今年(2022年)のサウジカップでは産駒が勝ちました。
wikiで読むだけで引くレベルの気性難だけど……。
主人公の出番はここから一気に減るけど許して…。
代わりにタイトルの人が頑張るから……。
主人公の容姿はその内ちゃんと書きますが気になる方は「剣の街の異邦人 フリーマン」あたりで画像検索してみてクレメンス(完全にこのイメージで書いてる)
サラトガレース場──世界的に有名な避暑地として知られる高級リゾート地、ニューヨーク州サラトガ・スプリングズにある100年以上の歴史を持つ高名なレース場である。
歴史の長さに伴い数々の呼び名を持つが、その中で特筆すべきは「本命ウマ娘の墓場」であろう。
このレース場で大本命ウマ娘が番狂わせで沈んだ事例は数知れず、かの大統領候補も三冠ウマ娘であった現役時代に、この地で大本命の中敗退している。
そのような逸話を持つサラトガレース場に併設されたサラトガカレッジの正門前には現在、ニューヨークの競バ新聞関係者ならびに数多の報道陣が詰め掛けていた。
ここに現在滞在中の、今年のフロリダダービーウマ娘の休養明け初練習が本日行われる。
しかし彼らの目的は彼女ではない。
彼女の担当トレーナーである現在アメリカを騒がせている怪人トレーナーが、数カ月ぶりに公に現れるのを待っているのだ。
「あの車か?」
「ああ、彼が乗っている。間違いない」
報道陣の前に、チーム・カルメット所有のマークが付いたコンチネンタルと呼ばれるセダンタイプの高級車が停まる。
そこから降りた人物は、一見余りにも不審な覆面の男であった。
トレードマークの黒い中折れ帽に、中央に流星の如きラインが入り、目の部分にメッシュの入った黒い覆面、そして今日は夏の気温を考えてかトレンチコートは着ておらず黒いベストにネクタイ姿であった。
アメリカ競バ界に突如現れ、初年度から偉業を残し続けている怪人トレーナー──ジョー・ヴェラスと呼ばれる男である。
<空港からここまでありがとう。これはチップだ>
「いや仕事ですから!キャプテンからは貰えませんよ!」
<もう渡した。受け取りたまえ>
「…いつもありがとうございます」
空港からカレッジまでの送迎を受け持ったチームのサブトレーナーに、律儀にチップを渡す怪人。
渡米当初の彼は、その胡散臭すぎる風貌によりチームからも敬遠されていた。
しかし裏方含むチーム全員への気配りや労い、用具の準備や練習場の片付け等のサブトレーナーの仕事も積極的に手伝い、時には勝利インタビュー時に名指しで感謝を述べる等の真摯な態度で信頼を勝ち取ったのだ。
現在の彼はチームの誰からもトレーナーの鑑と尊敬され、親愛を込めてザ・キャプテンとまで呼ばれている立場にある。
サブトレーナー陣からは彼の仕事に関わりたいと熱望する声がチーフに寄せられている。
女性陣のサブトレーナーからも彼に秋波を送る者が多い。
その風貌よりも行動、態度で示す彼を好み、慕う者は多いのだ。
そんな彼に報道陣が詰め寄り、それを怪人が手で制する。
制止に従い、報道陣が怪人を取り囲んだまま距離を保つ。取材を断る訳ではない。
報道陣もそれを知っているのだ。
<今日は一社につき一問ずつお答えしよう。すまない、時間は余り用意できなくてね>
怪人はこのように、必ず取材に応え真摯に質問に回答するのである。
一社につき一問という返答を受け、報道陣がそれぞれ何を聞くかの協議を始める中、一人が先陣を切った。
「デイリーレーシングです。ミスターヴェラス、クオリティロードの復帰初戦についてはお考えですか?」
<今日の練習で調子を確認してからになるが…おそらく来月のアムステルダムステークスになるだろう。故障箇所も考慮すると長い距離はまだ早い>
「ありがとうございました」
長い歴史を持つアメリカ屈指の競バ新聞の記者が、怪人の回答をしっかりと記憶する。
アムステルダムステークス──ここサラトガレース場で施行されている、クラシックウマ娘によるダート6ハロン(約1200m)の競走である。
彼の担当である
彼女は
この質問に、地元の競バ新聞の記者がメモに斜線を引きつつ手を挙げた。
大手が聞きたい情報を聞いてくれた為、もう一つの質問に切り替えたのだ。
「ニューヨークレースタイムズです。ミスターヴェラス、クオリティロードの中距離挑戦のプランは?」
<予定はあるが、まず復帰戦を勝ってからの話になるな。彼女なら距離延長しても問題なく思っている。ただし現在の中距離戦線はサマーバードにブレイムと有力ウマ娘揃いだ。ハードなレースになるだろう>
「ありがとうございました。彼女ならきっと勝てますよ!」
<ありがとう、私もそう信じている>
記者の露骨な世辞にも丁寧に応対する怪人に、カメラマンを従えたウマ娘アナウンサーがマイクを向ける。
彼女達は競バ関係者ではない。怪人本人に興味を持つテレビスタッフである。
「NY1です。怪人さん!世界的な大女優であるタマティーヌ・モリーとの対談が打診されたとの噂ですが!?」
<本当だが、断らせてもらったよ。私はただのトレーナーだ。住む世界が違う>
