トムとフラン   作:AC新作はよ

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フランキーおじさんとサイードいつ出せばええんや……ゴドルフィンが史実にあんまり絡んでこないんだよね……ファーすらまだ出せてへん……。


研修その六 いかにして二人は互いを知るか

「……あっちは終わったそうよ」

「ああ、やっぱりそうなるよなあ。わかってたんだよ」

「……何?」

 

本物の時限爆弾の捜索は、佳境を迎えていた。

残りは二個。そして、智哉が途中から感じていた謎の確信が当たってしまった。

順調に進んで範囲を広げた研修生ペアの管轄であった。

 

「ロクな話じゃねえけど聞きたいか?自分語りみたいになっちまうけど」

「……言ってみなさい」

「俺な、拳銃で撃たれた事あるんだよ」

「えっ……?」

 

移動しながらの智哉の謎のカミングアウトにジェシカが困惑する。

銃規制の厳しい英国でそんな目に遭うのが信じられないのだ。

 

「しかもな、盾みたいなもん持ってたんだけど、盾で守ってない肩に狙いも付けずに一発だけ撃ったのが当たった」

「そ、そう…」

「まだあるぜ。昔いじめられてる友達助けたらな、その現場に教師とクラスメートが来るタイミングが悪すぎて俺がその犯人にされた。クラスメートのウマ娘に警察に突き出されて補導された」

「そ、そうなのね……」

「他にもな…選抜戦の乱入、あれ俺なんだけど本当は入る気なかったんだよ。理由は言えねえけど俺が入らないとエプソムの生徒が入る状況になって、どうしようもねえから入った」

「…………」

「後はな……」

「もういいわよ!!あなた何なの!!?その運と間の悪さ!!?」

 

ジェシカはこの前振りでこの首席の男が何を言いたいか察してしまった。

何か悟りを開いたかのような喋り方に恐怖も抱いた。

今まで感じていた楽しさも吹っ飛んだ。早くこの疫病神から逃げたくなったのだ。

 

「多分な……爆弾、もう時間ないぜ。あの怪盗、サンプルって言ってたよな?設定時間が違うかもな」

「う……嘘でしょう?そんなに都合悪い事が起きる?あなた悪魔にでも憑かれてるの?」

 

そう話していたら、ジェシカの持っていた連絡用の携帯無線からジャックの声が響いた。

 

『ジェシカさん!大変だ!!本物は設定時間が違う!!全員で向かっているが、もう回収しても間に合わないから離れなさい!残り10分だ!!』

 

ジェシカは怖気が走った。本当にこの疫病神の言った通りになったのだ。

嫌すぎる男と同期になってしまったと戦慄した。

 

「ほらな……だろ……?」

「あなた本当になんなの……?」

 

智哉は悟り切った顔をしていた。

自分の運と間の悪さをもう理解しているのだ。

そしてもう一つ確認したい事があった。爆弾の場所である。

今智哉とジェシカが向かっている場所は、ある邸宅に近いのだ。

設置場所がそこだった場合、絶対に行かなければならなかった。

絶対に守らなければならなかった。

 

「場所、教えてくれ」

「……片方は、そこの路地の先200mのゴミ箱…もう一つは……」

 

 

 

「──ジュドモント邸の、門前ね」

 

 

 

ここで智哉は立ち止まり、ジェシカを降ろした。

やる事は、決まった。しかしこの同期を付き合わせる必要は無いのだ。

頼まれた事もある。危険に晒してはいけない。

 

「ここまででいいぜ。案内助かった」

「…行くつもり?」

「他だとビビって逃げるけどな…そこだけは行かないといけねえんだよなあ……」

 

そう言うと、智哉は全力で走って行った。

その後ろ姿を見送るジェシカは、あの首席への蟠りをあまり感じていない自分に気付いた。

あの優秀で気に入らない男も苦労している事を知ってしまったのだ。

 

(……苦労する事もあるのね、()も……)

 

