トムとフラン   作:AC新作はよ

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ごめん1万字超えるからここで切るやで。
構成変えたやで。未来ダンちゃんのエピソードでアメリカ編最終話になります。
そっちの方がきれいに終わるから…。

ちょっと活動報告にタグについて書いたからご意見くださいやで。お待ちしてますやで。


第四十一話 大統領、来る

「ああああああああ!!!!!!辞める!!!!今度こそ辞めるうううぅううぅううう!!!!!!!」

「困ったわねえ……辞めるのはダメよ〜」

 

英国ニューマーケット、統括機構トレセン学院理事長室。

我らが理事長ことサラ・ウェルズは床の上を転がり回っていた。ストレスが限界を迎えたのだ。

きっかけは、頭痛の種の一人である生徒会長からの電話だった。

 

『理事長、シンデレラクレーミングの中継、観れる……?観たらわかるから』

 

この唐突な連絡に怪訝としつつも、理事長は中継を観た瞬間にひっくり返った。

統括機構が誇る世界最強の一角が大乱闘中であった。しかもその背中には無断外出禁止令を出していたアホの子がぶらさがっている。

プロ競走バを目指すウマ娘達が夢を賭けた大レースでの蛮行、当然大問題である。

理事長はこの後の謝罪行脚に関係各所との調整と山積みの問題に絶望していた。更には理事会で嫌味眼鏡にまた嫌味を言われるであろう。

要するに辞めたいのだ。

 

「なんでこうなってるの!!?ガリレオ何してんの!!??あいつの妹だろ!!!!!!自分で何とかしろよ!!!!!!」

「こういう時に頭を下げるのがウェルズちゃんのお仕事ですよ。アメリカ行きの準備しましょうね」

「やだああああああ!!!!!大統領とか出てくるでしょこれ!!!!!あのおばさん怖いんだもん!!!!!」

「ヤヨイちゃんのお母様に、そんな事言っちゃだめでしょウェルズちゃん。めっ!」

 

仇敵(とも)である日本中央競バ会(U R A)理事長、秋川やよいの母と会う事になると予測した理事長が、全力でアメリカ行きを拒否しようと駄々っ子のように手足を振り回す。

英国淑女(ブリカス)である理事長は以前、遠い縁戚でもある秋川理事長にマウントを取りすぎて泣かせてしまい、ウチの愛娘泣かすなと合衆国大統領が乗り込んできた過去があった。理事長は大統領に何故か頭が上がらない。それに怒った大統領は怖すぎるのだ。

 

「ミル姉たすけてよおおおおお!!!!!何かいい方法無い!!!!?」

「そうねえ……シーザスターズちゃんと一緒にいた子、イージーゴアちゃんとあの問題児ちゃんね。でもこれだけだと責任の所在を有耶無耶にするには材料が足りないわねえ」

「見た感じだとシーザスターズは巻き込まれてるんじゃない?この方向で全部ヤヨイのせいにできないかなあ」

 

この二人は由緒正しき英国淑女(ブリカス)である。

二枚舌でこういう時の責任から上手く逃げるのは十八番の得意技であった。

 

「そうねえ、その方向で考えてみましょうか。でも飛行機の準備はしますね」

「やだあああああああ!!!!!!!!」

 

そしてこの二日後、秘書と理事長の二人は英国から飛び立った。

向かう先は──

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「理事長、統括機構のお二人が只今……」

「通してくれッ!!」

 

日本、東京都府中市のトレセン学園理事長室は現在お通夜の如き様相である。

怪人の正体に関する智哉のカミングアウトから、一日が経過している。

あの後すぐに秋川理事長は瞬時にやらかした事を悟って「国際問題ッ!!!!!!」と叫びながら卒倒し、超気性難のシスターは窓を破って逃げた。

そしてまたしても高飛びしようとするシスターをメジロ家及び社グループの精鋭達、そしてシスター自身の娘による壮絶な捕物劇により確保され、現在憮然とした態度で「しらねーんだからしょうがねーだろ」と言わんばかりに腕を組んで座っている。実際に言った。

その隣に智哉はいた。しかし目の前の人物が怖すぎて床をただ見つめている。

 

──眼前に、顔全体に血管を浮かべながらシスターにガンを飛ばす合衆国大統領がいた。

 

合衆国大統領、ノーザンダンサー──18戦14勝。生涯において連対を外したことは無く、ケンタッキーダービー、プリークネスステークスと二冠に輝いた伝説のウマ娘である。

