読んでくれる事には感謝しかないんやで。
過去パートに色々盛り込んだら文字数かけすぎたんやで……このネタ大好きだからやりたかっただけなのに……ガチギレ回は次回になってもうたやで…許して…一万字超えてて流石に切りが悪いなって…明日書くから…。
「へへへ……この子の髪型をボブカットにされたくなかったら、まともな貞操観念でお付き合いしてくれるヒトミミの女性と日本行きの飛行機を用意しろ!!おっと動くなよ奥さん。いいのか?この子が草食系ウマ娘になっちまうぞ?」
「美容師さん!一体どうしたんだ!?警察はまだか!?」
「誰かあの子を助けて!立派な肉食ウマ娘に育てたいのよ!!」
一年と二カ月前のニューヨーク州エルモントのとある美容室、ここで一人のハサミを持った美容師の男が、ウマ娘の幼女を人質に立てこもっていた。
アメリカのウマ娘にとって、「尻尾を切る」が語源であるボブカットはあまり好まれない髪型である。
勇ましいウマ娘が建国した大国アメリカにおいては、面子や縁起にこだわるウマ娘が多いのだ。
人質の幼女は西海岸の名トレーナーの令嬢で、ここには家族と使用人を連れてレース観戦に来ていた。
大きな金色の瞳と、ブルネットの髪をツインテールにまとめ、濃い色合いの鹿毛の尻尾と耳、そしてエジプトのピラミッドのような三角形の髪飾りが印象的な幼女である。
一見大人しそうな幼女だが、その瞳は図太そうな意志の強さを宿しており、人質にされている状況を楽しんでいる節があった。
警察はまだ到着しておらず、通行人が固唾を飲んで状況を見守っている。
「余をたすけるのだビリー、たすけるのだー」
「奥様、ほっといても自分で逃げますよ?アレ」
「ビリー!あなたうちのファラが心配じゃないの?助けてらっしゃい!」
「いや、それ使用人の仕事じゃないですし……それに自分の本業はトレーナーですから」
全く感情のこもっていない声で助けを求める人質。
その母らしい貴婦人が泣き崩れたフリをしながら、使用人の少年へ無茶ぶりをかます。
余裕そうであった。そもそも髪くらいまた伸ばせばいいのである。
この様子を物陰から、とある人物の尾行をしていた二人組が眺めていた。
「ザフティグ、行ってはいけない。ワタシ達競走バ、警察違う」
「止めないでインディ!せめて私が人質を代わるわ!」
「ダメ!」
片方は羽飾りのついたバンダナを付け、長い黒鹿毛を三つ編みにまとめた褐色のウマ娘。
アメリカ大陸にかつて大帝国を築いた原始ウマ娘の血が濃い、ネイティブウマ娘の家柄の娘であるインディアンブレッシングという競走バである。
そしてもう片方はスタイル抜群の豊満な肢体を持ち、ウェーブのかかったブロンドの髪が特徴的なウマ娘。
インディの同期の競走バ、ザフティグと呼ばれるウマ娘である。
彼女達二人はとある人物を尾行中であった。
チーフと尊敬する先輩の紹介で短期契約を結んだ、知名度実績ともに抜群ながらも胡散臭いトレーナーを自らの目で確かめるためである。
「……あの男、こういう時動く。確かめるチャンス」
「…なるほどね、見せてもらおうじゃない?」
その二人が尾行している人物は、この喧騒から離れた被服店にいた。
<オヤジ、これは牧師の服だな?売って貰いたい。小物に十字架もあると助かるが…>
「ヘ、ヘイ、ありますとも」
覆面にトレードマークの中折れ帽姿の怪人が、牧師のガウンと十字架を購入し、その場で着込む。
アメリカの宗教事情はダーレー、ゴドルフィン、バイアリーの三女神よりも、実在説もある女神エクリプスが強く信仰されている。年度代表表彰にも名前が使われている程である。
今購入した牧師ガウン、そして十字架もエクリプス教に準じた造りのものであった。
これを尾行中の二人は怪訝な目で見ていた。
「牧師の格好…?何故?」
「きっと何か意味ある。あの男、切れ者」
怪人が次に向かったのは食料品店であった。
そして店主に声をかける。
<店主、バスケット一杯にウマ娘、それも幼い子供の滋養に良いものを見繕ってほしい。バスケットごと買おう>
「え、ええ、ミスターヴェラス」
商品を受け取り、怪人はようやく現場に向かった。
「何?何がしたいの?」
「牧師のフリするなら、覆面外すべき。あれだとすぐばれる」
牧師に変装した怪人であったが、その特徴的すぎる覆面を外していない。
怪人はアメリカを騒がせている著名人である。バレないはずがないのだ。
事実、現場に近付いただけで歓声が起こった。
