トムとフラン   作:AC新作はよ

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仕事ハメで遅れたけど、こっそり投稿しとけば…バレへんか!

前から気になってたから用語統一して修正したやで。
競バ場→レース場
○○バ→○○ウマ娘
競バって単語、アプリやアニメではあんまり使わないのよね…編集画面から文章検索できるのマジ便利。
代替が無さそうな部分は残したやで。
ウマ娘が色んな職業に就いてる設定だからウマ娘=種族名称って事で競走バはそのままやで。


第三十九話 計画、頓挫

『トムっち、トレーナーさん、だったんだ』

 

『ん…?どうしたリティ、君とは部屋を分けたはずだが……あれ、げっ!!』

 

『ごめん、剥がしちゃった』

 

『マジか~…なあリティ、今は全員起きてるのか?』

 

『ううん、私だけ』

 

『そっか…仕方ねえ、か。話があるんだけどさ、今いいか?』

 

『うん…いい、よ。私も、言いたいことあるから』

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

シンデレラクレーミング当日、クオリティロードの主人格であるリティは、滞在中のキーンランドカレッジの校舎内を散策して遊んでいた。

主人格の彼女はコミュ障の気性難である。

普段はウマ娘が多く苦手なカレッジだが、休校日で誰もいない時は学生生活に多少の憧れがある彼女が出てきて、散策するのがいつもの休日の使い方であった。

隣のキーンランドレース場では何やら異変が起きているのにリティは気付いたが、こちらは静かなものである。気にせず散策を楽しんでいた。

五階に上り、ラウンジにでも行こうかと考えていた時だった。

 

「……あれ、トムっち?」

『レース中断してっけど、何でこっち来てんだ?』

『えっトモ君いるの?代わって!!』

 

彼女の担当である怪人トレーナーの中身である智哉が、新校舎目指して渡り廊下の屋根を走っていた。

その腕の中には以前英国で会った智哉の実家のクラブのエースである少女、そして後ろには二人のウマ娘。

更に、渡り廊下の屋根に飛び移ろうとする数人の狩り装束姿のネイティブウマ娘達。

リティは首を傾げつつも、クオに交代した。こういう時は頭が切れ、博学な彼女の出番である。

 

(リティちゃんありがとー!……うーん、これあれかなあ、トモ君やっちゃったかなー)

『お?なんだなんだ?』

(クオも初めて見るけど…婿狩りだねこれ。サーアーチー族の装束だからインディ先輩だろうね)

 

博学で、カレッジの学力試験では常にトップ争いをしているクオはアメリカの歴史やその風俗にも詳しい。なおロードはその逆で、リティに至っては競走以外は全て苦手である。

クオは一目で現状を看破した。打算的な彼女は既に脳内で算盤を叩き、一番リティが得するであろう選択肢を提示する準備に入っている。

 

『婿狩りとか今時よくやるなぁ、インディ先輩。レース場が騒いでたのはこれか?ま、早く助けに行こうぜ』

(それなんだけど、クオは反対)

『……どうして?』

 

クオの出した答えは、この場は智哉を見捨てる事だった。インディに捕らえられた方が、リティにとって最も良い方向に事が運ぶのだ。

ロードとリティが寝ている間にクオは智哉について調べ、ある答えに辿り着いている。

 

(クオ達とトモ君の契約期間、来年までだよね?)

『うん』

『おう、そうだったなあ。更新してもらおうぜってこないだ話し合ったばっかだし』

(それ、無理だから。トモ君、クオ達との契約終わったら英国に帰るよ)

 

『……』

『ハァ!!!?そりゃどういう事だ!!?』

 

統括機構の過去の公示、そこに答えはあった。

智哉の、処分についての公示である。

 

(トモ君、統括機構からレースに乱入したという名目で処分受けてて、英国で二年サブトレやるから。理由はあの子)

『……フランか?』

(うん、あの子が入学するまでにあっちでトレーナーやれる準備に入るんじゃないかな。あの子と契約するだろうし。だから、クオは反対。助けたらトモ君いなくなっちゃうよ?)

『…………』

 

調査の結果、クオは来年で智哉が帰国する事、そしてその後の予定から智哉が何のためにそうするかを推測し、答えに至った。

あの英国で出会った強烈な圧を放つ少女、彼女と自分達の担当トレーナーは仲睦まじく、あの必要以上に担当を近寄らせない怪人があの少女には気を許していた。

クオの女の勘が働いたのだ。間違いなくあの少女の為に怪人は動くと。

ならば、そうさせない事こそが主人格の利益になる。あの怪人、いや智哉は帰らせる訳にはいかない。

ようやく見つけた主人格の理解者だ。

 

(よく考えて、二人とも。リティちゃんがレースで走れるようになったのは誰のおかげ?)