その輝かしい競走生活も勿論の事、彼女については引退後も素晴らしい実績を残している。

引退後はNPOのウマ娘指導員として世界を巡り、様々な理由でトレーナーの指導を受けられない子供達の為に尽力。

世界中に彼女の教え子が存在し、かの統括機構先代理事長も彼女の教え子の一人である。

その後政界に進出、圧倒的なアメリカウマ娘達の支持を受け合衆国大統領に就任した。満期を迎えているが二大政党双方からの懇願を受け現在三期目である。

見た目はシスターや秋川理事長のような小柄なウマ娘である。鹿毛の髪をゆるく纏め、秋川理事長のように白く長い一本線のような流星。二人並ぶとまるで母娘のようであった。智哉は知らないが実際母娘である。

そして目力が強く、目を合わせると小柄な体がまるで大きく見えるような圧力があった。

 

智哉は彼女が理事長室に来た時に状況を理解出来なさすぎて三度見した。大問題ではあるが大統領が来るとは考えてもいなかった。

テーブルに身を乗り出し、舐めるようにシスターを下から睨みつける大統領が口を開いた。

 

「おうワレ、何か言うことあるじゃろ?」

 

たまに見ていた国会中継では一度も使っていない強烈なカナダ訛りである。智哉は自分が言われていないのに震え上がった。

瞑目し、腕を組んでいたシスターが鬱陶しそうに目を開き、この恫喝に反応する。

 

「だからしらねーからしょうがねーだろっつっただろババア。わざわざ日本まで来んじゃねえよ」

 

智哉は更に震え上がった。シスターは明らかに喧嘩を売っている。

この返答を聞いた大統領の目が血走り、部屋の空気がまるで重力が増したように重くなる。

 

「誰が今その話じゃ言うた?シンデレラクレーミングで暴れた落とし前どうつけるちゅうたんじゃ」

「そっちはゴアが喧嘩売ってきたからっつったじゃねーか。正当防衛だろ」

 

「ワレなんじゃさっきからその不貞腐れた態度ォ!!!!!喧嘩売っとるなら表出んか!!!!!!!!!」

「ア!!!!???上等じゃねーかババア!!!!!!三期目で大統領引退すっかコラァ!!!!!???」

 

ヒートアップした大統領とシスターが立ち上がり、お互いの胸倉を掴み合う。

智哉は足が震えて動けない。嵐が過ぎ去るのをビビり倒しながら祈っていた。

 

「す、ストップ!閣下もサンディも落ち着けッ!!!!」

「なんじゃヤヨイ!!!!ワレがこのがんぼうたれに唆されてこうなっとんじゃろが!!!!口挟むな!!!!!」

「よくわかんねえスラング使ってんじゃねえぞババア!!!!!!テメエやるならとっとと表出ろや!!!!!!」

「喧嘩やめてぇ………」

 

二人の剣幕に圧され、秋川理事長が涙目になる。哀れである。

昨日の朝、秋川理事長は将来有望だが不遇な青年がいる事をシスターに教えられ、青年をサブトレーナーとして採用するかを思案していた。

この時、シスターは言った。

 

『ヤヨイ、よく考えろよ?あのあんちゃん、このままアメリカに帰ったら芽が出ないぜ』

『し、しかし本人の希望も聞かずに契約をするのは………』

『お前ほどの女が何を悩む必要がある?ただのサブトレだぜ?奪い取れ!今は気性難がほほえむ時代なんだ!!』

 

こうして良いようにシスターに掌で転がされ、秋川理事長は智哉とのサブトレ契約を強行したのだ。

運が良かったのは、まだ公示前であった。内々に連絡を済ませ、承認を得てから公示するつもりだったのだ。

シスターの動機は有能であろう青年を学園に迎え、青年への借りを返すと同時に学園にも恩を売り、娘や夫に見直してもらおうと考えての行動であった。

なお娘に捕まったときにゴミを見るような目で見られている。母の威厳は地に落ちていた。

この後理事長は卒倒したのであるが、起きてからも事件があった。

 

学園では現在、保健室で寝たまま起きない端正な顔立ちの青年について離れない、姫君のように美しいウマ娘の少女が話題となっていた。

メイド姿のウマ娘と共に朝にやってきては、甲斐甲斐しく青年の世話をするのだ。

健気な姫君と眠ったままの王子、学園の生徒達は二人を遠くから見守り、どういう関係かの予想は専らの話の種であった。

とあるウマ娘狂いは鼻血を流しながら倒れた。

その姫君がどこからか今回の一件を聞きつけ、蒼く光る目を渦巻かせながら理事長室に来訪し、こう言った。

 

『わたしは、フランシス・ジュドモントと申します。ジュドモント家当主の名代として、我がチーム・ジュドモントの英才、トモヤ・クイルとトレセン学園との本人の意向無く結んだサブトレーナー契約に、遺憾の意と強い抗議を表します』