「おお!あれはミスターヴェラス!」
「なんだあの恰好は?何かするつもりなのか?」
理容店に近付く怪人に、人質の使用人の少年が立ち塞がる。
ヒスパニック系の浅黒い肌に黒髪黒目の少年であった。
怪人はその容貌に見覚えがあった。
同業で、西海岸の大手チームで若くして実績を積む将来有望な少年と記憶している。
「待て、ミスターヴェラス。それ以上ウチのお嬢に近付くことは許さん」
<……君は、ビクトル・エスペランサだな?チーム・ウィンスターの秘蔵っ子、神童ビリーに名前を覚えていてもらえるとは光栄だ>
「こちらこそ貴方に名前を知っていてもらえるとは…いや待て、そんな話は後だ。あの美容師を刺激するのはやめてもらいたい」
使用人の少年──ビリーは現在15歳。学生と使用人、そしてトレーナーの三足の草鞋を持つアメリカ競バ界における最年少トレーナーである。
アメリカ競バ界では就業年齢である14歳からトレーナー資格の取得が可能であり、彼は持ち得るその実力により既にG1も勝利しており西海岸の神童として賞賛を浴びている。
英国の最年少トレーナーの栄誉を持つ才女ジェシカ・オブリーエン。
競バの王の懐刀、鬼才ライエン・モア。
若手最高峰の呼び声が高いチーム・ゴドルフィンの天才フランチェスカ・ディ・トーリ。
ジョエル・ガスデンの右腕、チーム・クレアヘイブンの秀才ウィル・ベック。
豪州競バ界で一年目にしてG1コーフィールドギニーズを勝利した麒麟児ルーク・ノーラン。
そして日本の長期トレーナー免許を取得し、相棒の心の叫びに応え、かの英雄と日本最高のトレーナーである豊原武尊のコンビを見事に破ってみせたフランスの俊英クリスティアン・リメイユ。
彼らと並び、世界の競バにおいて若手トレーナー旋風を起こしている一人である。
その彼がお嬢と呼ぶ人質の幼女、怪人は人質の素性に予測がついた。
<成程、バフェット家のご令嬢か。警察の到着が遅いわけだ>
「そういう事だ。手出しはしないでもらおうか」
バフェット家──アメリカ競バ界における西海岸の雄、トレーナーの一族の名家である。ケンタッキー州に本拠を置く名門チーム・ウィンスターのオーナーに熱望され、現在はチームを率いている。
現当主ボビー・バフェットはアメリカで四度のリーディングトレーナーに輝き、既に殿堂入りも果たしているアメリカ競バ界の重鎮である。
警察機関にも影響力を持つ彼、そしてこの事件の裏にいる事を荒立てたくない人物が、気性難の警察ウマ娘の出動に待ったをかけているのだ。
その理由も怪人は当たりを付けている。あの幼女は美容師の協力者である。
<……私はただの牧師だ。ここには食料の差し入れに来た>
「どこからどう見ても、あなたはミスターヴェラスだろう?ヒーロー気取りでお嬢に危害が及ぶ真似は看過できない」
<私に任せてもらえないか?私が助けに来たのは君の主人ではない。彼だ>
怪人の視線の先には、人質の幼女、そして彼女にハサミを向ける美容師。
アメリカはウマ娘が建国した大国である。
当然ウマ娘の地位は非常に高く、ややウマ娘尊男卑の傾向があり、そのような中で育ったであろう男の凶行。
ここに来る前にある場所を訪れていた怪人は、男の本当の目的を察している。
<刺激はしない事は約束する。彼が拒めばすぐに引き下がろう……話だけでもさせて貰えないだろうか?>
「………奥様、どうされますか?」
「面白そうだからミスターヴェラスにやらせてみましょう。ファラなら飽きたらあの男を引っ叩いて逃げるでしょうし」
怪人の提案に考慮の余地を感じたビリーが、主人の母に確認する。
あっさりと許可は出た。そもそも彼女は面白そうだという理由でビリーをけしかけてみたかっただけである。
ちなみに幼女も別の目的で人質になっているだけだった。
愚かなヒトミミはウマ娘の幼女に絶対に勝てないのだ。
<ありがとうご夫人、そしてビリー君。お嬢さんの無事は約束しよう。絶対に彼は手出ししないはずだ>
「何だ、その確信は……?」
ビリーからの問いには答えず、怪人が美容室の窓から外を伺う美容師の男に近付く。
男はすぐに気付いた。話題の怪人トレーナーが、特徴的すぎる覆面はそのままに牧師のコスプレをしているのだ。気付かないはずが無い。
「み、ミスターヴェラス…?近寄らないでくれ!」
<今の私は通りすがりの牧師だ。食料の差し入れに来た。中に入れて貰えないか?>