優秀で、何でもできて、自分の欲しい物を持っていて、あの怪物と契約するであろう男。

何の苦労も苦悩も無い楽な人生を歩む男だと思っていた。自分のようなハンデなどない男だと思っていた。

だが、実際の姿を見てそうは思えなくなった。

ふと、ジェシカがもう一つの爆弾のある路地に目を向ける。

何となく、あの男と張り合いたくなってしまった。劣等感や嫉妬ではない、真っすぐな気持ちで。

 

(一応、確認しておこうかしら…)

 

そうして、路地に入る。残り時間はもう10分を切っている。

確認してすぐ離れればいいだけの事だった。

 

しかしジェシカはまだ自分が虚弱だと言う事を、荒事に無縁な令嬢である事を十分に理解していなかった。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

智哉は、走りながら携帯を取り出した。

こういう時、ジュドモント家の縁者で最も頼りになる人物に連絡する為だ。

 

『……どうした?研修中ではないのか?』

 

メイドである。メイドは気性難モードでなければ冷静で話もわかる人物なのだ。

智哉も倒れた時や過去の悪夢に悩まされている間、何度も助けてもらっている。

 

「サリーさん、時間が無いんで一言だけ。ジュドモント邸の門に誰も近寄らないように、全員に伝えてもらえないっすか」

『わかった。何かあったんだな?』

 

ここで智哉は爆弾が仕掛けられている事を言うべきか一瞬悩んだ。

余計な心配をかける事と、もし爆発した場合の危険を天秤にかけて、伝える事にした。

メイドなら話しても冷静に対応してくれるであろうと言う信頼もあった。

 

「サリーさんなら大丈夫そうだし言います。爆弾が仕掛けられちまったみたいで……」

『……ああ、あれか』

「…へ?知ってるんすか?」

 

 

『先ほど解除した』

 

 

この言葉に唖然とした智哉の足が止まる。

メイドが事もなげに時限爆弾を解除したと言ってのけたのだ。

決死の覚悟が全て無駄になった。爆弾の如く木端微塵である。

 

「はあ!?サリーさん解除できるんすか!!?」

『私はメイドだぞ?何故できないと思った?』

「普通メイドはできないんじゃねえかなあ……」

 

智哉のメイドの概念が壊れそうになった。

普通のメイドは爆弾解除はおろか三国志の猛将の如く観客を恐慌させたりはできないはずである。

何とか気を取り直した智哉が、メイドに爆弾が本物かどうかを念のため確認する。

 

「その爆弾、ラベルの色とかわかります?」

『確か…黄色だったな。凝った作りだったがアラームが鳴るだけの玩具だな。なかなか楽しめた』

「……ならあっちが本物か。サリーさん助かったっす。またフランが家に泊まりに来る時にでも」

『ああ、また会おう…大旦那様は私が折檻しておいたぞ』

 

智哉が心の中でメイドに親指を立てつつ、通話を終える。

後は爆破しようが問題ない状態となった。

第二小隊長が免職されようが隊員が始末書の山に泣こうが、自分には関係ない話である。

しかし智哉には一つだけ気掛かりがあった。あのもやし女の動向である。

 

(確認しに行くようなアホな真似する女じゃねえとは思うけど……戻ればギリギリ間に合うな。一応見に行くか…)

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……あれね」

 

ジェシカは3分前にようやく路地の爆弾設置場所にやってきていた。

路地に入って200m程の距離である。

訓練で疲労していたジェシカはここまで休み休みでようやく来たのだ。

目的の爆弾は屋外用ゴミ箱の中だった。

ジェシカは危ない事をしている自覚はあった。だが何故か変な信頼感を持ってしまっていた。

オカルトはあまり信じない方だが、あの疫病神のような同期が行った方が本物な気がするのだ。

 

(不思議なものね……あの男を信用してしまうなんて)

 

しかし、ゴミ箱を開け、中に設置された爆弾をひっくり返した瞬間、ジェシカは飛び跳ねて尻餅をつき、爆弾が地面に転がった。

 

(……本物じゃない!?こっちなの!?)

