Side 零斗
『10月31日』……それはハロウィン。子供たちがお菓子を貰いに家々を回るイベントである。カルデアのメンバー達からは大量のお菓子とイタズラ()を貰ったせいか少し疲れたが……
「「「トリック・オア・トリート!」」」
明るく快活な声が耳に届く。どうやら来たみたいだな。玄関を開けると可愛いらしい衣装に身を包んだ子供達がカボチャモチーフのカゴを持って笑っていた。
「いらっしゃい、今年もかわいい仮装ですね」
そう言って俺は子供たちの頭を撫でる。この子たちは毎年来てくれる常連さんの子供達だ。
「一人一つですよ〜」
「「「はーい!」」」
俺からお菓子を受け取った子供達は嬉しそうな表情を浮かべて走っていった。扉を閉じて、一度リビングまで戻る。さてと……もう少ししたら次の客が来る時間かな?
コンコン「噂をすればなんとやら……だな」
キッチンに行き、渡す用のお菓子を幾つか持ち、玄関まで向かう。
「トリック・オア・トリート!……なんーて……」
「一花さん?」
そこには魔女の衣装を着た一花さんがいた。露出は少ない方だが、その分ボディラインがはっきりしていて目のやり場に困ってしまう。
いつもより大人っぽい雰囲気の一花さんに少しドキマギしながら平静を装って話す。……まぁ、こんな美人が目の前に現れたんだ。仕方がないと思う。うん。
「……どうですか?似合ってますか?」
くるりとその場で回り、衣装を見せてくる一花さん。
「はい。とてもお綺麗ですよ」
素直な感想を伝えると彼女は頬を赤らめて微笑みながら言った。
「ありがとうございます!」
頬を僅かに赤らめながら、言う一花さん。うーん、いい笑顔。……っと、そうだ忘れる所だったな。俺は手に持っていた袋からお菓子を取り出した。
「どうぞ……ハッピーハロウィンってやつです」
「わっ!嬉しいです!じゃあ私からも……ハッピーハロウィン!」
一花さんから渡されたお菓子を受け取る。中にはカヌレが入っていた。
「ありがとうございます」
「じゃあ、私はこれで失礼しますね」
「ちょっと待ってもらえませんか?」
「え?」
俺は咄嵯に彼女の手を掴む。いきなり手を掴まれた一花さんは驚いたような表情をしている。
「この後……大体八時頃からいつもの方達でハロウィンパーティーをするんですが……良ければでいいのですが、参加しませんか?」
「ふぇ!?」
なんか変なこと言ったか?俺? 一花さんの顔を見ると、顔が真っ赤になっている。
「えっと……あの……その……」
俯きがちに視線を泳がせる一花さんを見てるとなんだか申し訳なく思えて来る。
「すみません。急にそんなこと言われても迷惑ですよね……」
「いえ!全然大丈夫です!寧ろ行きたいくらいですけど……」
「本当ですか!よかった……」
安堵のため息をつく。断られたらどうしようかと思ったよ……
「でも、なんで誘ってくれたんですか?」
首を傾げて聞いてくる一花さん。可愛い……じゃなくて。理由か……正直特にこれといった理由はないんだよな……強いて言えば……
「日頃の感謝と……せっかくの催し物ですし、仲のいい人達と一緒に過ごしたいっと思いまして……」
「そっか……嬉しいなぁ……」
そう呟くと一花さんは笑った……うん、やっぱりこの人には笑ってて欲しいな。
「じゃあ、お言葉に甘えて参加させてもらいます」
その言葉を聞けて安心した。そして、時計を確認するともうすぐ七時になるところだった。
「後一時間ほどで開始時間ですし、家の中でお話でもしていましょうか」
「いいですね!」
「フフフ……元気ですね……それでは、少し準備してきますね」
一花さんをリビングに案内して、俺は部屋に戻り、仮装はする予定ではあったのだが……如何せんなぁ……
ベッドに放り投げられているホッケーマスクとボロボロの衣服を見やる。はぁ……ミスクレーンさん、クオリティ高いのは良いけど……これはなんでもよぉ……
「これじゃ、子供達にトラウマ植え付けかねんぞ……」
とりあえず、服だけ着替える。ホッケーマスクは服の内側にしまい込み、部屋を出る。
「湊莉……くん?……その格好……」
「……何も言わないでください……」
リビングに戻ると一花さんは目を丸くしていた。俺は自分の仮装が恥ずかしくなり、思わず顔を手で覆う。
「ごめんなさい!変な意味で驚いてるんじゃないんですよ!すごく似合ってます!カッコイイと思います!」
「あぁ……そう言ってくれるとありがたいです……」
