トムとフラン   作:AC新作はよ

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なんか概要と中身違わない?って友人に指摘されたのでタグとかちょっと変えました。
最強チート系ウマ娘二次名乗っておきながら、まだ誰も走っていないんだから当たり前だよなあ?
概要もそのうちいじります。
ここから二話重めですが許してクレメンス。曇らせ要素あるかもタグが火を噴くぜ。


第四話 いかにして彼は彼女に過去を語るか

(こまったわ。トムにみられてしまったわ)

 

フランは、久居留家の自らに与えられた二階の客間で泣いていた。

クラブで楽しそうに練習し、友達とレースを楽しむウマ娘達を見て堪え切れなかったのだ。

見なければよかった。自分には手に入らないと諦めた事だった。

でも、見ずにはいられなかった。

 

(とおいしごまかせばだいじょうぶよ。なみだをふいて、めをひやせばいいわ。おかあさまとサリーはそうしてくれたもの)

 

大好きな母と大好きなメイドを思い返しながら、フランは涙を拭う。

 

「…ぅ、ぅううぅ~!」

 

でも、止まらなかった。

涙は、流れ続けた。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「…んにゅ。ふあ?」

 

フランの目が覚める。

 

(ねていたのね、めをひやさないと)

 

状況を理解できず周囲を見渡すと、自分がベッドにいたことに気付く。

泣き疲れて寝ていたらしい。

動こうとしたところに、背後から声がかかる。

 

「起きたか?」

「ふぇっ!?」

 

振り向くと、智哉が椅子に逆座りしながら、フランを眺めていた。

フランをじっと見つめるその目は、どこか悲しそうに見える。

 

「ト、トム…?」

「おはよう」

 

フランは焦っていた。誤魔化す方法と、智哉をここから追い出して目を冷やす方法を幼女なりに必死に考える。

 

「トム、どうしてここにいるの?」

「フランに会いに来たから」

「ノックくらいしてほしいわ。レディのおへやにかってにはいるなんて、しんしのすることじゃないわ」

「ノックしたらお前が寝てたんだよ。ベッドに運んだの俺だぞ」

「そうなの、ありが…でていってちょうだい。いまはおはなししたくないわ」

 

フランが生来の素直さでお礼を言いそうになるが、彼女にとって今は追い出す事が先決だった。

本当はしたくないけど一生懸命、智哉を睨みつける。

 

「俺は話あるんだけどさ。聞いてくれないか?」

「いやよ。でていかないならこのぼうはんブザーをならすわ。サリーがトムをやっつけにくるのよ」

 

大好きなメイドが「いつどこにいても、これを鳴らせばお嬢様の元に駆けつけます」と言いながらくれた、ふわふわがついた宝物の防犯ブザーを取り出す。うさぎのしっぽみたいでかわいいから気に入っている。

 

「オイやめろ。てかサリーって誰…」

「サリーはつよいのよ。トムなんて、すぐにようこうろにおやゆびをたてて、しずむことになるわ」

 

「溶鉱炉気に入りすぎだろ」

 

相当に気に入ったらしい。今度あの作品の続編も持ってきてやるか、と智哉は考えた。

 

「とにかくでていってちょうだい。いそいでいるのよ」

「目、冷やしたいからか?」

「そうよ、めをひやし…あ」

「俺がベッドに運んだって言ったろ?とっくに気付いてるよ」

 

(トム、きょうはなんだかやさしいわ)

 

ぶっきらぼうだがちゃんと話を聞いてくれるし、優しい人だとフランは子供ながらに思っていた。今日は言葉遣いまで優しく気を使ったものになっていた。

 

「トム、あのね」

「泣いた事、誰にも言わなければいいんだろ?いいぜ」

 

気が利きすぎる。まるで別人である。

 

「代わりにさ、ちょっと話さないか?」

「おはなし?」

「俺から話して、その後フランも話す。隠し事は無しだ。いいか?」

 

