パン屋の娘とリベンジ少年   作:-つくし-

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投稿が遅くなってしまって大変申し訳ございません。

そして総UA回数が5000回を突破致しました。ありがとうございます( . .


第20話 絶対に出るんだ」

 待っていた。この時を。

 

 待ち望んでいた。この瞬間を。

 

 今までどんなことがあったのだろうか、ここに来るまで。

 

 自分の元いた高校と対決する日がくるなんて夢にも思っていなかった。

 

 自分から大禪高校(あそこ)を出ていくとは思ってなかった。順風満帆なバスケット生活を送れると信じきっていた。

 

 でも現実は違った。入部してまもなくいじめの標的となり暴行を加えられる毎日だった。

 

 あの時俺は自分が下した決断を恨んだ。強さだけ見ていた自分を蔑んだ。

 

 ケミストリーやチームカルチャーなどの内面的な部分の評価を怠っていた。

 

 はたから見たら都内屈指の強豪校、だけどその高校は強さ上荒んでいて部内での争いも激しいということを後々知った。

 

 俺自身もいじめに合う可能性は十分あったということだ。そして見事被害にあった。

 

 学校側もバスケ部のおかげで生徒を増やすことができているためいじめを黙認しているとのことだ。

 

 荒れ果てた俺の心を癒してくれたのは花咲川高校のみんなだと思う。

 

 お母さんから入学を持ちかけられた時、少し躊躇った。

 

 またあのような惨状に会いたくなかったから。

 

 でも俺は最終的に入学を決めた。恐怖で竦んでいる自分の体に鞭を打って決断した。

 

 このままじゃいけない。このままだと何も変わらない。

 

 俺のお父さんは"やられっぱなしでいられない"ということをよく言っていた。

 

 この気持ちを倍返ししてやりたい。そう思った。

 

 入学してからの日々は楽しいものだった。

 

 クラスのみんなとも馴染め、バスケ部ではチームの中心に立つことができた。

 

 前の高校のクラスのやつらは俺のいじめのために一致団結するようなクラスだった。

 

 普段はたいして仲良くないくせに俺をいじめる時だけ手を取り合う。はっきり言って最悪なクラスだと思う。

 

 今のクラスはそんなことない。みんながみんな仲が良くて行事にも積極的で誰一人としてクラスの輪から外そうとしなかった。

 

 比較してみるとどれだけ酷かったかが目に見えてわかる。耐えていた自分を褒め讃えたいものだ。

 

 バスケもただ勝ちを求めるだけじゃなく自然と楽しみながらできるようなものになっていた。

 

 プレー外では部員全員ではっちゃけ、いざという時は集中する。部活も俺にとってかけがえのない居場所になった。

 

 

 

 

 今思えば運命的な出会いだと思う。

 

 出会いは至って普通で美味しい香りに誘われ着いた先に彼女はいた。

 

 そんな彼女を人目見た時から気にかけていた。優しく微笑む彼女にいつの間にか惹かれていた。

 

 転校先に彼女はいた。一瞬夢かと思った。気にしすぎるあまり夢に出てきたんじゃないかと思った。

 

 でも実際には本当で自分の体を叩いたりつねったりしてもぼやけて消えていくことは無かった。

 

 ショッピングモールへ行ったあの日俺は彼女に今までのことを打ち明けた。

 

 感極まって泣いてしまった俺のことを静かに抱きしめてくれた。微かに香るパンの香りと彼女自身の匂いが俺の心をくすぐった。

 

 あの後膝枕してたんだっけな。柔らかくてもちもちだった。してくれって言ったらいつでもしてくれそうだがとっておきの時のために我慢している。

 

 文化祭の日に告白した。その時は幸せに包まれていた。

 

 それも束の間気がついたらもう俺の両親は雲の上まで昇って行ってしまった。

 

 あの時はもう何がなんだかわからなかった。すぐに泣くものだと思っていたが衝撃の方が強く、声が出なかったことを今でも覚えている。

 

 

 

 ここに来るまで波乱万丈の日々だった。自分の復讐は今手を伸ばせば掴めるところまで来ている。

 

 あの頃の日々を払拭するために俺は戦う。

 

