トムとフラン   作:AC新作はよ

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第三十一話 いかにして彼と彼女は約束を交わすか

「フランケルだな…覚えたぜ。普段はフランの方がいいか?」

「ええ、すこしだけはずかしいの」

「わかった。クラブの登録名は変えた方がいいな。おやっさんに言っとくか…」

「そうね。おねがいするわ」

 

智哉とフランが互いの名を呼び交わし、見つめ合う。

そこでフランの頭に疑問が浮かんだ。

なぜ智哉がここ、ゴール前にいたのか急に気になったのだ。

 

「そうだわ、トム、どうしてここにいたの?らんにゅうはいけないのよ」

「お前それ言う…?マジで…?」

「…わたし、なにかいけないこといった?」

 

フランは先ほどのトラウマに苦しむ姿が消え去り、平常運転の天然お嬢様に戻っていた。

智哉は眩暈がした。誰の為に乱入までやらかしたのか、本人がわかっていなかったのだ。

 

「あー…まあいいか、お前が平気そうだし。もう走れるんだろ?」

「ええ!もうへいきよ!いくらでもはしれるわ!はしりたいわ!」

 

満面の笑顔のフラン。それだけで智哉には十分だった。

自分の苦労が報われた実感があった。

智哉には、一つだけ、決心のついた事があった。

フランの姿を見て、あの奇跡的な疾走を見て、やりたい事ができたのだ。

 

「あのさ、フラン…」

「フランケル、おめでとう。良い走りだったよ」

 

話しかけたところで、黒鹿毛の麗人、生徒会長ガリレオが二人の前に現れた。

麗人をフランが笑顔で迎える。

そういえば知ってるって言ってたな、と智哉が思い出した。

 

「ガリレオおねえさま!」

「うん、元気そうだ。たまに電話で声を聞いてはいたが、心配だったよ。トモヤ君もお疲れ様」

「いや、俺は何も…」

 

智哉は結局自分は何もできていないと思っていた。

老紳士から何も聞かされていない智哉には、謎の相マ眼の発動と、光り輝くフランの現象が結びついていないのだ。

 

「それはただの謙遜だよ。この奇跡を起こしたのは君だ」

「ガリレオおねえさまのいうとおりよ、トム。わたしはトムがいたから、はしれたのよ!」

 

智哉の否定を二人がきっぱりと否定する。

智哉が首を傾げるも、まあいいかと素直に受け取った。

 

「そうなんすかね…じゃあ素直に受け取ります。どもっす」

「うん、それでいい。じゃあ、行こうか」

「…ど、どこへ…?」

 

智哉はどこに行くのかすぐに気付いた。

だがせめて最後の抵抗として聞き返してみた。

麗人の後ろに警察ウマ娘のコンビが現れる。智哉の顔が蒼白になった。

 

「乱入、したよね?悪いようにはしないから」

「逮捕であります!」

「はーいキリキリ歩けー」

「ッス…」

 

観念した智哉が連行されていく。

統括機構主催レースへの乱入である。当然の結果であった。

そこにフランが声をかけた。

 

「トム!ガリレオおねえさま、まって!」

「大丈夫だよフランケル、私から擁護するから。約束する」

「マジっすか!お願いします!マジで…」

「…必死過ぎて面白いね。そういう所いいよ君」

 

そのまま智哉は、両隣を警察ウマ娘に囲まれて警備詰め所に向かって消えて行った。

哀れで煤けた背中であった。哀愁があった。

フランが不安そうに智哉の背中を見送っていたところに、後ろからナサが抱きつく。

 

「フラン…!よかった…よかった…!!」

「ナサちゃん!ごめんね、わたし、しんぱいかけて」

「ううん…それよりフランとまたはしりたい」

「それならオレもまぜてほしいぜ!」

 

ゾフが、ナサがいる今が紹介してもらうチャンスと声をかけた。

ゾフは速いウマ娘が大好きで、負けても全く堪えない性格だった。

つまりフランと仲良くしたいのだ。

 

「…ゾフも、おつかれさま。フラン、ゾフ」

「あっ!ゾフちゃん?ナサちゃんからきいているわ」

「ナサ、おまえ…しょうかいがざつすぎるぞ…よろしくなフランちゃん!こんどあそぼうぜ!」

「ええ!」

 