フランは、智哉が何を話したいか理解した。

言いたくない。自分はきっと泣いてしまう。わがままを言ってしまう。彼に当たってしまう。

でも…。

 

智哉はじっと、フランの目を見つめていた。

フランは、初めて彼と会った日を思い返す。

 

 

(トムはずっと、わたしのめをみてくれていたわ、おなじたかさで)

 

 

きっと受け入れてくれる。きっと嫌わないでくれる。

 

「わかったわ、わたしもトムとおはなししたいわ」

「よし、じゃあ俺から話すぞ」

 

そういうと智哉は一度深呼吸して、椅子を真っすぐ戻してフランに向き直った。

そして…。

 

「…」

 

「…」

 

喋らない。ここにきて折れそうになっている。ヘタレである。

 

「トム、にらめっこはおはなしじゃないわ」

「そうっすね…」

「トム?」

「おう…」

 

「…わたしからおはなしする?」

 

また気を使われた。10歳下の幼女に。

 

「うがああああ!!!」

 

突然、智哉が奇声を上げ頭を掻きむしり始めた。

遂に発狂したのか?否、そうではない。

 

「トム…?」

「いいかフラン!ちょっと見てろ!!」

 

覚悟を決めたのだ。智哉はポケットから50ペンス硬貨を取り出す。

 

「おかね?」

「おう!これをな!」

 

硬貨を人差し指と親指で挟み込み、

 

「こうだ!!!」

 

──易々と折り曲げた。

それを見たフランは、ぽかんとしながら答える。

 

「…すごいわ。トムはちからもちなのね」

「反応それ!?」

「でも、おかねをまげるのはいけないわ。おかねはだいじなものなのよ」

「すいません…」

 

説教された。10歳下の幼女に。

軽く落ち込むが、気を取り直して智哉が語り出す。

 

「えーとまあ、つまりだ。フラン、うちの母さんはウマ娘なのは知ってるな?」

「しっているわ。おばさまはだいすきよ」

「おう、ありがとな。で、俺はそんな母さんの子供な訳だ」

「ええ、トムもだいすきよ」

 

はっきりと言われ、智哉は幼女のストレートな好意に尻込みする。

この男、人に好かれるのに慣れていないのだ。

 

「お、おう…でも、俺は人間だよな?」

「ええ、みればわかるわ」

「でもな、人間でも、ウマ娘とのハーフは普通の人間より力が強かったりするんだ」

「あっ!それでおかねをまげたのね!」

「今気付いたのかよ。それでな、特に俺は血が濃いんだよ。ウマ娘ほど強いわけじゃないけどな」

 

ウマ娘と人間の混血児は、女児はすべてウマ娘として産まれるが、男児も母の影響をわずかながら受けて産まれる。ウマ娘の身体能力の一部を受け継ぐのである。

代々ウマ娘と関わってきた久居留家は、一族から何組ものウマ娘との夫婦関係が成立していた。

智哉は、母の血と祖先の血、両方を色濃く継いでいるのだ。

姉のバ鹿力のアイアンクローを、死ぬほど痛い程度で耐えられた理由がここにある。

 

「…力が強くても、何も良い事なんてなかったけどな」

「…なにか、あったの?」

「…喧嘩で怪我させちまったんだよ。同級生を。12の時だった」

 

「!?」

 

「今思えば、力の加減ができなかったのもあったんだけどさ。それ以上に腹が立ってたんだ。友達が集団でいじめられてたからな。許せなかった」

 

「トム、は、そのおともだちをまもったのね?」

 

そうあってほしかった。智哉は優しい人だから。

智哉の顔が辛そうに歪む。

 

「違う。違うんだよ…俺はその時、こいつらなんて死んでもいいって暴力を振るったんだ。守るならちょっと脅して目の前に立つだけでよかった。人間なんかに殴られても俺は平気だから」

 

泣きそうな、許しを請うような声だった。思わずフランも泣きそうになる。

 

