Side 零斗
「はーい、いい感じよ〜!次はちょっと色っぽい感じが欲しいわ〜」
現在、俺は剛田光という凄腕のカメラマンに写真を撮ってもらっている……うん、なんで?何がどうして、どうなって撮られる事になったの?俺も急展開過ぎて、言われるがままポーズ取ってるけどさ……色っぽいポーズってなんだよ。
────────数時間前────────
「代わりのモデルゥ?」
「あぁ、来るはずのモデルくんが遅刻してしまってね……代わりを頼みたんだよ」
アヴァロン内にある事務所で書類仕事をしている時にから言われた言葉に思わず聞き返してしまった。なんでも撮影予定時刻まであと1時間ほどあるのだが、そのモデルさんが遅れているらしいのだ。そこで急遽代役を立てることになったのだが……
「なんで俺なんだ?ランスロットとか燕青とか……空いてる奴ら居るだろ?それに俺は書類仕事が忙しいから無理だ」
「そう言わずに頼むよ。今回の撮影は他の事務所との共同撮影でどうしても外せないんだどうか頼むよ……今度何か奢るからさ!」
「…………」
「やってくれたら、私とデートする権利をあげるよ!」
「いらん」
こいつは何を言ってんだか……まぁでも確かに困ったことに変わりはない。他のスタッフもバタバタとしていて余裕がないみたいだしな。
「……今回だけだぞ」
「本当かい!助かるよ!」
とりあえずは、この髪色と目じゃ、駄目だろうしウィッグとカラコンを付けて現場に向かう。その後、スタッフ総出でなんとか撮影の準備を終え、撮影が始まったわけだが……
「表情が硬いわよ、ほら笑顔笑顔!」
「……」
パシャリパシャリとシャッター音が響く中、俺はただ黙々とポーズを取り続ける。正直、早く終わらないものだろうか。
「零斗君、もっとこう妖艶な雰囲気を出してみてくれるかな?」
「……はい」
そんな事言われても出せるもんなら出してますよ……無茶ぶりしないでくれませんかね……その後も様々な要求に応え続けていく内に時間は過ぎていき、休憩時間に入った。まぁ、休憩時間が終われば、流石に元々撮影に来るはずだったモデル君も来るだろう。
「湊莉さん、すみません……弊事務所のモデルなのですが到着にまだ時間が掛かるようでして……」
マジかよ……このまま写真撮影続けるの?という、一応は一般人である俺が雑誌に掲載されても大丈夫なのか?なんなら共同撮影するはずだった事務所の人も納得すんの?大丈夫?
────────現在────────
そして2回目の撮影が終わると同時に何故か俺の周りに女性スタッフ達が群がってきた。そして始まる質問攻めである。
「零斗さんは普段どんな事をされているんですか!?」
「好きな女性のタイプを教えてください!!」
「連絡先を交換しましょう!!!」
俺は聖徳太子じゃないから1人づつ喋ってくれませんかね?なんて思いながらとりあえず答えられる範囲で答える。しばらくすると光さんがストップをかけてくれたおかげでやっと解放された。
「ふぅ……助かった……」
「大変そうね……はい、飲み物」
「ありがとうございます……」
剛田さんから差し出された飲み物を受け取る。ちなみに光さんは漢女である。何処ぞのゴリマッチョと違ってTPOを弁え、良識もある出来た人間である。
「ところで剛田さん、代わりのモデルは私でよろしかったんですか?」
「あら、私は貴方の写真を見た時からずっと気になってたわよ?」
「へぇ、そうなんですか……って写真ですか?」
「えぇ、ダ・ヴィンチさんがよく貴方の写真を見ているもの……ウィッグとカラコンをしている訳も知っているわ」
「あぁ……そういう事でしたか……」
ダ・ヴィンチちゃんは俺の写真を撮る事がある。というより、あの人が勝手に撮ったりするのだ。しかもかなりの頻度で盗撮される。
「それにしても貴方、随分と手馴れていたわね。私の見立てだと貴方にはモデルの才能があると思うのだけど」
「才能……ですか……自分としてはそんなつもりは無いですけどね」
「そうかしら?少なくとも貴方はカメラの前で自分の魅力を引き出すことが出来ると思うわよ」
「買い被りすぎですよ」
そんな会話をしているとスタッフに呼ばれ、次の撮影が始まる。今度はペアで撮影を行うらしい。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
