Side 零斗
水着及びその他の品を買い揃え、その後を準備を終えて、予定通りの金曜日。全員が俺の家に集まり、レンタルした車に荷物を積んでそれぞれの車に乗る。恭弥運転する車には柊人、悠花、鏡花、ハジメ、白崎。刀華の運転する車には雫、園部、中村、谷口、幸利、浩介。そして俺のバイクには一花さんが乗る。
「さてと……」
俺はバイクに跨る。後ろにいる一花さんの胸が背中に当たっていることは気にしないでおこう。
「では、行きましょうか」
「そうね。皆、シートベルト締めた?」
「大丈夫です!」
全員から返事を貰い、一花さんもしっかり捕まったことを確認し、俺はアクセルを回す。後ろからは一花さんの楽しそうな声が聞こえてくる。
────────────────ー
二時間程して、パーキングエリアに着いた。そこで予定通り休憩することになった。
「疲れましたぁ……」
「フフ……お疲れ様です、一花さん。でも後少しなので我慢して頂けますか?」
「はい!全然平気ですよ!!」
元気な声で答える一花さん。今日は妙にテンション高いなぁ……俺はパーキングエリアにあるレストランや土産屋の複合施設を見て回ることにした。
「う〜ん……どうしようかな……」
「どうかしましたか?」
「あ、零斗……」
園部がある飲食店の前で悩ましそうにメニューを眺めていた。メニューを見るとデカデカと『地域限定!』と書いてある。
「……それ食べたいんですか?」
「うん。でもちょっと値段が高くって……」
確かに……こういう所の物は微妙に高く、少し買うのをためらうが、せっかくの旅行だし、いいだろ。
「すみません、地域限定のロールケーキ二本ください」
「はいよ!!2つで840円だよ」
財布を出して代金を支払う。店を出て園部の方に歩いていくと園部は驚いていた。
「えっ!?お金払うわよ?」
「まあまあ、気にしないで下さい」
そのまま俺は歩き出す。すると園部が追いかけてきて俺の隣に並ぶ。……何か距離近くないか? そんなことを思っていると園部から話しかけてきた。
「……ありがとね」
それだけ言うと、駆け足で停車している車に行ってしまった。
「素直じゃないねぇ……」
────────────────ー
あれからしばらく走って、刀華と鏡花の親父さんが保有して別荘に着いた。中に入ると広々としており、リビングにはダイニングテーブルがあったりキッチンも綺麗だったりと、生活感のある感じになっていた。
「これは凄いね……」
「うん!そうだね、ハジメ君!!」
「こら、はしゃがないの」
「あぅ……ごめんなさい……」
着いて早々騒ぎ始める白崎を宥める雫だったがその顔はとても嬉しそうだったので内心とても楽しみにしてたんだろうな。
「荷物を整理して、着替えが済んだら……海に行きましょうか」
恭弥の言葉を聞き、女性陣は奥の大部屋を使い、俺らはその隣にある部屋で着替えを済ます。と言っても男なので直ぐに着替えは終わり、パラソルやビーチボール、ブールシートなんかを持ってリビングで待機している。
「……相変わらず、零斗っていい身体してよな」
そう言って来たのは幸利だった。浩介も同意するように首を振る。
「そんな事ありませんよ……誰だって鍛えればこうなれますよ?」
「ウソだっ!!」
「噓じゃありませんよ、ハジメがその証拠です」
そういうと二人は納得したように俺から視線を外す。そして、ハジメをじっと見つめる。
「……僕もそこまで筋肉質ではないんだけどなぁ」
「ウッソだろお前!!」
何故か驚く二人に苦笑いするしかないハジメは肩を落とした。
「でも実際さ……零斗の体つきの方が羨ましいと思うけどなぁ……」
「分かる。身長高ぇし、体格もいいし、イケメンだしなぁ……」
「褒めても何も出ませんよ?」
「いらんわ!!」
などと話ながら待っていると、準備が終わったのか女子達も出てきた。
白崎は上下白色のセパレートタイプのビキニタイプであり、スラッとした体型によく似合っている。雫は水色でシンプルなデザインのビキニタイプでスタイルの良さも相まってか少しエロく感じる。園部の方はまだ幼い感じが出ており、純情な印象を受ける。中村は腰に大きなリボンのついたオレンジ色のホルターネックタイプで露出は多めだが可愛らしい見た目と性格のせいで色気があまりない。谷口は濃い緑色のワンピースタイプの水着で清楚感があり、普段の元気さとはまた違う雰囲気を感じる。一花さんは赤と黒のボーダー柄ビキニで肌の面積が多く、谷間が見えるくらい大きい胸が強調されている。