 

これを聞いた瞬間秋川理事長はもう一度卒倒した。

統括機構の誇る世界でも指折りのトップチームの後ろ盾を持つ人物に、捨扶持を与えて強奪するような対応を知らずに行っていたのである。

大問題である。秋川理事長は胃薬を飲み、それとは反対にこの事を当主から聞いて知ったウェルズ理事長は強請るいいネタができてほくそ笑んだ。

チーム・カルメットからも抗議の電話と今すぐ返せという電話が鳴り止まない。

これは手に負えないと悟った秋川理事長は、怒られるのを覚悟で母に連絡した。

そして、現在に至るのである。

 

「失礼します。ヤヨイ、大変な事をしてくれたわね」

「たづなさんお久しぶり、後でね」

「ええ、ミリィさん」

 

外面モードの淑女然としたウェルズ理事長と、その秘書であるミリィが入室する。

その際に秘書は小声で秋川理事長の秘書である駿川たづなと日本語で挨拶を交わしていた。

同じ立場の二人は友人である。

ウェルズ理事長が秋川理事長の隣に座り、智哉に外面モード全開の涼し気な微笑みを浮かべて声をかけた。

 

「トモヤ・クイル君。今回は災難だったわね」

「いえ、それよりも理事長自らご足労頂き恐縮です……」

「気にしないで?君とはペナルティを与えた件も含めて一度話してみたかった。あの件、私は庇いたかったが……」

「……ありがとうございます。でも、やった事の責任を取るのは当然ですから。それよりも試験を合格させてもらった事を感謝しています」

 

智哉が、ここ数年の練習の成果とばかりに敬語を使い、ウェルズ理事長に感謝を述べる。

この言葉に嘘偽りはない。過去を省みてもトレーナーになれた事は奇跡に近いのだ。

ウェルズ理事長は首席の子マジ良い子じゃんと感心し、それから隣の秋川理事長に嫌らしい笑みを浮かべ、告げた。

 

「こーんな良い子で、ジュドモントの唾がついてる子にあんな真似するとは酷いわねぇ、ヤヨイ?」

「うっ……し、しかしッ!経歴を見た限りでは彼は不遇そのものッ!私は彼を推挙すべきと……」

「余計なお世話よねぇ。ねえクイル君?」

「……へ?ははは………」

 

俺に振らないでくださいよと智哉の顔が引きつり、苦笑いで返す。

実際、事情を知らずに状況だけを見れば智哉は不遇な立場であり、秋川理事長の行動は好意からによるものだった。

だから責めにくいのだ。智哉としてはアメリカに帰れるなら不満はない。

 

「えっ、と……公示はまだでしたよね?延ばせますか?俺のチーム・カルメットとの契約、あと一年で終わるんで……奉仕活動がありますけど」

 

契約に関しては既に結ばれており、そこに関しては最早遡及しようが無い状態である。

しかし公示はまだなのだ。つまりは、来季からではなく延期し、智哉との契約は一年後とする事は可能である。

しかし問題があった。智哉はトレセン学院で奉仕活動を二年行う事を統括機構主催レースに乱入したペナルティとして公示されている。

 

「名案ッ!勿論その方向で調整中だ!!しかしそれでは君に不利益がある!なので、サラ、言いにくいが………」

「そうね、どうしようかしらねえ?まさかクイル君があのジョー・ヴェラスと聞いて驚いたけど……そんな優秀な子を、ヤヨイに貸すのはねえ?ジュドモントのご当主もカンカンに怒ってるわよ?」

 

怒っていない。「なんかうちの坊主、えらいことになっとるんじゃが……サラちゃんなんとかならんか?」とジジイは心底困った様子で相談していた。

 

「そこを何とか!!!頼むッ!!!!!」

 

形振り構わず頭を下げる秋川理事長に、ウェルズ理事長が瞠目する。

二人はマウントを取り合う仇敵(とも)である。ここまで素直に懇願するとは予想外であった。

 

「ヤヨイ、貴方………」

「ヤヨイが頼んどるじゃろうが!!!何とかせんか!!!!」

「ひえっ!ひゃい、閣下!!!!」

 

シスターと胸倉を掴み合いメンチを切っていた大統領が口を挟み、ウェルズ理事長が条件反射で直立しながらビビりきった情けない声を上げた。

大統領はモンペである。これ以上マウントを取ったら殺されると察したのだ。

 

「最初からもったいつけずにそうせんか!!!それと若いのあとでサイン頼むけえ!!!」

「う、うす!!!」

 

今度は智哉が大統領の剣幕にビビり倒し、直立して言葉を返す。

大統領は怪人のファンである。前から知りたかった素顔が見れて実はこれでも機嫌がいいのだ。

 

