序盤の文章ひどいとこ直したいけど更新優先するやで……でも直したい……。
私、ラグズトゥリッチズには悲願があった。
ティアラ路線からのクラシック三冠の一つ、ベルモントステークスの制覇。
百年、誰も成していない偉業。
誰もが私を笑った。G1三勝、オークス二冠の私でもそれは不可能だと。
ケンタッキーダービー三着にして、アーカンソーダービーウマ娘のカーリンにティアラ路線から来て勝てる訳が無いと、そう言いながら笑った。
チームから派遣されてきた、オークスを共に勝ったトレーナーとの契約も切れていた。
残り一か月で私を勝たせてくれるトレーナーを探すところからのスタート。
周囲の嘲笑に心を苛まれ、自分自身ですら無謀な挑戦だと諦めはじめた中、チーフとネル先輩からの紹介で彼が現れた。
<君がラグズトゥリッチズだな。優秀なオークスウマ娘だと聞いている。楽な仕事になりそうだ>
黒い中折れ帽を被り、機械的な声色の、覆面の怪人、ジョー・ヴェラス。
横には彼のパートナーと噂される英国から来た名バと、最初は嫌っていたはずなのにすっかりこの胡散臭い男に篭絡されたネル先輩を侍らせ、この男は私の悲願を楽な仕事だと言ってのけた。
ドバイでの惨敗で苦しんでいたネル先輩の次走が丁度私の次走、ベルモントで同日に行われるレースだったのが、彼と契約するきっかけだった。
彼とは二戦のみの短期契約、私からそう希望した。私が彼を信用していなかったからだ。
ネル先輩への義理立てと、チーフからの打診に応えたのが彼しかいなかったから仕方なく、という妥協の契約だった。
今、とても後悔している判断だった。
はねっかえりで気の強い私は、彼のこの楽な仕事という発言にとても腹を立てた。
「楽な仕事だと……!私の悲願を笑うな!!」
憤る私の前に立ち、ネル先輩はこう言った。
「リッちゃん、一か月でいいんだ。彼を信じてあげてほしい」
「ネル先輩……」
ネル先輩は困った顔で、小声でこう続ける。
見た事が無い先輩の顔だった。
「彼、不器用な人だから」
ネル先輩は凛とした栗毛の、勇ましいウマ娘だ。
この男にも最初は随分反発していたはずなのに、彼と契約してからの二か月で人が変わったようにこの男に篭絡されていた。
先輩は騙されている、私はそうなってたまるか、と最初は反発した。
そして──
『カーリンとの一騎打ちを制し、ベルモントの女神となったのはラグズトゥリッチズ!百年ぶりの偉業!今ここに達成されました!この偉業を成したラグズトゥリッチズとそのトレーナー、ミスターヴェラスに惜しみない拍手が贈られます!!』
私は、勝った。ここに悲願は成ったのだ。
彼の、あの覆面の怪人の言った通りだった。
<君は、既にベルモントで勝てる力がある。必要なのは確実なレースプランと、それを忠実に行う強い意思だ>
彼の不器用さに気付いていた私は、どうすればいい、と素直に彼に教えを乞う。
彼は、まるで予言するかのようにこう言った。
<外からカーリンに併せるんだ。彼女は内からバ群を抜けてくるだろう。そこを外から足を温存した君が、彼女との叩き合いに持ち込む>
カーリンと心中するような作戦だったが、彼は絶対にカーリンは抜けてくると言った。
一度間を置き、彼が言葉を続ける。
<後は君次第だが……アタマ差で君が勝つ。私はそう信じている>
契約はビジネスなどと嘯きながら、私を信じているというこの不器用さ。
思わず私は笑ってしまった。彼の為にも勝とうと言う強い気持ちに溢れていた。
後ろで彼のパートナーが額を抑えていた。彼女はたまにこういう仕草をする。
勝利後のインタビューでも彼はひたすら私だけを持ち上げていた。
私は恥ずかしくて、異議を唱えたくなった。
彼の作戦通りに私は走っただけだ。彼あっての勝利だ。
──そして次戦、問題が起きた。
『おおっと、直線でラグズトゥリッチズがあまり伸びませんが…アクシデントでしょうか。あっとミスターヴェラスが柵を飛び越えました!アクシデントのようです』
レースの途中から足に鈍痛が走り、私は直線で伸びずに二着で敗退した。
ゴールを過ぎ、ゆっくりと足を止めようとするも、そのまま倒れ込みそうになったその時──
<リッチズ!しっかりしろ!すぐに医務室に連れてってやる!!>
──彼が、来てくれた。初めて聞く、彼の必死な声だった。
私を横抱きにしてしっかりと抱え、彼がその高い身体能力で観客を飛び越える。
そのまま医務室を目指す中、彼は怪我をした私を不安にさせないように、ずっと声をかけてくれていた。
<大丈夫だ……走れてたんだ。重傷じゃない、すぐに良くなる……俺が保証する。だから心配するな!>
彼の、本当の姿を見れた気がした。
私の夢を叶えてくれた、優しくて不器用な怪人。
また、彼と夢を追いたい。それが私と、ネル先輩の望みだ──
*****
姉とヤッタの残念コンビの乱痴気騒ぎの翌日である。
酒瓶を抱えたまま寝ていたヤッタは、彼女のトレーナーが迎えに来て回収していった。
何度も智哉に頭を下げてから帰る姿に心底智哉は同情した。
そして姉は現在自室で寝ている。智哉が仕方なく運んだ。恐らく昼までは起きてこないだろう。
今日は学校も休みだろうしダンと朝から遊んでやるか、そう考えていた朝の出来事だった。
「返してよ!やめてよ!!」
「取り返してみろよ!弱っちいダンには無理だけどな~~!!」
「走ってもすぐこけるしなあ!
