パン屋の娘とリベンジ少年   作:-つくし-

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第15話です!ちなみに新作についてのお話なのですが、まだ書く予定はありませんしこの作品はまだ続きます。復讐編が終わったらそのままこの物語をシャットダウンするか3年生編として続編を出すかなどの検討をしている途中です。

それではどうぞ!


第15話 少年、絶望

今日は文化祭2日目、俺は家族と朝ご飯を食べていた。

 

ちなみに言うと俺が沙綾と付き合ったことは早々にお母さんにバレてしまった。夢生の野郎が俺のお母さんに伝えたらしい。昨日のお母さんはそんな夢生よりもうざかった。

 

質問の嵐、隙あらばからかってきて。俺は恥ずかしさに耐えきれなくなり部屋に籠った。

 

「今日も沙綾ちゃんとイチャつくのかな?」

 

「今日は忙しいからそんなことできないよ」

 

「お父さんと一緒にあなたたちの店行くからね!」

 

「来なくていいって…」

 

家族総出で今日の縁日に来るらしい。恥ずかしい限りだ。

 

「じゃあ俺行くから!」

 

俺は朝食を急いで食べ、その場から逃げるようにして外へ出た。

 

前を見るとそこには沙綾がいた。

 

「…おはよう沙綾?どうしたの?」

 

「おはよう明優君、その〜一緒に学校行きたいなぁ〜って…」

 

沙綾は手遊びをしながら俯いて答えた。

 

「俺も行きたいって思ってたんだけど…迷惑かなって思って…」

 

「いいや!そんなことないよ、これからも一緒に行かない?」

 

「いいよー」

 

「じゃあ、はい!」

 

そうすると沙綾は手を差し伸べてきた。俺は意図がわからずペットのようにお手をして見せた。

 

「あはは!面白いねやっぱり!私がして欲しかったのは…"手繋ぎ"だよ?」

 

にししっと笑いながら彼女はそう言った。

 

「もう!早くいくよ!」

 

恥ずかしくて沙綾の手を取ってすぐ歩き始めた。この何気ないやり取りがたまらなく幸せだった。

 

 

~花咲川~

 

学校に着くや否や俺と沙綾は手を離した。とても名残惜しかったが今も尚沙綾の手の温もりが残っている。

 

「おお!明優に山吹さん!おっす!」

 

教室の扉を開けると夢生が元気よく出てきた。

 

「もうみんな準備始めてるぜ!どっちとも午前だよな?着付けしようぜ〜」

 

先に来ていた人達である程度準備を進めていたようだ。頼もしい限りだ。

 

着付けを済ませた後俺とその他何人かでやまぶきベーカリーのパンを運んだ。香ばしい匂いが俺の食欲を刺激する。今にでも食べてしまいたいくらいだ。

 

いよいよ開店準備整った。

 

「よし!みんな準備お疲れ様!今日は頑張っていこー!」

 

『おー!』

 

「っとその前に、みんなに聞いて欲しいことがあるんだ!」

 

と夢生が言った。

 

「実は、この度実行委員会の2人、山吹さんと明優がなんと付き合うことになりましたー!!」

 

『おおー!』

 

突然の発表に教室中が沸いた。

 

「「え?」」

 

俺と沙綾は2人揃って素っ頓狂な声を上げた。

 

「いや〜2人とも実行委員にしてよかったよ〜みんなの協力のおかげだね〜」

 

「どういうこと?」

 

「それはね〜」

 

実行委員を決める時俺と沙綾以外のみんなで俺らのことを実行委員にしようとしていたらしい。最初は沙綾を推薦して流れで俺を指名する予定だったのだが、沙綾が自分から手を挙げたため、良さげな理由を心穏が即興で言ったとのことだ。

 

「石田君達、ずっと良い雰囲気でさ〜クラス中が早くくっつかないかな〜って思ってたよ!」

 

「ほんと、毎日見せつけてくれちゃって、羨ましい限りだよ」

 

「ちょっと、みんな〜」

 

クラス中で笑いが起こる。俺らのことを思っての行動だったため怒ることは出来なかったしむしろ後押ししてくれてありがたいと思った。

 

「報告は以上だ。それじゃあ、明優任せたぞ」

 

「…それじゃあ、2-Bカフェ開店です!」

 

俺の号令で2-Bカフェはオープンとなった。

 

俺は午前中の当番に当たっている。午前は客に入りが凄かった。

 

俺は接客だったため店の中にずっといたが俺が見ている限りではほとんど空席はできてなかった。

 