 

今まで出会ったトレーナー達の中にも、主人格に気付いた者はいた。

だが、全員口を揃えて言うのだ。

それは君のためにはならない。それは歴とした精神疾患だと。

三人で一人と言ってくれたのは、怪人が、智哉が初めてだった。三人を認めてくれた、大事な担当トレーナー。

だからこそ、この状況を利用するべきだとクオは判断した。

そして、もう一つ打算もあった。

 

(それに、ね。インディ先輩って優しいよね?)

『優しいよなあ、最初会ったときはおっかねえって思ったけど』

(その優しいインディ先輩ならね、たぶんトモ君貸してくれるよ?クオは別に二号さんでも良いし~)

『えっ……ちょっ、おま、ハァアアア!???』

(ロードちゃんうるさい。だからねリティちゃん、ここは……)

 

『………………助けて、あげて』

 

主人格のリティはクオの提案を聞いた上で、智哉を助けるように懇願した。

彼女は怪人と西海岸からケンタッキー州へ陸路で帰る際、クオとロードが寝ている間に仮眠中の怪人の覆面を剥ぎ取り、その正体を知っている。

その時、リティを守る二人ですら知らない、智哉とのあるやりとりがあったのだ。

 

(……リティちゃん、やっぱり知ってた?更新の話の時も、何も言わなかったから気になってた)

『うん』

 

リティは既に、智哉から来年帰る事を直接知らされていた。

リティは契約の更新を願ったが、智哉から申し訳なさそうに、しかし強い意志を持って断られている。

とても大切な約束があるから、どうしても帰りたいと。

悩んだ末に、リティは送り出す事を決めた。

 

『……リティ、いいのか?』

『うん……トムっちね、あの子の為に、トレーナーさんになったって言ってた』

(リティちゃん、トモ君だけなんだよ?クオ達を受け入れてくれたのは)

『うん…寂しいけど…きっと、私にとってのクオちゃんやロードちゃんと同じだから。トムっちの、約束……』

 

クオが、額を抑える。主人格の決意は堅く、説得は失敗した。

ならば、彼女を守る二人はただ従うのみである。

 

『ごめんね、二人とも………お願い』

(うー……もう!わかった!ロードちゃんいける?)

 

 

『ッシャア!!任せとけ!!!!』

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「逃がさない!」

「狙うなら、足!子供当てたらダメ!」

 

貴婦人から逃れ屋根に飛び移った三人の追手から、雨のように矢が放たれる。

狩人ウマ娘の短弓の狙いは正確かつ、ウマ娘の膂力ならば連射が可能である。

 

「げっ!!マジで撃って来やがった!!」

 

放物線を描き、寸分違わず自らの足へ降り注ぐ矢から智哉は加速して逃れる。

一歩後ろで屋根に次々と矢が突き刺さる音が聞こえ、生きた心地がしなかった。

智哉は何で俺ただのトレーナーなのに矢で撃たれてんの?と一瞬真顔になって考えたが、すぐに頭から追い出した。考えている余裕も時間も無い。

 

「わはははは!!楽しいなぁあんちゃん!!!」

 

追手の狙いが逸れて智哉の胴体に当たりそうな矢を、殿を務めるシスターがさりげなく目視困難な速度のジャブを放って弾き飛ばす。

銃弾すら手で掴むシスターならば造作も無いことである。

 

「窓割るよ!飛び込んで!!」

 

アホの子が一瞬で窓を綺麗に破り、そこへ智哉が飛び込んだ。

内部は静かなものである。観戦していた生徒達もレース場の異変により、カレッジから離れレース場の様子を見に行ったので誰もいない。

内部に入った智哉が廊下に着地するも、ふらついて膝をつく。

ほんの少しの違和感と眩暈により、着地の際に目測を誤ったのだ。

シスターが目敏く智哉の異変に気付いた。この青年に何かあったら脱出手段を失う彼女は青年をよく観察している。

 

「………っと」

「オイオイ大丈夫かあんちゃん?」

「いや、なんかふらついて……って吹き矢刺さりっぱなしだったわ。抜いとこ……」

「わははは!!あんちゃん何か肩についてんなって思ったら吹き矢かよ!!毒ついてんじゃねぇのかそれ」

 

姿勢を整え、肩に刺さったままの吹き矢を抜いた智哉は階段を目指す。

智哉はウマ娘の母を持ち、祖先の血を色濃く引く身である。毒への耐性も強い。

しかしインディが用意していた毒は、人間なら即昏睡する程に強力な代物である。

智哉はまだ気付いていないが、ゆっくりとその毒が体を蝕んでいるのだ。

 