 花咲川バスケ部のみんなと来たところは都内でも1番大きいと言われる体育館だ。

 

 今年の決勝は注目度が高いらしく、バスケット好きとも思われる人達が長蛇の列となって受付の開始を今か今かと待っていた。

 

 この試合も花咲川の生徒総出で見に来るらしい。もうその状態で2試合もしているから自然と慣れてしまっている自分がいた。

 

 向こうから背の高い集団が歩いて来るのが見える。大禪高校の奴らだ。

 白いウィンドブレーカーに包まれたあいつらはまさに強豪校といったような雰囲気を醸し出していた。

 

 今まさに接触しそうなくらい近づいて来ている。

 

「へえ、お前もここまできたんだな。まあ俺らにはコテンパンにやられるんだろうけどよ」

 

 と奴らは大笑いして俺らを挑発してきた。

 

「無駄口はよした方がいいんじゃないか。お前一人じゃ対した実力もないくせによ。俺にスタメンの座を奪われた非力なアホはどこだっけかね」

 

 自分でも種を巻いておいた。こうしておけばいやでも後に引けない。つまり背水の陣でここ戦いに臨むのだ。

 

「逃げたやつが調子乗るんじゃねーぞ」

 

 糸井が睨みつけるのを背に俺らはロッカールームへと向かった。

 

 

 

 ロッカールームでは依然緊張した雰囲気が漂っていた。

 

 それもそのはずここの学校にきている人達はみな揃って全中など経験していない。全国への切符がかかっている以上緊張するのも当然のように思える。

 

 俺は違う意味で緊張していた。自分だけが全国経験者であるが故その分プレッシャーを感じていたが何よりも敵と渡り合えるかどうかに頭を抱えていた。

 

「いいか、まずは先制攻撃だ。格上相手に受け身じゃ呑まれる一方だぞ。1発かまして流れを一気にこっちまで持ってこよう!!」

 

『おう!!』

 

 監督も緊張しているみんなを気遣ってか複雑な指示は出さなかった。

 

「じゃあ少し試合でも見てくるか」

 

「先生、ちょっと用事があるので1回外に出ますね」

 

 先生が頷くのを確認して俺はロッカールームを後にした。今体育館では3位決定戦が行われている。俺の予想では僅差でJ高が勝利を収めるだろう。

 

 

 

 

「ごめん!待ったかな?」

 

「ううん!むしろこんな時に呼び出しちゃったごめんね!」

 

 俺が向かった先は沙綾の元だった。

 

「脚の調子はどうかな?」

 

「今のところはいい感じだよ」

 

 俺の足はそろそろ限界を迎えようとしている。だが沙綾の献身的なサポートの甲斐あってギリギリのところでふみとどまっている状態だ。

 

「じゃあテーピングするから。ほら!足出して」

 

 沙綾のお母さんの話によると沙綾は店を手伝っている時でもテーピングについて調べていたらしい。ポピパのみんなとも協力してテーピングの練習をしているとのことだった。

 

 それを聞いた俺は感動してしまった。自分のためにここまでしてくれる彼女が愛おしくて。そんな期待を裏切る訳にはいかないと思うと余計緊張してきた。

 

「どうかな?緩かったりしないかな」

 

「ううん、大丈夫!いつもありがとう」

 

 相変わらずグルグル巻になっている脚を見て思わず苦笑してしまう。でもこれがないとプレーに支障を出してしまうからしょうがない。テーピングはあまり好きじゃない。脚に違和感を覚えるからだ。ベタベタする感触があまり好きではなかった。

 

 傍からは見えないように上からサポーターをつけて準備万端だ。最後にお別れのハグをして

 

「じゃあ、行ってくるから!応援よろしく!」

 

「うん!」

 

 俺は沙綾の元を後にした。

 

 

 

「いよいよだ。気合入れていこう」

 

 俺らは再びロッカールームに戻ってきてセットオフェンスの確認や相手のスカウティングをした。技術で劣ってる以上、他の面でカバーする他ない。

 

 俺らはロッカールームから飛び出し体育館へと足を踏み入れた。

 

