Side 零斗
これを読んでいる君(成人済みの方)はお酒は好きかな?俺も前世じゃ、嗜む程度だったが呑んでいたよ。そんな君達はお酒に強い方かな?俺はまぁまぁ強い方だったよ……未成年の今じゃ、身体が変わったし強いかどうかは知らないけどね。
「んぅ〜〜れいろぉ……」
「…………」ポッー
「なんでさ……」
……お酒って怖いね。普段は絶対にこんな事しない刀華と八重樫が甘えてくるなんてさ……あぁ、もちろん呑ませてないよ?雰囲気酔いってやつだ。
「マスター……今世でも女難の相があるようだな……」
エミヤが生暖かい目で見つめてくる。
「その目は辞めてください……自分が惨めに思えてきますから……」
なんだろう……この居心地の悪さは……というか、この二人は酔うとこうなるのか……普段の様子からは想像できないくらい甘えん坊になるんだな。
「どうしてこうなったんでしょう……」
俺は刀華の頭を撫でながら呟く。ちなみに俺が居るのは二階の自室で、一階のリビングではサーヴァント達が酒盛りしてる。
なんでこうなったんだろうなぁ……
──────────数時間前──────────
「坊主!一緒に呑もうぜ!」
「安珍様!わたくしがお酌致します!」
ドアがぶっ壊れるんじゃないかってくらいの音を立てて開かれる。開けた張本人であるキャスニキは両手に酒の入ったコンビニ袋をぶら下げ、清姫は相変わらずだった。
「……なんでさ」
思わず呟いてしまったのも仕方ないだろう。
「お、お邪魔します」
「失礼するぞ、マスター」
キャスニキの後ろから顔を覗かせたマシュと、その隣にいるエミヤ。なんだこの組み合わせ。いや、エミヤなら安心だけどさぁ……なんかこう、意外というか……
「おい坊主、なーんか失礼なこと考えてないか?」
「いえ全く」
勘が鋭いにも程があるだろ。
「んで?どうしたんだ?」
俺の質問に答えたのは清姫だった。
「安珍様にご奉仕するためですわ!!」
「あ、そういうのは間に合ってるから」
そう返すと清姫は一瞬だけ悲しげな表情を見せたがすぐにいつも通りに戻った。
そんなことを気にする様子もなく槍ニキはテーブルの上に酒を置いていく。そしてそのままソファに腰掛けて、酒を開けて飲み始めた。
「すまないね、ドラマの撮影が終わったところでね、その報告を含めて打ち上げをする事になったんだが……」
「まさかとは思うが、俺の家で打ち上げやるって事になったのか?」
エミヤの説明に俺はため息をつく。確かに撮影終わったら打ち上げとか普通にあると思うけどさぁ……せめて連絡くれよ。エミヤとマシュは申し訳なさそうに頭を下げる。そんなやり取りをしているうちに他の連中も集まってきた。
「ふっ、貴様の家で飲むなど滅多に無い機会だからな。来てやったぞ!」
「別に呼んでねぇんだけど……」
英雄王は腕を組みながら偉そうに踏ん反り返っている。
「センパイ、貴方のラスボス系後輩が来てあげましたよ♡」
「あ、そう……玄関は回れ右して、突き当たりにあるぞ。とっと帰りやがれください」
「酷くないですか!?︎」
BBはぷっくりと頬を膨らませて抗議してくるが無視だ。
「主殿、拙僧も馳走になりに来たでござる」
「私も来ちゃいました♪」
「あら、賑やかな宴会ね」
次々と部屋に入ってくるサーヴァント達。もはや大所帯だ。しかも、みんな手土産持参で来るものだから余計にタチが悪い。とりあえず、キッチンから人数分のグラスを持ってきて注ぐ。
「おっ!気が利くじゃねえか!坊主も一杯どうだ?」
「いらん、俺は未成年だ」
「いいじゃねえか、今日は無礼講だぜ?」
「無礼講の意味わかってるか?」
呆れたように言う俺に構わず、キャスニキは勝手にコップを取って酒を入れていく。それを見ていた清姫も負けじとお酌をし始めた。
「旦那様!わたくしのお酌で飲んでくださいまし!」
「いや、大丈夫だから……」
「まあまあ、そう言わずに飲めや」
「ちょ、待てって……」
結局、無理矢理口の中に流し込まれた。
「んぐっ……げほっ……まじで無理やりすぎるだろ……」
「ほれ、もう一杯」
「もう呑まんからな……」
俺は差し出されたコップを受け取らず、手で制する。
「すまんが、俺は自室に戻るからな」
「えぇ〜〜なんでだよ〜」
「お前らが酔った時に何するかわかったもんじゃないからだ」
酔うと性格が変わる奴もいるからな。俺の貞操が危ない後ろからはブーイングが聞こえてくるが気にしない。自室に入り、ベッドに倒れ込む。さっきの酒が効いたのか、体が熱い。
「はぁ……軽く汗でも流すか……」
俺は重い体を起こして浴室に向かう。服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。汗を流しながら、先程の事を考える。
「なんか妙に疲れたなぁ……特に動いた訳じゃないし……まぁいいや、寝よ……」
そう呟きながらも、体は熱を帯びている。違和感を覚えながらも自室に戻り、ベッドに腰掛ける。
(なんでこんなに暑いんだよ……)
そんなことを考えていた時だった。不意に扉が開く音がして振り返るとそこには刀華と八重樫がいた。二人とも俯いていて、表情は伺えない。
「どうしましたか?それより何故私の家に?」
「「…………」」
二人は何も答えず、こちらに向かって歩いてくる。俺の目の前まで来たところで足を止め、ゆっくりと顔を上げた。
「……え?」
