Side 零斗
「ねぇ、零斗」
「はい……なんでしょうか……」
「ハジメを助けるために一人で京都まで行って、誘拐犯を全滅させたらしいわね?」
まるで鬼のような形相で俺を見つめる刀華、今にも泣き出してしまいそうな東雲さん、ニッコリと笑っているが目が笑っていない雫…………やばい、これは〆られるパターンだ。俺はこの空気から逃げ出したかったが、逃げる場所もないし、逃げればさらに状況が悪化するのは目に見えている。それに何より、刀華に嘘をつくことは絶対にできないとわかっているため、正直に話すしかない。
「……はい、一人でやりました」
「警察……に……任せれば良かったんじゃないの?」
「日本の警察は優秀ではありますが信用はありません。なので自ら動いた方が早いと判断しました」
日本は治安が良い方だが、それでも犯罪はあるし、事件に巻き込まれて死ぬ人もいる。だからといって放置するわけにはいかない。その点に関しては、他の国でも変わらないだろう。
「……貴方、南雲くんを助けられたから万事解決……とでも思ってるんじゃないかしら?」
雫の言葉を聞いて思わずギクリとする。確かに、俺はそう思っていた。だがそれは間違いだったようだ。確かに今回に限って言えば、ハジメを助けたことで事件は解決したかもしれない。
「今回の件に関して言うなら、私は貴方の行動を認めることはできないわ」
「私も同じです!そんな危険なことして欲しくなかった!」
二人の意見を聞きながら考える。確かに二人の言っていることも一理ある。
「……ごめんなさい」
ただ謝ることしかできなかった。二人の意見が正しいということは理解しているからだ。ただ自分の行動について反省するつもりはない。あの時はあれが一番最善だと今でも思っているからだ。
「……まぁいいでしょう。今回は無事に終わったんだもの。それで?さっきから貴方に抱きついているそこの女について話して貰える?」
「ん?私かい?……初めまして、私の名前はレオナルド・ダ・ヴィンチさ、気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ」
……はい、見た目は絶世の美女、中身はただのオッサンことダ・ヴィンチちゃんです。いやね、ハジメを連れて帰ってきた時にね、ついて来たみたいでね。
「湊莉くん……その人との関係を素直に答えて」
「し、東雲さん?」
「早く!」
貴方、そんなキャラだっけ?いつも優しい東雲さんがこんな剣幕になるなんてな……ダ・ヴィンチちゃん、恐ろしい子!つーか、俺とダ・ヴィンチちゃんの関係ってなんだろうか?仲間であり上司であるけど、家族という感じではないな……。じゃあ友人?知り合い?うーむ……
「……二年ほど前にバイトで海外に行っていた時期があったんですが、その時の職場の上司です」
正確には違うのだが、それを言ってもややこしくなるだけなので、適当に誤魔化すことにした。ちなみに、この時の三人の顔は忘れられないだろう。特に雫と東雲さんは般若のような顔をしていた。その後、なんとか落ち着いて話し合いが始まった。
「なるほど、事情はよくわかったわ」
「はい……」
「今後このような行動をしないと言うのであれば、この件については不問にしましょう」
こうして、何とかお咎めなしとなった。これからは少し気を付けようと思う。
「……じゃあ、海外でのバイトについて話して?」
「えっと……それはまた今度ということで」
「駄目よ、今日中に話してもらうわ。どんな仕事をしていたのか詳しく教えて教えてちょうだい」
くそぅ……許してくれると思ったらこれだよ。どうやらまだ怒ってるらしい。結局この後、俺は海外での仕事内容を説明する羽目になった。
「……主にダ・ヴィンチちゃんの助手をしていました……まぁ、雑用係みたいなものでしたが……」
「……他には?」
「はい、現地の人達と交流したりしましたね。あとは、美術館の展示品を見て回ったりもしました」
思い出すと懐かしいな。まさかあんなところで再会するとは夢にも思わなかった。それにしても雫達の雰囲気が変わった気がする。なんかこう……殺伐とした雰囲気を感じるのだ。まるで戦場にいるような感覚に陥る。
「ダ・ヴィンチさん、貴方の職場って何処ですか?」
「そうだね……芸能事務所アヴァロンさ」
その名前を聞いた瞬間、雫と東雲さんの表情が変わる。そして二人は同時に口を開いた。
「「アヴァロン!?」」
「おや?知っていたんだね」
「はい!日本でもかなり有名ですよ!」
「彗星の如く現れて、世界中の人達を魅了するアーティストが多く所属する事務所ですよね!?」
二人とも興奮気味に話す。それほど有名なところなのか。そういえば、以前テレビで見たことがあるかもしれない。確か日本には撮影に来てんだっけ?