(せ、先手を打たれた…あのゾフってショートカットの子、差されかけたし結構やりますね…)

 

オコナーは出遅れてゾフに先手を打たれて悔しがっていた。

抱き合うナサとフランを見て、このまま眺めるか飛び込むか悩んでいる隙を突かれたのだ。

 

「ファーもこれたらなあ。あいつ、けがだいじょうぶかな?」

「…ファーはぜったいくじけない」

「そうだな!あいつのこんじょうはやべえ」

 

ナサとゾフが、エプソムBクラスのライバルに思いを馳せる。

ファーは怪我さえ意に介さず、前を見続ける根性を持つウマ娘であった。

ガラスの脚の持ち主だが、メンタルで言えばここにいる誰よりも強かった。

 

「あー!もう何でもいいです!私も混ざるです!」

「おっ!3ちゃくのこだな!つぎはまけねえぞ!」

「望むところです!私はオコナーって言うです!」

 

 

そんな中、離れた場所でフランを見つめる幼き王者は、ドス黒い感情に吞まれかけていた。

 

 

(おのれ!おのれおのれ!こやつ!また我に見向きもしなかった!我を!神速のはずの我を!何故貴様は我を見ない!!我は貴様に勝つために!ずっと貴様だけを見ていたというのに!!我を!我を見よ!!憎い!憎い憎い憎い!!)

 

エクスの体に巻き付くように、黒い瘴気の如きオーラが現れる。

初めての敗北の屈辱を、悔しさを受け入れきれなかったエクスに宿るウマソウルの妄執が、悲願が、エクスを取り込もうとしていた。

 

──その寸前の事だった。

 

「おうさま!おしかったよー!」

「おうさま!おつかれさま!2ちゃくでもすごいよ!」

「まけてもかっこよかったでヤンス!いっしょうついてくでヤンス!」

 

不意に、エクスの意識が鮮明に戻る。

家臣が、自らを慕う友が、エクスの最後の心の砦となった。

エクスが、微かに笑みを浮かべる。

 

(…負けたからこそ胸を張る。ウマ娘とは前を向いて走る者。我が家臣共に言ったことだ。我がそれを示さずして何が王者か。我は負けても気高くいたい。姉上と父上、それに母上のためにも)

 

敗北を受け入れたその時、エクスは確かに成長していた。

一つ、ウマ娘として、競走バとして高みに至っていた。

 

(…うむ。先ほどフランケルと名乗っておったな。我も、真名をあやつに名乗ろう。その資格が奴にはある)

 

清々しい面持ちのエクスが、確かな歩みでフランに近付く。正しく王者の行進のように。

近付いてくる王者にゾフが気付いた。

物おじしないゾフはこういう時もすぐに声をかける。

 

「お!おうさまじゃん!2ちゃくすげえな!」

「うむ。ゾファニー、貴様もなかなかに良い走りだった。特にあのバ群の抜け方は我の技だな?よく盗んだ」

「おう!ナサとれんしゅうしたんだぜ!おまえなんかかわったか?」

「すまぬ、後で話そう。我に勝った者と話がしたい」

 

王者が、威風堂々と怪物の前に立つ。

 

「フランケルと言ったな?よい走りであった。だが…次は負けん!そこでだ。貴様に我の名を示しておきたい。聞いてくれるか?」

 

王者は、真剣な表情だった。今ここに、生涯の好敵手を見定めたのだ。

この王者の覇気に、フランも真剣な目で応えた。

 

「ええ…ぜひききたいわ」

「うむ…感謝する。ならば示そう!」

 

 

「──我が名はエクセレブレーション!貴様の生涯の好敵手となる者よ!」

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

フランとエクスが邂逅している一方──

 

「いや、違うんすよ…いや乱入は確かに俺なんすけど…うちの練習生が突っ込んだのは俺の指示じゃないっていうか…」

 