昨日部活動対抗戦で注目を浴びたのか、俺は

 

『写真一緒に撮ってください!』

 

 

『握手してください!』

 

などのサービスも行わなければならなかった。花咲川、羽丘生問わず人気が出ててしまったことに驚きを隠せなかった。夢生も心穏も女子生徒に人気があった。

 

でもなんでだろう。女子と話しているとやたらと沙綾の視線を感じる。俺に対して嫉妬してくれてるのだろうか。

 

そうすると沙綾が俺の裾を掴んで

 

「…あんまり他の女子と話さないで欲しいな…」

 

と俯きながら言ってきた。その姿に俺はドキリとしてしまった。努力するよ、とだけ答えて俺は戻って行った。

 

クラスの女子達が

 

「石田君達のおかげで繁盛してるね!」

 

と言ってきた。それに対して俺は

 

「みんなの料理とパンが美味しいからだよ。俺はただ接客してるだけだって」

 

と謙虚な姿勢を示した。

 

するとお母さんとお父さんがやってきた。

 

「ああマm…お母さん、お父さんいらっしゃい。今席片付けるからちょっと待ってて」

 

俺は急いで片付けて、2人を案内した。

 

「注文は何にしますか?」

 

「じゃあこのパスタ2つ!!後〜沙綾ちゃん呼んでもらえますか??」

 

この野郎、ニヤニヤしやがって。でも今は立場上お母さんではない、お客さんだ。ご要望に答えるのが店員のすべきことだ」

 

「かしこまりましたー」

 

俺はオーダーを調理班に言った後に沙綾を連れて再び2人の元へ戻った。

 

「沙綾ちゃんこんにちは!明優のこと、これからもよろしくね!もう沙綾ちゃんがお嫁さんなら困らないわ〜」

 

「ちょっと!お母さん…それはちょっと…照れちゃいます」

 

そう言うと沙綾は手に持っているお盆で顔を隠した。その姿を見て俺ら家族は笑った。

 

店も繁盛していて忙しいので話はすぐに切り上げて再び仕事へと戻って行った。

 

 

午前の部は無事に終了し、午後の部の人にバトンタッチをした。

 

午後からは自由である。俺は沙綾と一緒に回ることを約束していたため、すぐに沙綾の元へ向かった。

 

「いやー繁盛したね〜、流石やまぶきベーカリーだよ」

 

「明優君すごい人気だったね!もう一躍有名人って感じ」

 

「目立つの慣れてないから恥ずかしくて仕方がないよ」

 

そんなことを話しながら俺らは回っていった。

 

途中羽丘の店でお昼ご飯を取ろうとして店に入るや否や、

 

「石田さん!私昨日の見てファンになりました!サインください!」

 

と言われてしまった。断るに断れない性格のため俺は

 

「書いたことないから変なのになっちゃうけどごめんね」

 

とだけ言って書いてあげた。

 

「ありがとうございます!彼女とお幸せに! 2名様ご来店でーす」

 

このやりとりは店中に響いていたらしく俺と沙綾は店中の視線を集めることとなった。

 

「沙綾、さすがにやばいよ。これは」

 

「そうだね、でも照れてる明優君新鮮で面白いよ!」

 

フォローになってないよ沙綾。

 

俺らは急いで食事を済ませた。

 

その後も俺らは射的だったりクレープだったり、お化け屋敷に行ったりして楽しんだ。

 

恥ずかしくて言えないが俺は大のお化け屋敷嫌いで紗綾に抱きつきながら叫びに叫びまくった。おかげで喉はカラカラだ。

 

「いやーまさか明優、お化け嫌いだとはね〜」

 

にやにやしながら俺の横っ腹をつついてきた。

 

「人には誰だって得意不得意あるからしょうがないでしょ!」

 

俺はこう答えるのが精一杯だった。

 

その後俺らはポピパのみんなの元へ向かった。バンドによるライブは後夜祭のイベントとして行われる。どうやらその打ち合わせらしい。

 

心無しか、天気が曇ってきているようだった。

 

「みんなおまたせ〜」

 

「さーや!待ってたよー」

 

出会い頭に戸山さんは沙綾に抱きついた。俺もこれくらい積極的だったらな〜。

 

「じゃあ打ち合わせ始めっか〜」

 

ポピパのみんなは黙々と打ち合わせを始めた。その横で俺はライブの仕事を確認していた。実行委員だったためこの仕事を任されることになった。でも仕事は簡単でマイクを手渡したり貰ったりするだけである。

 