「だ、駄目だ!それだけは認められない!!腹なんて減ってない!」
<……君は、平気だろうな>
この怪人の返答に男の顔が歪む。
この立てこもりの裏を怪人に見透かされている、その苦渋が漏れ出していた。
怪人と、協力している男を見比べ、母親からファラと呼ばれた幼女が声を上げた。
「びようしさん。このものをなかにいれよう」
「……!?駄目だ!!絶対に駄目だ!!」
「きっとだいじょうぶだ。ミスターヴェラスはヒーローだとテレビでみた。そうだんにのってくれるさ」
ファラの発言は論拠に乏しいものだったが、その声色は男に寄り添う親身な優しい言葉であった。
男の手の中のハサミが震えた後、地面に音を立てて落ちる。
「……入ってくれ、ミスターヴェラス」
*****
「ジャスティ、動けるかい?ミスターヴェラスがお見舞に来てくれたよ。食べ物もあるんだ。お腹は減ってないかい?」
「……おにいちゃん、かいじんさんがきてるの?ほんとう?」
「うん、本当だよ。ジャスティはおうちで会った事があったね?」
怪人は美容師の男に招かれ、美容室の奥、居住スペースでベッドに横たわるウマ娘の幼女の元へ案内されていた。
薄い栗毛に境目が朧気な縦に流れる流星、そして病的に青白い幼女であった。
怪人はこの幼女に面識があった。渡米一年目、孤児院に慰問した際に出会っているのである。
ジャスティと呼ばれるこの幼女は競走バとしての才能に恵まれている反面、持病を持ち体が弱い幼女だった。
<やあ、ジャスティファイ。先生から君がいなくなったと聞いて心配していたよ>
「かいじんさん!せんせいおこってた?」
<怒ってはいないさ。ただ、出かける前に相談するべきだったね>
「うん……」
怪人がジャスティの頭を一撫でし、安心させた所で男を伴い部屋の外に出る。
彼女、ジャスティファイは身寄りの無い孤児ウマ娘である。
そんな子供が孤児院を出た理由、それは──
<やはり、手の者が追ってくるかね?>
「……ええ、きっと来ると思います。その前に事を荒立てて警察の目に付かせようと思ったんですが……素直に通報しても、正規の手段で契約したと言われては何もできませんからね」
美容師の男、マイケル・スマイスと名乗る青年は定期的に孤児院を訪れ、孤児達の髪を無料で整えている地元でも評判の美容師の青年であった。
この情報を孤児院の教師より聞いていた怪人は今回の事件の裏で、青年がジャスティを匿っていると確信していたのだ。
バフェット家の令嬢は朝の散歩中にたまたま青年がジャスティを匿う所に出くわし、誘拐と思い問い詰めて事情を聞き、正義感の強い彼女は協力を申し出ていた。
そして、孤児院でもう一つ聞いていた事実があった。
<彼女とスポンサー契約するトレーナーについてだが……あまり評判は良くないようだな?>
「余もしっているのだ。ウィリー・フィクスとかいうおとこだ。ドーピングのぎわくもあるし、マフィアとのかんけいもうわさされている。トレーナーのかざかみにもおけん」
男の協力者、ファラと名乗ったバフェット家の令嬢が眉を顰めながらそう語る。
ジャスティのスポンサーとなる男、フィクス氏はニューヨークの富豪で、黒い噂が付きまとうトレーナーであった。
件の富豪がジャスティの才能に目をつけ、子飼いにしたイタリア系マフィアを使った孤児院の地上げにより、ジャスティとのスポンサー契約を強要したのを察知した青年が、彼女を連れ出したのが今回の発端である。
「いずれ、あしがついてさばかれるだろうが……そのまえにあのむすめにきがいがおよぶ。余はファラオのなをかんすものとして、そのようなことはみすごせない」
<ところで、君は何故ビリー君にこの事を話していない?彼なら協力してくれるだろう?>
「あれは余のトレーナーにするおとこだ。どうねんだいのウマむすめは、ちかづけたくない」
<……??よくわからない理由だが……>
ファラの言うことに怪人は首を傾げるも、そういう事もあるだろう、と無理矢理納得した。
それに彼女の心配は杞憂である。
ここにかつての天才トレーナーがいるのだ。
<マイケル・スマイス。名前を聞いた時は驚いたよ>
「……トレーナーはもう辞めたんだ。今はしがない美容師だよ」
「なに!?びようしさんはトレーナーだったのか!?」
<トレーナーも何も、彼はかのゼニヤッタと契約の約束をしていた男だよ。幼馴染らしいな?>
マイケル・スマイス──かつてエクリプス賞最優秀専属トレーナー部門を、最年少で獲得した元トレーナーである。
