ありふれた黒幕のありふれない日常   作:96 reito

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カブト狩りじゃァァァァァ!

スン( ˙-˙ )まだ海には行きません、準備回です。


夏だ!海だ!

 Side 零斗

 

 夏休みも折り返しに差し掛かった。今日は久しぶりの休みだ。いつものようにトレーニングを済ませ、朝食を取る。

 

「おっはよー!」

「朝から元気だな、お前は」

 

 ドアを蹴破らん勢いで開けて入ってきたのは、悠花だった。ちなみにハジメを含めて、数人にはこの家の合鍵を渡してある。

 

「毎回言ってるが、来るんだったら先に連絡くらいはしろ」

「えぇ~? いいじゃん別に。私とあんたの仲だし?」

 

 そう言いながら勝手にソファーに座り、テレビを付けて、置いてある菓子を貪り食う悠花。うーん、どっからどう見ても休日のおっさんだ。

 

『今年は例年より早く、海開きとなりました!』

「おぉ!もう海入れるんだってさ!」

「ほー、そりゃよかったな」

「……反応薄っ!?」

 

 食器を洗いながら、適当に返事をする。すると、何か閃いたのか、悠花はこちらを見てニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「刀華の水着見れるかもよ?」

「そいつは魅力的ではあるが、この気温じゃ、アイツも暑いだのめんどくさいだの言うぞ」

「あぁ……それは確かにね」

 

 実際、俺だって暑いものは暑いのだ。日差しが肌を突き刺すような感覚には慣れない。そんなことを考えていると、不意にスマホが鳴る。画面を見ると、着信相手は一花さんだった。通話ボタンをタップして電話に出る。

 

『もしもし、零斗くん』

「おはようございます、どうかしましたか?」

『その、来週の金曜日って空いてたりする?』

「金曜ですか……特に予定はないですね」

『なら、刀華さん達も誘って、海行かない?』

 

 一花さんの誘いを聞き、少し思案する。まぁ、断る理由もないしいいか。俺は一瞬だけ背後にいるであろう悠花の方に目を向ける。

 

「アハハっ!」

 

 コメディ番組を見ながら、大口を開けて笑っている。嫁入り前の女の子がやっちゃダメだろ……

 

「……えぇ、良いですよ。他の方達には私から伝えておきます」

『うん、ありがとう』

 

 そのまま通話を終了する。すると、悠花はこっちを見ながらニヤついていた。

 

「随分と嬉しそうな顔で電話してんじゃん」

「……うるせぇ」

 

 否定しようと思ったのだが、言葉が出てこなかった。それほどまでに、自分でも気づかぬうちに喜んでいたということだろう。

 

「刀華と一緒に海に行けるんでしょ?良かったねぇ〜」

「だからうぜぇって……」

 

 こういう時のコイツは本当にウザい。そして調子に乗るのである。

 

「相変わらず素直じゃないね〜」

「ね〜」

「ほっとke……ん?」

 

 ふと、扉の方を見やると、そこには買い物袋を手に提げた刀華の姿があった。

 

「毎度言うが、来るなら事前に連絡くらい寄越してくれ」

「あら、ごめんなさいね?」

 

 全然悪びれた様子もなく、平然とした態度のまま刀華は椅子に座った。

 

「それで?二人とも一体なんの話をしていたのかしら?」

「今年は、いつものメンバープラス数人で海でも行こうって話だ」

「あは、良いわね……日程とはどうするの?」

「今の予定だと、来週の金曜日だ」

 

 そう答えると、刀華はとても楽しげな表情になった。

 

「なら、隣の県にお父様が保有する別荘があるから、お泊まりしましょうか」

「さっすが、社長令嬢だな、俺らとは考えが違う」

「もっと褒めてもいいのよ?」

 

 普通の学生ではなかなか実現しないようなことをさらっと提案してくるあたり、やはり財力が違うということだ。

 

「でも、いつものメンバーだと、かなりの大所帯だよね。移動の時とかはどうしようか?」

「私と恭弥が運転免許持ってるから、それぞれで運転して、零斗はバイクを一台お願いね。それでその後ろに一人乗れば二人分のスペースを確保できて、荷物は大分楽に運べるわ」

 

「よし、それで行くか。んじゃ、俺は他のメンツ誘っておくから、手配とかは頼んだぞ」

 

 それだけ言い残してその場を去る。リビングを出る直前、ちらりと見えた二人はとても幸せそうな笑みを浮かべていた気がした。

 

「……連絡ついでに、他のメンツも呼んで買い物でも行くか」

「え?なんで?」

「水着ねぇし、レジャー用品も買っておきたい」

「おっけー!それじゃ、早速グループチャットで声掛けてくる!」

 

 そう言って部屋を出ていく悠花。元気だな……あいつは。

 

「海に行くのなんて何年ぶりかしら」

「少なくとも四年以上は行ってないな」

 

 刀華と二人でソファーに腰掛ける。しかし、隣に刀華がいるというのは未だに違和感を覚える。なんかこう、恋人的なイベントが起きるんじゃないかと期待してしまう自分がいる。

 

「零斗はどんな水着が良いと思う?」

「なんだ急に」

「参考までに聞いておこうと思って」

「そうだな……」

 

 俺は基本的にシンプルなデザインが好きなのだ。派手過ぎず、地味すぎないようなそんな感じのデザインの方が好きだ。

 

「刀華だったらなんでも似合うだろ」

「そういうことじゃなくて……ちゃんと選んで欲しいの」

 

 頬を少し膨らせて、ジト目を向けられる。いや、だって実際何でも着こなすからそれしか言えないのよ。

 

「あぁ……わかった。俺の好みで良ければ選ぶけど」

「最初からそう言えばいいのよ」

 

 そして何故か得意げな笑みを浮かべる。なんだこの子、可愛すぎる。

 

「2人ともー!一時間後に近くのショッピングモールに集合ね〜!」

 

 部屋に戻ってきた悠花は、俺たちに告げてから出ていった。それにしても、こんなにも心躍るのはいつぶりだろうか?