少し気を取り直したところで、テーブルに飲み物を置きながら座っている一花さんの向かい側に腰を下ろす。
「今更なんですけど、その衣装って……」
「えぇ……まぁ、簡単に言えばジ○イソンです」
そう言うと一花さんは苦笑いを浮かべた。あれ?なんかマズかったかな……
「もしかして……何処かおかしな所ありますか?」
「いえ!そういうわけじゃないですよ!ただ……なんと言いますか……その……私としては……湊莉君なら吸血鬼とか、狼男の方が似合うんじゃないかなぁって思いまして……」
「あぁ……なるほど」
一花さんの言葉を聞いて納得する。確かに、言われてみると……うん、そっちの方がいい気がしてきた。
「……よし、ちょっと買ってきます」
「え!?」
「冗談ですよ」
慌てる一花さんを見て笑う。本当に面白い反応してくれるよな。
「……なんか酷いです……」
頬を膨らませながら拗ねる一花さん。可愛い。
(ピンポーン……)
玄関のチャイムが鳴る音が聞こえてきた。誰か来たみたいだな。まぁ、多分いつものメンバーだろう。玄関のドアを開けるとそこには予想通り、仮装をした皆がいた。
「トリック・オア・トリート〜!お菓子を寄越せー!」
「はいはい……」
相変わらずの悠花である、ちなみに服装は黒猫モチーフの魔女だ。その後ろにはフランケンシュタインに扮する恭弥に、ペスト医師の格好の柊人、ゾンビシスターの鏡花、キョンシーの格好のユエ、全身黒タイツでカボチャ頭の浩介?が居て、何故かクラシカルタイプのメイド服のハジメに、ドラキュリーナの刀華が居る。
「うぅ……なんで僕がこんな格好なんだよぉ……」
「右に同じく……」
「仕方ないじゃん!くじ引きで決まったんだからさ!諦めなよ!それより早く!お菓子!ちょうだい!」
嘆く二人を他所に、悠花は俺に向かって手を差し出してくる。
「お菓子は後で渡しますから……他の方達は?」
「香織ちゃん達は少し遅れるってさ……なんでも道中で、騒いでた人達が軽トラを横倒しにして問題になったらしくて、交通規制が入っちゃたみたいで……」
それを聞いた俺は頭を抱える。またか……最近こういうの多いんだよな……ちなみに今日来るはずの他のメンバーは白崎、雫、谷口、園部、中村、幸利の六人だ。
「了解しました。とりあえず、中に入ってください。準備は出来ているので」
「お邪魔しまーす!」
全員をリビングに通す。
「あっ、いっちゃん!」
「悠花さん、こんばんわ。衣装とっても似合ってて可愛いですね」
「フフーン、そうでしょ?」
そんな会話をした後は、皆ハロウィンパーティーを楽しんだ。作った料理に舌鼓を打ち、ゲームをしたり、写真を撮ったりと、賑やかな時間を過ごしていたんだが……
「……電車止まってますね」
「復旧の目処は立って無いってさ……」
どうやら、先程の事故で電車の運行にも影響が出てしまったらしい。そして、現在時刻は午後十時三十分になる、復旧したとしてもここから駅までは少し遠いので、終電には間に合わない。
「じゃあ、お泊まり会に変更だね!」
悠花が元気よく宣言する。それを見た一花さんは、嬉しそうに笑っていた。
「フフッ……では、今夜は皆で楽しみましょうか」
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ふと、外を見れば、綺麗な満月が夜空に浮かんでいる。この季節の夜はとても冷え込むが、その分月がずっと綺麗に見える。
「ふぅ……」
自室のベッドに座り込み、一息つく。結局あの後は、皆でゲームしたりして盛り上がった。それから少し経った今は、各自の部屋に戻って寝る支度をしているところだ。
(コンコン……)
部屋の扉がノックされる音が聞こえる鍵を開けて、部屋に招き入れる。
「……こんばんわ」
「刀華……どうした?こんな夜更けに」
入ってきたのは刀華だった。さっきまでの衣装とは違い、今はサキュバス風な露出の高い黒いドレスに身を包んでいた。妖艶な雰囲気の彼女に見惚れてしまう。
「貴方なら分かるわよね?恋人が夜更けに部屋を訪れる意味が……ね?」
「……」
彼女の言葉を聞いて無言のまま抱き寄せると、そのまま唇を重ねる。お互いの存在を確かめ合うように、何度もキスを交わす。
「んっ……」
「……いいのか?」
「えぇ、もちろんよ」
その返事を聞くと同時に彼女をベッドに押し倒す。
「
耳元で囁きながら、首筋に顔を埋めて噛み付き、痕を付ける。今夜は長くなりそうだな……
首(菓子)を出せ。