 

ラベルの色は、赤だったのである。本物の時限爆弾だった。

時間は3分を切っているが、走ればもやし少女でも十分に範囲外に逃げ切れただろう。

だが、荒事に慣れていない令嬢は腰が抜けてしまっていた。

しかも尻餅をついた時に足を挫いていた。

もやし少女はここでも、そのもやしっぷりを発揮したのだ。

 

(に、逃げないと……!腰が抜けて……)

 

尻餅をついたまま、ゆっくりと後退る。ジェシカは間に合わないと悟った。

走マ灯が巡り、最愛の妹が頭に浮かぶ。そこに何者かの声がかかった。

 

「なんで来てんだよてめえ!馬鹿じゃねえのか!?」

 

念のために確認に来た智哉が、100m前方にジェシカを発見したのだ。

全力で走りながら、どう行動するかを脳内で模索する。

 

(たぶん残り15秒くらいか。拾って逃げるか…?破片を食らう。爆弾を投げるか?降り注ぐ破片がどれだけのものかわからねえ。となると……アメリカ行けなくなったら姉貴に殺されるよなあ……)

 

自分なら恐らく死なないだろうという予測と、同期に死なれる気分の悪さ、あの同期の家族にした約束、全てを考えた咄嗟の判断であった。

 

 

爆弾を上空に投げ、智哉はジェシカに覆いかぶさった。

 

 

(この男、私を守ろうと……?)

(くそお……あんな約束しなけりゃよかった……)

 

上空に上がった爆弾が、空中で停滞したその時──

 

 

「──アーディ君、狙いはわかってるね?」

「もちのろんよ」

 

 

銃声が二度響き、上空の最も高い位置で爆弾が炸裂した。

そして、智哉とジェシカを複数の人影が取り囲む。

 

「上空!防御態勢!構え!!」

「イエス!サー!!」

「待たせたなーキミ達」

 

降り注ぐ破片を二人のフォワード担当が、ウマ娘専用の巨大な防弾シールドを掲げて防ぎ切り、ポイントマン担当が要救助者を素早く確保する。

怪盗と第二小隊の見事な連携であった。彼女達は間に合ったのだ。

路地の逆方向から二人を見つけ、咄嗟に的確な指示をジャックが出した結果であった。

普段は減俸に泣かされている情けない人物だが、伊達に腕自慢の気性難達の上官を務めていないのだ。

ジャックが二人を見比べ、怪我が無い事を確認してその場に屈みこむ。

 

「君達近付いたらダメって言ったでしょ……怪我がなくてよかったよ」

 

彼は苦労人だが正義と熱意を持ち警察官を続けている男である。

無事に守りきれた事と、怪我をさせていたらこの天職を失っていた不安から解放されて気が抜けたのだ。

ジャックからの状況終了のサインを受け、周囲の隊員達がわいわいと騒ぎ出す。

普段は問題児の気性難達だが、こういう時は上官に忠実な隊員達なのだ。

信頼関係がしっかりと築かれていた。なお全員ジャックを狙っているのでお互い牽制し合っていた。そのうちジャックは逃げられずに確保される運命にある。

 

「トモヤ!咄嗟に守るたあ男だなあお前!」

「来てるかどうかの賭けはアタシの勝ちだなあオイ!」

「なんで来てるんだよお前ら!後で覚えとけよ!!」

 

周囲の騒ぎ立てる隊員達の前で、智哉はジェシカに覆いかぶさったまま固まっていた。

大怪我を覚悟した状況から、無事に助かった安堵でまだ動けないのだ。

その智哉の顔を、下からジェシカは眺めていた。

その青褪めて、引き攣りきった顔を。

ふと、二人の目が合う。口を開いたのは、智哉の方だった。

 

「──なあ、これでも欲しいか?俺の持ってる物全部」

 

切実な問いであった。

ジェシカの答えは決まっていた。清々しい笑顔で返事をする。

 

「──絶対にいらないわ」

 

その返事を聞いた智哉が、ようやく立ち上がる。

聞きたい言葉が聞けて満足した様子であった。

周囲の隊員達に謝罪と感謝を伝え、ジェシカから離れようとする。

 

その智哉の足を、ジェシカが掴んだ。

 

「……なんだよ?」

「足を挫いてしまったわ。立てないのよ」

 

