ゴロゴロ海軍少女   作:トルネード川近

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 一話で少女と書きましたがルフィと同い年です。身長はナミくらい。胸は絶壁です。
どうぞよろしくお願いします。


正義の種

「イッタァァァァァイ!!!」

 

 

 

海軍本部に少女の悲鳴が轟く。

 

海軍本部マリンフォードの最上階、元帥の部屋で少女は頭を抱えてゴロゴロと転がっていた。

 

 

 

「ぐおお、マジの拳骨じゃん。凹んだ。絶対凹んだ」

 

「安心しろい。凹むどころか綺麗に膨らんどるわい」

 

 

 

仕事は済んだと白髪の老齢の男はユリヤの左側にあるソファに座り込む。

 

 

 

「私の頭は餅じゃないですよ!?ガープ中将!!」

 

 

 

ユリヤはガバッと頭を起き上がらせガープを睨む。

 

 

 

「そのくらいで済んだことを感謝すべきだよぉ〜。ユリヤ准将」

 

 

 

右側のソファに深く沈むように座る黄色のストライプのスーツを着た男がガープのフォローをした。

 

 

 

「師匠までー、酷いー、ぐおお」

 

 

 

自分の師匠にフォローを貰えず、悲しみに地に伏せる。

 

そのまま痛みを紛らわそうと転がりを再開するユリヤ。

 

 

 

「准将!姿勢を正せ!」

 

 

 

その声にユリヤは涙目で前を見る。

 

そこにはカモメが乗った帽子が特徴的な眼鏡の男が椅子に腰掛けていた。

 

渋々ユリヤは痛む頭を押さえながら立ち上がる。

 

 

 

「何故ここに呼ばれたか。分かるか?准将」

 

 

 

厳しい視線でユリヤに問うこの男。

 

この男こそ海軍のトップの元帥の地位に就くセンゴク元帥。

 

左にいるのは伝説の海兵。右にいるのは海軍で三人しかいない大将の一人。錚々たる顔ぶれがこの一室に揃っていた。

 

そんな一卒の海兵が緊張で倒れるような面々に呼ばれる様なことをユリヤはやらかしていた。

 

 

 

当の本人はまるでわかってはいないようで。

 

 

 

「全くもって心当たりはございません。センゴク元帥!」

 

 

 

元気よく返事を返していた。

 

そんな反応を予想していたのか元帥はため息を吐きつつ目頭を押さえる。

 

 

 

「ぶわっはっはっは!!元気があってよろしい!お前さん、新聞を読まんじゃろ。ほれ今朝の世界経済新聞だ」

 

 

 

ガープがソファに置いてあった新聞を放った。その新聞を片手で受け取りユリヤは見出しを声に出して読んだ。

 

 

 

「えーと?『若き海兵の独断による海賊処刑、海軍の風紀に問題が!?』はー、記事になったんだ」

 

「記事になったんだではない!!准将!!!」

 

 

 

とうとう我慢できなかったのかセンゴクは自身の仕事机を叩き怒鳴る。

 

その一連の流れがおもしろいのかガープは笑いを噛み締めた。

 

 

 

「再三にわたる注意、罰として罪人をまともに収容出来ない船での任務。それでも独断による公開処刑を辞めないんだから筋金入りだねぇ〜」

 

 

 

怒りで言葉が出ないセンゴクに代わって黄猿が言葉を続けた。

 

ユリヤはようやく頭の痛みが収まったのかもう片方の手を降ろし呼ばれた理由を推測する。

 

以前注意されたときは黄猿との立ち話のついで程度ですんでいた。こんな形で注意されるのは初めてだ。問題点を探す。

 

左横にいるガープ中将はおそらくただのガヤ。問題はないだろう。

 

右横の黄猿は自身の指導係だった。そのため呼ばれたと、後で謝ろうとユリヤは思った。

 

記事になった途端、元帥に呼ばれる事態になった。自身の行為は元帥の耳にも届いてたはずだ。行為事態は口頭での注意程度の問題。

 

ユリヤは少し考えて、ゆっくりと自身が呼ばれた理由を答える。

 

 

 

「……私の行為が記事になったことで海軍の『絶対的正義』が揺らいでしまう恐れがあるからですか?」

 