「トム…」

 

「幸い、大けがを負った人間はいなかった。それで俺は警察に連れてかれて、いじめを追及されたくない教師と、俺がぶちのめした奴らが口裏合わせて、俺が突然暴れだしたことになった。結局すぐに全部バレて、教師はクビ、クソ野郎どもは逃げるように転校になったけどな」

「親父、母さん、姉貴は信じてくれた。あの時は泣きそうになったよ」

 

「…おともだちは、どうなったの?」

 

一番、辛い部分だった。しかし、話さない訳にはいかない。

 

「…あいつらに脅されて、いじめの標的から外す代わりに、俺が暴れたという口裏合わせに参加してた。でもそこはよかったんだ。勝手に俺がやった事だしな」

「だから俺は、気にするなよって言いたくて会いに行ったんだ」

 

深呼吸する。こんな話幼女にしてもいいのだろうかと悩む。

 

「そうしたらな、泣いて謝るんだ。助けてくれ。殺さないでくれって」

 

「…」

 

「あいつからすれば、俺の方が怖かったんだと思う。そりゃそうだよな、人間振り回せるんだぜ俺」

「だから、俺は逃げた。親父についていって、短い期間で転校を繰り返して。それなら友達とか作らないで済むから」

「一人で考える時間ができると辛くなるから必死にトレーナーの勉強もしたんだ。俺は16でトレーナー試験受かる能力があるって親父に言われてるんだぜ?すげえだろ」

「それで、去年こっちに戻ってきたんだ。学力試験があったから、その準備をしたくてさ」

 

「…」

 

「…フラン?」

 

フランは、泣いていた。静かに泣いていた。

こんな子供の自分に、辛かった事を真っすぐ向き合って話してくれた。

このひとは、自分と同じだ。心の辛さに耐えきれずに、今もひきずっている人だ。

いや、逃げただけの自分よりもすごい。前を向いて生きている。

 

「トムは、すごいわ」

 

智哉は居た堪れなくなって話題を変えたくなった。自分語りも恥ずかしすぎるしそれで幼女泣かすとか最低すぎると話した事より辛くなった。

 

「すごくねえよ、親父について行って楽しかったしな。親父のチームの管理ウマ娘達にはすげえ世話になってかわいがってもらったし。あ!そうだ、トレセン学院のガリレオ会長知ってるか?俺あの人に直接励ましてもらった事があるんだよ。いやあ不幸ぶってて良かったぜ」

 

フランは、目の前でしどろもどろに捲し立てる智哉を見て微笑む。

やっぱりこの人はやさしい人だ。自分が泣いているのを見て話題を変えたがっている。

フランは、このやさしい人を立ててあげる事にした。

 

「しってるわ、ガリレオおねえさま。すてきでかっこいいおねえさまよ」

「だよな!いやあフランはわかってるな。あの人には頭上がらねえよ」

「トムは、だからトレーナーになりたいのね。ガリレオおねえさまにあこがれて」

「いや平地はむりっす…」

「ええ…」

 

余韻が台無しである。いつもの空気に戻ってしまった。

 

「というわけで、俺の話終わり!終わり!次フランの番な!」

「おはなししづらいわ…」

「…いいんだよこんなんで、辛い気持ちで辛い話なんてするもんじゃねえよ」

「トム…ありがとう」

 

気恥ずかしそうに智哉が眼をそらす。

フランはそれを見て微笑みながら、智哉に向き直る。

 

「わたし、きっとないてしまうわ」

 

「いいんだよ泣いて、ガキんちょが我慢すんな」

 

「きっとわがままをいうわ」

 

「それくらい構わねえよ」

 

「きっと、うまくおはなしできないわ」

 

「フランは聞いてくれたんだ、全部しっかり聞くよ」

 

 

 

 

 

 

 

フランは、ゆっくりと語り出す──




なんか伸び伸びになってるけど明日の午前中に更新するんで許し亭ゆるして
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