「っと〜今確認するのはこれくらいか。じゃあ本番頑張ろうな!」

 

やっぱりこういう時は市ヶ谷さんが1番張り切るのだろうか。ツンデレ属性持ちは大歓迎だ。

 

と言ってこの時は解散となった。沙綾もトイレに行くから待っててのことだった。

 

今ここにいるのは俺と市ヶ谷さんのみである。

 

「なあ石田。昨日のMINE見たよな?」

 

「うん」

 

「じゃあ今更言う必要はないよな。今日のライブ楽しみにしてろよ」

 

と勢いよく指を指されて言われた。

 

「もちろん」

 

「そしてこれから沙綾のこと色々よろしくな。沙綾はいつも私達をまとめあげてくれるお姉ちゃん的存在だ。それで自分のやりたいことを我慢することがよくあったんだ。だから私達じゃ聞ききれないわがままを聞いてやって欲しいんだ」

 

「わかった。努力するよ」

 

「任せたぞ」

 

俺は沙綾の元へ戻って行った。

 

 

俺は今舞台袖にいる。いよいよ後夜祭のライブが始まろうとしている。

先陣を切るのはパスパレだ。

 

パスパレはステージへ出ていった。MCが入る。今日は噛まなかったみたいだ。練習では何回か噛んでいることがあったが本番には上手く合わせれたようだ。

 

パスパレの次はアフグロ、なんか久しぶりに聞く気がするな。少し演奏上手くなったんじゃないかな。音の響きとか力強さが前よりも格段にアップしている気がする。

 

そしていよいよポピパの番が近づいてきた。沙綾は心無しか緊張しているように見えた。

 

「頑張れ沙綾。俺も昨日頑張ったんだし沙綾達の演奏、誰よりも楽しみにしてるからさ」

 

と余裕そうにはにかんでみせた。

 

「うん、ありがとう明優君。頑張ってくるね!」

 

彼女のとびっきりの笑顔はまるで大輪の花のようだった。

 

ピピピピッ

 

ん?誰のスマホの着信だ?と思ったらその犯人はどうやら俺のようだった。しかも見知らぬ番号、いたずらかなぁと思いつつも急用だったら困るので出ることにした。

 

「もしもし石田です」

 

『石田さんですか!?今大変なんです!!あなたのご両親が交通事故に遭って!今すぐ花咲川病院まで来てください!!』

 

「…ぇ?」

 

何を言ってるかさっぱり理解ができない。交通事故?お母さんとお父さんの安否は???重傷度合いは?

 

「明優君どうしたの?」

 

沙綾が俺のことを心配そうな目で見つめる。

 

「父と母は大丈夫なんですか!?」

 

俺は舞台袖にも関わらず大きな声を出してしまった。周りにいた人たちにも緊張が走る。

 

『今ご両親はどちらも生死をさまよっています!!早く来てください!!』

 

………意味がわからない。何を言ってるんだ。悪戯であると言って欲しい。今日はエイプリルフールなんじゃないのか?現実を見ないように勤めていたが看護師さんと思われる女性の必死さからして悪戯なんてことはなかった。

 

「明優君!!行って!」

 

真っ先に声をあげたのは沙綾だった。

 

「でも……俺は…。この後も仕事が…」

 

予想外の事態に足が竦む。気が気じゃない、今にも倒れそうなくらいめまいがする。

 

「明優君の仕事は私が代わりにやるから!今は家族のことを優先してっ!」

 

そして沙綾は瞼に涙をいっぱいに貯めて

 

「…私たちの演奏はいくらでも聴けるんだからさ、、、」

 

昨日MINEでこんなことが送られてきていた。

 

市ヶ谷さんが『紗綾がお前に聞かせるためにめっちゃ練習張り切ってたんだよな。だから明日はちゃんと聴いてやってくれよな。明日の曲に''夢を撃ち抜く瞬間に!''が入ってるだろ?あれは沙綾の案なんだ。とある人の夢、野望を後押ししてあげたいって言って。もしかしたらお前のことなんじゃねーかと思ってよ』

 

沙綾が俺のために、俺にポピパの音楽を届けるために必死に練習しているとのことだった。''夢を撃ち抜く瞬間に!''俺は前にこの曲を聞いたことがある。なんだか心に染みる曲だった。沙綾が俺のために捧げてくれる曲。昨日の夜はそのせいで全く寝れなかった。

 

でも蓋を開けてみるとこの絶望的状況、家族の命が危ない。俺は苦渋の決断を強いられている。

 

「…ごめん沙綾。俺行ってくる」

 