「ようやく状況がつかめたか。しかし違うな。我々が掲げる『絶対的正義』が揺らぐことは決してない。揺らぐのは民衆の我々への組織としての信頼だ。特に海軍上層部へのな」

 

「話題になっているの私ですよ?」

 

「記事をよく読むんだ。若い海兵のお遊びを止められない上層部への皮肉が書かれている」

 

 

 

ユリヤは新聞の本文へと視線を落とす。読み進めるたび、顔がどんどん歪んでいく。

 

 

 

「顔がしわくちゃになっていくねェ~。准将」

 

「まるでブルドックじゃ」

 

 

 

若い海兵の変顔が面白いのか両隣の海兵は茶々を入れる。

 

 

 

「なんですか!?これ!!なんでわたしではなく上の人たちが悪く書かれているんですか!?」

 

 

 

ユリヤは新聞をバンバンと叩き納得がいかないとセンゴクに訴える。

 

 

 

「組織とはそういうものだ。下が起こした問題を上は解決する責任がある。准将の貴様は責任をとれる立場ではないのだ。貴様がするべきことは反省だ」

 

「海賊の処刑をやめろということですか?」

 

 

 

お気に入りのおもちゃを取り上げられた子供のように悲しみに満ちた表情でユリヤはセンゴクに問うた。

 

そんな彼女にセンゴクはあっけらかんと答えた。

 

 

 

「やめる必要はないぞ。准将」

 

「…………ん?」

 

 

 

ユリヤは首をかしげる。反省するということとはそういうことではないのか。固まる彼女にガープが横からセンゴクの答えに補足する。

 

 

 

「若い海兵が自身が掲げる正義によって暴走するのはままあること。特に珍しくもないわい。まあわしみたいな老兵がこんなことをしたらただでは済まんだろうな!ぶわっはははは!!」

 

 

 

部屋にいる三人から冷ややかな目で見られていると気づかず笑い続ける暴走しがちな老兵。

 

 

 

「それに君が処刑を行った近辺での支部からの報告では海賊の略奪行為が処刑前より激減したそうだよォ~。島民たちから君への感謝もあったそうだ」

 

「つまりだ。貴様の行為は単なるお遊びではなく、きちんと抑止の効果があったということだ。それをやめさせるのは惜しいと判断した。」

 

「そうですか、そうですか!わたしの行為はちゃんと市民の心に届いてたんですね!!」

 

 

 

いまにも小躍りしそうな表情で黄猿からの吉報を頭の中で反芻するユリヤ。

 

 

 

「ようやく本題に入るわけだが」

 

 

 

センゴクが幸せ少女に冷や水をぶっかけるように話を続ける。

 

 

 

「貴様は指導係でなおかつ大将である黄猿の注意を再三無視し続けた。貴様の処刑癖が新聞に載った以上より重い処罰を与えねばならん。」

 

「はっ」

 

 

 

ユリヤは降格もあり得るなー、でも海賊殺せればいっかーと考えつつ、表情は真剣にセンゴクを見据え姿勢を正す。

 

 

 

「もう終わっている。私からの厳重注意、ガープの拳骨という形でな」

 

「え?あれがですか?」

 

「なんだ。もう一発食らいたいのか?」

 

 

 

ハアー、とガープは拳に息を吹きかけ温める。

 

 

 

「いえ!めっちゃ身に沁みました。もう結構です!」

 

「なんだ。つまらん」

 

 

 

もう一発生意気な若造に拳骨したかったのか、口をとがらせいじける初老の男。

 

 

 

「新聞に関しても問題はない。世界政府側の新聞で元帥による厳重注意が行われたこと。独断の処刑には確かに犯罪抑止の効果があったと島民のインタビューも載せて発表するつもりだ。貴様はほとぼりが冷めるまで海賊の処刑の数を一時的に抑えろ。それでいい」

 

「わかりました!量より質という話ですね!」

 

「ユリヤ准将!貴様は何もわかっとらんようだな!!ガァァァアアアプウウウ!!!!」

 

「あいわかった!!!!!」

 

 

 

「いっっっっってえええええええええええええええ!!!!!!!!!」

 

 

 

