トムとフラン   作:AC新作はよ

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こっそりと本筋と関係ない所でフランキーおじさんTSさせたけど……バレてへんし、ええか……。
アンケート置いておくのでよかったら投票してくれるとうれしいんやで。
三つ目と四つ目もいるでカウントするやで。


第九話 巨神の、行進

ダンが初めてターフを駆けてから、一か月が経っていた。

今日も智哉と姉に連れられ、ダンは芝コースでその強烈な推進力を発揮している。

持ち前の天性の脚力で無理矢理減速し、芝を削りながらダンが智哉の目前でピタリと停止する。

 

「ねえトモ兄!どうだった!?」

「大分走り方も様になってきたな、タイムも上々だぞ。ただもうちょっとペース配分は意識しようぜ」

「えー!だって走るの楽しいんだもん!」

 

気弱で大人しい少女だったダンは走る事の楽しさに気付いてから、その生来の天真爛漫な快活さを取り戻しつつあった。

この娘の変化に大喜びしたのがダンの両親である。

事情を聞いた両親は智哉と姉の元を訪れ、感謝の気持ちと今後も娘の指導をお願いしたいと伝えに来たのだ。

こうして智哉は両親公認でダンの指導ができるようになったのである。

姉はヤッタが冷蔵庫に入れて行ったギネスビールをがぶ飲みした。

ダンの両親は蹄鉄とシューズの料金を支払おうとしたが、智哉が固辞している。

自分がダンの走る姿が見たかったから、と伝えたのだ。

この青年の誠実な姿勢にダンの両親は感心しきりであった。

 

「トモ兄の教えてくれたこの走り方すごいよ!全然転ばなくなった!ブレーキもできるようになったし!」

「おう……まさかこんなにダンに合うとは思わなかったけどな」

 

智哉が試行錯誤した結果生まれたダンの走法は、元からそうであったのかのように彼女はすぐに習得した。

足の裏の中心で地面を踏み込み、その強烈な脚力での地面との反発で一歩一歩、推進力を得る。

そして下半身はそのままに上半身の姿勢制御で速度調整を行う。

智哉の身を以て試した結論通りに、ダンは自分の為に編み出された走法を完全に自分のものとしていた。

ダンのタイムを眺めた智哉が舌を巻く。

たったの一か月で、彼女が同年代の相手にターフで負ける事は無いと確信する程の数字を示していた。

 

「こりゃマジですげえわ……あと二か月でどこまで伸ばせるかだな」

「二か月?」

 

智哉の独り言にダンが反応する。

 

「ああ、その辺りから仕事が忙しくなるんだよ。こっちには帰ってくるしその時は勿論見てやるけど、今みたく毎日は難しくなるな……ごめんな」

「そうなんだ……ううん、トモ兄はボクの恩人だし、そんなワガママ言えないよ」

 

ダンがこの智哉の返答に耳を垂れさせる。

この一か月で自分を変えてくれた、夢を与えてくれた魔法使いのような隣の青年。

元々優しくて密かに憧れていたのに、のろまと馬鹿にされていた自分を助けて、走る楽しさ、ウマ娘の本能に目覚めさせてくれたこの青年をダンは心から慕っている。

無理は言いたくないが、それでも寂しいという気持ちが耳に出てしまっていた。

そんなダンの頭にそっと智哉の手が置かれた。条件反射である。

フランと重ねて見ているダンの落ち込む姿を見て、フランにしているように頭を撫でようとしたのだ。

 

「……っと、悪い」

 

慌てて智哉が手を引っ込める。

ダンの後ろにいる人物からのとてつもない殺気を感じたからである。

その智哉の手を、ダンが残念そうに眺める。

 

「あっ……」

「そ、そうだ!練習の続きやろうぜ!な!」

 

智哉が嫌な汗をかきながら話を全力で終わらせにかかる。

命の危険を感じているのだ。

これは肘鉄だけでは済まないという危惧があった。

しかし、ダンには以前から聞きたい事があった。

智哉の職業である。まともに働いているようには見えない。

本人から仕事の話が出た事もある。聞くには良い機会だった。

 