奇跡を起こした男は、警備詰め所で必死に言い訳をしていた。

擁護してくれるはずだったガリレオ会長はもうここにいない。

詰め所への移動中、誰かからの電話を受けた後に「シーちゃんがいて何でそうなったの!?」と電話の相手に叫び、その場で卒倒しかけてから急用が出来たと智哉に何度も詫び、顔を青白くして去って行った。

去る途中に二回転んでいた。何があったのか知らないが相当な事態が起きていると智哉は察した。

どこかのアホの子のやらかしのフォローに向かったのである。生徒会長は多忙なのだ。

 

「ふーん、じゃあその練習生の子達に聞こっか?」

「そうでありますね。ここに呼んでくるであります」

「うちの練習生は勘弁してください……」

「じゃあ、誰がやったんだろうねー?」

「………‥俺が指示しました」

 

苦渋の自白であった。

流石にクズの自覚がある智哉でも、子供のせいにはできなかったのだ。

 

「じゃあ、署までご同行してもらうであります」

「反省してるんでそれだけは勘弁してくださいお願いします…」

 

必死であった。許してもらえるなら靴まで舐める覚悟があった。

 

「あ、面会来たみたいよー」

「…面会?」

 

智哉は、冤罪で補導経験がある。

しかしこんな短時間で、しかも詰め所で面会など初めての事だった。

少し疑問に感じるも、相手を待つ。

 

「トム…あんた…」

「姉貴…」

 

来訪者は、姉であった。

姉は、憔悴した様子で智哉を見つめた。

智哉はここでようやく自分がやった事を正しく理解した。

 

「姉貴…すまねえ…」

「あんた…あれだけ言ったのに…」

 

姉が、涙をこぼす。

初めて見る姉の苦しそうな顔に智哉が俯く。

そんな顔を姉にさせてしまった事実が、重く圧し掛かっていた。

 

「あんた…もうだめよ。流石に庇いきれないって言われたわ」

「そっか…まあしょうがねえよな」

 

統括機構トレーナーへの道が今、閉ざされた。

しかし智哉は何故かそれ程辛く感じなかった。

フランの力になれたからだ。その為にやった事だったからだ。

だが、一つだけ心残りがある。

 

「姉貴…姉貴が資格取ったら頼みたい事があるんだ」

「…いいわよ、聞いてあげる」

「フランと、契約してやってくれないか?」

 

智哉は、フランと契約するためなら平地トレーナーになってもいいと決心していたのだ。

あの走りに魅せられたのもある。だが、それ以上に約束したからだ。

フランが走るなら共にいると。ゴールで待っていると。

 

「俺さ、フランと約束したんだ。あいつのゴールになるって」

「え!ほんとに言ったのそれ!?ウマ娘にそれ言う意味わかってんのあんた!?」

「情熱的ー!」

「一度言われてみたいでありますな」

 

茶化すなよこいつらと智哉は腹が立った。

だがそれでも言わなければならない。

智哉が顔を上げ、姉に告げようとする。

 

「だから、俺が契約できないならせめてあね…き…」

 

──顔を上げて見た姉は、「ドッキリ大成功」と書かれた立て札を持っていた。

 

完全に嵌められた智哉の顔が羞恥で真っ赤になり、怒りに震える。

姉の迫真の演技に騙されていた事実に逃げ出したくなった。

 

「ああああああ!!!!そりゃねえだろ!!趣味悪すぎるだろ!!!!」

「ごめんごめん!会長からさー、せめて何か罰を与えたいからこれやっといてって」

「あははははは!おかしー!!」

「面白かったであります!!もう理事長から不問にすると言われているであります!」

 

理事長から直々に無罪判定されている事に違和感を覚えつつも、智哉が胸を撫でおろす。

心臓に悪すぎて二度と乱入なんてしねえと誓った。

 

「ちなみにこれ撮影してるからね。会長こういう古典的なの大好きだから」

「マジかよ…これくらいで許されるならいいか…」

「あんたも許してやりな。会長、今のあんたより心臓に悪い事になってるから」

 

現在会長はアホの子の代わりに謝罪行脚中である。生徒会長は多忙なのだ。

 

「あー、なんか顔真っ青になって行っちまったんだよな」

「あれねー、ライト先輩が乱入して最終レース発走させちゃったのよ。あたし目の前で見てた」

「は?ライト先輩ってファンタスティックライト?なんで?」

「勘でやったらしいわよ。あたし的には結果オーライだけど統括機構としてはそうもいかないしね」

 