「ありがとうございます!残念ですぅ……」
怪人と親しい人物にもファンがいる大女優との対談を、怪人は打診されていたが固辞していた。
端役の悪役からキャリアをスタートし、どんな仕事も全力で挑む事にされてしまったその真摯な姿勢で、世界的な名声を得た有名な大ウマ女優である。
そして
日本のトレセン学園からも強い後押しを受けていた企画であった。
断った事を聞いた怪人と親しい人物も、これについてはとても怒っている。楽しみにしていたのだ。
続いて地元のゴシップ紙の記者が手を挙げた。ウマ娘関連の下世話な話題を得意とするタブロイド紙である。
「ウマロイドです。ミスターヴェラス、パートナーはしばらくケンタッキーにいたそうですが、そこにあなたはいませんでしたね?彼女とは深い仲なのは公然の秘密ですが、今は不仲なんでしょう?」
<………………そんな事は無い。私と彼女は良好な関係を築いている>
長い沈黙の後に、絞り出すように怪人は回答した。
苦しそうな返答であった。勘弁してくれよと遠回しに言いたい様子であった。
この返答の言葉の裏を読んだ記者が、満足げに引き下がる。今日の一面を決めたのだ。
続いてサブカルチャーを専門とする雑誌の記者が手を挙げる。
「ウマタイプUSAです。ミスターヴェラス、ウマーベル社があなたのコミカライズを行いたいという話を聞きましたが……」
<期待に添えなくてすまない。私はヒーローという柄ではないのでね、ありがたい話だが断らせてもらった>
この返答に周囲の記者達がナイスジョークとばかりに笑い声を上げた。
怪人はこのヴィランのような風貌とは真逆に、その高い身体能力で人助けを何度も行い、レース場でも幾度もその力で怪我をしたウマ娘の救急対応の姿を見せている。
更にその余りある賞金をウマ娘孤児院に寄付し、自らも慰問している篤志家でもあるのだ。
現在の担当がレース後に自分で止まれないのを受け止める姿は、最早一種のパフォーマンスである。
アメリカのウマ娘達は、そんな力強い男である彼にたちまち夢中になった。
ウマ娘と渡り合える身体能力に紳士的な物腰、今までにいないタイプの男な上に、惚れた男と併走したいというのはアメリカ全土のウマ娘の願望である。
アメリカはその成り立ちによってやや女尊男卑の風潮がある。その中で突如現れた男のヒーローが彼なのである。
男達の希望であり、お茶の間、そしてレース場に足を運ぶウマ娘達を魅了し続ける存在なのだ。
彼の素顔はブックメーカーの賭けの対象となっており、政界でも現大統領ノーザンダンサーが「彼の素顔と大統領の椅子を天秤にかけられたら、迷わず彼の素顔を選ぶだろう」と断言している。
──そんな事実を全く知らない怪人は、ただ首を傾げるばかりであった。
*****
「んしょ、んしょ……」
『クオー、まだか?』
(ロードちゃん、もうちょっと待って)
サラトガカレッジのダートコースの端、長い前髪で目が隠れた小柄なウマ娘が一人で瓦を積んでいる。
身長は150cm前後、大きな耳とそれを飾る青が点灯した信号機の耳飾り、その腰まで伸ばし、目を隠すように垂らした艶のある黒髪、鹿毛のふさふさの尻尾が特徴的なウマ娘である。
彼女の名はクオリティロード。そして彼女はクオと呼ばれている。
「これで…30枚、できたよロードちゃん!」
クオが瓦を綺麗に30枚積み上げたと同時に、彼女の様子が変わっていく。
前髪をかき上げ、その大きな垂れ目がちな目元が鋭く釣り上がり、いつもはへの字を保った不安げな口元がニヤリと弧を描く。そして耳飾りの信号機が赤く点灯する。
彼女はたった今、その様相を大きく変化、いや全く別の人物に代わったのだ。
「ッシャアーーー!!待ってたぜェ!!この
彼女はもう一人のクオリティロードである。彼女はロードと呼ばれている。
ロードが飛び上がり、瓦を手刀で根こそぎ叩き割っていく。
が、残り一枚でその勢いが衰え、止まった。瓦割りトレーニング失敗である。
「アア!?なんで割れねェんだよ!!?ナメてんのか!?コラァ!!!!」
『ロードちゃんが折角割ってくれたのに何で割れないの瓦さん!!!ゆるさない!!!!』
彼女は二人で一人のウマ娘なのである。
物心ついた頃から互いを知っており、互いに理解し合う最も近い同居人であり、同じ体を分けた姉妹なのだ。
二人とも方向性は違うが気性難である。一人で二倍おいしい気性難なのだ。
「しゃァねえ、次はクオやるか?」
『うん!クオが粉々に叩き割ってみるよ!!』
今度はロードが瓦を重ね始める。
対等な関係の二人は片方が練習の準備をし、もう片方がそれを実行するのである。
重ね終わるか、という所でロードに声がかけられた。
<……私が来るまで練習は始めるな、と言ったはずだが?>
現れたのは彼女の現在の担当である、怪人トレーナーであった。
この信頼する怪人の登場にロードが直立し、頭を90度しっかり下げた。
「シャッス!トレーナーサン!!ご無沙汰っス!!」
『あーロードちゃん!頭下げたらトレーナーさんが見えないよ!!見せて!!』
(バーロー!アイサツは大事だろうが!!)