「やめてよ!のろまって言わないでよ!」
家の前から騒ぐ子供達の声が聞こえる。一人は知っている声だった。
隣の、ダン少年の悲痛な声だった。
すぐさま玄関を開け、現地に智哉が向かう。
そこにいたのは、手を伸ばしてスケボーを取り返そうとするダン少年と、それを囲む年上の少年達だった。
一人は小太りで背が高くダンのスケボーを掲げ、それを取り返そうとするダンを残りの二人が嘲っていた。
智哉を見かけた小太りが、こちらに何やら声をかけてくる。
「最近来た、よそ者だろお前!こんな奴に構うなよ!」
智哉はこの時点で会話をする事をやめた。知らないクソガキに交遊に口を出される筋合いは無いのだ。
高速で三人の前に立ち、それぞれにデコピンを見舞う。
「いでえ!?」
「なんだこいつ速っ…いっだあ!!?」
「や、やめて!いだい!!」
デコピンのショックで小太りの手から離れたスケボーを手に収め、智哉がダンに振り向く。
呆然とした様子でダンは智哉を見ていた。余りにも速い出来事だった。
手でしっしとクソガキ共を追い払いながら、智哉がダンに声をかける。
「ダン、大丈夫か?お前も男だったら、少しは反撃くらいしろよ。悔しくねえのか?」
智哉としては気弱なダンを思っての言葉だった。気弱すぎて心配になっていたのだ。
今もクソガキにいじめられていた。ちょっとは気が強い所を見せないと舐められるぞ、というアドバイスだった。
しかし、ダンはこの言葉を聞いて俯いてしまった。
この言葉に敏感に反応したのは、智哉に追い払われたクソガキ共であった。
「なんだよそ者!知らないのか?そいつ、ウマ娘なんだぜ!馬鹿にされたくなくて隠してるんだよ!」
俯いたままのダンを、智哉は凝視した。
知らない話だった。考えてもいない事だった。
クソガキ共は、智哉の反応に気をよくして続けて囃し立てた。
「そいつ!この辺じゃ有名なんだぞ!
「学校でもいっつも走ってもこけてさ!人間にも負けるんだぜ!」
「名前もずっと前からあるらしいぜ!でもすっげえ遅いんだよ!」
──その時、一陣の風が舞い、ダンの帽子を吹き飛ばした。
綺麗な栗毛の髪が肩まで靡きながら落ち、白い大きな縦長の流星、そしてウマ耳が現れた──
ダンは、ウマ娘だった。
智哉は黙ってもう一度デコピンをクソガキ共に見舞って追い払った。
これ以上続けさせたくなかったからだ。ダンは俯き、力なく座り込んだまま微動すらしなくなっていた。
智哉が頭を掻いてダンを眺める。事情を知らずに余計な事を言ってしまった事でバツが悪いのだ。
「あー…ダン?ごめんな、知らずに余計な事言って」
この言葉に、ダンはようやく動き、ぼそり、とか細く返事を返した。
「くやしいよ」
「……ダン?」
ダンからこぼれた涙の雫が、座ったままのダンの膝に落ちる。
ダンは、ぽつりぽつりと言葉を繋いでいった。
心の底からの、渇望のような声だった。
「さっきのトモ兄の、言葉の返事……」
「くやしいよ、すっごく、くやしいよ……」
「でも、ボク……遅いんだもん!!のろまなんだもん!!」
「すぐにこけて!人間にも負けて!!ばかにされて!!」
「ボク、速くなりたいよ!トモ兄!!
「もう、やだよお……」
魂の、心からの、ダンの哀れな叫びだった。
そのまま、ダンはもう泣き出してしまった。
その姿に、智哉はあの日の、約束した少女の姿を幻視していた。
『わたし!わたしぃ!こんなはやいあしなんていらなかったわ!!』
理由は、全くの正反対だった。フランはその速さに、ダンはその遅さに、苦しんでいた。
姉は怒るかもしれない。
だが、ダンのこんな姿を見てしまって、こんな叫びを聞いてしまって、智哉はもう放ってはいられなくなった。
フランとの、あの日のように。
(姉貴も止めなかったし、これは不可抗力だろ…もうほっとけねえよ、こんなの見ちまったら……)
自分の心がそう望んでいる。この少女の力になりたいと決めている。
智哉が、ダンと目線を合わせて、語り掛ける。
「ダン、聞いてくれ。諦める前に、俺に見せてくれないか?」
「トモ兄……?」
「お前の、走る姿を──」
三女神「お前なんとかしたれや」
1.5部終わったらキャラ紹介必要ですか?アメリカの後にもう一本あるからまだ終わらんけど…
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いる
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いらない
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まだ二部行かないんすか…こいつクソっスね
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キャラ紹介やりたいならレース上等っすよ