「へぇ〜そうなのかい。私はあんまり興味なかったからねぇ〜」
「でもどうして日本に来ているんですか?」
「零斗くんに会いに来たんだよ。ついでに観光しようと思ってね」
ん?ちょっと待ってくれ、なんで俺の名前が出てくる?俺はダ・ヴィンチちゃんの言葉の意味がわからず首を傾げる。だが、雫と東雲さんはその言葉を聞いてさらに驚いた様子だった。
「……ちょっと待ってください、私に会う為だけに来たんですか?」
「まぁ、そうだね。会うだけが目的では無いけれど……ね」
そう言うとダ・ヴィンチちゃんは俺の方を見る。俺は嫌な予感しかしなかったので、目を逸らす。
「君にも会いたかったからさ」
そう言って俺の肩に手を乗せる。俺はその手を払い除けた。
「……気持ち悪いんでそういうこと言わないで下さい」
「つれないなぁ〜私は本心で言っているのに」
そんなこと言われても全く嬉しくない。むしろ鳥肌が立つ。そんな会話をしていると、突然部屋の扉が開く。そこには白髪で隈のこい男が立っていた。
「やっと見つけたぞ、レイト」
「カドック……」
目の前に現れた男の名はカドック。フルネームはカドック・ゼムルプスという。この男は天才的な頭脳を持つ魔術師であり、元同僚だ。
俺はカドックと目を合わせると、ため息を吐きながら話し掛ける。
「何しに来た?」
「仕事だ。お前を探していたのもそれが理由だ」
「はぁ……もう少し普通に現れてくれないか?」
一応、今は一般人として過ごしているのだから、もっと気を使って欲しいものだ。まぁ、無理だろうけど。
「……頼むから仕事手伝ってくれ、俺達じゃ収集がつかない」
カドックは疲れ切った顔をしながら言った。相当苦労しているようだ。
「……はぁ、バイトという体なら構いません。ダ・ヴィンチちゃん、俳優メンバーのリストと予定表の一覧を今すぐに持ってきてください」
「任せたまえ!」
ダ・ヴィンチちゃんは勢いよく返事をして部屋から出て行った。
「助かる、本当にありがとう。……それで、そっちの人達は誰だ?」
「あぁ、紹介していませんでしたね。私の友人の八重樫雫と、東雲 一花さんです」
俺は二人に挨拶するように促す。雫達は恐る恐るといった感じで自己紹介した。その後は、雫達がカドックに質問攻めにされ、答える度に呆れた顔をしていたので、少し同情した。そして数分後……
「待たせてすまないね……これがご所望の資料だ」
「ありがとうございます」
俺はダ・ヴィンチちゃんから資料を受け取る。そこには今回の出演予定の役者の名前が書かれていた。俺はそれを確認していく。
「……このメイク担当の方、解雇してください。裏で売春や児童ポルノ等の犯罪行為をやった人物ですから。それと、この人も解雇でお願いします」
俺は次々と指名していた者達をクビや昇給させていった。理由は簡単、信用出来ないからだし、裏の取れている野郎共だからだ、それに何人かは正当な評価を受けられていなかった。正直、芸能界なんてろくでもない人間の巣窟と言っても過言ではないと思っている。しかし、俺の考えとは裏腹に、カドックは感心したように呟いた。
「……相変わらず凄いな。俺はこういう世界には疎いからわからないが、これ程まで的確に指示できるものなのか?」
「……別に大したことじゃないですよ」
ただ、俺は知っているだけだ。
「……よし、これで大丈夫ですね」
「え、もう終わったのか?まだ全然時間あると思うんだが……」
「いいんですよ。どうせ暇潰しみたいなものですから」
俺はそう言って席を立ち上がる。その時、ダ・ヴィンチちゃんが何かを思い出したかのように声を上げた。俺はどうしましたかと聞くと、ダ・ヴィンチちゃんはニヤリと笑みを浮かべて言う。
「そうだ!零斗くんにお土産があるんだよ!」