相手は茶髪のセミロングで清楚な感じの女性だった。歳は同じくらいか少し年上くらいだろう。身長もそこまで高くない。
「じゃあ、始めようか」
「はい!」
2人で並んで立ち、ポーズを取っていく。カメラマンの指示を聞き、表情を変え、時には身体を密着させたりする。そんな中、彼女は緊張しながらもしっかりと仕事をこなせているようだ。
「じゃあ、次は腕を組んでみてちょうだい!」
「腕組む……ですか?」
どうやらカップルのような雰囲気を出して欲しいらしい。俺は言われた通りに彼女と腕を組む。すると、彼女の体温が直に伝わってくる……うん、意外と大きいですね……はい、ごめんなさい。
「ふぅ……」
窓際にあったベンチに腰掛けて息をつく。それにしても彼女は凄いな……俺とは違ってしっかりと仕事をこなせるし、周りの人達とも上手くコミュニケーションが取れている。
「お疲れ様です、お隣いいですか?」
「はい、大丈夫です」
彼女に声をかけられ、座れるようにスペースを開ける。彼女がそこに座り、俺は少し距離を置く形で再びベンチにもたれ掛かる。
「急にこんな事を頼んでしまってすみません」
「いえ、気にしないでください」
「ありがとうございます。それと……今日は本当に助かりました!」
彼女は笑顔を浮かべ、頭を下げる。きっと、この人は真面目な人なんだろうな。仕事に対して責任感を持っていて……仕事が出来るから周りからの信頼も厚い……恐らくはそんな人だ。
「貴重な体験も出来ますし、何より結構楽しいので大丈夫ですよ」
「本当ですか!良かったぁ……」
胸に手を当て、安堵する。その仕草はとても可愛らしく思えた。彼女はここ最近、アヴァロンに入った新人モデルで今撮っている写真が初の表紙になるらしい……確か名前は……
「……東雲湊月さんでしたよね?」
「え!?私の事知ってるんですか!?」
湊月さんはかなり驚いた様子で目を見開いていた。まぁ、アヴァロンの書類なんかを整理していた時にチラッと名前は見たし、アヴァロンから出ている雑誌には一通り目を通しているから知っているし、何より……
「えぇ、貴方の妹さんから良く話は聞きますからね」
「え?妹?」
「私は一花さんと同じ学校に通っているんですよ」
「えぇ!?一花と一緒の学校に!?」
これまたとても驚いた様子だった。その様子が一花さんに良く似ていて、なんだか可笑しく思えてしまってクスリと笑ってしまった。
「……学校での一花さんの話……聞きたいですか?」
「!!是非、お願いします!」
その後は他愛の無い話をしたり、学校で一花さんがやらかしたエピソードや家での一花さんの少し変わった一面なんかの話をして休憩時間ギリギリまで笑っていた。
──────────────────
「クランクアップでーす!お疲れ様でしたー!」
結局、来るはずだったモデル君は到着することは無く、撮影が終わってしまった。服装を何度も変え、ポーズも同じ物が無いように工夫させられたせいでかなり疲れた。
「やっと終わったな……残業代でも請求するか」
そんな事を考えながら、一息つく為にベンチに座る。湊月さんの方を見ると撮影スタッフの人達と楽しそうに談笑していた。そこに光さんも混じって会話に花を咲かせている。
「お疲れ様、湊莉君」
「……お疲れ様です、湊月さん」
ベンチに座り何となしに湊月さん達の事を見ているとこちらに気が付いた湊月さんが微笑みながら話し掛けてくれた。
「それにしても、湊月さんは凄いですね」
「凄い……私がですか?」
「えぇ、仕事に対してとても真摯で楽しみながら取り組む……そんな事をできる人はそうそう居ませんから」
俺はベンチの背もたれにもたれ掛かり、天井を見上げる。隣の湊月さんはクスクスと笑ってこちらを見てくる。
「えぇ!私はこの仕事が大好きですから!」
湊月さんは向日葵の様な明るい笑みを浮かべる。この人が何故、周りの人に好かれているのかが分かった様な気がした。この人は人を惹きつける天才なのだろう、まさにモデルは天職なのだろう。
「ちぃーす、遅れました〜」
突然、撮影部屋に気怠げな声が響いた。声がした方を見ると金髪の高身長イケメンが欠伸をしながら歩いて来ていた。確か……最近有名になった男性モデルだったな。なんなら今日来るはずだったモデル君だよな、今更来たのかよ……もう既に撮影は終わってんだけど?
