トムとフラン   作:AC新作はよ

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遅くなってごめんよ。回想部分で悩んでたり資料届いたから読んだりしてました。
更新ペースはなるべく最低週三は守っていこうと思ってます。次更新は火~水くらい。
活動報告とか使った方がええんやろか…。


第十三話 怪人と、怪物

八カ月前──十二月の英国、ロンドン郊外のクラブハウスにて

 

「もういっぺん言ってみろトレーナーサンよォ…姐御の紹介だろうが、アンタがスゲエトレーナーだろうが!!それだけは聞き捨てならねェなァ!?」

 

未勝利戦(メイドン)での勝利後すぐ、ここへ連れて来られたクオリティロードの片割れであるスケバンウマ娘のロードは目の前の怪人と、彼のパートナーに紹介されたこのクラブの経営者でもある心療内科医のウマ娘へ激昂していた。

聞き捨てならない言葉が、怪人から放たれたのだ。

 

「突然英国へ連れて来て何かと思ったらよォ!主人格がどうとかワケのわからねェ事言いやがって!!アタイとクオでクオリティロードだ!!それ以外には何もいねェんだよ!!!」

『……どうしてわかったのかな、トレーナーさん』

(黙ってろクオ!!お前(・・)も出てくンじゃねェぞ!!)

 

ロードは強い決意の元、目の前の二人へ吠える。

知られる訳にはいかない姉妹の秘密、もう一人を守るために。

 

「ジョー君、私が話すわ」

<か……サマー女史、私に任せてほしい>

 

この怪人の言葉に、怪人の隣の人物が頷いて返す。

本来は、ロードの診察をしたウマ娘医師の職分だった。

しかし怪人がロード、そしてその心の中の二人と向き合いたい気持ちを酌んだ。

事情を知る彼女は、彼に必要な事だと知っているのだ。

 

<ロード、クオ、それと仮称になるが…きっと君はリティと言うんだろうな>

 

この言葉に姉妹と比べ、隠し事が苦手なロードの顔が歪む。

本来の体の持ち主の名前まで当たっていた。

 

「うるせえ!そんなヤツはいねェ!!!」

『ねえ、ロードちゃん…トレーナーさんの話だけでも聞こうよ』

(クオは黙ってろって言っただろ!!コイツには、コイツを守ってやれるのはアタイ達しかいないんだぞ!?)

 

怒りを露わにし、怪人にロードが噛みつく中、クラブハウスの扉が開いた。

入ってきたのは、鮮やかな金髪に小ぶりの耳、そしてその耳にピンクの星のポイントがついた、水色の耳飾りが特徴的なウマ娘の少女だった。

 

「トム!おかえり……あら、ジョーなのね。ご機嫌よう、ジョー」

<やあ、フランケル。すまない、今は大事な話をしている>

 

ロードがフランケルと呼ばれたウマ娘の少女、恐らくクラブの関係者に目を向け、一瞬唖然とする。

ウマ娘基準でも美しい、目を引く容姿の少女だった。

 

『ふえ~綺麗な子だねえ』

(だよなァ…どっかのお嬢様だろこれ。本場のガチのお嬢様かァ…)

『本場のお嬢様って何ロードちゃん…』

 

ロードは三人の中で、母性と乙女の部分の担当である。

こういうお嬢様に多少の憧れがあった上での、ピントのずれた感想であった。

 

「…ねえ、ジョー?これだけ聞かせて頂戴。トムは?どこに行ったのかしら??」

<………トモヤ君は、しばらく戻ってこれない。おそらくいつも通り………どこかに遊びに…………行ったのではないかと………>

「そうなの??ふう~~~ん」

<あ、ああ、そうなんだ。彼はそういう所があるからな。仕方ないだろう?>

 

フランが渦を巻く目を怪人に向け、それを見た怪人が言葉をこれでもかと濁しながら、言い訳めいて彼のパートナーの弟、チームのお荷物の行き先を告げる。

 

「仕方ない子ねえ、本当に…ねえ、ジョー君?」

<そ、そうだな!全く彼には困った物だ。フランケル、仕事がある。彼には私からきつく言っておくから……>

 

くすくすと笑いながらサマー女史が怪人に語りかけ、それに怪人がしどろもどろに同意し、フランに退室を促そうとする。

これを聞いてロードは加勢に入った。

勿論お近づきになりたいお嬢様に、である。

 