ジェシカが、初日はまともに言えなかった事を素直に伝えた。

これが、自分なりのけじめのように。

 

「また、運んでくれないかしら?」

 

素直に、智哉に運んでほしいと頼む。

昨日の自分なら、絶対言えない言葉を伝える。

 

 

「は?知るかよ自分で歩け」

 

 

だがこの男はクズであった。安心して気が抜けたのでクズモードに戻ったのだ。

そもそもこうなったのはジェシカのせいである。助ける気はまるでなかったのだ。

予想外の返事を受けたジェシカが、瞬間的に顔を真っ赤にして憤怒する。

自分なりに智哉に気を許したのに恥をかかされたのだ。ブチ切れ案件である。

 

「はあ!?運びなさいよ!!足が痛いのよ!!」

「知らねえっつってんだろ。そもそも自業自得じゃねえか」

「うるさいわね疫病神!!あなたがいたからこうなったんでしょう!!?」

「ああ!!?てめえ疫病神はねえだろ!!いいから歩けもやし女!!!」

「もやし!?もやしですって!!?一番気にしてる事言ったわね!!!?」

 

妹に「姉上もやしすぎる」と言われてからの一番の逆鱗に触れられて、もやしが更にブチ切れる。

その様子を、怪盗と小隊の面々は暖かい目で見ていた。

 

「いいねえ!あの二人!!青春してるし有能だし!!」

「ですね、あの二人のおかげで随分早く済みましたよ」

 

研修生ペアは二人で全体の30%の爆弾を発見している。

本物の捜索と爆破処理はこの二人がいなければ間に合わなかったのだ。

二人を見て、深く頷いていた怪盗が良い事を思いついた、とジャックに耳打ちする。

 

「ジャック、ちょっと………で……を……」

「ええ!!?そんな事できませんよ!!?」

「一回だけ頼むよ!無理だったら諦めるから!」

「……一回だけですよ」

 

 

こうして、地獄の二日目は終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

その後は智哉が数回死にかける程度で、日々平穏に研修は過ぎて行った。

もやしは体幹トレーニングだけをひたすらにこなした。慣れてきて調子に乗って妹とランニングを敢行し子鹿になったがそれ以外は平穏である。

 

そして、研修最終日──

 

「本当にお疲れ様!二人ともよく頑張ったね」

「おいこっち見ろよジャックさん。お前今日も俺に小隊の訓練丸投げしたよな?」

「適材適所でしょう。ジャックさんは私の訓練を見るのも仕事よ」

 

あれから、智哉とジェシカは普通に会話するようになった。

そうしてわかった事は、お互いのトレーナーとしての知識量である。

智哉が知らない事もあれば、ジェシカが知らない事もあった。

 

「じゃあ、この修了証明にサインを…あとで統括機構に郵送するからね」

 

ジャックがそう言いつつ、二人の前に書類を出す。

この修了証明にサインし統括機構にそれを届ける事でようやく研修修了となり、一人前の競走バのトレーナーとして認められるのである。

しかしここで智哉は既視感を感じた。ジャックの目が若干泳いでいるのも気になる。

最近似た状況で嵌められているので確かめたくなったのだ。

ぺらりと、書類をめくる。もう一枚出てきた。警察学校の試験申込書であった。

 

「……おい、これなんだよ?」

「……呆れて何も言えないわ」

「………ごめんなさい、殿下が………」

 

怪盗殿下はこの二人を新メンバーとして欲しくなっていたのだ。

そしてジャックに無茶振りをしたのである。

智哉はそれ以上怒らなかった。この男はこれからも怪盗と隊員に悩まされるのだろう、と考えたら哀れに思ったのだ。

黙って書類に記入して、警視庁を後にする。

智哉はようやく地獄から解放されて感慨深い思いになった。

訓練でかなり身体能力が向上した気がするが、二度とやりたくないと思った。

今日はフランが泊まりに来る日でもあった。

帰って研修の話でもしてやるか、と考えていたところ、後ろから声がかかる。

 

「待ちなさい。クイル」

 