「あの糞ガキィ……!」
光さんがとんでもない表情になりながらモデル君を睨みつけている。この人は仕事にプライドを持ってやっている……アイツみたいな人間は嫌いみたいだ。
「湊月ちゃ〜ん、今日は宜しくねぇ〜」
モデル君は湊月さんに近ずくと肩に手を置いて、下卑た笑みを浮かべながら喋り始めた。
「これが終わったらさ、二人で食事でもどう?俺、いい所知ってるからさ!」
「えぇっと……」
それを見た光さんは般若の様な形相になりゆっくりとモデル君の方に歩み寄って行った。急いで駆け寄り、落ち着く様に声を掛ける。
「光さん、落ち着ついてください。あんな奴でも殴れば悪いのはこっちになってしまいます」
「うるさい!もうアイツの顔面をぶん殴らなきゃ、気が済まないわ!」
何とか光さんを落ち着かせて、再度モデル君の方を見る。未だに湊月さんにベタベタと触れて食事にしつこく誘っていた。
「とりあえずはあいつの対応は任せてください……キツ〜くお灸を据えてやりますよ」
光さんにそう言って、モデル君の元に歩み寄る。そして、湊月さんの肩に置かれた手を振って、モデル君と湊月さんの間に割って入る。
「あぁん?テメェ何しやがん……」
「おや、これは失礼……肩にゴミが付いていたので」
俺の発言で現場の空気が凍り付く。ただの罵倒では無く遠回しに言う事でより、精神を逆撫でする。すると、モデル君の顔をみるみると赤くなって行く。顔色は既に激昂しているのが見てわかるほどだった。
「……てめぇ何?誰に口聞いてんだ?」
「貴方以外に誰が居るんです?」
こういうタイプの人間はかなり沸点が低い、低俗な煽りに簡単に乗ってくれるので扱い易い。
「……お前、舐めてんだろ」
「私はただ事実を述べただけですよ。まさか、自分より年上だから敬語を使っていると思われているなら心外ですね」
煽るように話すと、案の定怒り出した。予想通りで助かる。怒り狂ったモデル君は拳を握り……
「お前、ウザいから死ね」
そう言って殴り掛かって来た。動きからして格闘技をやっている様だが、モーションが遅く、大振りな為避けやすい。
「おっと、ウィッグが……」
避けた拍子に付けていたウィッグが床に落ちる。そして露わになる地毛。
「気持ち悪……」
誰かの声が聞こえたが、今は気にしている暇は無い。今はこの男の処理が先だ。
「クソッ!ふざけやがって!」
再び殴りかかって来る男。だが、避けることは容易かった。その後も幾度となく襲ってくる攻撃を全て回避していく。
「クソが!なんで当たらねぇんだよ!俺はボクシングやってんだぞ!」
「そうですか、ですが貴方の動きは素人同然、パンチの軌道は単純で単調だ。当たる方がおかしい」
相手の息が上がり始めている。そろそろ終わらせるか。大きく振りかぶった男の右ストレートを片手で受け止めモデル君の手首を掴んで、小手返しの要領で地面に叩き落とす。
「グぁ!クソ…痛ェ……」
「……モデルとしても、男性としても三流以下の人ですね」
地面に倒れて込んで呻いているモデル君を見下ろしながら吐き捨てるように言葉を掛ける。
「だ、誰か警察呼べ!暴行事件だぞ!」
「何をふざけた事を……貴方から殴り掛かって来て、その後も暴言等もありましたから正当防衛ですよ」
そもそも、先に手を出そうとしたのはこの男の方。それに対して反撃しただけだし、何の問題も無い。周りの人達も俺の味方をしてくれているようで、男を庇う人は居なかった。
「……ッチ、クソッタレが!覚えておけよ!」
捨て台詞を吐いて男はどこかへ行ってしまった。周りからは拍手喝采で、中には「かっこいいー」とか言っている人も居る。
「大丈夫ですか?東雲さん」
「え、うん、ありがとうございます……」
心配になって声を掛けると、頬が赤く染まっていて、目は何処かを見ていた……可愛いな。
「あの、その髪って……」
「えぇ、地毛ですよ」
隠す必要も無くなったため、もう普通に話す。まぁ、この髪色を見た奴は大体……
「綺麗な髪ですね!」
「(やっぱりこの人も──ー)え?」
思っていた反応と違った。今まで見てきた人達は全員俺を見ると嫌そうな顔をして来たのに……この人の場合は目を輝かせて俺のことを見つめてくるのだ。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ、何でもないです……」
彼女は俺の髪を褒めてくれた。しかも嬉しそうに笑みを浮かべながら。その笑顔を見るだけで俺は胸の鼓動が早くなる……気がした。
「…………」ジィー
「あの、湊月さん、そんなに見つめられると……恥ずかしいです」
「あ、ごめんなさい……」
彼女は我に返ったのか、慌てて俺から離れる。
「あの、もしかしてカラコン入れてますか?」
「あぁ……はい、本当は赤と青のオッドアイなので……」
カラコンを外して、素の状態に戻る。東雲さんはキラキラとした目をしていた。
「そうなんですね……綺麗な瞳です。とても素敵だと思いました」
「あ、ありがとうございます……」
ここまで正面切って言われるのは初めてだった為、戸惑いながらも礼を言う。なんか調子狂うな
「……では私はこれで失礼させて頂きますね」
「あ、はい!助けてくださり、本当にありがとうございました!」
最後に軽く頭を下げてからその場を離れる。足早に去るのには理由があった。……顔が熱い。きっと今の顔は真っ赤に染まっているだろう。心臓の音がうるさいくらい鳴っていた。
「……らしくねぇなぁ」
苦笑いを帰路に着く。
勢いで書いたので、設定がごちゃごちゃです、ユルシテ....ユルシテ...
零斗君は攻めるのは得意ですが、攻められる事になるとタジタジになります。