「そうだ!アイツ急にいなくなりやがって!先にこっちに来てた姐御は、アイサツしたら突然宅飲みするって言い出すしよォ!姐御とチームに迷惑かけてる自覚あんのか?アイツ」

 

ここまでの案内を受け持ったチームのお荷物は、もうここにいない。

怪人が来るまでに診察を受けろとロードに告げ、用事があると出て行ったきりである。

 

「……トムの事を悪く言うのはやめて頂戴」

「えっ…ス、スンマセン…」

 

加勢したつもりが怒られた。八つ下の幼女に。

おっかしいなと頭を掻くロードを見たフランが、首を傾げる。

勢いで叱ってしまったが初対面の相手であった。

 

「…あら、お客様かしら?ごめんなさい、ご挨拶もせずに…」

「こ、これはご丁寧に…ア、アタクシ、クオリティロードと言う者でして…」

『ロードちゃん、無理しなくていいから……』

(うっせェなあ!アタイもこういうアイサツしてみてェの!!)

 

脳内でクオのツッコミに反論しながら、ロードがフランに自己紹介する。

この自己紹介にフランが反応する前に、怪人が注釈を加えた。

 

<彼女は、私が契約している相手だ>

「………………まあ!そうなのね!ロードさん、わたしはフランケルと言います。フランと呼んでいただけるとうれしいわ」

「おう!よろしくなフラン!こんなお淑やかなお嬢が、トレーナーの知り合いにいるとはなァ……」

『…ロードちゃん、今日はロードちゃんのままでいいよ』

 

怪人の発言に一瞬、フランの目の光彩が渦を巻いたのにロードは気付かず、クオは気付いた。

クオは三人の中で打算的な腹黒かつ女の部分担当である。

挨拶までの間の取り方、その後のにこやかな笑みを浮かべながらの自己紹介も、この年齢の幼女とは思えぬ末恐ろしい何かを感じたのだ。

 

(いいのか?クオはトレーナーサンと仲良くしてェんだろ?)

『ロードちゃんもトレーナーさんも、なんでわからないの…この子、すっごくコワいと思うよ…』

(そうかァ?良い子だと思うけどなァ)

 

このクオの発言に疑問しかないロードだったが、このお嬢様と仲良くなるチャンスである。

この英国滞在の間、女子力が高いと自負するロードがさらに自分を磨く良い機会であった。

 

「いやァ、トレーナーサンにいきなり英国に行くぞって言われた時は何だと思ったけどよォ、フランみたいな子がいるなら一ヶ月の合宿も悪くねェなァ」

「…………一ヶ月??」

『ひい!』

「おう!一ヶ月ここに世話になりながらよォ、トレーナーサンの指導で次走の特訓すンだよ」

 

この発言に明らかにフランの様子が変わり、クオがビビり、サマー女史が可愛く苦笑いを浮かべた。

なおロードは気付いていない。

そしてフランがゆっくりと、怪人にしか見えない位置で顔をそちらに向けた。

目が、青い光を帯びながら渦巻いていた。

 

「……ジョー、そうなの?トムは?」

 

言葉と表情は、あくまでもにこやかに、優しく問いかける声色であった。

流石に怪人も事態に気付いた。

二年前のある時から、時折見せるフランの怖い部分が出てきているのである。

こうなると愚かな怪人は勝てない。

 

<…あ、ああ、先程も言ったように、トモヤ君はなかなかこちらには来ないかもしれない。私がここで彼女の指導を行い、次走までの課題をクリアする予定だ。どうしても必要な事だからな…>

「ジョー、わたしは、トムと、会いたいの」

<……私がいるだろう。彼の代わりに君の練習も勿論見るとも>

「一緒に、観たい映画も、たまっているの、タマティーヌの新作よ」

<わ、私が代わりに観よう……>

 

一語ずつ区切りはっきりと強調しながら、聞き分けの悪い子供に言い聞かせるように語るフランに、怪人が弁解するように返す。

クオとロードには衝撃的な光景であった。

アメリカで早くも名トレーナーの仲間入りをした有名人が、遥かに年下であろう少女に気圧されているのだ。

 

(姐御の弟よォ……こんな子に慕われてンのにどっか行きやがったのかよ。最低のヤローだな)

『………そういう事なんだ………良いね、もっと良い』

(ん?クオ、何がそういう事なんだ?)