「どう…… かしら?」
全員を代表して、雫が聞いてくる。正直に言えば全員が魅力的で目を離せないのだが……
「……皆、よく似合ってますね」
「うん、すっごく可愛い……」
俺に続いて、ハジメや幸利達も感想を言う。すると、白崎が真っ先に反応し、飛び跳ねた。
「本当!?良かった!!」
「よ、よかった……」
口々に喜びの声を上げる皆を見て、自然と笑みが溢れる。すると、一花さんが話しかけてきた。
「ど、どう……かな?変じゃ……無い?」
一花さんは恥ずかしそうにしながら俺に聞く。
「えぇ、とても綺麗で可愛らしいと思います」
素直に思った言葉を口にすると、一花さんは顔を真っ赤にした。
「ありがとう……」
それだけ言うと、白崎達の方へ駆け出した。
「そろそろ行きましょうか」
「はーい!」
「わかりました」
悠花を先頭に、海へ向かって歩き出し、俺らもそれに続く。砂浜に着くと既に多くの人で賑わっていた。
「早速だけど遊ぼうぜ!!」
そう言った浩介を筆頭に、それぞれ遊ぶ場所を決めていく。
「よいしょっ……と」
俺はビーチパラソルを立てて、レジャーシートを広げる。それから荷物を置くと、その隣に腰掛ける。
「ハジメ達は泳ぎに行ったみたいですね」
「……そうだな」
恭弥と用意した飲み物を飲みながら海を見つめる。目の前に広がる光景はとても美しく。
「綺麗だな」
思わず声に出る程だった。そんなことを思いつつ缶コーヒーを飲む。
「……なぁ、恭弥」
「なんだ?」
「俺さ、ここにいていいのかな?」
何気なく、疑問を漏らした。それに対して、恭弥は何も言わずにコチラの言葉を待っていた。
「……どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。俺は、お前達に幸せになって欲しいと思っている。だから、俺が居なくても、幸せな生活を送れるようにしてきたつもりだが……やっぱりダメだな。……心配になるんだよ」
そう言って、遠くにいるハジメ達を見る。楽しそうに遊ぶ彼女達を見ると安心するが、それと同時に不安にもなる……本当は、自分がこの場にいていいのだろうかと……
「……それは違いますよ」
いつの間にか、俺の隣に来ていた柊人は俺の目を見ながら話す。
「貴方は確かに僕たちの為に色々としてくれて、今もこうして付き合ってくれています。でも、今のこの状況は零斗が作ったものではありません。みんなが望んだ結果です。それに……」
そこで一旦言葉を区切ると、優しい笑顔を浮かべながら……
「僕たちは今の生活が好きですよ」
そう言ってくれた。
「……ははっ、そっか……それなら、いいんだけどな……」
「大丈夫ですって。ほら、せっかくの旅行なんですから、楽しまなきゃ損ですよ?」
「あぁ、分かったよ」
柊人に手を引かれながら、ハジメ達の居る方へと歩いていく。
「零斗もおいでよ!!楽しいよ!!」
ハジメが満面の笑みで俺を呼ぶ。
「……すぐ行きます」
手を振りながら、再び海の方へ向かう。……今はこれで良いのかもしれないな。
「今日は遊び倒すぞー!!」
「「おぉおおおおおお!!!」」
男子達がテンション高く叫び、女子もそれに釣られてか、元気な声で返事をする。
「最初はどうする!」
「ビーチバレーでどうでしょう?」
「賛成!私もやりたい!!」
俺の提案に悠花が賛同して、他の人達もそれに賛成したので、最初の種目が決まった。
チーム分けは俺とハジメ、悠花と白崎、柊人と刀華、園部と雫、一花さんと鏡花、幸利と浩介、中村と谷口となった。
「華が……無い……」
「うるせぇ……どうしろっていうんだ……」
浩介と幸利が項垂れ、それを見ていたハジメと柊人が苦笑いをしながらコートに入る。初戦は園部、雫チームと一花、鏡花チームだ。審判役は俺と柊人になった。
「頑張りましょうね、一花ちゃん」
「は、はい!よろしくお願いします!」
一花は緊張しているのか、ガチガチになっていた。そんな中、笛の音と共に試合が始まる。
「行くわ……よ!」
鏡花チームからのサーブだ。鏡花はボールを高く上げると、助走をつけて走り出し飛び上がる。こうして俺達は楽しくビーチバレーを始めた……筈なんだが……
──────ー十数分後──────ー
「フッ!」バゴンッ!
