転生特典が強すぎなのでひっそり生き…たかった…   作:恋狸

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9話 なぜこんなことに……

2005年 4月2日 涙ァ

 

 ふふふ、ふざけるなあぁぁ!!!

 五条悟と対面する前に長期任務入りやがった。露骨だろ。露骨だろ貴様。

 言ったよなぁ? 新入生来るの楽しみだなぁって。聞いたよなぁ? 夜蛾ェ……。

 

 近場なら即刻祓ったものの……。

 なんで鹿児島まで行かなきゃならん。飛行機じゃなくて新幹線とかふざけるな。

 明らかに俺と五条悟を遠ざけようとしてる気がするのだが。

 

 

 くそ、この恨みは祓う呪霊をボコすことで発散しよう。

 

 

4月4日 晴れ

 

 死にかけてから油断することはなくなったが、ただの二級呪霊だったのでワンパンで爆散。

 この程度なら現地の術師で絶対大丈夫だろが。

 ストレス発散すらも出来ないくらい弱かったし。

 

 くっそ、もう鹿児島の呪霊全部祓ってやろうか。

 いや、ダメだ、確実に拳骨落とされる。

 

4月5日 雨ェ

 

 連絡が入った。

 大阪の一級呪霊を祓えとのこと。

 帰りの新幹線でそれ言う? おい、こら『窓』くらいは付けろやぁ!!!!

 

 

4月6日 曇り

 

 生得領域に籠ってた呪霊をワンパンで倒した。

 うん、まあ特級寄りの一級だったな。防御に優れてるせいで黒閃一発じゃ仕留めきれなかった。  

 ……てか、俺術式使って祓う方が得意なのに何でわざわざ拳で殴ってるんだ……。

 体術に関しては才能ない、とのお墨付きを貰ってるし。俺の場合はね、脳筋ゴリラのごり押しだから。

 

 俺より遅いのが悪い。

 

4月7日 晴れ

 

 富士の樹海の遭難者を救え、だとよ。

 

 ……ぶち殺したろか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 準一級術師の石楠花(しゃくなげ)伊織(いおり)は、薄暗い森の中を苛立ち気味に歩いていた。

 時折足元の枝を憎々しげに踏み潰すことから、その苛立ちは相当なものだと窺い知れるだろう。

 

 その通り、伊織はまず寝ていない。三日ほど。

 もし、この任務がとある呪霊を倒せ、等であった場合伊織は生得領域でしっかり睡眠を取ってから行くに違いない。

 だが、この任務は救出任務である。ゆえに寝る暇もなく探しているわけだ。

 

「くっそ、腐った蜜柑の身内だか何だか知らねぇけど、こんな危険地域に準一級を遣わすことが間違ってる!!」

 

 青木ヶ原樹海。またの名を富士の樹海。

 鬱蒼と生い茂る木々が広がるが、広がっているのは何も木だけではない。

 呪霊が広範囲に渡って存在しているのだ。しかも、その多くは二級呪霊以上で、単身で行くのはまず自殺行為だ。

 しかし、何気に目をつけられている伊織は、上層部からの直接使命により今回の任務を請け負うことになった。

 

「あぁぁぁ!! もう広い! 広すぎる!! 術式が意味を為さん!!」

 

 伊織の広範囲索敵術式の【四刻】の効果範囲は4400m。

 

 樹海の広さは35平方キロメートル。

 ゆえに一々場所を移動しながら術式を発動させねばならないし、【四刻】はあくまで五感情報を拾うだけであって、個人の判別はつかない。

 面白半分で樹海に行く奴、自殺志願者、遭難者。わりと生体反応は多いのだ。

 聴覚を拾うことで、その判別がついているが、未だに目的の救助者に出会うことはなかった。

 

 遭難してから4日。そろそろピンチである。

 

 ただ歩き回るだけならこんなにも時間はかからない。

 

 問題は、

 

「あぁ、くそ邪魔ァ!!」

 