「……トモ兄のお仕事ってなに?」

「あ、あー………それはな……」

 

智哉が目線をダンの後ろの人物に向け、姉弟のアイコンタクトで言ってもいいか?と確認する。

先ほど殺気を送っていたのは姉であった。

そして、現在は手で小さく×印を作りながら顔にメイドの如く青筋を浮かべている。

全身で「言ったら殺す」と語っていた。智哉の顔が蒼白になる。

 

「あ……姉貴の……ま……マネージャー」

「えっ!?そうなの!?マネージャーとかあるんだ」

 

無い。口から出たでまかせである。

しかしこれに姉は乗るべきだと考えた。

 

「そうなのよーダンちゃん!こいつ仕事でよくトレーナーとも関わるから、多少はそういう真似事もできるのよ。本物に比べると全然だけどね」

「え……えーそうかなあミディ姉……トモ兄すごいと思うけど……」

 

ダンの反応は芳しくなかった。近所の嫌なトレーナーを知っているからだった。

この反応を見て、姉は愚弟に参戦しろと弟にだけわかるように睨みつけた。

姉弟のアイコンタクトである。殺気を感じた智哉は、すぐさまその命令に従った。

 

「た!たまたま!たまたまだよ!俺が適当に考えた走り方がダンに合っただけ!そう!きっとそうだ!!」

 

必死である。先日姉の恐怖を思い出した弟は、保身とトレーナーとしてのプライドを天秤にかけるまでもなかった。

ここでダンはある事を思い出した。智哉とスケボーで遊んだときの事である。

 

「でもトモ兄、ヴェラスさんとは会った事ないって……ミディ姉のマネージャーさんなら会ってるんじゃないの?」

 

姉が笑顔のまま、智哉に向けている横顔の部分だけ青筋を浮かばせる。器用である。

「お前どういう事だよ、後でジャーマンな」と視線で射殺しに来ていた。姉弟のアイコンタクトである。

智哉は冷や汗をかいた。このままでは本気で殺される。

「待ってくれよ姉貴、もう一度だけチャンスをくれよ」と視線で命乞いをした。姉弟のアイコンタクトである。

 

「あ、ああそうだ!俺はライブの方のマネージャーだからさ!トレーナーとはあんまり関わらなくて……」

「……ミディ姉の言ってる事とちがうよ?」

 

明晰な頭脳が死の恐怖で全く働いていなかった。墓穴を掘ったのである。

智哉はすかさず「すいません命だけは助けてください。フランとの約束があるんです」と命乞いをした。姉弟のアイコンタクトである。

姉からの返答は「フランちゃんに免じて命だけは助けてやる、命だけはな……」であった。姉弟のアイコンタクトである。

全く当てにならない弟に代わり姉が出陣した。

こういう時は無理矢理話を締めるに限るのだ。ダンの気を引くネタも丁度あった。

 

「まあまあダンちゃん、それよりもさ……明日の事考えようよ」

「う、うん……気になるけど……」

 

 

 

「──ダンちゃんの初めてのレース、頑張らないとね」

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

翌日である。三人はいつもの芝コースのある施設で本日行われるアマチュアレースの会場に来ていた。

施設で定期的に行われているレースである。

腕試しに来た者、純粋に競走を楽しみたい者、それぞれの目的を持った地域のウマ娘が集まってきている。

登録は窓口で行い、年齢と競走歴、そしてダートか芝かの希望を伝え、運営側が出場枠を決める形となっていた。

 

「第三レース……16バ……8枠16番……」

 

ダンは絶望していた。初めてのレースで完全な外れ枠である。

レース未経験のダンは同年代と同じレースに組み込まれた。

周りを見ても自分より速い子ばかりに見える。不安であった。

 

「大外か。まあ大丈夫だろ」

「バ群慣れしてないダンちゃんにはむしろ丁度いいかもね」

 

姉と智哉は全く心配していなかった。

むしろバ群に呑まれた方が、ダンにとっては不利だとすら思っている。

不安そうなダンに、智哉が声をかける。

 

