時空を超えた英雄   作:深紅の瞳

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 更新までに時間かかってすいません。
 あまりの行動力の欠如に、自分で自分が嫌になるくらいです。
 今後も、更新速度は期待しなくても良いので、内容は期待してくれると幸いです。


第6話 強制戦闘

 僕の背後に彼は立っていた。

 漆黒の全身鎧を装着する(いわお)のような巨躯(きょく)。二M(メドル)を越える身の丈。朱殷(しゅあん)色の短髪に同色のマント。

 周りに傷跡が残っている灰色の双眼が、僕の顔を真っ直ぐ見据えている。

 いきなり自分に話しかけてきたこの人物に僕は動揺を隠せない。

 いつからここにいた?

 さっきまでここら一帯には僕とお義母さんしか居なかった筈だ。

 第一級冒険者になった自分に認識出来ないように接近していた人物に、ベルは戦慄する。

 

「……それで、Lv.5ということは美神(フレイヤ)の猪の後進か?道化の眷族のLv.5は俺の知っている連中しか居ないと聞いているからな」

 

「……ち、違います」

 

 混乱が抜けきれていない僕に彼は尋ねてくる。

 しかし自分は【フレイヤ・ファミリア】ではないので、当然僕は彼の問いかけに対して否定する。

 

「そうなのか?闇派閥(あいつら)から聞いたオラリオの戦力の中に、あの2つの派閥以外にLv.5は居なかった筈だが」

 

「……」

 

「……まあ良い。そんなことよりお前は見所がありそうだな。ゼウスとヘラ(俺たち)が居ない間に良い後進が育っ………………この『匂い(かおり)』…………何故だ?何故お前から『あの馬鹿』とアルフィア……いや『アルフィアの妹』の『状態(あじ)』がする?……まさか!?」

 

「『悪食』を極めたせいで『五感』が敏感になっているお前ならすぐに気付いたようだな、ザルド」

 

『何か』に気付いた様子の彼に、今まで口を閉じていたお義母さんが言う。

 

「……アルフィア。だが、あいつらの『子供』はまだ七歳くらいの筈だぞ」

 

「その『子供』が七年後の未来からやって来た、ということだ。私も最初は耳を疑ったが、本当にそうらしい」

 

「確かに信じられないことだが、お前が言うのならばそうなんだろうな。……それはそうと、俺はさっき来たばかりで知らんが、何故戦っていたんだ?」

 

 状況を把握した彼が尤もな質問をお義母さんにする。

 

「あまりにも『軟弱』な考えをしていたからな。『洗礼』を与えていた、それだけだ」

 

「……そうか。それは確かに許容出来んな。最強の派閥(俺たち)の間に生まれたのならば尚更な」

 

「丁度良い。ザルド、お前がベルに『洗礼』を与えてやれ。お前も満更ではないだろ?」

 

「はははははっ、まあな。俺も『あの馬鹿』の息子に会いたいと思っていたし、出来ることなら強くするために『洗礼』を与えたいとも思っていたからな、良い機会だ。……ベル、だったか?」

 

「は、はい!」

 

「そういうことだ。俺と戦い(やり)合うぞ」

 

 そう言って目の前の武人は、肩に担いでいた自身の身の丈程もある大剣の切っ先を僕に向けてきた。

 

「くっ!?」

 

 いきなりの展開にベルは動けない。

 さっきのお義母さんとこの人の会話から、彼はお義母さんと同じくオラリオに混沌をもたらすためにやってきた最強の眷族の一人、『暴喰』。

 つまりこの人も僕の家族も同然の人だ。

 どうして、どうしてせっかく会えたのに彼等と戦わないといけないんだ!?

 両親が居なかった故に家族を大切にしたいと人一倍思っているベルは、目の前の武人(かぞく)と戦うことを拒絶してしまう。

 

「……はぁ。アルフィアがお前に怒っている理由が少し分かったぞ。まぁそちらから来ないのならば俺から行くだけだ」

 

「ッッ!!」

 

 ザルドはそう言ってベルに攻撃を仕掛ける。

 ベルに一瞬で近づき放たれる、大剣での剛撃。

 ベルは反射的に腰から《ヘスティア・ナイフ》を抜き大剣の腹を叩くことでその攻撃を凌いだ。

 

「~~~~~~~~~~!?」

 

 骨の髄まで響いてくる程の痛撃。

 

(本気だ!今のを防がなかったら僕は死んでいた!?)