「甘いッ!」
到底、ビーチバレーのサーブをやっているとは思えない轟音と共にボールが相手チームのコートに落ちる。そして、それを拾うのは刀華である。
何故こうなったかと言うと、序盤こそ、普通のバレーをしていたのだが……俺とハジメチーム、柊人と刀華チームの対戦になった途端に、こうなってしまった……
「柊人!」
「ナイス、トス……せらぁ!」
「ふぐぁ!!」
柊人の殺人スパイクが俺の顔面にクリーンヒットする。痛ってぇ……
「ごめん、つい」
……『つい』で、人を殺せるスパイクを放たないでくれませんかね?
「そちらがそのつもりならこちらも本気で行かせていただきます。ハジメ、トスは任せます」
「う、うん……」
お鬼ぃさん頑張ちゃうぞー(殺意)!俺はボールを上に投げると、タイミングを合わせてジャンプし、腕を振る。
「……フッ!」ズドンッ!
その瞬間、砂浜に大きなクレーターが出来上がり砂煙が巻き起こる……と思われたが……
「狙いが見え透いてるわ!」
ボールの落下地点に刀華が横っ跳びで入り込み、ボールを弾き飛ばす。なんて反射神経だよ……
「柊人!決めてしまいなさい!」
「了解!」
柊人は弾丸のように飛び出すと、空中で体を捻り……
「はっ!」
放たれた凶弾は、ハジメのいる場所へと突き進む。
「ひゃあ!?えっと、えいっ!」
しかし、ハジメは慌てながらも綺麗なレシーブをして、俺の方へとしっかり飛んで来た。
「ハジメ!見せ所ですよ!」
「えぇ!?」
ハジメは戸惑いながらも、しっかりと構えを取ると、勢いよく振りかぶった。全力のフルスイング……そして、綺麗に空振りするハジメだった。
「……ゲームセット。勝者、柊人&刀華チーム」
試合終了の合図と同時にギャラリーが声援を送る。
「ドンマイです、ハジメ」
そう言って、肩に手を置く。すると、恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして俯くハジメ。
「さて、次はどうしましょうか?」
一度、恭弥の所まで戻り、水分補給をしながら考える。
「先にお昼ご飯にしない?私お腹空いちゃって……」
悠花が照れ気味に言う。腕時計を見ると、時刻は十四時を過ぎていた。そろそろ昼食の時間か。
みんなも同意してくれたようで、全員で海の家に行くことに決まった。海の家は焼きそばやイカ焼きなど定番メニューから、浜焼きなんかもあり、かなり品揃えが豊富だった。
「全員、決まりましたか?」
全員が手を挙げてくれた。それを見た店員さんが注文を聞いてくる。それぞれ頼んだものを紙に書き込むと、会計を済ませて席に戻った。
しばらくして、注文した料理が運ばれてきた。
「おぉ……美味しい……」
一口食べると、悠花が感動したように呟いた。
「確かに。これは中々いけますね……」
俺も食べながら呟く。ちなみに俺が注文した料理は、生シラス丼だ。魚好きには堪らない一品だと思う。
────────────────ー
「さて、昼食も済んだ事ですし……ここから先は自由行動にしましょうか」
俺の提案に皆賛成してくれて、昼食後は各自の自由時間となった。女性陣はバナナボートをやるようでそっちに行った、恭弥と柊人、浩介、幸利はサンドアートをやっていた。俺とハジメは釣り道具の貸出があったから、海釣りをする事にした。
「釣れるかなぁ?」
「まぁ、やってみないと分からないです」
竿を借り、餌を付けて海に投げる。二人で並んで反応があるまで待つ。ゆったりと時間が流れてゆく。
「……ん?なんか引いてるよ!」
