするつもりなんダ?」

 

「とりあえずレベリングをしに行こうかなって、アルゴさんはこの後何か予定はあるんですか?」

 

「ンー、実は情報屋を始めようと思ってるんダ」

 

「情報屋?」

 

「文字通りサ、情報を売買する仕事だナ。あらゆる情報を収集シ、対価に応じて提供シ、公利に適えば拡散シ、場合によっては秘匿すル」

 

「フフ、アルゴさんはやっぱり優しいんですね」

 

「にゃはは! そんな事ないゾ? 実は、そろそろ初仕事の報酬を貰おうト思ってたんダ!」

 

「ほ、報酬ですか……すみません! 今渡せる物はあまり無くて……後でなら」

 

「ン? フフフ……勿論、今貰えるものを貰うつもりサ! ……お嬢さンの名前を教えてクレ!」

 

 ニヤついた顔でそう言うアルゴに対し、アスナはポカンとした表情を浮かべた。

 

「名前? ()()()()()です」

 

「ゴメン悪かったビギナーさン! プレイヤーネームでお願いします!!!」

 

 ビギナーの中のビギナーであるアスナによって、あまりにも重すぎる報酬を投げつけられてしまうアルゴ。

 

「なるほど、プレイヤーネームも『アスナ』なのカ。だが名前と言われたらプレイヤーネームダ。今回は特別に忘れよウ。以後気をつけなさイ」

 

「ウンウン」

 

「これからハ、アーちゃんと呼ぶから覚えておくようニ!」

 

「ウンウン」

 

 腕を組みながら真剣な表情でそう言うアルゴの話を、コクコクと頷きながら聞くアスナ。

 

(きっとこの子は強くなル。その内トッププレイヤーたちにも追いついて、立派な二つ名を貰う日が来るかもナ。そしたら、今日の出来事を高く売ろウ)

 

 そう思いを巡らせながら、こちらに手を振ってフィールドに向かうアスナへ手を振り返すアルゴであった。

 

 

 

 

 

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