 

 本気で殺しにきた目の前の武人にベルは戦慄する。

 

「ほう、防いだか。だが、今ので驚くようではまだまだだぞ」

 

 そう言って再びザルドは剛撃を放ってくる。

 甚だしい威力と速度。そしてナイフでは到底受け流しきれない程の破壊力。

 剣撃(けんげき)を交わすことたった五合、それだけでベルの体勢が崩れた。

 

「温い」

 

「ぐはぁっ!?」

 

 その隙を逃すことなく繰り出される回し蹴り。

 脇腹を強打されだベルの体は風を切る矢と化し、近くにある廃墟を貫通、それを何度も繰り返しながら飛ばされた。

 

「がっ、ぐぅ……!?」

 

 何度も壁にぶつかることでようやく止まれたベルは、全身を焼く痛みに(うめ)く。

 そもそもベルはアルフィアの魔法によって体をぼろぼろにされていたのだ。それに加えて今の一撃。ベルの体は限界に近づいていた。

 ベルはふらつく体を押して立ち上がる。

 

「その程度か?」

 

「!」

 

 いつの間にか背後に回っていたザルドの言葉に、はっとしてベルは顔を振り返った。

 

「ぬん!」

 

「ぐっ!?」

 

 直後、ザルドが大剣を振り下ろす。

 ベルはナイフで受け止めるが、その反動で後方に飛ばされる。

 

(ナイフじゃ駄目だ!せめて同じ大剣じゃないと!?)

 

 ベルは自分の今の武器では圧倒的に不利だと実感する。

 しかし大剣はここには無い。教会の地下室に置いてきたからだ。

 そして、このまま受け身になっていては本当に死ぬ。

 

「──ちくしょう!!」

 

 これらの状況から、ベルは強制的に(・・・・)戦闘を強いられることになった。

 

 




 今更ですが1話の補足をします。
 1話でベルはLv.5になったときにヘスティアから『憧憬一途』のことを教えられるという設定にしていました。これは多分18巻でもあると思ったからです。
 そもそもヘスティアがベルにスキルの存在を教えていなかった理由は「誰かにスキルを聞かれた際に、嘘をつけないベルは話してしまうから」というのが建前で、9割方アイズへの嫉妬心でした。スキルのことを教えたら、ヘスティアは完全にベルに入れ込む余地がなくなりますからね。
 しかし17巻での騒動により、そうはしていられないでしょう。フレイヤがオラリオにいる全員を『魅了』したからです。神々はベルに『魅了』が効かないからフレイヤが今回の騒動を起こしたと気づくと思うし、それをオラリオ中の人々もその内知ることになるでしょう。
 それだけならまだ黙秘を決めることは出来ます。しかし戦争遊戯までの間、ベルはほぼ確実に【ロキ・ファミリア】の幹部達に訓練をしてもらいます。その条件の1つとして、ロキやフィンがベルのスキルの開示を求めるのは想像に難くありません。まあ、【ロキ・ファミリア】の古参のフィン、リヴェリア、ガレスと主神のロキには教えても他の者達(特にアイズ)には教えないようにヘスティアもすると思いますが。ここでヘスティアがベルに教えるか、ですよね。ベルも自分に『魅了』が効かなかった理由を聞くので多分教えると思いますが、頑なに教えない可能性もありそうですね。そうしたら流石にヘスティアはヒロインとしてだけではなく人(神)としてどうかと思いますが。そんなにベルがアイズを好きなことが嫌なのかと。恋敵を何が何でも突き落とすのが女なのかもしれませんが(僕の偏見です)。
 そもそもスキルの存在を黙っていてよかったのはLv.2時くらいだったんですよ。その頃はまだベルのスキルを聞こうとする神々がいたので。でもLv.3になってからはそう言う人も居なくなったのでその頃には教えてよかったんです。しかもベルがスキルのことを知っていれば、フレイヤにその事を問い詰めることも出来た(フレイヤもステイタス更新時に『憧憬一途』を書かなかったので)と思います。
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