姉が苦笑いしながら答え、智哉の顔がひきつる。

スタート地点でも事件が起きていたのだ。

やらかしたアホの子は現在シーちゃんの追加の折檻を受けてべそをかいている。

 

「あとね、フランちゃん無効だって。関係者のあんたが乱入したからしょうがないわよね」

「だなあ…でも失格じゃなくて無効ってどういうことだ?」

「記録に残らないって事よ。理事長からフランちゃんへのせめてものお詫びみたいなものね」

 

フランの一着、あの奇跡的な全員抜きは無かった事にされていた。

繰り上げ一着になった王者は勝利を譲られたと感じて激怒した。

 

「じゃあ先出てな。あたしここでお茶でも飲んでるから」

「おもてなしするであります!」

「うん?姉貴は行かねえの?」

 

「出たらわかるわよ。さっきの話、ちゃんとするのよ」

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

「ご迷惑おかけしました…」

「もう来るなであります!」

「次は臭い飯食べてもらうからねー」

 

智哉が警察ウマ娘に改めて謝罪し、詰め所を後にする。

廊下のすぐそこに、壁にもたれ、俯き、落ち込むフランがいた。

 

「よう、待っててくれたのか?」

 

姉から事の顛末を聞かされたのだろうと察した智哉が、何もなかったかのように声をかける。

フランが顔を上げた。少し泣いていたのか目元が赤くなっていた。

 

「トム…わたし…」

「いいんだよ、俺がそうしたかったんだ。それにな、理事長が直々に不問にしてくれるってさ。いやー運がよかったぜ」

 

それでも落ち込むフランを見て、智哉は何故か悲しくなった。

そんな顔は見たくないと思った。

ずっと辛い顔、無理をした顔ばかり見ている気がする。

フランには、笑ってほしい。そう本心から思った。

 

「わたし、みんなにめいわくばかりかけてたのね。ぜんぜんなにもしらなくて…」

「笑ってくれよ」

「えっ?」

「それでいいんだよ。みんなフランに笑ってほしくてさ、やりたくてそうしたんだよ。だから笑ってくれ」

 

にこりと、智哉の方から笑って見せる。自然と、優しい笑みがこぼれていた。

初めて見るほどに優しい顔をした智哉を見たフランは、何故か恥ずかしくなって顔を背ける。

 

「あれっ、俺の顔そんなヤバかったか…」

「ううん、なんだかへんなきもちになったの」

「マジで…ごめん…」

「うふふ、トム、おかしいわ、あはははは!」

 

真剣に落ち込む智哉に、フランがおかしくなって笑う。

智哉は幼女に笑われて辛くなってきた。フランが笑ってくれたのは嬉しかった。

 

「それでいいんだよ。笑ってれば…フラン、聞いてほしい事があるんだ。今いいか?」

 

姉に話した自らの決意、それをフランに話す時だと智哉は考えた。

もしかしたら断られるかもしれない。それでも聞いてほしい話だった。

 

「ええ、わたしもおねがいがあったんだけど…トムからいって」

「ああ、わかった。じゃあ聞いてくれ」

 

フランも、智哉に頼みたい事があった。この人しかいないと思っていた。

しかし、この男がヘタレなのは直っていないのである。

一瞬、断られたらどうしよう、資格も持ってない奴がこんな才能の塊に頼むのはおこがましいのではないか?と考えてしまったのだ。

 

「…」

「トム?まだ??」

「いや、うん、言うから」

「早く言って頂戴」

「ちょっと待って…」

「言いなさい」

(えっフラン滅茶苦茶怖え…)

 

フランの圧が増していく。精神的に快復し、成長した今智哉の方が弱い可能性まであった。

 

「じゃ、じゃあ言います…俺さ、どれだけかかっても良いトレーナーになるよ。フランはもうレースが嫌になったかもしれない。でも、もし競走バになりたいなら、学院に入るのなら──」

 

「──俺と、契約してくれないか?」

 