「いいかダン?俺がゴール前にいるから、手を挙げたらスパートの合図だ」

「う、うん……」

「心配すんなって。ここにいる中だとお前が一番速いぜ」

 

智哉に背中を押され、ダンがゲート前に向かう。

そんな二人を、会場の観客席から眺める三人組がいた。

ダンをいじめているクソガキ共である。

その内の小太りは地元の数少ないトレーナーの息子だった。

地元のレースで有望株を見に来ていたのだ。

 

「あれっ!あいつのろまな(スチューピッド)ダンじゃないか?」

「あ、ほんとだな。あいつレースに出るのか!?」

「どうせドベだろ。あのよそ者も気に入らねえしゴールで笑ってやろうぜ!」

 

そう言って三人組はゴール前に移動する。

一方、準備が整ったダンがゲートに入る。

近くで姉が見ていてくれて、ゴール前には智哉がいる。

不思議とこれまでの不安がなくなっていた。

いざ走るとなり、自分でも信じられない程に心が落ち着いていた。

 

(何でだろ……?すっごく走りたい。ワクワクする)

 

ダンの天性の素質、競走バとなる為に生まれてきたような気質が、初めてのレースで開花しつつあった。

ゲートが開く、その直後ダンは飛び出した。体が自然と動いていた。

 

(あれっ、流してるのに前にいる……?)

 

ダンは智哉より中団で待機という指示を受けており、ペースを落として走っているつもりだった。

しかしその落としたペースで先団にいた。ダンには訳が分からなかった。

 

「いける!」

「いけるー!」

 

ダンより前にはもう二人しかいなかった。

その二人が意気揚々と声を上げ、ゴールを目指しぐんぐんとペースを上げる。

しかしそれでもダンは速いと感じなかった。

智哉の教え通り、体を倒してコーナーを曲がり、最終直線に入る。

ゴール横の智哉に目を向ける。

その手が、上がった。

 

──小さな巨神は、その天性を開放した。

 

まず、異変を感じたのは前の二人であった。

後ろから、ずしん、と何かを踏み潰す音が聞こえ、振り返る。

音の正体はターフを抉り、一歩踏み出す毎に速度を上げる。

二人は恐怖を覚えた。

その気弱そうな印象と、その脚が地面から立てる音がかけ離れていた。

恐ろしいものを見たような表情の二人の横を、地面を踏み鳴らしながらダンが通り過ぎる。

 

「むりー!」

「音が怖いよー!!」

 

観客が歓声を上げる。こんなアマチュアレースでは滅多に見れないぶっちぎりの独走であった。

 

「なんだあの子は!?」

「すごい速さだ!地面を踏む音がここまで聞こえてくる……」

 

ダンの前にはもう誰もいない。そのまま一着でゴールに到達する。

まさに、蹂躙であった。ダンがその脚をもって全てを踏み潰したのだ。

 

「えっ、もう終わり……?」

 

ダンは、レースを夢中で楽しんでいた。

終わって寂しさすら感じている。

そこに、智哉が近付いていく。

 

「なっ、言った通りだろ?一着だぞ、ダン」

「ボクが、一着………」

「おめでとーダンちゃん!すごかったわよ」

 

スタート地点にいた姉も合流し、ダンを祝福した。

ダンにようやく、初レースでの一着の実感が湧いてきた。

涙は流れなかった。終わった寂しさももう無かった。

 

「や………やったあああああああ!!!!」

 

去来したのは、喜び、歓喜であった。

のろまな(スチューピッド)ダンは、初めて自らの脚で一着を勝ち取ったのだ。

隣の青年、謎の魔法使いの手によって──

 

 

 

 

 

 

 

「パパ!聞いてよ!近所のダンってやつ、芝だと速かったんだよ!!」

「今度のクレーミング、何とか連れてくるからパパがスポンサーになってよ!!」

「オレの契約相手にしたいんだ!!頼むよ!!!」

1.5部終わったらキャラ紹介必要ですか?アメリカの後にもう一本あるからまだ終わらんけど…

  • いる
  • いらない
  • まだ二部行かないんすか…こいつクソっスね
  • キャラ紹介やりたいならレース上等っすよ
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