マリンフォードに淑女らしからぬ野太い悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

今回ばかりは身に沁みすぎたのかユリヤは覚束ない足取りで廊下を歩く。その前をユリヤのペースに合わせているのかゆったりとした足取りで黄猿は歩を進めていく。

 

 

 

「ユリヤ准将~。今回の一件で組織というものがほんの少しだけ分ったかい?」

 

「骨身に沁みました。いやほんとに。わたしが暴走すると上の人に迷惑がかかるんですねー」

 

「そういうことだねェ~。あっしはこれでも君の教育係。君の場合は体で覚えないとできないからこういう措置をとらせてもらったよォ~」

 

「あのー。もしかしてなんですけど今まで軽い注意程度にしてたのはこうなることを見越して?」

 

「君はあっしの言葉だけではとまらんでしょう。自分で解決できない事態になれば自分の行いを顧みるとおもってねェ~」

 

「仰る通りです。ご迷惑おかけしました」

 

「それでユリヤ准将~。君に聞きたいんだけどねェ~」

 

 

 

黄猿は歩みを止め振り返る。ユリヤも足を止めて向き合う形となる。

 

 

 

「ガープさんは君の行いを自身の正義による暴走だと思っていた。けどねェ~、あっしには君にまだ正義を感じないんだよねェ~」

 

 

 

黄猿の瞳はサングラス越しで見えない。だがその目は彼女の心の奥底を見透かそうとしているようにユリヤは思えてしかたなかった。

 

 

 

「……正義、ですか。それは海軍が掲げる絶対的正義のことですか?」

 

「いいや、違う。個人が掲げる正義、言い換えるなら信念とでもいうべきものだねェ~。あっしの部屋の掛け軸を見たろう。『どっちつかずの正義』それがあっしの正義さ」

 

「それならありますよ。私の正義は傷づいた島民の皆さんの笑顔と安心のために……」

 

 

 

黄猿はユリヤの言葉を遮る。

 

 

 

「それは表向きの理由だろう。君の心の奥底にあるものは違うはずだよォ~」

 

「……わたしは別に、他意なんて……」

 

 

 

思い当たる節はある。けどそれはとてもじゃないが海軍大将にいえるほど御大層なものではなかった。

 

そんな自分の心が幼く感じ、俯き言葉に詰まる。

 

 

 

「あっしに言えない程度の理由なんだねェ~」

 

 

 

心の内を当てられユリヤの顔が羞恥に染まる。

 

 

 

「今はそれで別に問題ないよォ~」

 

「……よくはないでしょう。海兵なのに」

 

 

 

黄猿は数舜、言葉を止めて自身の教え子を見る。

 

教え子は実力は一級品だが海兵としてはまだまだ未熟で危うい。

 

ほんの少しのなにかでバランスを崩す。

 

自身の同僚二人のように極端な正義を掲げてほしくはないから上は自分に預けたのだろう。

 

 

 

「君のそれは正義の種ってやつだねェ~」

 

「正義の種、ですか?」

 

 

 

ユリアはほんの少し顔をあげ黄猿を見上げる。

 

 

 

「海軍に入隊する人間は様々な事情を抱えているよぉ~。大事な人を海賊に殺されたから。海賊が蔓延る世の中を少しでも良くしたいから。そんな理由で海兵になる。海兵として働き、そんな中で自分なりの正義を見つけるのさァ~」

 

「じゃあ私のこれは……」

 

「一人前の海兵になる前に誰もが抱えるものだよォ~。まだまだ未熟ってことだねェ~。まあ、頑張りなすって自分の正義に辿り着きなさい」

 

 

 

ユリヤの顔はパァと明るくなった。黄猿に勢いよく頭を下げる。

 

 

 

「ご指導ありがとございました!!海賊をバンバン殺して一人前の海兵なって自分だけの正義を見つけてみせます!!!」

 

 

 

いうや否や勢いよく走り去った。おそらく行先は港で船に乗るのだろう。行く先々で海賊を皆殺しに海兵としての経験値を積むつもりだ。

 

おとなしくなれば良いと思って助言をしたが逆に焚きつける結果になってしまったか。

 

黄猿は息を吐き上を見上げる。

 

 

 

「あらら~、困ったねェ~~~~」




続きました。書くのって楽しいです。
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