 

「着替えてくるから、少し待ってくれ」

「えぇ、分かったわ」

 

 それから俺は自室に戻り、クローゼットを開ける。適当に見繕い、手早く着替える。

 

「お待たせしました、行きましょうか」

「えぇ、そうね」

 

 玄関に行き、靴を履いて外に出ようとすると、先に出て行ったはずの悠花がこちらをニヤつきながら見ていた。

 

「なんだよ……」

「別にぃ?」

「気持ち悪いな……んじゃ、行こうぜ」

「はいは〜い」

 

 そして、俺と刀華と悠花の三人で家を出て、目的地に向かう。電車に乗り、乗り換えをして、また少し歩くと、目的の場所に着いた。そこは全国展開している大手の大型商業施設である。

 

「零斗、こっちだよ」

「柊人」

「私達も居るわよ?零斗」

 

 入口付近にいた恭弥と鏡花、柊人と合流し、そのまま全員で店内に入る。中は人で溢れており、かなり賑わっていた。

 

「やっぱり夏休みだから、こういうところにも人がたくさん来るのね」

 

「とりあえず、水着コーナーまで行こう。話はそこからだ」

 

 先頭切って歩き出す恭弥に続いて、そのあとについて行く。

 

「これとかどうかしら?」

 

 刀華が手に取ったのは、無地の白いビキニタイプだ。シンプルイズベストというやつだろう。

 

「あ、じゃあ私はこれにする〜」

 

 悠花が選んだのは、鮮やかな黄色のタンキニだ。なんとも悠花らしいセンスだ。

 

「柊人はどう思う?」

「悪くないんじゃない?悠花らしいと思うよ」

「そっかぁ」

 

 笑顔で返事をする柊人。あいつも結構、表情豊かになったものだ。今度は鏡花の方を見てみる。すると……

 

「さ、貴方が選んで?」

「……………………」

 

 恭弥が固まっていた。それもそのはず、今彼の目の前にはフリルのついた黒色のセパレートタイプの水着と、黒のレースがあしらわれた白のワンピースタイプの水着が置かれているのだ。

 

「どうかしたのかしら?」

「あ、いや……その」

「ほら、好きな方を選んで良いわよ?」

「うぐぅ……」

 

 完全に弄ばれている恭弥であった。しかし、よく考えてみると意外といい組み合わせかもしれない。

 

「……黒の方が好ましいとオモイマス」

「あら?どうして?」

「大人っぽさが出ていていいなぁ……と思いまして」

「そう……ならそれにしようかしら」

 

 恭弥……強く生きろよ……。そう思いながら、水着を買うためにレジに向かったのだった。その後はレジャー用品を買い揃えるため、店を巡る。浮き輪、ビーチボールなどを買った。

 

 その後、一旦昼食を取ることにし、フードコートへとやってきた。席を確保してから、各々注文した品を食べ始める。

 

「美味しいですね……火入れが少々甘い気がしますけど」

「それはそうでしょう、ファストフードなんですから」

「まあまあ、これもたまに食べるからこそ美味しく感じるんだよ」

 

 そんな会話をしながら、食事を終える。

 

「ちょっとトイレ行ってくるね」

「私も行くわ」

「なら、私も行くわ」

 

 女性陣が揃って立ち上がると、俺たちに一言かけて行った。

 

「先程は災難でしたね、恭弥」

「言うな……言わないでくれ」

 

 頭を抱えて落ち込む恭弥を慰めるために、軽く肩を叩きながら笑いかける

 

「ドンマイ」

「君達、楽しんでるだろ!」

「まさかぁ?そんなわけないじゃないですか」

「嘘つけ!目が笑ってるぞ!?」

 

 やれやれ、恭弥は面白い反応をしくれるからつい揶揄いたくなってしまう。

 

「……毎度の事ながら、全員愛した女性は変わり者ですね」

「確かにね」

 

 柊人と二人で苦笑していると、背後から視線を感じた。ふと横を見ると、そこには俺達を見つめる鏡花の姿があった。

 

「……そういえば、恭弥。鏡花の何処に惚れたんですか?」

「……何故、このタイミングで?」

「いえ、単純に気になりましてね」

 

 俺は素直に疑問をぶつけることにした。すると彼は少し言い淀んだ後、口を開いた。

 

「最初は、綺麗で美人だとは思っていたよ。でも、それ以上に僕を助けてくれたあの日の彼女に惹かれたのだと思う……」

 

 恥ずかしいのか俯きがちで話す恭弥だが、言っていることはとても共感できるものだった。

 

「そうでしたか……」

「ただ、鏡花と付き合うにあたって、一つだけ決めたことがあるんだよ」

「……どんなことを?」

 

 柊人が興味深げに尋ねると、恭弥が自信満々な顔でこう言った。

 

「鏡花のことを幸せにする……とね」

 

 ちらりと鏡花の方を見ると、少し目を潤ませていた。が、すぐに涙を引っ込めて、笑顔を見せた。

 

「本人には、言わないでください?」

「あぁ、わかっているよ」

 

 俺達はそれから、三人が戻ってくるまで談笑しながら待った。

 




鏡花さんの貴重な赤面と恭弥さんの惚気話でした〜
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