二人の表情を見て思わず声が出た。目は虚ろで焦点が合っていない。頬が僅かに赤みを帯びている。
「ど、どうしたんですか……?」
俺の声には反応せず、ただじっと見つめてくる。
「あの……ちょっと……怖いですよ?」
俺がそう言うと、二人は何かをブツブツと呟いている。何を言っているのかわからないが、あまり良いことだけはわかる。すると突然、刀華が俺を押し倒してきた。
「え?ちょ、まっ……!!︎」
抵抗するも、完全に組み伏せられてしまった。俺の上に馬乗りになっている刀華の表情はどこか色っぽいものを感じるが今はそんなことを考えている場合ではない。
「あ、あのですね?これはどういう状況なのか説明して欲しいのですけど……」
俺の言葉を無視して、彼女は首筋に顔を近づけてきた。そしてそのまま、顔を埋めて匂いを嗅ぎ始めた。
「……くん……くん……すぅーはぁー」
「んっ……くふっ……」
生暖かい吐息が肌にかかり、背筋がゾクッとする。
「あ、あの……本当に止めてください……」
「……石鹸の……いい香りがします……」
「ちょっとたげ……汗の匂いが……残ってるけど……この匂い好きかも……」
俺の話など聞く耳を持たず、トリップし続けている。やばい、このままだとまずい……なんとかしてこの状況から抜け出さないと…… しかし、両腕はガッチリ掴まれており身動きが取れない。必死にもがくも、ビクともしない。
「マスター、こちらに二人組の──────失礼した!」
助けが来た!と思った矢先にすぐに引き返そうとするエミヤ。
「ちょ!?見捨てる気ですか!?︎」
「すまない!私にはどうすることもできないんだ!」
俺は渾身の力を振り絞って拘束から逃れようとするも、やはりビクともしない。はぁ……しゃーない……
「刀華」
「……何かしら」
「離れてくれないかな?」
「いや」
即答されてしまった。
「いや、離れてくれないと困るんだけど……」
「私は困りません」
……ダメだこいつ早く何とかしないと……今度は俺の膝に頭を置き、頬ずりし始める刀華。
「ん〜♡」
「ちょ、やめ……」
俺は慌てて彼女を引き剥がそうとした時だった。
「……むぅ」
刀華とは逆の方から声が聞こえたのでそちらを見ると、八重樫がいた。彼女は俺の顔を見上げている。
「えっと……八重樫さん?」
「なに?」
「どうして私の背中に抱き着かれていらっしゃるのですか?」
「こうしたかったから」
俺は助けを求めるようにエミヤを見るが目を逸らされた。
「あの……出来れば離れて欲しいのですが……」
「嫌」
「ホントにどうしましょう……」
──────────現在──────────
と、こんな感じで今に至る訳だが……どうすりゃいいんだ?無理矢理引き剥がすのは危険やし、かと言って説得するのは絶望的だし……こうなったら最後の手段だ……
「刀華、こちらに顔を向けくれないかい?」
「なに?」
彼女は素直に従ってくれたのでその隙を突いてキスをした。
「んっ……ちゅ……」
「んぐっ!?︎んぅ……んっ……」
舌を入れて歯茎をなぞったり、彼女の口内を犯していく。少ししてから口を離すと、唾液が糸を引いていた。刀華は顔を真っ赤にして……
「……キュー」
気絶してしまった。刀華はこれでいいとして……とりあえず、八重樫をどうにかしないとな……
「八重樫さん、一度離れて頂いてもよろしいでしょうか?」
「……(フルフル)」
無言で首を横に振る八重樫。
「あの……そうされると動けないのですが……」
「……(フルフル)」
またもや黙ったまま首を振る。……仕方ないか。あまりこういうことはしたくなかったが…… 俺は彼女の肩に手を置いてグッと引き寄せた。簡単にバランスを崩した彼女が倒れ込んでくるのを抱き留め、そのままベッドに押し倒した。
さっきまでの俺と同じ体勢になったところで、俺は彼女に覆い被さるような形になる。彼女は驚いたような表情を浮かべていた。
「私だって、男なんですから……あまり派手な行動をするようなら……襲っちゃいますよ?」
そう言ってニヤリと笑うと、八重樫は顔を赤くして視線を泳がせ始めた。しばらくすると観念したのか小さくコクリと首肯する。
「れ、れいとになら……襲われても……いいよ」
「……そういうことを軽々しく言わない。じゃなきゃ……」
ゆっくりと顔を近ずけ、八重樫の唇に指をあてがう。その上から自分の唇を重ねる。
「こうして、本気にしてしまいますよ?」
「ひぅ……」
恥ずかしくなったのか顔を両手で隠してしまった。まぁ、これで大人しくしてくれるだろう。俺は彼女から体を離し、ベッドから降りて立ち上がり、自室を出る。
「相変わらずだな、共犯者(マスター)よ」
「見てたのかよ……趣味悪いだな……」
影からエドモンがぬるりと現れて話し掛けてきた。俺はそれに苦笑いで返すことしか出来なかった。
「それで?二人を酔わせたのは?」
「検討は付いている筈だろう?あの数学者だ」
「あの腰痛持ちの老害ジジイ……エド、客室に二人分の布団敷いといてくれ」
俺がそう言うと彼は一瞬目を見開き、すぐにいつものキザったらしい笑顔に戻り、客室に向かって行った。
(勝手に動かんでくれよ……俺の体……)
飲まされた酒の影響なのか、理性が軽く飛び、普段じゃ絶対にしないであろう行動を取ってしまったことに心の中でため息をつく。
なんだこれ?(深夜テンションで書き上げた物を見て)