一大決心であった。あれだけ敬遠していた平地トレーナーに、フランの為ならなってもいい、そう考えていた。

そしてこの言葉は、今フランが一番欲しかった言葉だった。

 

「ええ!ええ!わたし、きょうそうバになりたいもの!トムにトレーナーになってほしかったの!」

 

フランがはしたないと思いつつも飛び跳ねて喜ぶ。

情緒面はまだ子供であった。

 

「マジか!断られるかと思ったぜ」

「ことわらないわ!だって、トムはわたしのゴールだもの!」

 

黒歴史を抉られて智哉は恥ずかしくなった。

この先もこれ言われ続けるのか?と辛くなったのだ。

その時、姉が詰め所の扉を開けた。

 

「終わった?」

「ええ!ちゃんといってくれたわ!ミディおねえさま!」

「ほんとに!?フランちゃんやったわね!」

 

身長差があるので姉が屈みこみ、フランとハイタッチを交わす。

フランは事前に姉に相談していたのだ。

姉の目論見もあったため、今日が勝負所とフランに言質を取らせに行った経緯があった。

 

「さっき元クラスメートとも仲直りしてたし、今日はフランちゃん選抜戦出てよかったわね」

「ええ!ほんとうにうれしいわ!」

「へ?仲直りできたのか?」

「あんたがいなくなった後でね」

 

エクスの名前を聞いた後、立ち見エリアまでやってきたアスコットAクラスの元同級生達とフランは会っていた。

フランは少しだけ怒り、その後許した。もう、心の苦しさはあの守護者が持って行ったから。

フランの抱える問題のほとんどが、今日解決したのだ。

つまり、久居留邸での滞在の終わりが近い事を示していた。

 

「そっか…じゃあ、フランが家にいるのもあと少しの間だけか…」

「そうね…ま、今生の別れって訳じゃないしいいでしょ」

「おうちにかえっても、クラブはつづけるしあそびにもいくわ」

「いいのか?ジュドモントの方が設備もいいんだぜ?」

「それでもいまのクラブがいいの」

 

フランは、クラブを離れるつもりは最初から無かった。

全てを取り戻した場所を離れたくなかったのだ。

クラブの友人たち、久居留家の一家全員、フランには既にかけがえの無い物となっていた。

 

「そうだ!そろそろ殿下のラーメン開店する頃よ。食べてから帰らない?」

「おっ、やるのか?行こうぜ」

「たべたいわ!」

 

三人は、長い一日、選抜戦をようやく終えた。

ギザ歯の店員が呼び込みをする殿下のラーメンは家系で美味であった。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

エクスは家臣や好敵手達と言葉を交わした後に、一人、地下バ道から帰路についていた。

皆と帰ると困る事があった。見られたくないものがあった。

 

「…エクス、お疲れ様」

「姉上!」

 

地下バ道の途中に、エクスの姉、ジェシカが待ち受けていた。

王者が嬉しそうに姉に駆け寄り、声をかける。

しかし、その顔を姉から逸らしていた。見られたくなかった。

 

「姉上!ごめん!負けてしまった!」

「ええ、速い子だったわね」

 

エクスは、姉の顔を見ずにまくしたてる。

 

「そうだな!速い相手であった!フランケルと言うらしい!我はついに好敵手を見つけた!あんな奴がおるのに、我は我が一番速いと思っておった。これでは裸の王様ではないか!ははは!!」

「ええ、でもエクスは立派だったわ。最後まで堂々としていたわね。自慢の妹よ」

「ほんとかあねうえ!我はそういわれるのが、いちばん、うれしい!」

 

エクスの言葉が、途切れ途切れになっていく。

ジェシカはそっと、そっぽを向いたままの最愛の妹を抱き締めた。

 

「うえっ!どうしたんだ、あねうえ!ちょっと、はずかしいぞ!」

「でもね。ここでは王様にならなくていいのよ?ここには姉さんしかいないわ」

「そうはいかん!我は…われは…つよく…なるって…」

「今は、いいのよ」

 

 

「うえええぇぇぇぇぇん!!くやしいよおおおぉぉぉぉ!!あねうええぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

(よくも、よくも泣かせてくれたわね…フランケル…トモヤ・クイル……!!)

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