声の主は、ジェシカだった。いつの間にかフルネーム呼びはやめていた。

話すうちに面倒臭くなったのだ。

 

「何か用か?オブリーエン」

「……」

 

ジェシカの目的は、初日の件であった。

あの当たり散らした事を結局謝れていなかったのだ。

どう切り出すか悩んでいるジェシカを見て、智哉もある事を思い出した。

 

「ああ、そういや俺もお前に言う事あったわ」

 

そうして、智哉はジェシカにしっかりと頭を下げて、言った。

 

「初日、肩に担いで悪かったな」

 

目の前で頭を下げる首席の男、まだわずかに劣等感を抱く相手を見て、ジェシカは自分の頬がだらしなく緩むのを感じた。

実力を認め、コンプレックスを抱いている相手が自分に頭を下げるのが楽しくてたまらないのだ。もやしは何かに目覚めていた。

 

「……くふっ」

(えっ?今のこいつ?この変な笑い方こいつ??)

 

智哉はドン引きした。同期に筋を通したら変な笑いで返されたのである。

頭を上げたら見てはいけないものを見てしまいそうで上げられない。

もやしはもやしで自分の口から出た声に衝撃を受けていた。父の眼鏡が吹っ飛ぶ声であった。

そして、ジェシカは困っていた。先に謝られ、謝るタイミングを失ったのだ。それと共に頭を下げる智哉を見て、何故か気分がとても良いので謝りたくなくなった。もやしは何かに目覚めていた。

 

「……し、仕方ないわね。許してあげるわ」

「お、おう……お前はすぐに学院に行くのか?」

 

もやしの許しを得て頭を上げる智哉は、話題を変えたくてこの後の進路を振ってみた。

平地競走は年間通して行われているが、本格的なシーズンインは春先からである。

 

「…そうね。今年中には学院に行って、父の勧めた子と契約する予定よ……その子次第でシーズンインまではアイルランドね」

「バリードイルか?」

「勿論」

 

バリードイル──アイルランド公国、ティペラリー県に存在するトレセン学院の学外施設にして、チーム・クールモアの本拠地である。広大な土地に十分な設備、寮や合宿場も完備されている。こちらで生徒達は授業を受ける事もでき、更にはアイルランドでのポニースクール運営も行っているのだ。クールモアの総帥ジョセフ・マグニアの牙城としても有名であり、かの生徒会長ガリレオはこのバリードイルのポニースクール出身である。

 

「…羨ましいもんだ、やっぱり大手は違うな」

「……?あなたもサーの推薦を受けて、ジュドモントの紐付きのようなものでしょう?来年の重賞、どちらが先に獲るか競うのはどう?」

「ああ、悪い。それ無理なんだよ」

「……どういう事?」

 

試験以降、思い詰めていたジェシカは学院の公示を見ていなかった。

智哉の処分を知らないのである。

 

「俺なあ……六年間こっちで契約もレース参加もできねえんだよ。来年頭にアメリカ行くわ」

「………何よそれ!?聞いてないわよ!?」

「公示出てるんだけどな…お前そういうの見てそうなのに何で見てねえんだよ…」

 

ライバルと思っていた同期が、突然いなくなる事にジェシカは肩透かしを食った。

しかし六年という期間で一つ思い当たる事があった。

自分の妹と、あの怪物が学院に入学するであろう時なのだ。

 

「……そう。ケンタッキー州?」

「多分な。ジュドモントのチームもあるしな」

「で、六年後は……フランケルね」

「……ああ」

「私の妹も、あの子と同じ年なのよ」

「エクスって子だろ?知ってるぜ」

「──そう、なら言う事はこれだけよ」

 

 

 

 

 

「覚えておきなさい。あの子の名前はエクセレブレーション…フランケルを倒す者よ──」




研修編はこれで終わりです。
ウマ娘かこれ?って感じだけどシャーガーをレースに絡めて紹介する方法が思いつかなかったのでこれしかなかった……許し亭ゆるして。
今週中にアメリカ編も投稿していきます。雰囲気は一部に近いかも。
ちゃんとレースの話になる……と思うやで。
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