ハジメの声につられて見てみる。確かに何かしらの感触を感じた。慎重にリールを巻き上げてみると……
「おぉ!かなりの大物ですね!!」
そこに居たのは七十センチほどもあるカサゴだった。
「すごい!こんな大きいの初めて見たかも!」
その後もハジメの協力もあって魚を何匹か釣る事ができた。そして、時間が十七時半になり、撤収することになったのだが……
「全然釣れないじゃん……」
ハジメが意気消沈しながら呟く。
「そんな時もありますよ……」
慰めるように肩を叩き、別荘に戻る。既に俺とハジメ以外のメンバーは帰ってきていたようだった。
「二人ともおかえり〜」
「ただいま帰りました。夕食の準備するので、少し待っていてください」
荷物を置きながら言う。帰る途中で買った野菜などの下処理から初める。献立を考えながら、キッチンへと向かうが……
「私も手伝う……来る時のお礼もしたいし」
園部がやって来て、手伝ってくれることになった。園部は料理の腕が良いので、とても助かる。食材を洗い、カットしていく。
ある程度準備が終わったら、調理開始だ。
「それじゃあ、始めましょうか。よろしくお願いします、園部さん」
「うん、任せて」
園部の包丁捌きはとても綺麗で無駄がなかった。俺はその様子を見ながら、釣ってきた魚を卸していく。今日のメインは刺身盛り合わせにすることにしたので、鮮度が落ちないようにスピード勝負になる。俺達は黙々と作業を続けた。
「よし、終わりですね」
「そうだね。結構な量になったけど大丈夫そう?」
「はい。これくらいなら余裕ですよ」
そう言って、魚の切り身を冷蔵庫に入れていく。全ての仕込みが終わる頃には十九時になっていた。
「そろそろみんなを呼んで来てくれませんか?」
「了解。行ってくるわ」
そう言って園部を見送り、皿の用意をする。そして、二十分ほどして全員が集まった。
「さて、それでは食べましょうか」
『いただきます!』
全員で食事を始める。魚は新鮮なだけあってどれも美味しかった。特にカサゴは絶品だった。
「う〜ん!美味しい!」
「本当ね」
悠花と刀華が絶賛している。他のみんなも満足そうにしているようだ。
『ごちそうさまでした!』
「はい、お粗末さまでした」
全員が完食したのを確認してから、片付けに入る。食器を流し台に置き、水に浸す。リビングに移動すると、ゲームをしているハジメ達がいた。どうやらみんな、夜通し遊ぶつもりらしい。
「遊ぶのはいいですが、程々に……ですよ?夏休みだからと言って油断していると体調崩しますからね?」
注意すると、全員が苦笑いしていた。これは絶対聞かないパターンだな……
ため息を吐きつつ、二階に上がり、ベランダに出る。そこには、月明かりに照らされている海が広がっていた。
「あれ?湊莉君?」
声をかけられたので振り向くと、一花さんが立っていた。寝る前だったのか、淡いピンク色のネグリジェ姿だった。
「こんな時間まで起きているとは……感心しませんね」
少し咎めるように言う。少し頬を膨らませながら、俺の隣まで歩いてくる。
「それは、湊莉君にも言える事でしょ?」
「……フフフ、そうですね」
言い返せなくて笑ってしまう。一花さんもつられて笑う。
「星が綺麗ですね」
「……えぇ、そうですね」
あれぇ?なんで、一花さん顔真っ赤にしてんです?……あぁ、そういう感じのやつ?
「一花さん」
「ひゃい!」
「……月も綺麗ですよ?」
そんな彼女に微笑みかける。俺の言葉の意味を理解したようで、顔を更に赤くする。
相変わらず、魔性の男の零斗君でした〜。