そんな彼はある日突然、デビューを控えた幼馴染の前から姿を消した。
怪人が彼を知っているのは全くの偶然である。当の幼馴染本人から自分がスマイスだと疑われたのだ。
いつもの飄々としたヤッタを知っている怪人の中身は困惑し、仕方なく正体を明かしている。
この怪人の発言に青年が顔を歪める。
何で知ってるの!?と言いたげであった。
彼はある日覚えのないドーピング違反を追求され、失意のまま競バから離れた身の上である。
ヤッタとの約束を果たせずに。
<君のコネを使えば、こんな問題簡単に解決できただろう?何故そうしなかったか疑問だが……>
「使えば足がついてヤッタに知られるだろ!?俺の居場所は内緒にしてくれ!!」
<……契約の約束までしておいて、逃げるのはどうかと思うぞ。それに偽名を名乗っていないのは未練があるからだな?>
「うっ……それを言われると……」
痛いところを突かれた青年がさらに顔を歪める。実際にトレーナーへの未練は残っていた。
<ミス・ヤッタは君を捜し続けている。顔くらいは見せてやりなさい。君の無実も彼女が証明済みだ>
「……どの面下げて会えばいいんだ。それはできない」
<……後悔だけはしないようにな>
会った瞬間重バ場確定である。
ヤッタもアメリカの肉食系ウマ娘の端くれなのだ。
この二人の会話の裏で、ファラは電話をかけていた。
幼いながらも名家の令嬢である彼女は、既に頭の中で算盤を叩いている。
かつての天才トレーナーと有力なウマ娘を同時に獲得するチャンスと、悪名高い富豪トレーナーを敵に回す事を天秤にかけ、ある人物へ催促したのだ。
「ちちよ、これはチャンスなのだぞ?かのスマイスとゆうりょくなウマむすめをどうじにかくとくできるのだ」
『……助けたいなら素直にそう言え。あの業突く張りはいずれ制裁しようと思っていたから気にしなくていい。それとスマイスには必ず恩を着せろ。是が非でも欲しいな』
「そうか!ならばすきにやるぞ!」
電話をかけた相手である彼女の父、ボビー氏は端的にそう述べた。
娘の教育が上手くいっているのに満足している反面、幼い身空で利に聡すぎるのは心配の種であった。
「きょかはでた。けいやくしょにはサインしているのか?」
「許可…?いや、今日契約するはずだったんだ。その前に俺が連れ出したんだよ」
「それならばきまりだ!ジャスティはわがいえであずかろう!びょうきのちりょうもわがいえと、こんいのいしゃをしょうかいするのだ」
自信満々な様子で、ファラがドンと胸を叩く。
これに怪人が腕を組み、同意した。
<電話の相手はボビー氏か。彼が後ろ盾に付くなら大丈夫だろう。後はもうすぐ来るだろう地上げのチンピラと、警察か>
「警察には自首するよ。事情は説明しておきたい」
「そのひつようはないぞ?びようしさん」
ファラにはもう一つ名案があった。
青年の犯行とも言い難い行動を、同意の上で実際にやればいいだけである。
恩を売れという父の指令とも合致している。
「けいさつは余にふくあんがあるのだ。チンピラは……」
<私が相手しよう。頼りになる二人もいるからな>
「ふたり……?とにかくきをつけるのだ!」
ファラの激励に、怪人がエクリプス教の牧師ガウンをひらひらと動かして示す。
<心配いらないさ。その為にこんな格好をしている>
バフェットさんはクリーンなトレーナーです。いいね?
富豪さんは当然競馬関係者が元ネタではないです。
ニューヨークの富豪ヴィランってこいつしかおらんやろなって……。
エスティちゃんとかアレの話題の伏線は一応用意したけど多分やらん方がええかな……ウマ娘世界でアレやったら人死に出そうだし……。
1.5部終わったらキャラ紹介必要ですか?アメリカの後にもう一本あるからまだ終わらんけど…
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いる
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いらない
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まだ二部行かないんすか…こいつクソっスね
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キャラ紹介やりたいならレース上等っすよ