ゴロゴロ海軍少女   作:トルネード川近

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麦わら帽子の男

「はあああぁぁぁぁぁあああああああああ」

 

 つい先ほど海賊もどきを壊滅させ帰還してから今に至るまでずっとユリヤは船室に置いてある机を指でなぞり続けて居た。なぞってはため息。なぞってはため息。これ以上無視し続けるのは無理か、と同室で上司の様子を眺めていたビレーが言葉を投げかける。

 

「さっきからため息をついていますが、そんなに話を聞いてほしいのですか? 准将」

 

 

「そうですよぉー、聞いてくださいよー。丸四日探し回って見つけた海賊は海賊もどきでしたしー。せっかく船長を生かして処刑してあげようとしたのに、そんなのいいから金品と食料を返してほしいって言われましてー。こんなの初めてですよー」

 

 処刑を断られたからといってそんなに落ち込む必要があるだろうかとビレーは呆れかえる。

 

「まだ一週間しか過ぎていませんが?」

「海軍へのバッシング記事に対する反論記事から四日ですよー。ほとぼりは冷めたんじゃないですかー? そも処刑がまずいならわたしを海に放りださないでしょー」

「で町の人たちには返してあげたんですか?」

 

 ガバリと起き上がったユリヤは振り返り力説する。

 

「もちろん! 色を付けて返しましたよ。元の財産ももちろんですが街の復興にもいろいろ入り用でしょうしねぇー。あの巨大なガリオン船も売ればそこそこするんじゃないんですかねー?」

「まずはあの血まみれのガリオン船の掃除から始めないと買い手はつかないでしょう」

「そうですかねー。雰囲気あっていいと思いますがねー」

 

 ビレーは自分の上司はセンスも壊滅的なのかと嘆きたくなる。本物の死体が積みあがった幽霊船もどき誰が買うと思っているのだろうか。

 

「あの海賊船の船長は?」

「連れていくのもめんどくさそうでしたしー。頭をザクロみたいにして捨てて来ましたー」

「あの町に?」

「あの町に」

 

 うわぁ、とドン引きした表情でユリヤを見るビレー。心なしか上半身が話をする前よりも離れていた。この人は嫌がる民衆の前でグロい処刑方法を執行したのか。その場面を想像し、上半身とはいわず体全体がユリヤから離れていく。

 

「その三倍くらいの顔をされましたよー。もう気が滅入っちゃて、しんどいですねぇー」

 

 真剣な表情だった顔はへにょりと垂れ下がり、そのまま机に突っ伏しユリヤはピクリともしなくなった。もうこのままてこでも動かないような重いオーラ発し続ける。このままだと自分もこの暗いオーラに飲み込まれてしまう、と慌ててビレーは感性が人よりもずれているユリヤにとって明るい話題を探す。

 

「そういえば、あの海賊たち、結局のところ海賊に襲われた一般市民が同じ海賊に身を堕としていたのですよね? なら……」

「そうですよ!!! あの海賊たちの町を焼き払い、襲った海賊がいるということですねー!! 見つけてボコボコにしますよぉー! 処刑しますよぉー!!!」

 

 ユリヤはルンルンと室内で小躍りし始める。そんなユリヤを見てビレーは行動の意味を知らなければ、ほんとに何もしらない子供のようだと思った。

 

「落ち込んでて忘れていましたが、目的地の指示はどなたかしましたか? そろそろ地に足を着けたいですねー」

 

 踊りを一時中断し、ユリヤは現状の把握に努める。部下のビレー大佐は自身が仕事しているときに上司である自分が仕事していないと途端に機嫌が悪くなるのだ。

 

「私がすでに出しております。准将。目的地はフーシャ村です」

 

 自分は仕事していないが、今回、ビレーの機嫌は悪そうに見えずほっと息を吐くユリヤ。

 

「フーシャ村ですかー? そんなところに支部などありましたっけ? それとも大きな港町とかですかー?」

「支部はありませんし、大きな港もありませんよ。とある方の親族がいらっしゃるのでご挨拶に向かうんですよ」

「はえー、そうなんですかぁー。ちなみにどなたです?」

「ガープ中将のお孫さんです」

「お、おう。これは意外な人物が出てきましたねー。あの人にお孫さんがいるとはー。世の中って不思議っ!!」

「ガープ中将譲りの破天荒な方だそうです。なんでも海賊王になりたいとか」

「…………へえ。面白いかたですねぇー」

 

 バチリッ、とユリヤの右肩あたりから電気が放電する。

 

「あと一日もかからず着くので我慢してください。ガープ中将からは好きにしていいと言付かっています」

「好きに痛めつけてもいいんだ?」

「だそうです」

 

 機嫌が急降下する上司を相手にするのめんどくさいのでビレーはそそくさと退室しようとする。

 

「では。私は甲板の様子でも見てこようと……」

「准将! 大佐! 海賊船を発見しましたぁ!!」

 

 バンッと扉を全力で開け、伝令係は入るな否や海賊船の報告する。

 

 空気の読めない伝令係に舌打ちをしつつ、報告を促す。

 

「どこの海賊ですか? まさか無名とは言いませんよね?」

 

 上司の舌打ちに戸惑いつつも報告を続ける。

 

「"金棒のアルビダ"。懸賞金は500万ベリーです!!」

 

 ビレーは東の海(イーストブルー)にしては高い賞金だと感心した瞬間、バッと後ろを振り返るが誰もいない。能力で飛び出したかと上司の行動に当たりをつける。そのまま伝令係に指示を出す。

 

「すでに准将は海賊の討伐に向かいました。このままの距離だと准将の攻撃に巻き込まれる可能性があります。距離をとりつつあなたたちは待機です」

「はっ! 大佐殿はどうなされるので?」

「私はあのガキを迎えに行きます」

 

 ユリヤは海賊船と言葉を聞いた時点ですでに飛び出していた。その身体は人が視認できないほどの上空にあった。ゆったりと重力に体を預け見聞色の覇気を発動させる。海賊船に数名の気配。陸上に大勢の気配があった。その中に一際強く気配を発する人間が一人。

 

「こいつが船長か!! ははっ! なんて強い気配!! 絶対楽しめる!!」

 

 首元のゴーグルをぐいっと着ける。より速く落ちるよう手足をピタリと身体につけ、頭から落ちていく。

 ユリヤは青白く発光し始める。バチバチッと感情の高ぶりに呼応するかのように雷鳴が轟く。

 

「"ササユリ"!!!」

 

 ユリヤの雷に空気が悲鳴を上げる。

 

「"大輪刺し"!!!!!」

 

 青空に大雷が湧く。

 

 

 ユリヤは一番強い気配に着弾したと確かな手ごたえを感じていた。着弾地点は大地が割れ、気配は底に沈んでいる。が気配は消えるどころか弱まってすらいない。想像以上の強さに笑いが止まらない。底に沈んだ強者が地面に這い出る手助けをしてやろうと、バチバチと片手を放電させる。しかし、強い気配が蠢いた。

 

「ゴムゴムの銃乱打(ガトリング)!!!!」

 

 砕けた大地が宙を舞う。ユリヤは大地となぜか底から伸びる拳を避ける。強い気配からほんの少し距離をとった。

 

「あー、びっくりした。何が降ってきたんだ?」

 

 麦わら帽子と赤いベストが特徴の自分と同年代であろう少年が自力で底から這いあがってきた。麦わら帽子の少年がユリヤを見据える。

 

「だれだ? お前」

 

 




お読みいただきありがとうございました。
やっぱりオリ主は原作主人公と対決してほしいですよね。
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