脳内で喧嘩を始める姉妹を見て、怪人は現在どちらかを察した。
扱いやすく、よく言う事を聞く方である。
<今はロードのようだな?瓦割りはまだ早い、今日は足の様子を見てから軽く併走までだ。それ以上は悪いが認められない>
「ええ~やっと練習っスよ!いても立ってもいられねェっス!」
『ロードちゃん代わって!!トレーナーさんとお話させて!!!!』
ロードの脳内でクオが喚き倒す。この怪人と組むために周囲の目を欺き続け、契約が決まるまでロードに体をずっと譲っていたのだ。
初めて見た時から目を奪われたトレーナーと話したくて堪らなかった。
「あ~うるせェ!トレーナーサン、クオがずっと代われってうるせェんスけど……」
<……その前に足を確認したい。ロードのままでいてくれ>
「りょっス。右足の裏っスね」
ベンチに腰掛けたロードが、シューズと靴下を脱ぎ、足の裏を怪人に見せる。
彼女の故障箇所である。レース中に勝負鉄が割れ、踏み込んだ際に足の裏に大きなダメージを受けていたのだ。
その足の裏をじっくりと怪人が観察する。
一見では完治したように見えるため、触って骨の状態も確認する。
「うっひゃ!くすぐったいっスよトレーナーサン!」
『ロードちゃんずるい!!!!!代わってよ!!!!!代われ!!!!!』
(うるせェよ!この後代わるから待ってろ!!!)
脳内で更に喧嘩を続ける姉妹であるが、ここでクオの声色が変わった。
姉妹にやらせたい事があるのだ。
『ロードちゃん、トレーナーさん今隙だらけだよ?マスク、取ってみない?』
(バーロー、そんな事できっか!!)
『……ロードちゃんも、トレーナーさんの事嫌いじゃないよね?取ってさあ、それをネタにずっと契約を迫れば……その先もあるよ』
悪魔の囁きであった。ロードがごくりと唾を呑み込む。
目の前の、真剣な様子で自分の怪我を見てくれる、信頼するトレーナーを凝視する。
今はこちらに注意を向けていない。確かに隙だらけであった。
(その先……その先かァ……)
『うん!うん!そうだよロードちゃん!クオと、ロードちゃんだけのトレーナーさんにすればいいんだよ!!』
悩んだ末に、ロードはクオの囁きに乗った。乗ってしまった。
ゆっくりと、くすぐったがるように手を覆面へ伸ばす。
もうすぐ、手が触れる。
「何やってんの?ロードちゃーん?」
しかし、そこで後ろから肩を強く掴む何者かが現れた。
途端にロードが大量に冷や汗をかき出す。
怪人のパートナーであり、会ったその日に因縁をつけ、締められた一番恐ろしい存在のエントリーであった。
「あ、姐御…………ご無沙汰っス………」
『チッ、やっぱりいたか』
この様子に怪人のパートナーがため息を付く。
一度締めて舎妹にしたから大丈夫のはずが、その裏でもう一人厄介な相手がいる事を知ってからはこういう攻防が多いのである。
パートナーは若干自分の選択を後悔しつつあった。
このパートナーに怪人がようやく気付く。故障の確認に集中しすぎていた。
<…ああ、来ていたのか。まだ謹慎中だろう?>
「練習再開くらいは良いでしょ?ロードちゃんの相手もやってもいいわよ。ね~ロードちゃん?」
「こ、光栄っス姐御!!シャッス!!!」
故障の確認が終わり、立ち上がった舎妹がまた90度頭を下げて感謝を述べる。
姐御の命令は絶対という躾が行き届いていた。
<……故障は大丈夫のようだ。復帰戦は予定通りだな>
「マジッスか?やったぜ!!」
故障は、完治していた。これを聞いたロードが諸手を挙げて歓喜する。
<アムステルダムステークス、出走するぞ>
クオリティロードはマジでイケメンなので気になったら画像検索してみてね!
たてがみがかっけえんですよ。
1.5部終わったらキャラ紹介必要ですか?アメリカの後にもう一本あるからまだ終わらんけど…
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いる
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いらない
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まだ二部行かないんすか…こいつクソっスね
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キャラ紹介やりたいならレース上等っすよ