(後ろ来てんな。五階の階段まで引きつけてちょっと蹴散らしたらドサクサにヘリに飛び込む、これだな)

 

シスターは狡猾である。確実に逃走するために、自分はトリを務める計算であった。その為に貴婦人を先に行かせたのだ。

屋根をこちらに駆けてくる追手はすぐに追いつくであろう。その時こそ満を持して自分が助けてやろう、と手を挙げるつもりである。

何もかも、上手く行っている。シスターはほくそ笑んでいた。

階段を上り、踊り場で予定通り手を挙げようとしたその時である。

 

「あんちゃん、ここは俺様が……」

「トモヤァ!助けに来たぜェ!!!」

 

階段の上からスケ番ウマ娘が現れ、シスターの言葉を遮って立候補した。

全員がシスターではなく階段の上のスケ番ウマ娘ことロードに目を向ける。誰もシスターを見ていない。

 

「ロード、ここにいたのか?ってダメだ!お前は年明けすぐにレースがあるだろ!!」

「そんな事言ってる場合かテメェ!!良いからアタイに任せて行けよ!!」

「ダメだ!!お前にだって大勢のファンがいるんだぞ!!お前が出れなくなったら悲しむ人が!!」

「うっ………いやでもテメェを守ってくれってリティが……」

 

ロードを危険に晒すことを担当として絶対認められない智哉が、足を止めてロードと言い合う。

シスターは後ろで手を挙げたまま固まっていた。誰も見ていない。

ここで様子を伺っていたアホの子の頭に名案が浮かんだ。それなら自分が行けばいいと考え、やる気たっぷりのシャドーボクシングを見せつけながら二人の間に立つ。

 

「ねえねえ!それなら私が……」

「ダメに決まってるだろう先輩」

「みゅ!?シーちゃん!!」

 

しかし過保護なシーザスターズによって遮られた。

彼女は気絶させた相手が目を覚ますと、新校舎の玄関から入って悠々とここまで追いついてきたのだ。

そして何やら揉めているのを目で見るや、やる気まんまんのアホの子の首根っこをひっつかんで確保したのだった。

 

「ふむ、ヘリはまだ来てませんわね」

 

更には貴婦人も追いついてきた。三人程軽めに伸してこちらも悠々と階段を上ってきたのである。

天井に目をやりながら、貴婦人は耳を澄ますもヘリのローター音は聞こえなかった。

 

「……取り込み中?」

 

そして狩人ウマ娘達も追いついてきた。

踊り場で揉めているのを見て流石に空気を読んだのだ。元々は善良な彼女達は、インディの為に足止めさえできればそれで良いのである。

 

「おっ!オメーら!アタイが相手だ!」

「だからダメだっつってんだろ!!話聞けよ!!」

 

言い合っていたロードがこの追手に気付き、智哉を背中に回しつつ腕を鳴らす。スケ番ウマ娘の彼女は荒事担当である。喧嘩は得意分野なのだ。

しかし狩人ウマ娘達は、手を挙げてそんなロードを制止した。

 

「なんだァ!?やんねぇのか!!?」

「待った。クオリティロード、有名、ワタシ達、闘いたくない。アナタが言うなら、ここで止まる」

 

彼女達には氏族の有力競走バを姫様と呼び、尊敬の目を向けるならわしがある。

そして、アメリカ出身の競走バならば全て尊敬する存在である。闘い等理由がなければもっての外だった。

そして、もう彼女達に闘う理由はないのだ。

 

「ワタシ達、もう追わない。それよりサインください」

「お……?アンタら、アタイのファンか?ファンとは喧嘩できねぇな……」

 

色紙を取り出した狩人ウマ娘達を見て、毒気を抜かれたロードがサインに応じる。

それを見た智哉が、担当が無茶な事をせずに済みそうで軽く息を吐いた。

シスターはまだ手を挙げたまま下ろすタイミングを見失い、固まっていた。誰も見ていない。

 

「ふむ、踊り場で話し込むのも何だ。時間までラウンジにでも行くか?先輩」

「たぶん、もう大丈夫かなあ。行こ!!キミ達もどう?」

「おっ、ならお邪魔するッス!」

「ワタシ達も、行く」

 

シーザサターズと担がれたアホの子、そしてロードと狩人ウマ娘達はぞろぞろとラウンジに入って行った。追手は、既に役目を終えているのだ。これ以上無駄に争う意味は無い。

 