 そこにいたのは無数の人達だった。観客席は埋め尽くされ空席が1つも見当たらなかった。

 

 俺たちの入場だけで観客が湧き上がった。思わず気持ちが昂ってしまう。

 

 都大会のレベルじゃないと感じつつも平然を装いアップを始めた。

 

 それと同時に大禪高校の奴らもコートインした。

 

 奴らは風格が今までのヤツらと段違いだった。コートから溢れんばかりの存在感。ぼーっとしてれば吹き飛ばされてしまいそうだった。

 

 極力気にせず自分のことに集中する。今俺にできるのはプレーで見返す、ただそれだけ。

 

 アップ終了のブザーがなり、両校ともベンチへと下がっていく。

 

「さあいよいよ勝負の時だ。マークマンはさっき言った通りだ。気負いせずに楽しんでいけ!!」

 

 相変わらず監督の指示は簡素なもの。でも今はそれがありがたかった。

 

 横にいるキャプテンは緊張で震えているし、先輩はアップだけで汗だらけだった。

 

「ボール、回すからな。今日は攻めてもらうぞ」

 

 キャプテンの声掛けに無言で頷く。先輩に対して無礼なこととは承知の上だ。でも今は緊張したかった。

 

 俺ら花咲川ファイブは部員と肩を組んで円陣を組んだ後コートへと散っていった。それと同時に花咲川の生徒が沸いた。

 

 そしてすぐ大禪のやつらも姿を表す。体格的に俺が1番背が低かった。俺の身長も決して低い訳では無いと思う。ただこのコート上では1番のチビだ。

 

 両校ラインに整列し適当な挨拶を交わして中央のサークルへと群がる。

 

 その瞬間会場全体にはとてつもない緊張感が走った。そのせいか今まで雑踏でうるさかった会場内も音ひとつも立たず静まり返った。聞こえるのは俺らのバスケシューズの擦れる音。

 

 俺は観客席を見据えた。沙綾のことを見つけることができた。そして沙綾に抱えられているものは俺の両親の遺影だ。どうしても見て欲しいから沙綾に持ってきてもらったのだ。

 

 そして心穏と相手の背番号6番センターのジャンプボールでゲームが始まった。

 

 心穏は精一杯ジャンプし、6番は軽くジャンプをした。相手の6番は身長が2mと超えている。そのためいとも容易くジャンプボールを制した。

 

 糸井がボールを握る。そして俺はすかさず糸井へと密着マークをした。

 

 糸井はフォワードへとコンバートされているはずだ。それも相まってガードの4番にパスを裁きゲームメイクを託したようだった。

 

 4番がハーフラインを超え糸井にパスを裁こうとした瞬間俺はボールをカットした。無人のゴールへと突き進んで行った。

 

 後ろから4番が追いかけてきていることを確認しわざとスピードを落とした。そして過度なリアクション、所謂フロッピングをしやや強引に4番に体を当てつつボールをゴールへとぶち込んだ。

 

 笛が鳴って3点プレーが成立した。出だしは上場といったところだろう。

 

 俺は冷静にフリースローを決めた。阻止てエンドラインからの相手の軽率なパスを見逃さずすかさずかった。コーナーで待機している夢生にボールを回しワイドオープン(シュートブロックに間に合わないほどの大きなズレ)のスリーを決めた。

 

 開始30秒程度で6点差を付けれたのはとても大きい。相手は気にしていない様子でオフェンスをシュートを放ったがまさかのエアボール。どうやら動揺を隠し切れていないようだった。

 

 心穏がリバウンドを制し前にいる俺にパスが繋がって速攻が展開された。キャプテンと俺によるツーメンゲーム。相手の5番を翻弄し極めつけは俺からの高めのロブパスからキャプテンがアリウープを沈めた。

 

 これには花咲川の生徒も観客も大騒ぎだった。会場のどよめきが止まらなかった。

 

 相手はすかさずタイムアウト、そしてベンチからは監督の怒号が聞こえてきた。なんて滑稽。

 

 俺らは給水をしディフェンスをもう一度確認して再びコートへと戻って行った。

 

 それからは一進一退の攻防が続いた。

 