走り始めた瞬間、ドラムスティックの落ちる音が聞こえたような気がした。

 

 

病院までの道のりは全く覚えていない。俺は無我夢中に走り始めた。土砂降りの雨の中だろうと今着ている服が制服だろうと。病院までは3km、

このくらいのランなら普段からしているが今日はこの距離がやけに長く感じた。

 

雨の勢いが強くなる。まるで俺の不幸を嘲笑うかのように。

 

~病院~

 

俺は病院の前に着いた。途中滑って転んだりして体はボロボロ、服はベチャベチャだ。そんなことはどうだっていい、俺は病院の中へ急いで入った。

 

「石田君!?こっちに来て!!」

 

看護師さんに連れられ俺はとある場所に来た。

 

集中治療室だ。

 

無論こんな汚い体で入ることは出来ない。だから俺はベンチに座り説明を聞いた。

 

「さっきなったことなんだけど、落ち着いて聞いてね…。今はあなたのお母さんは生死をさまよっているわ」

 

…え?お父さんは?…なんでお父さんについては触れないんだよ。

 

「父は!?父はどうなんですか!?」

 

「…。」

 

俺は固唾を飲んだ。今はこの沈黙がとても苦しかった。

 

「あなたのお父さんは…轢かれた時にもう…息を引き取ったわ」

 

「………。」

 

人は本当に驚いた時声が出なくなると言う。今まさに俺はその状態だった。冷や汗が止まらない、雨のせいか体がかじかむ。状況が理解できない。俺は腰を抜かしてしまった。

 

「あなたのお父さんは轢かれた時頭を潰されたわ。現場には血液だけじゃなくて脳「もういい!!もういいですから……」

 

言葉にならない。俺は看護師さんの話を遮った。聞くに耐えなかった。

 

憂鬱で絶望的な気分が胃のそこまで広がる。今にも吐き出してしまいそうだった。

 

唖然としていると緊急治療室の扉が開いた。

 

「お母さん!お母さん!」

 

担当医の人が出てきた。

 

「今は一命を取り留めました。ですが安心は出来ません。いつ息を引き取るかは分からない状態です」

 

そう言われた。出てきたお母さんの姿は見るに堪えないものだった。体はボロボロ、多量出血のせいか体が白い。いつも元気なお母さんとは考えられない姿だった。

 

~病室~

 

あの後お母さんは個室に移された。俺はただ無数のチューブで繋がれたお母さんを見ることしか出来なかった。

 

「明、、、優…来てくれたの?」

 

お母さんが呼吸機を外していきなり話しかけてきた。今の今まで意識がなかったはずなのに。

 

「ママ!なにやってるの!?早くこれ付けてよ!死んじゃうって!!!」

 

お母さんの予想外の行動にてんやわんやしていた。

 

「わた…しはもう…長くないわ…だから、、、最後に…」

 

「何言ってるの!?そんなことない!まだママは生きていける!だから!!」

 

お母さんは首を振った。

 

「あな…たは、、目的を果たしなさい…、きっと…できるから…お父さんも…お母さんも…あっちで、、応援してるから、、、それと沙綾ちゃんのこと…大切にしなさい…」

 

「おい!ママ、、何言って…!」

 

ピッー

 

心電図の値がゼロになる。それと同時に掴まれていた両手は崩れ落ちた。

 

「…っっ!!」

 

俺は静かに、ただ呆然と立ち尽くして泣くことしか出来なかった。この1時間にも満たない時間で俺の幸せだった生活は一気に絶望の淵に落とされた。

 

さっきまで笑いあって話していた人達が…ほんの数時間でいなくなってしまった。つまり俺は独り身だ。

 

不安と恐怖と絶望で首まで心臓が心臓が飛び上がったように苦しい。

 

先のない暗い身の上のことが今日の暗雲のように頭上に覆いかぶさってくる。

 

「…俺は一体、、、どうやって生きていけばいいんだよ、、、、、」

 

こんな空虚な穴を抱えたまま生きることなんてできやしない…。

 

いつまでもこんな幸せな生活が続くんじゃないかと勘違いしていた。絶望していた時に親身に寄り添ってくれた両親はもう…この世にはいない。あの頃を忘れて今の生活に甘んじていたのかもしれない。

 

俺は…俺は…

 

俺は呼び出しボタンを押し、崩れ落ちるようにそのまま気絶してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 




展開が急すぎましたね…。

感想やお気に入り登録等してくれたら幸いです。

新たな作品でヒロインにするなら?

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