「いや、それは結構ですよ」
「そう言わずに受け取ってくれたまえよ〜」
ダ・ヴィンチちゃんは俺に抱きついてくる。俺はそれを振り払おうとするが……
「ほれほれ〜遠慮せずに受け取りたまえ!」
中々離れようとしない。このままでは面倒事が増えると思い、仕方なく受け取ることにした。そして、俺から離れた瞬間、今度は雫と東雲さんの方に近づいていった。
「君達にはこれをあげよう!」
「これは?」
「私がデザインをした服だよ」
そう言いながら二人は服を手渡される。二人は早速着替えることにしたようだ。ダ・ヴィンチちゃんがデザインした服を着ると、二人は驚きの声を上げる。
「すごい、サイズピッタリ……」
「可愛い……」
二人は自分の着ている服を見て感動する。ダ・ヴィンチちゃんのデザインセンスは本物で、二人の魅力を引き立てていた。ダ・ヴィンチちゃんは満足そうな表情をして言う。
「うんうん、似合っているじゃないか」
「ダ・ヴィンチさん、ありがとうございます」
「感謝致します」
「はっはっはっ、気にすることはないさ」
ダ・ヴィンチちゃんは上機嫌な様子で笑うと、俺の方を見る。俺は嫌な予感しかしなかったので目を逸らそうとした。だが、その前にダ・ヴィンチちゃんの手が俺の肩に置かれる。
「さぁ、次は零斗くんの番だ!」
「……え?」
「さぁさぁ、早くその衣装に着替えたまえ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!!何故私がそんなこと!!」
俺は必死に抵抗するが、カドックに捕まり強制的に更衣室へと連れていかれる。そして、そのまま強引に服を脱がされた。その後、抵抗虚しく俺はダ・ヴィンチちゃんデザインの服を着せられてしまった。
ダ・ヴィンチちゃんは嬉しそうに笑いながら言う。
「ふむ、なかなか良い出来栄えだ。やはり天才だね、私は」
「……」
「ん?どうかしたかい?」
「いえ、なんでもありません……」
俺はダ・ヴィンチちゃんに文句を言う気力も無くなっていた。すると、雫達は俺の姿を見て感嘆のため息を漏らす。
「あまり趣味に合わない服装ですね……違和感が凄いです……」
ダ・ヴィンチちゃんのデザインした服は、白を基調としたもので袖口が黒くなっている。更に、胸元には十字架を模したようなマークが付いていた。
「いやぁ、我ながら素晴らしいデザインだ。……ま、私としてはもう少し露出度が高い方が好みなんだがね」
「……」ビスッ
「あ痛ッ!?」
俺はダ・ヴィンチちゃんの頭にチョップを食らわせる。彼女は頭を押さえて涙目になっていた。
「セクハラで訴えますよ?」
「うぅ……酷いよぉ……せっかくのサービスシーンなのにぃ……」
「何言っているんですか……」
俺は呆れてため息を吐く。そして、俺は改めて自分が来ている服を確認する。正直に言えば、かなり恥ずかしかった。ダ・ヴィンチちゃんの趣味は置いておいて、このデザインは悪くないと思う。ただ、普段こういった格好をしていないので、どうしても落ち着かないのだ。
「……あの、やっぱり脱いでもいいですか?流石に落ち着かなくて……」
「ダメ!絶対に脱がないで!」
「そうです!折角貰ったのですから、ちゃんと着ていて欲しいです!」
雫と東雲さんは俺の両腕を掴んで引き止める。俺は二人の言葉を聞いて諦めるしかなかった。
……もう設定詰め込み過ぎて破綻しそう。
とりあえずはサーヴァント達+αの設定です。
・カルデア職員 → 大半が芸能事務所アヴァロンに就職。
・ダ・ヴィンチちゃん → アヴァロンの代表取締役。
・新撰組 → 今は警察として働いてるけどそのうちアヴァロンの警備員に転職する。
・他サーヴァント → アヴァロンで俳優やらモデルやらをやってる。