 糸井のオフェンス力は半端ないものだった。元々のキレの良いドライブとガード時代の時の視野の広さを活かしてオープンを見逃さなかった。

 

 でも俺も負けていない。完璧に抜かれきったのは1回だけ、自由にさせている時はだいたいセンターとのピックアンドロールからスイッチを余儀なくされた時のみだった。

 

 それに苛立ったのか俺のことを肘で押してオフェンスファール。俺は観客を巻き込んで糸井を煽った。

 

「くそっ!!お前……!!」

 

 糸井とは明らかに怒っていた。俺はそんな安い挑発には乗らず無言を貫き通した。

 

 結果的に第1Qは18対11とリードすることに成功した。

 

 第2Qも俺らの勢いは止まらない。俺のカットから45度でオープンになった心穏を見逃さずパスを送り、ワイドオープンのスリーを沈めた。

 

 次は先輩達のピックアンドロールからイージーなレイアップを成功。

 

 ディフェンスでは身長差のある中、心穏が豪快なブロックを披露。間髪入れず先輩が夢生にパスを送りまたしてもイージーなレイアップを成功した。

 

 花咲川サイドはお祭り騒ぎだった。手や足持てるもの全てを使って喜びを表現していた。

 

 第2Q、5分を残して27対13と大量リードを奪うことに成功した。

 

 でも俺は油断していた。

 

「お前、その様子じゃ脚はまだ治っていないようだな」

 

 と糸井がこの点差の中煽ってきた。こいつは計算ができないんじゃないか。

 

「……」

 

 俺はこいつと会話しないと決めていた。あいつの口車にだけは乗りたくなかったからだ。

 

 そして敵のシュートが外れた丁度俺のところに落ちてきそうだったから、糸井をスクリーンアウトして完璧な位置へと着いた。

 

 ボールへと飛んだ。糸井もそれに合わせて飛ぶ。

 

「……ッッ!!クッ……!!」

 

 

 着地したその刹那、俺の足に電流が走った。

 

 痛みに耐えられず俺はその場に倒れた。そして痛みのあまりボールを離してしまいテキに2点を献上してしまった。

 

 糸井が不敵な笑みを浮かべている。着地した際に足を捻った。着地した時の感触。おそらくだがあいつは足を俺の着地点に入れてきた。

 

 すかさずレフェリータイムが入る。

 

「てめぇ!!わざとやったな!!」

 

 夢生が糸井の胸ぐらを掴む。

 

「俺は見てたぞ。お前の飛ぶタイミング、明らかに不自然だった!お前……よくも!!」

 

「わざとだなんて、人聞きの悪い。バスケは接触が伴うスポーツだ。こういう怪我もよくあるよなぁ?」

 

 と俺のことを睨みつけてきた。だが俺は痛みを堪えるのに精一杯だった。

 

 おれは夢生と先輩に肩を貸してもらってベンチへと下がった。

 

「見てろよ。明優。絶対に守りきって見せるからな」

 

 と言ってベンチから離れていった。

 

 だが無情にも点差は縮まっていくばかり。控えで出てきた部員には糸井のワンマークはキツすぎて急遽ゾーンへと変えたが糸井の侵入を何度も許していた。

 

 そして点差が1点になった時に決意した。

 

「……先生。ロッカールームへ下がります。時間をください」

 

「危険だ!いまその状態で出るのは!今後の選手生命にも関わるぞ!!」

 

「……わかってます。でも我儘を言わせてください。3Qから出ます、それまで時間をください。もし出さなかったら、一生恨みますから」

 

 そう言って俺はマネージャーに肩を貸して貰いながらコートを後にした。

 

 

「先輩危険です!!」

 

「いいんだ。俺の今後は。今この勝負だけは捨てたくない。やっと掴んだこのチャンス、逃したら一生後悔する。もう二度と訪れないかもしれないんだ!!」

 

「……テーピングをしてくれ。お願いだ」

 

 俺の足首はふぐのように腫れ上がっていた。自力で立つことすらままならないこの状態。すぐさま病院送りだろうが俺は我儘を貫き通した。

 

「負けたくない!!何があっても!!たとえ今後バスケが出来なくなったとしても!!だから──────

 

 

 

 

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