『ううん、こっちの話』

 

このやり取りを聞いたクオが何かに気付いた。ロードは何も気付いていない。

フランが怪人の弁解を聞き、耳をしなだれさせた。

怪人、そして約束をした相手が大事な仕事をしているのは知っているし、その中で活躍しているのも誇らしい。

しかしフランはまだ八歳の少女である。要するに寂しいのだ。

特に、去年の事もあった。

 

「……きょねんは、かえってこなくて、ことしはこうなるのね」

<……フラン>

 

去年、一年目のシーズンは怪人にとって正に激務であった。

イングリッシュチャネルとの専属契約、そして並行してラグズトゥリッチズ、オクターヴ、ローヤーロンとの短期契約、その全てで彼女達を勝たせる必要があった。

年末にも彼女達へのアリバイが必要だと言うチーフの謎の提案により、その相手を探すために奔走した。

結局相手はすぐに見つかった。丁度ゆするネタと貸しがあったのだ。

一時期など、ほとんどチームを持っているような状態であった。

彼ならそれくらい余裕という、とある怪人の伝手の酷いアドバイスをチーフが真に受けたのが原因である。

アメリカ競バはクラシック三冠等の主要競走は短い期間で行われ、シーズンの〆としてトレーナーズカップが行われる。しかし一月からも重賞や未勝利戦(メイドン)等は行われており流動性が非常に高い。

管理バの次走予定次第では、複数を受け持つトレーナーは一年中働く羽目になる事もあるのだ。

激務である。一年目の怪人が正にそれであった。そうして、彼は帰国できなかったのである。

フランもその話は聞いていたが、会えなくてショックを受けていた。

そうした経緯で、今年の帰国は契約相手の未勝利戦(メイドン)と次走の為に、一カ月の短い帰国だが楽しみにしていたのだ。

くすん、とフランが少しだけ鼻声になり、その目に涙を貯める。

 

「おしごとが、たいへんなのはしっているわ。でも、わたし、トムのおかおがみたいの」

 

フランのこの様子を見て、怪人の胸が痛み、言葉を詰まらせる。

怪人は、彼女の為に平地トレーナーになったのだ。その彼女を悲しませては、何の意味も無い。

 

<………必ず、時間を作らせよう>

「………うそつき」

<嘘は付かない。私が約束しよう。トモヤ君をここに連れて来る>

「ほんとうに?」

<本当だとも。信じて欲しい>

 

怪人が目線をフランに会わせるように屈み、普段は外さない手袋を外してその目の涙を拭う。

フランはその手をそっと両手で触れた。

サマー女史は「ロードちゃんがいるのに、いいのかしらこの子達……」と可愛く嘆いた。

今日は娘と酒盛りである。

 

「信じるわ、ジョー」

<……ありがとう、フラン。すまないな>

 

この様子、優しい怪人の姿を見たロード、そして心の中の二人は怪人に惹かれる何かを感じた。

自分達にもこんな人がいれば、いやこの人ならば、話してもいいかもしれないと感じていた。

 

『ねえロードちゃん、やっぱり話そうよ?それにクオの予想通りだと、トレーナーさん超優良物件だよ?』

(……優良物件とかはわかんねェけど、考えてもいいかもなァ。でもあくまでリティが望めば、だぜ?)

 

ロードとクオ、そして三人目は喧嘩をする事もあるがあくまで三人目が主人格であり、姉妹は三人目を守る事を徹底している。

その為に三人目から二人は生まれたのだ。

ロードの問いかけに対し、心の奥から声が響いた。

 

『会う、よ……』

(リティ、いいんだな?)

『うん、トレーナーさん、良い人』

 

主人格が、決断を下した。

姉妹は、従うのみである。

 

「トレーナーサン、取り込み中わりィんだけど、さっきの話……」

<……あっ!ああ、先程の話だな、私の話を聞いてもらえるだろうか?>

「いや、もういいぜェ?決まったんだよ」

<……やはり、駄目だろうか>

 

 

 

 

「逆だよ、紹介するぜ?──三人目」




アメリカ編終わってからになるけど、プロット組んでる時点で没にしたIFルートとかも一話だけ書いてええやろか…選抜戦の朝にヘタレが逃げたルートだけど。

1.5部終わったらキャラ紹介必要ですか?アメリカの後にもう一本あるからまだ終わらんけど…

  • いる
  • いらない
  • まだ二部行かないんすか…こいつクソっスね
  • キャラ紹介やりたいならレース上等っすよ
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