「でも、条件がありますわ、大統領?まず、シーザスターズは正当防衛よ。内々では罰を与えるけどあの件とは無関係」

「それでええ!実際そうじゃろ!!!!ゴアにはワシから灸据えとくけえの!!!」

 

勇気を振り絞り、大統領にシーザスターズの蛮行を有耶無耶にしてくれという条件を出したウェルズ理事長が胸を撫で下ろす。

過剰防衛気味ではあったが実際にそうなのだ。

 

「それと……お、怒らないでくださいね?今回の件、仔細を発表して貰いますわ。そうしないとジョー・ヴェラスとしてのクイル君の実績を統括機構で発表できませんから……」

「む?それは………ううむ、ヤヨイとこのがんぼうたれが責任を取ることになるが……」

「覚悟の上ッ!!!!」

 

そしてもう一つは今回の件である。

このまま怪人の正体が智哉と発表した場合、事情を省みずに状況だけ見ると凄惨な事になるのは明白であった。

アメリカで輝かしい実績を持つ怪人トレーナーが日本に拉致された上で本人の確認無くサブトレーナーにされ、飼い殺しを受ける事になる。

当然世界中からトレセン学園は非難を浴びるであろう。理事長の進退問題にも関わる話である。

主犯の一人であるシスターは奇しくも過去にも同じ事を仕出かしており、その際には事情を知る大統領と日本の社グループの働きかけでアメリカと日本の二国間でのトレーナー移籍に関する制度が設けられ、アメリカ─日本間では一方のトレーナー資格を返上さえすれば試験を免除の上でトレーナー活動を行えるようになっている。拉致に関しても担当ごと移籍という形式でなんとかしている。

しかし今回はサブトレーナー契約が既に結ばれている。これに当てはめられないのだ。

今度こそシスターは責任を取らなければならない。

 

「………まあ、しゃーねぇか。ババア、連れてけよ」

 

シスターは、既に覚悟を決めていた。だから憮然としていたのだ。

怪人トレーナーの活躍は、シスターも当然知っている。この二年半の実績も。

 

「む……ワレにしては潔い事を言いよる」

「ババア、このあんちゃん、担当に重賞いくつ勝たせてると思うよ?二十はくだらねぇぜ。流石にそれ捨てろとは言えねぇだろ……言いてぇけど」

 

シスターの生業はウマ娘の競走指導であり、そして自身も元競走バである。

重賞を勝つことの難しさと、勝たせることの難しさも当然知っていた。

最後まで足掻くつもりだったが、借りのある相手である。借りたままでは気性難がすたる。

大統領がシスターの胸倉から手を離し、あの暴れん坊も成長したな、と感慨深い目で見つめた。

 

「いや、俺公表する気ないっすよ?」

 

しんみりとした空気が一気に凍った。台無しである。

 

「テメエ最初からそれ言えや!!!!!!」

「言う前にあんた逃げたじゃねえか!!!!!!」

「理由は?クイル君、君はその意味がわかっているの?」

 

ブチ切れたシスター相手に、振り回され続けた智哉が流石に言い返した。

そしてウェルズ理事長に向き直り、理由を語った。

 

「俺、婿狩りってやつのターゲットにされてて……自意識過剰かもしれないですけど、もし公表したら素顔でもそういうのに襲われるかもしれないじゃないですか。そう考えると公表するのはちょっと……」

 

智哉は今回の一件で、アメリカの気性難の恐ろしさを知った。

もう二度とあんな思いは御免である。それに実績が無くとも、この二年半で自分はフランと契約してもいい実力はあるという自信はついた。

それだけで、智哉には十分だった。実績などこれからまた積めば良い。そう考えたのだ。

シスターが智哉を見て、借りっぱなしの現状に頭を掻いて不貞腐れた。

大きな借りを作ってしまった。いずれ必ず返さなければならない。

 

「クッソ、結局あんちゃんには借りっぱなしかよ……」

「私もだッ!!必ず、何かで君に報いよう!!」

「……話はまとまったわね。クイル君、本当に良いのね?」

「はい…理事長、お願いします」

 

ウェルズ理事長が、息を大きく吸い込み、智哉に告げた。

 

 

 

 

 

「──トモヤ・クイル君!我が統括機構より公示による奉仕期間中に!!日本のトレセン学園への出向を命じる!!」

1.5部終わったらキャラ紹介必要ですか?アメリカの後にもう一本あるからまだ終わらんけど…

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  • いらない
  • まだ二部行かないんすか…こいつクソっスね
  • キャラ紹介やりたいならレース上等っすよ
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