「………あれっ?俺様の出番………」

「………其方、何かしまして?此方はちゃんと貸しを作りましたが??」

 

ようやく我に返ったシスターが、挙げた手をわきわきと握っては開きながら呆然と言葉を漏らした。

隣の貴婦人は呆れた様子である。結局このライバルは勿体ぶったあげく何もしていない。

策士は策に溺れていた。このままではタダ乗りでバックレるだけのダメ気性難である。

シスターの沽券に関わる話であった。

 

「………終わった、のか?インディはどこに行ったんだ?」

「…………あの子達、もう追わない、と言っていましたわね。となると…」

「上、っすかね」

 

頭を抱えだしたシスターを無視し、首を傾げる智哉に貴婦人が助言を送る。

狩人ウマ娘達は、役目を終えたと言っていた。

つまり目的地にかつての担当、インディが既に待っているのだ。

外から壁を上って、ヘリポートで。

 

「……行かなきゃ、ダメっすよね?」

「別に降りて逃げても良いでしょうけど、其方はあの子の元担当でしょう?向き合ってあげるべきかと」

 

今度は下に、カレッジの外に逃げる手もあった。

しかし、襲われようとインディは元担当である。

かつて組んだトレーナーとして、向き合うべきだという貴婦人の忠告が智哉の胸に刺さった。

なおヘリで逃げる必要がある貴婦人は逃げようとしたら無理矢理行かせる腹積もりであった。

どちらにせよ逃げられない。現実は非情である。

 

智哉は深く息を吐き、階段を上る覚悟を決めた。

狩人ウマ娘は恐ろしいし強制結婚も御免だが、そう言われて引き下がる訳にはいかないのだ。

腕の中の、フランに智哉が目を向ける。

フランまでは連れていけないと智哉は考えている。

インディがフランに手を上げるとは考えられないが、何かしらの事故で怪我をさせるかもしれない。

根は善良なインディもそうなったら傷付くだろう。

ここでフランは置いて行く。そう思い、フランを貴婦人に差し出した。

 

「そう、っすね…行ってきます。あ、こいつ預けても………」

 

「わたしも、行くわ」

 

フランは、起きていた。

ようやく目が覚め、静かに話を聞いていたのだ。

智哉の腕からひょいと飛び降り、向き合う。

 

「フラン、起きてたのか?ついてくるのはダメだ。ここにいてくれ」

「いやよ、わたしも連れて行って頂戴。トムの役に立ちたいの」

 

フランは智哉の為に何かをしたい一心だった。

例え、怪我してもいい。この人は自分の為に大怪我まで負ってくれたから。

例え、インディに連れて行かれたとしても絶対に助けに行く。

そう、フランは目を蒼く輝かせながら、智哉に訴えた。

貴婦人はフランのその目に見覚えがあった。

アメリカが誇る現役最強ウマ娘と、よく似た輝きを発する少女。

並のウマ娘ではないと、確信していた。

 

「……その目、まるでヤッタみたいですわね。なるほど……其方、この子を連れて行く事を薦めますわ」

 

この青年に勝って貰わないと困る貴婦人は、同行を薦めた。

少しでも勝率を上げるためである。アメリカ国民かつ伝説のウマ娘である自分やシスターはともかく、子供一人ついてきてもインディは憲法での不干渉を持ち出さないだろうと考えた上での提案であった。

智哉は、悩んだ。こうなったフランは絶対譲らないだろうと経験則からわかっている。

しばらく見つめ合い、軽く息をつく。根負けしたのだ。

 

「………わかった。ついてくるだけだぞ?どこかに隠れててくれ」

「わかったわ!ありがとう!きれいなお姉様!」

「あら、お上手ね。頑張ってきなさい」

 

フランは援護してくれた貴婦人に感謝を述べつつ、智哉と階段を上って行った。

微笑みながら二人を見送った後、貴婦人は後ろに目を向ける。

後ろにいる策に溺れ、何もしていないライバルは何処かへ電話していた。

このままではタダ乗り確定の彼女は、超気性難としての沽券にかけて借りを必ず返すつもりである。

その為の、根回しの最中であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからよぉタヅナ。サブトレやってるけど相当デキそうな奴だぜ。あ、ヤヨイにも話通せるか?」




遅れた分週末で一気に書くやで。
アメリカ編終わりまでは持って行きたい……。

1.5部終わったらキャラ紹介必要ですか?アメリカの後にもう一本あるからまだ終わらんけど…

  • いる
  • いらない
  • まだ二部行かないんすか…こいつクソっスね
  • キャラ紹介やりたいならレース上等っすよ
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