 伊織が拳を異形の呪霊に叩き込む。

 呪力の纏った拳は容易に呪霊の体を突き抜け消滅させた。

 

「呪霊多すぎィィ!」

 

 目につく呪霊をぶん殴ってるせいで、救助は遅々として進まない。

 俺を視認した呪霊は確実に襲ってくるせいで捜査に時間を費やせないのだ。

 文句を呟きながら、伊織は再度術式を発動させた。

 

「ん? おお、生体反応確認。どれどれ……」 

 

 続いて伊織は聴覚を拾う。

 

『……うぅ、お腹空いたし呪力空だし呪霊多いし、もうやだぁぁぁ』

 

 男の泣き叫ぶ声だ。

 呟かれた言葉から探し人で間違いないだろう。

 

 死んだ目をしていた伊織の瞳は輝く。

 

「やっと帰れる!!」

 

 【一刻】を発動し、エネルギーを纏った伊織は音速を越える。そのせいで周りの木や呪霊は軒並み吹っ飛ぶか消滅するが、寝不足の伊織はそんな判断すらつかない。

 いかにチートを貰おうと三大欲求には逆らえないのである。性欲もね。

 

 

「おっと、あぶね。救助者吹き飛ばすとこだった」

 

 音速の効果範囲に救助者が被ったところで、ようやく速度を落とした伊織は駆け足で向かう。

 

 すると、そこにはスーツ姿の青年が目に隈を浮かべてぶつぶつ呟いていた。

 

 

「へい、青年。もう大丈夫! 私が来たあぁ!!」

 

「ひっ、なにそのテンション!? ……って人!? 呪術師!? いえええええええええええぇぇぇぇ!!!!!」 

   

「うわ、なにこいつ怖っっ」

 

 いきなり叫びだした青年に、伊織は率直な感想を口にする。しかし、怖いのはいきなり某漫画の真似をした伊織の方である。

 青年の反応は至って普通だ。何せ4日間の呪霊との鬼ごっこに勝利したのだ。命が助かったのだから叫ぶの仕方ない話である。

 

 

「へい、そんでさっさとこっから離れたい。3分で安全地帯に避難できるコースと、6時間かけて避難するコース。どっちがいい?」

 

「え、そりゃあ、三分の方がいいけど……」

 

 伊織はその答えを聞いてニヤリと笑う。

 青年にも負けない深夜テンションの伊織は、人への配慮がゼロである。

 伊織は青年を背負う。

 

「え、何するの。ちょっとばかり嫌な予感がするなぁって」

 

「音速コースにご案内あああぁぁぁいいいぃぃぃ!!」

 

 瞬間、青年の視界が歪み始める。

 もちろん、脳はシェイク、シェイク、シェイク状態だ。

 

「あんぎゃああああああぁぁぁいいいぃぃぃ!!」

 

 伊織は青年を呪力で強化させているが、目まぐるしく動く景色と、呪力ではカバーできない衝撃が青年を襲い、あらんばかりの声で叫ぶ。

 

 

 伊織はその声にうるせぇなぁ、と思いつつ音速で呪霊をぶっ飛ばす。

  

 そのまま宣言通り三分で樹海を出ることができた。 

 

 

 伊織の背を降りた青年は、息も絶え絶えと言った様子で、顔を青く、吐いていないのは最早意地。気を失っていないのは大人としてのプライドである。そんなもの捨てちまえ。

 

「はひぃ……っ、はひぃ! はっはっ、はっ」

 

 床に這いつくばる青年を冷たい瞳で見た伊織は、電話をかけて青年の回収を頼む。

 

 寝ぼけ眼を擦りながら、伊織は『窓』が来るまで眠気を我慢し続けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

4月12日 晴れ

 

 やっべ、五条悟ぶん殴っちゃった。

 

 

 

 

 

家入ちゃん好きだよね。ヒロインにしちゃって…良い?

  • 良いよ
  • ダメだよ
  • 別の人がいいな。歌姫ちゃんとか
  • ここは冥冥様!?

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